映画『ミッドナイトスワン』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『ミッドナイトスワン』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『ミッドナイトスワン』
(124分/G/日本/2020)
【監督】
内田英治
【脚本】
内田英治【エグゼクティブプロデューサー】飯島三智【プロデューサー】森谷雄 森本友里恵【ラインプロデューサー】尾関玄【撮影】伊藤麻樹【照明】井上真吾【録音】伊藤裕規【整音】伊藤裕規
【出演】
草なぎ剛
服部樹咲
田中俊介
佐藤江梨子
水川あさみ
真飛聖
【HPサイト】
映画『ミッドナイトスワン』公式サイト
【予告映像】
映画『ミッドナイトスワン』トレーラー
- 第44回日本アカデミー賞において『ミッドナイトスワン』が作品賞、草なぎ剛さんが主演男優賞を受賞しました!
- 祝!「第63回ブルーリボン賞」主演男優賞:草なぎ剛さん(『ミッドナイトスワン』)
- 映画『ミッドナイトスワン』のオススメ度は?
- 映画『ミッドナイトスワン』の作品情報・概要
- 【LGBTに関連した映画】
- 【毒親が登場する映画】
- 映画『行き止まりの世界に生まれて』
- 映画『ハニーボーイ』
- 映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
- 映画『MOTHER マザー』
- 映画『誰も知らない』
- 映画『万引き家族』
- 映画『塔の上のラプンツェル』
- 映画『絶唱(1975)』
- 映画『ワイルドライフ』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『ガラスの城の約束』
- 映画『荒野にて』
- 『ホイットニー ~オールウエイズ・ラブ・ユー〜』
- 映画『赤い雪 Red Snow』
- 映画『J・エドガー』
- 映画『ある少年の告白』
- 映画『タロウのバカ』
- 映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
- 映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
- 映画『コクリコ坂から』
- 映画『はちどり』
- 映画『WAVES ウェイブス』
- 映画『カセットテープ・ダイアリーズ』
- 映画『絶唱(1975)』
- 映画『サイコ (1960年の映画)』
- 映画『ロケットマン』
- 映画『存在のない子供たち』
- 【子ども可愛がり映画】
- 【ある意味、毒親である気がする映画】
- 【格差社会を描いた映画】
- 映画『MOTHER マザー』
- 映画『ばるぼら』
- 映画『滑走路』
- 映画『絶唱(1975)』
- 映画『万引き家族』
- 映画『誰も知らない』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『行き止まりの世界に生まれて』
- 映画『人数の町』
- 映画『天気の子』
- 映画『エリカ38』
- 映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
- 映画『パブリック 図書館の奇跡』
- 映画『凪待ち』
- 映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
- 映画『鵞鳥湖の夜』
- 映画『はちどり』
- 映画『レ・ミゼラブル』
- 映画『パラサイト 半地下の家族』
- 映画『ジョーカー』
- 映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
- 映画『希望の灯り』
- 映画『タロウのバカ』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『荒野にて』
- 映画『ドッグマン』
- 映画『マイ・フェア・レディ』
- 映画『ウエスト・サイド物語』
- 映画『愛と青春の旅だち』
- 映画『黒い司法 0%からの奇跡』
- 映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
- 映画『わたしは金正男を殺してない』
- 映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
- 映画『朝が来る』
- 映画『スキャンダル』
- 映画『七人の侍』
- 映画『ミリオンダラー・ベイビー』
- 映画『道』
- 映画『楽園』
- 映画『第三夫人と髪飾り』
- 映画『グラン・トリノ』
第44回日本アカデミー賞において『ミッドナイトスワン』が作品賞、草なぎ剛さんが主演男優賞を受賞しました!
草なぎ剛さん「おめでとう!」本当に素晴らしいです。
事務所退所などで一時期は露出が少なくなっていましたが、その苦難を乗り越えて見事な演技で、日本中に感動の嵐を巻き起こしました。素晴らしい!
プライベートではご結婚もされて、充実した日々をお過ごしかと思います。今後の更なるご活躍を祈っています。「良かったあ」
主演女優賞は『MOTHER マザー』の長澤まさみさんです。
祝!「第63回ブルーリボン賞」主演男優賞:草なぎ剛さん(『ミッドナイトスワン』)
草なぎ剛さんの熱演が評価されました!
在京スポーツ紙7社の映画担当記者で構成する東京映画記者会が主催する「第63回ブルーリボン賞」で主演男優賞を草なぎ剛さんが受賞しました。
主演女優賞は主演女優賞:長澤まさみさん(『MOTHER マザー』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』)
長澤まさみさんが2年連続の快挙!
草なぎ剛さん、長澤まさみさん、やりました。おめでとうございます。
映画『ミッドナイトスワン』のオススメ度は?
星4つ半です
これは良い
草なぎ剛くんが素晴らしい
服部樹咲「新しい才能」誕生
内田英治監督の才能に驚愕
キネマ旬報が楽しみ
映画『ミッドナイトスワン』の作品情報・概要
『下衆の愛』『全裸監督』の内田英治監督最新作。LGBTQをテーマに製作したドラマ映画。本映画『ミッドナイトスワン』は「T」のトランスジェンダーの苦悩や葛藤から差別・偏見を描いている。心の痛みと体の痛みの双方の描き方が素晴らしい。さらにDV・虐待をする“毒親”から脱出して夢を掴み取る少女の成長も交えて描く感動作。草なぎ剛主演。 服部樹咲は映画初出演。初々しい演技にドキドキする。
LGBTQにテーマをおいた映画
映画『ミッドナイトスワン』のあらすじ・ネタバレ
東京のニューハーフクラブでダンスをしたり、接待をして暮らしている凪沙(草なぎ剛) は性転換手術を望んでいる。身体的な性は男性だが、性自認は女性である。故郷から姪っ子・桜田一果(服部樹咲) を預かって欲しいとの連絡を受ける。多少の養育費が出るので快諾。心を開かない一果との共同生活が始まる。次々と問題を起こす一果に手を焼く凪沙。しかし一果のバレエの才能に気がつき応援すようになる。そしてバレエの大会に出場した一果に衝撃的な事件が起きる、、、
映画『ミッドナイトスワン』の感想・内容
LGBTQについて知識をつけて理解して欲しい
そして本映画『ミッドナイトスワン』の主人公の凪沙(草なぎ剛) は「T」のトランスジェンダーの物語となっています。
性は本当に多様性です。もはや男性とか女性とかで区別することがタブーと言われています。そのことを念頭にお読みください。
本文をお読みになる前にLGBTQについて簡単に説明します。いまの時代、性はとても多様性を持っていますから、知識をつけて理解して欲しいと願っています。
わたしたちは日本という文明国家に住んでいます。知識教養が高い国民です。ですから差別・偏見の目で見るのはやめましょう。
性的指向と性自認について理解しましょう。
性的指向とは性的な魅力を感じる相手の性を指します。
性自認は自分の性別における性の認識です。
レズビアンで女性同性愛者です。性自認は女性で性的指向が同性の女性に向けられていること。
G
ゲイとは男性同性愛者です。性自認は男性で性的指向が同性の男性に向けられていること。
B
バイセクシュアルのことで両性愛者。男性・女性双方に性的魅力を感じる性的指向として定義されています。
T
性自認が身体の性別と一致しない人。身体的に男性として生まれたけれど、心は女性であったり、女性で生まれたけれど、心は男性であったりします。性同一性障害と言われ、病気扱いされてきましたが、現在では差別的だと言われて「性の違和」という言葉に変わりつつあります。
Q
Qは「Questioning(クエスチョニング)」と言われています。自身の性的指向や性自認がまだわからない状態や人のことを指しています。
「草なぎ君が本当に素晴らしかった」キネマ旬報が楽しみ
『ミッドナイトスワン』観ました。「草なぎ君が本当に素晴らしかった」その一言に尽きます。最初に結論から言っておきますが、この映画は一般的なハッピーエンドの物語ではありません。
どちらかというとバッドエンドです。ただ究極的なバッドエンドではなく、最後にはちゃんと希望の光が見えます。未来へ向かっての“踊り”を行っています。
「スワンになりました」ただわたし的にはこのエンディングは要らないと感じました。バッドエンドであるなら究極的であって欲しいと思いました。
でも、でもです。この映画は「本当に素晴らしかった」今年1番の映画かもしれません。キネマ旬報が楽しみです。
草なぎくんの後輩の二宮くんも名演技してます
トランスジェンダーの凪沙(草なぎ剛) の“痛み”をテーマ
本映画『ミッドナイトスワン』の訴求点はトランスジェンダーの凪沙(草なぎ剛) の“痛み”をテーマにしているところです。
彼女は子どもの頃から自身の体の違和感に戸惑っていました。海へ行った時に海パンになることがとても嫌でした。女の子のようにスクール水着を着たかったのです。
広島という田舎ですからそのような事は理解されません。東京へ出て、ニューハーフクラブで働きながら性転換手術の費用を貯めています。
定期的にホルモン注射を打っています。貯金箱に無造作にお金が溜まっています。彼女と同じ思いをする仲間とニューハーフクラブで“ダンス”を披露していますが、それほど良い稼ぎがあるとは思えません。
客の中には無神経な人がいます。女性客を連れてきた男性が凪沙たちトランスジェンダーを指差して「お前らよりこっちの方が女らしいよ」と言い放つのです。
実際、こういう経験をしたトランスジェンダーの人は多いのではないでしょうか。この場面は本当にきついです。
凪沙は望んで男性の体に生まれてのはありません。できることなら女性の体を手に入れたいと生きているのです。
そういう心を持った人の人格を全否定あるいは「バケモノ」的な無知識で切り落とす発言に軽蔑の念を持ってしまいます。
“毒親”から離れてトランスジェンダーの叔父と暮らす一果は幸運だと思う
凪沙は貧しいながらも女性として生きています。そんな時、田舎の母・武田和子(根岸季衣)から電話があり妹・桜田早織(水川あさみ) の子供桜田一果(服部樹咲) を預かってほしいと言われます。
最初は嫌でしたが、生活費をもらえると言うことで預かることにします。一果は中学3年生の女の子です。
彼女は親である早織から虐待を受けていました。ネグレクトもしますが、暴力も振るっています。どうしようもない母親です。“毒親”です。
俗にいう「飴と鞭」状態で一果を支配していました。そのため一果は人とのコミュニケーションが苦手な少女となっています。
児童相談所からの命令で親娘は離されます。ここで注目する場面があります。
一果が自身の腕を噛んで傷つける場面です。これは自傷行為です。自分の体を傷つけて痛みを感じることで辛いことから逃げるという行為です。
この自傷行為はトランスジェンダーの凪沙にも後半しっかりとリンクしてきます。
草なぎ君の親友・香取君の「クソっぷり」は最高です
凪沙の母親らしい顔が見え始める
そして東京の凪沙の元で二人は暮らすことになります。二人はそれほどうまく行きません。
殺伐とした生活が始まります。凪沙は結構きついことを言います。一果はひと言もしゃべりません。
彼女は心は相当な闇を抱えていることがわかります。原因は虐待をした“毒親”にあるのは一目瞭然です。
都内の中学校に一時的に転入して、すぐに暴力事件を起こしたりします。保護者である凪沙がが駆けつけます。
ここで面白いのは「あんたのことなんか面倒見ないよ」と言っていた凪沙がちゃんと駆けつけてくるところです。
とても女性らしい優しさを見ることができるのです。
バレエ教室に通うことで一果も少しずつ心を開くように
そして一果はひょんな事からバレエ教室に通うことになります。
桑田りん(上野鈴華) という友だちもできます。彼女はとても裕福な家庭の育ちで一果に洋服プレゼントしてくれます。
心を開かなかった一果も少しずつ心を開くようになっていきます。それはバレエを始めたからです。
初めて生きがいを見つけたのでしょう。上達していく面白さに取り付かれます。
しかしここで問題が起きます。バレエ教室へ通うには相当な費用がかかります。一果はりんに誘われるまま風俗系の写真撮影でモデルとして稼ぎ始めました。
そしてこれが後々、大問題となるのです。高額報酬の個別撮影の際、変態的な要求をするカメラマンにキレて怪我をさせるのです。
もちろん警察沙汰です。秘密していたのですが、凪沙にバレてしまいます。しかもりんの母親・桑田真祐美(佐藤江梨子) からも悪者扱いされる始末です。
この警察沙汰事件は後半の凪沙の警察沙汰事件にもリンクしています。
亀梨君は今年最大ヒット映画の主演でした
凪沙は一果の母親になるためにタイで「性転換手術」を受けたのか
バレエの先生である片平実花(真飛聖)は一果の才能を高く評価していました。警察沙汰になった一件で、一果はバレエ教室から足が遠のきます。
凪沙も特に一果のバレエに興味がありません。でも凪沙が務めるニューハーフクラブで一果がバレエを踊っている姿を見て一かを応援すると決意するのです。
この場面でもう涙腺が崩壊しました。凪沙は安定した仕事を探して、慣れない肉体労働に就いて一果のレッスン料を稼ぎます。そして一果はバレエのコンクールに出場します。
バレエ大会に出場した一果は驚愕な演技をします。審査員も身を乗り出すほどです。
そして2回目の演技に挑みます。この時に一果の心に闇が降りてきます。“恐怖”です。
トイレに入って自身の腕を噛んで傷つけます。傷つけることで落ち着けるのです。
そしてステージに立ちますが、体動かなくなっています。
客席では凪沙が見守っています。一果は体が動きません。それは客席に虐待をした母親がいたからです。
母親の桜田早織(水川あさみ) はステージに上がり一果を抱きしめます。「お母さん」と一果が言います。
その様子を見ていた凪沙は客席を後にします。この場面はきつかったです。渚の気持ちが…。
きつかったです。実はその少し前にバレエ教室へレッスン料を支払いに行った際、片平実花(真飛聖)先生から「お母さんも大変ですね」と言われて舞い上がっていたからです。
この時の凪沙の嬉しそうな顔がずっと残っていたから、一果の「お母さん」という言葉に愕然とした凪沙の気持ちが痛かったのです。
そして凪沙はこの一件で決意を固めます。「性転換手術」を受けるためにタイへ渡るのです。
映画『ミッドナイトスワン』の結末・評価
内田英治監督の仕掛けたトラップはツイッターで炎上したが、、、
その後、一果は広島に連れ戻されます。そこは再び地獄の日々です。母の新しい男も最低な人間です。
凪沙はタイで性転換手術を受けます。ただここの場面で読み取れるのは、タイの病院が設備はとても清潔でないイメージなのです。しかも安全安心は雰囲気ではないのです。
「違法手術」とか「ヤブ医者」と感じてしまうのです。でもこの演出が後半明らかになってきます。
内田英治監督の仕掛けたトラップです。しかもこの件はツイッターで炎上騒ぎになります。
答えを書きますが、安価な医者で行なった手術の代償は凪沙にとってとてつもなく大きかったのです。
これからはキンプリの時代か?
凪沙は一果の腕の咬み傷を見て「こんなことしちゃダメ。自分を傷つけてはダメ」の意味
女になった凪沙は広島へ行き一果を引き取ろうとしますが、両親、妹に「バケモノ」扱いされて追い返されます。
一果は追いかけますが、毒親たちに引き止められます。この際、凪沙は一果の腕の咬み傷を見て「こんなことしちゃダメ。自分を傷つけてはダメ」という場面が秀逸です。
凪沙自身は性転換しました。望まぬ体で生まれた末の性転換です。
「本当は体を傷つけたくなかった」「女性として生まれてきたのなら傷つけずに済んだ」との叫びです。とても素晴らしい演出です。
片平実花先生が広島まで来て指導してくれたことは良いが、、、
さて物語はここから急展開します。一果の卒業式の日です。一果は『仰げば尊し』を歌っています。若干笑顔が見えます。
わたしは「え、何があったの」状態に包まれます。母親と笑顔で写真を撮っています。とても仲睦まじい様子か映されます。
「毒親卒業か」と思いましたが、すぐその答えがわかるのです。
遠く広島にいてもバレエのレッスンは続けていました。片平実花先生が広島まで来て指導してくれていたのです。
しかもエアメールを渡すところで大体の流れが読めてしまいました。
ここがちょっと勿体無いのです。実際15歳で奨学金をもらってニューヨークへバレエ留学ってそんなに容易ではないと思うのです。そこにリアリティーがあまり感じないのです。
凪沙は海で「スクール水着を着た自分」を認識して安堵する
そして一果は卒業と同時に速攻で凪沙の元を訪ねます。凪沙の生活は困窮しており、ボロボロのアパートに引っ越しています。
しかも体を壊して寝たきりなのです。下半身が血まみれです。
タイで安易で安価な性転換手術をした代償が表されています。凪沙は久しぶりに来た一果に感涙します。
そして海へ連れて行ってくれとお願いするのです。2人は海へ行きます。
凪沙は意識が混濁しています。そして小さい頃の自分の姿を見るのです。
そこには海パン姿を強要された自分ではなく「スクール水着を着た自分」がいるのです。
ここで初めて凪沙の想いが結実するのです。そして凪沙は死にます。
ジャニーズJr.出身の浅香航大出演は名作だと思います
一果が荒波によって引き戻される演出は素晴らしいが、、、
r一果にとって渚はとても重要な人間でした。その凪沙を失って一果も荒波に身を投じます。自死を選ぶのです。
しかし簡単に死なせてくれません。荒波によって引き戻されるのです。
つまり「あなたはまだ死んではいけない」と言うメッセージなのです。
一果にとって二人目の死です。中学で唯一の友だちで、バレエも一緒に通ったりんは投身自殺で失っています。
そして凪沙の失って、一果は絶望のどん底に落とされるのです。わたし的にはこの場面で映画が終わっても良かったと思っています。「一果は死んだのか、それとも生きたのか」です。
映画のテーマはトランスジェンダーの「心身双方の痛み」を通して一果も羽ばたく
しかしながら次の場面で、一果がニューヨークで闊歩しています。
展開があまりにも飛躍したので驚きましたが、最後はバレエで夢と希望を掴んで邁進する一果の姿にホッとしました。
ただこの映画は普通のハッピーエンドの物語ではないので心して観た方が良いと思います。
この映画のテーマはトランスジェンダーの「心身双方の痛み」で、どちらかというと体の痛みを前面に出していると思われます。
心の叫びや痛みをテーマにしたLG BT映画はたくさんあります。
でも体の叫びや痛みを主軸に描いた映画はあまりありません。
内田監督はそこをうまく描いていました。
凪沙が自分の体のことを悩む場面は本当に涙が出てきました。ホルモン注射もそうです。注射の後の副作用もそうです。
精神的におかしくなって「泣けば治る」と言った場面にもらい泣きしました。自分の体について悩んでいるから一果が自称行為で腕に傷をつけることに凪沙はとても辛かったのだと思います。
自分の体を故意的に傷つけるということに対して、凪沙は最終的に性転換行うのですが、「女性の体で生まれていれば」という思いがヒシヒシと伝わってくるのです。
本映画『ミッドナイトスワン』全世界のトランスジェンダーとして生きている人たちの葛藤を「心身双方の痛み」を通して描いています。
さらに“毒親”から解放されて、夢と希望を持って、未来を力強く生きていく一果をスワンに見立てて描いた素晴らしい映画だと言えます。
映画『ミッドナイトスワン』のキャストについて
凪沙(草なぎ剛)
ニューハーフクラブで働くトランスジェンダー。身体的な性は男性。性自認は女性。子どもの頃より、男子の服装に違和感を持っていた。田舎の広島を出て上京。性転換手術する目的を持っている。一果に素っ気ない態度をとるが、元々根が優しい性格なので心を寄せていく。一果の母親になりたいと思い始める。草なぎ君の演技は日本映画史に残る名演です。心の痛みも叫びもヒシヒシと伝わってきました。素晴らしい。
桜田一果(服部樹咲)
中学三年生。母親はネグレクト(育児放棄)であり、時には暴力を振るう。腕を噛む“自傷行為”がある。人とのコミュニケーションに難あり。バレエを出会っって人生が輝き始める。服部樹咲さんはまだあどけなさが残る少女ですが、体当たりの演技をしていたと思います。“目力”がすごいですね。将来はバレエに行くのか女優に行くのかわかりませんが、応援したいです。両方やっても良いと思います。
瑞貴(田中俊介)
凪沙と同じクラブで働いています。男に貢いでいます。お金のためにクラブを辞めて“ヘルス嬢”になります。 田中俊介さんは綺麗でした。
桑田りん(上野鈴華)
お金持ちの家のお嬢様。父親は愛人がいる模様。母親は若い頃、バレエをやっていた影響でりんも習うことに。一果が来て自分のバレエの素質の限界を知る。風俗ギリギリの写真モデルで稼いでいる。心の闇を持っている。上野鈴華さんも体当たりの演技でした。一果とのキスシーンの戸惑い方が素晴らしいと思いました。
桑田真祐美(佐藤江梨子)
りんの母親。セレブ感丸出し。夫の浮気を知っているが、お金のある暮らしを手放せない。かつての自身が描いたバレエの夢をりんの託している。佐藤江梨子さん、あまり出番はありませんでした。もう少しアクの強い母親を演じても良かったのでは。
武田和子(根岸季衣)
凪沙と早織の母親。広島の田舎に住んでいる。まさか息子が女性になるとは、、、。思いもよらなかったと思います。「治してくれ」と泣きますが、凪沙の「病気じゃあないのよ」の言葉は届かなった様子。
桜田早織(水川あさみ)
一果の母親。ネグレクト、虐待を行う“毒親”です。茶髪で素行が悪い。東京へ行った一果を連れ戻しますが、結局は“毒親”のまま。最終的には改心したのかは不明。水川あさみさん、すごかったです。最初、わからなかったです。品の良い水川さんが、まさかあの様な下品な女性を演じてびっくりです。素晴らしいです。
片平実花(真飛聖)
バレエ教室の先生。一果のバレエの才能をいち早く見つける。貧しい一果のための援助を申し出る。広島に帰った一果のところへレッスンに行く。 真飛聖の演技は安心して見ることができました。やはり宝塚出身ということで、スクリーンへの吸引力は強かったです。
洋子ママ(田口トモロヲ)
桑田正二(平山祐介)
キャンディ(吉村界人)
アキナ(真田怜臣)
まとめ 映画『ミッドナイトスワン』一言で言うと!
「誰かの痛みを知ることで優しくなれる」
人は誰かの痛みを知ることで優しくなれると言います。でもそれはあまりにもリアリティーがないと逆効果になります。特にLGBTQ問題は長いあ間、理解されなかった歴史があります。犯罪者扱いされたり、精神異常者扱いされたりと、、、。しかし近年、知性教養の高い人たちの努力によってようやく理解されるに至りました。当人たちの気持ちになることってとても大事です。
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純愛なる男同士の愛の物語
映画『永遠に僕のもの』
彼の心が欲しい美しすぎる犯罪者の恋物語
映画『ロケットマン』
性について悩むエルトン・ジョンの魂の叫びが聞こえます。
映画『ゴッズ・オウン・カントリー』
本当に美しい若い二人の恋物語です
映画『さよなら くちびる』
主人公のハルは自身の性に悩みながら音楽活動をしている、彼女が思いを寄せる女性はすでに、、、、。
映画『コレット』
フランスの女流作家の波乱万丈の人生を描いている。半世紀前に勇気を出して同性愛を告白した女性。
映画『ある少年の告白』
同性愛を矯正する学校に入れらた少年たち。しかし本当の性を見つけて生きていく決意をする。
映画『グリーンブック』
有名な黒人ピアニストが人種差別を戦う過程で自身のセクシャリティーを告白している。
映画『女王陛下のお気に入り』
イギリス王室の物語。アン王女と侍女の関係を描いている。
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』
アメリカ女子テニスのスーパースターが性差別撤廃に向けて戦う。自身も同性愛者とカミングアウトする。
映画『J・エドガー』
長年FBIを務めたエドガーの半生
【毒親が登場する映画】
映画『行き止まりの世界に生まれて』
幼少の頃受けた虐待が人生を壊している
映画『ハニーボーイ』
父親は酒、ドラッグ、そして暴力ばかり、、、
映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
ネグレクトされた幼少時代が、、、
映画『MOTHER マザー』
長澤まさみが演じる“毒親”最強物語
映画『誰も知らない』
我らが是枝監督が描く毒親は一味違う
映画『万引き家族』
毒親から救出「楽しければ良いじゃん」でも捕まる
映画『塔の上のラプンツェル』
ディズニー史上最悪の毒親でしょう
映画『絶唱(1975)』
封建制が残る時代とはいえ子どもの自由を奪う権利はない
映画『ワイルドライフ』
子どもの前で夫以外の男性と情事を見せたら、、、
映画『存在のない子供たち』
これがレバノンの現状なのだろうか。出生証明書もない子供たち
映画『ガラスの城の約束』
両親揃って社会から逸脱していて働きません。父親はアル中でDV野郎です。
映画『荒野にて』
父親は働いていますが、子どもの教育に無関心です。
『ホイットニー ~オールウエイズ・ラブ・ユー〜』
娘が薬物に溺れているのを救えませんでした。
映画『赤い雪 Red Snow』
我が子を押入れに押し込めて男との情事を楽しみます。
映画『J・エドガー』
息子が可愛くて仕方ありません。徹底的な教育を施します。
映画『ある少年の告白』
宗教的な観念で息子の自由を束縛します。
映画『タロウのバカ』
現代ニッポンにバカと叫ぶ!
映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
親の教育が悪かったからこんな男になったのか、、、
映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
毒親で育って「アーサー」と出会うのは不運?
映画『コクリコ坂から』
子どもを置き去りに海外留学するのは毒親?
映画『はちどり』
娘に無関心すぎる韓国の親たちは一般的か?
映画『WAVES ウェイブス』
知らぬ間に子どもを支配している親
映画『カセットテープ・ダイアリーズ』
宗教の教義と“毒親”の境界は不鮮明だ
映画『絶唱(1975)』
子どもの恋愛を邪魔する親は毒そのものだ
映画『サイコ (1960年の映画)』
“毒親”への歪んだ愛情の裏返し
映画『ロケットマン』
父親からの愛情は、、、、
映画『存在のない子供たち』
“毒親”を裁判で訴えてやる!
【子ども可愛がり映画】
映画『リアム16歳、はじめての学校』
気持ち悪いくらいに息子に干渉します。息子と恋人気分です。
『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』
こちらは母親依存です。
映画『パパは奮闘中』
蒸発した妻の代わりに子育てします。
【ある意味、毒親である気がする映画】
映画『ビューティフル・ボーイ』
薬物依存になった息子を助けるために奮闘しますが、それが重荷になります。
映画『ベン・イズ・バック』
薬物施設を無断で出てきた息子を可愛がります。
映画『37セカンズ』
お母さんはちょっと過干渉すぎます
映画『燃えよスーリヤ!!』
インド的な教育方法?
映画『ジョーカー』
アーサーの母親は間違いなく狂っていました
【格差社会を描いた映画】
映画『MOTHER マザー』
毒親が生まれたのは格差社会が原因?
映画『ばるぼら』
ばるぼらは社会の“排泄物”のように扱われた
映画『滑走路』
イジメから非正規社員問題まで絡めた名作
映画『絶唱(1975)』
封建制度の時代の格差ってどうしようなかった、、、
映画『万引き家族』
是枝監督の描く映画は「痛い」
映画『誰も知らない』
是枝監督が世界の映画作家に与えた影響は多大なり!
映画『存在のない子供たち』
戸籍も存在もない社会って“格差”どころじゃあない
映画『行き止まりの世界に生まれて』
格差と虐待は比例するのか
映画『人数の町』
格差もまったく存在しない町へ行こう!
映画『天気の子』
このふたりも日本社会からはみ出していると言える
映画『エリカ38』
エリカが詐欺師になったのは貧しい生い立ちから
映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
黒人というだけで“チャンス”が与えられない社会がある
映画『パブリック 図書館の奇跡』
「笑うな!」ホームレスにだって人権があります!
映画『凪待ち』
社会の底辺で生きてきた男、、、
映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
無教養が格差を広げている
映画『鵞鳥湖の夜』
発展すればするほど格差が広がります
映画『はちどり』
韓国社会の現実は恐ろしい
映画『レ・ミゼラブル』
この少年たちの“怨恨”は根深い
映画『パラサイト 半地下の家族』
アカデミー作品賞獲得という快挙!
映画『ジョーカー』
格差が招いた犯罪
映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
日本の底辺男の希望映画です
映画『希望の灯り』
かつての東西冷戦の格差って?
映画『タロウのバカ』
タロウが悲しすぎる
映画『存在のない子供たち』
生まれたという存在がないとは、、、
映画『荒野にて』
無学な父親を亡くしてしまい、、、
映画『ドッグマン』
不条理すぎる映画です
映画『マイ・フェア・レディ』
イギリスの階級社会で這い上がるのは難しい、、、
映画『ウエスト・サイド物語』
人種が絡んだ格差社会って辛い
映画『愛と青春の旅だち』
パイロット目指す若者と工場で働く女の子の恋愛
映画『黒い司法 0%からの奇跡』
いつも黒人が“容疑者”にされてしまう理由はなに?
映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
差別・嫌悪される理由は本人にも問題ありでは、、、
映画『わたしは金正男を殺してない』
貧しい国から来た女性を使っての犯罪です
映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
少年たちはアメリカ社会の未来を憂いての犯行だったのか
映画『朝が来る』
格差社会もあるけれど教育が大事だと思う、、、
映画『スキャンダル』
男どもに「一泡吹かせてやる!」ダンサーたちの挑戦!
映画『七人の侍』
黒澤明が描く“格差社会”はダイナミックだ
映画『ミリオンダラー・ベイビー』
ど貧乏育ちだけど「成功したい」気持ちに嘘はない
映画『道』
人生は厳しい“道”ばかりだけど「間違い」はしたくない
映画『楽園』
田舎の“ムラ社会”の中の“格差社会”って陰険だ
映画『第三夫人と髪飾り』
格差というより“習慣”とか“伝統”と言った理由で、、、
映画『グラン・トリノ』
人種差別者が“格差社会”に初めて気がついたら!
映画『ミッドナイトスワン』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
内田英治
脚本
内田英治
エグゼクティブプロデューサー
飯島三智
プロデューサー
森谷雄 森本友里恵
ラインプロデューサー
尾関玄
撮影
伊藤麻樹
照明
井上真吾
録音
伊藤裕規
整音
伊藤裕規
美術
我妻弘之
装飾
湯澤幸夫
衣装
川本誠子
コスチュームデザイン
細見佳代
ヘアメイク
板垣美和 永嶋麻子
編集
岩切裕一
音楽
渋谷慶一郎
音響効果
大塚智子
助監督
松倉大夏
バレエ監修
千歳美香子
制作担当
三浦義信 中村元
凪沙(草なぎ剛)
桜田一果(服部樹咲)
瑞貴(田中俊介)
キャンディ(吉村界人)
アキナ(真田怜臣)
桑田りん(上野鈴華)
桑田真祐美(佐藤江梨子)
桑田正二(平山祐介)
武田和子(根岸季衣)
桜田早織(水川あさみ)
洋子ママ(田口トモロヲ)
片平実花(真飛聖)
2020年製作/124分/G/日本
配給:キノフィルムズ