クリント・イーストウッド監督映画『グラン・トリノ』は新保守主義時代到来を予見した物語。ネタバレ・あらすじ・感想・考察。

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映画『グラン・トリノ』公式サイトにて作品情報をご確認ください。 YouTubeで予告映像もご覧ください。

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Clint Eastwood, the Academy Award-winning director of Million Dollar Baby and Unforgiven and Academy-nominated director of Letters From Iwo Jima and Mystic Rive...
Gran Torino – Theatrical Trailer
ワーナー・オンデマンド配信中 『グラン・トリノ』(予告編)

『グラン・トリノ』117/アメリカ/2008
原題『Gran Torino

監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド
   ビー・バン
   アーニー・ハー
製作:クリント・イーストウッド,ロバート・ローレンツ, ビル・ガーバー

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映画『グラン・トリノ』のオススメ度は?

4

4つ。

この映画を観ればいま世界にはびこる保守主義が見えてきます。

人間は常に他者と比較し差別する生き物なのか。

個人の価値観やプライドなどちっぽけなモノ。

自己犠牲の果てに生まれる希望もあります。

友だち、家族を観てください。

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映画『グラン・トリノ』の作品概要

クリント・イーストウッドは本作を持って「俳優として引退する」決意で主演している。アメリカに尽くしてきた移民の子孫として、誇り高いが偏屈な男を演じている。朝鮮戦争へ行き、帰還後は大手自動車メーカーのフォードのエンジニアとして働いた。アメリカが栄華を誇った時代だ。しかし今や自動車産業は見る影も無い。彼の住む近隣にはかつて彼が戦った黄色人種が縦横無尽に歩いている。差別と偏見を持った男の価値観が変わるのか、それとも敵対意識を持ち続けるのか。本作は人種とは?についても深く描いている

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映画『グラン・トリノ』のあらすじ・ネタバレ

プライドが高い男ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は引退して年金暮らしだ。軒先でビールを飲むことが楽しい日課だ。しかし彼にとっては歓迎できない人が増えてきた。アジア人だ。かつて朝鮮戦争で殺した黄色人種だ。おまけにコワルスキーの家に窃盗に入る事件まで起きた。彼らの正体はモン族であった。しかし窃盗に入ったモン族の少年と心を通わせるようになる。次第にコワルスキーは自身が囚われていた差別意識を改めていく。

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映画『グラン・トリノ』の感想・評価・内容・結末

グラン・トリノは時代は現世を予見した映画だった

いま考えるとこの映画は時代的に早く作られた作品と言えます。現在、世界を見渡すと保守主義がはびこっています。

それはアメリカを真っ先に差しますが、実はヨーロッパでも、そしてアジアにも広がっているのです。この流れはとても恐ろしい行く末になると思います。

思い出して欲しいのです。第二次世界大戦で世界を恐怖どん底に突き落とした人物アドルフ・ヒトラーを。

彼は第一次世界大戦後、圧倒的な権力を得るために民族主義を提唱しました。ユダヤ人迫害です。これによってドイツの国民は熱狂し一致団結しました。

それは恐るべき狂気という情熱を持って第二次世界大戦に突入していきました

移民であるのに新しい移民を差別するのはなぜ?

本作の主人公のウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は東欧からの移民の子孫です。彼はアメリカ人として国家に尽力してきました。

朝鮮戦争で勇敢に戦い、帰還後、フォードのエンジニアとして真面目に働きました。

アメリカの主要産業が自動車だった時代であり、車こそアメリカの成功なのだという誇りもあったのでしょう。

しかしながら彼が暮らした良きアメリカは今はもうありません。デトロイトを例にあげるようにアメリアの自動車産業は衰退してしまいました。

代わりに日本車がアメリカ中を席巻しています。彼にとっては屈辱以外の何物でもありません。

しかもコワルスキーが暮らす地域にはアジアからの移民が増えて住み心地が悪くなっています。

元々、有色人種に対して優越感を持っているコワルスキーにとっては自分の領地にアジア人が入ってくることが苦痛であり我慢ならない出来事です。

モン族はベトナム戦争の時、アメリカのために戦った仲間であるのに

しかも彼らにお風貌がかつて朝鮮戦争で殺した人たちに似ています。モン族です。白人であるコワルスキーにとって日本人も朝鮮人もモン族も同じに見えます。

彼らはかつてアメリカがベトナム戦争において雇った戦士の子孫です(モン族はアジアで最も勇敢な戦士と言われてアメリカに多大な貢献をしたそうです)

しかしベトナム戦争終結時、行き場がなく、アメリカに移民してきました。コワルスキーはモン族に対して侮蔑の言葉を吐きます。「クソ黄色人種め」とか「米食い虫ども」などと。

新保守主義台頭は世界に広がっている事実を受け止めなければ

これが冒頭に挙げた保守主義あるい新ナショナリズムに通じるのです。トランプの掲げるアメリカファーストにです。

自国優先で他者に排他的な考えです。今から10年前にイーストが本作を作った予知能力に改めて驚きの念を禁じ得ません。

たったこの10年の間に世界は大きく変わってしまいました。後戻りしてしまったのです。世界中に憎悪の感情が蔓延しています。その感情は絶えず自分より弱い者への攻撃へ向けられています。自分が攻撃されないように守っています。守ることは保守なのです。これが大きな集団になって新保守主義になります。

世界中で起こっている民族対立の構造

今やヒトラーの時代に似ていると感じるのはわたしだけでしょうか。あの時代を改めて検証すると民族と宗教対立の時代であったと思います。

今はどうか。全く同じではないでしょうか。ヒトラーがユダヤ人を迫害しゲルマン民族を高みに据えました。

そして今、世界中で民族争いが起きています。特にヨーロッパはひどいと言えます。

シリアからの移民がドイツにもフランスに流れ、対立構造が生まれ大きな問題になっています。そして右翼的な政党が台頭しています。

中国もそうです。チベットやウイグルへの弾圧は凄まじく、民族浄化が行われています。そして香港への圧力。

日本も現在、お隣の韓国に対しての嫌悪感を煽って民族を分断させるような動きがあります。これは非常に危ない思想です。

自己犠牲によって人間の尊厳を伝承した

歴史は証明しています。抑圧された人々は必ず反乱を起こします。一度、反乱が起きるとそのエネルギーを止めるのは難しいです。

反乱が反乱を呼び憎悪が連鎖されてしまいます。わたしたちはその前に気がつかなければいけないのです。

この映画を観るとイーストウッド演じるコワルスキーが最後にモン族のギャングに殺されます。結果的にそれで丸く収まります。

殺されてギャングを刑務所に送ることで、解決するのです。彼らは刑務所で心を改める機会があります。希望を残しています。

無力に対して無力を使わず、頭で解決したのです。イーストウッドは自己犠牲によって、若者に争いの醜さを伝えると共に「老いた者は必要ない、新しい時代に託そう」と言っているのだと思います。

若者に歴史を作ってもらうのが一番良い

今ここで世界にはびこる保守主義に唯一対抗できるのはやっぱり若い人たちの思想なのではないでしょうか。

わたしの周りにいる若者は「なぜ、年配の人は韓国が嫌いなのか理解できない」という。彼らはKポップも聴くし、韓流映画も観ます。髪型だった真似しています。

そんな彼らに我々が持つ過去から引きずる価値観を押し付けてはいけないと思うのです。

アメリカ人もそうです。闇雲にメキシコ人が犯罪者と決めつけてはいけないです。ドイツ人もシリア移民に対して高圧的であってはいけないと思います。中国もそうです。

個人の価値観や誇りなどちっぽけなモノだ

この映画を観ていると個人の価値観とか誇りなど「なんてちっぽけなのだ」と気がつかされます。

そんなことにこだわるより、まずは隣人と話せよ、心底話し合えばきっと良き友人になれる、と思うのです。イタズラに嫌悪感していけません。真実とは自分自身で見つけるべきだと思います。

*イーストウッドが映画の中で死ぬのは本作と『白い肌の異常な夜』くらいだ。それ以外は思い出せない。それだけに意味深い映画である。

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映画『グラン・トリノ』まとめ 一言で言うと!

「たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日私はリンゴの木を植える」

とてもいい言葉です。勇気が出てきます。自分の気持ちはどんな悲惨な状況下でも全うしようという思いが強いです。その気持ちは絶対的な優しさを持つ感情のことを指します。

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映画『グラン・トリノ』の作品情報

映画.comより一部引用

スタッフ・キャスト
監督
クリント・イーストウッド
製作
クリント・イーストウッド ロバート・ローレンツ ビル・ガーバー
製作総指揮
ジェネット・カーン アダム・リッチマン ティム・ムーア ブルース・バーマン
脚本
ニック・シェンク
原案
デビッド・ジョハンソン ニック・シェンク
撮影
トム・スターン
美術
ジェームズ・J・ムラカミ
音楽
カイル・イーストウッド マイケル・スティーブンス
主題歌
ジェイミー・カラム
キャスト
ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)
タオ・ロー(ビー・バン)
スー・ロー(アーニー・ハー)
ヤノビッチ神父(クリストファー・カーレイ)
ジョン・キャロル・リンチ
2008年製作/117分/アメリカ
原題:Gran Torino
配給:ワーナー・ブラザース映画