映画『荒野にて』ネタバレ、評価。新鋭チャーリー・ブルマーの眼差しが切ない

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映画『荒野にて』公式サイト
「さざなみ」のアンドリュー・ヘイ監督が描く、自分の居場所を求める切望。4.12(金)ヒューマントラストシネマ渋谷他 全国順次ロードショー

『荒野にて』(122//2017)

原題 『Lean on Pete』

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父親に死なれ、孤独な少年は馬のピートだけが友人だ あまりにも貧しく、モノ悲しい物語に胸が締め付けられる

 

アメリカの西部で撮影されてこそ、成り立つ映画だ

この映画のポスターを見た時、それほど暗い映画では無いように思えた。アメリカ映画と言うこともあり、少年が荒野を旅をする過程で大人への扉を開くという映画を想像していた。しかし、かなり想像とは違う映画であった。画面が明るいのだ。明度も彩度も高めに撮影ならびに編集されているように感じた。でも映画の内容は暗い物語だった。だからこそアメリカの西部で撮影した意味がわかった。

孤独に気がつかないほど少年は孤独で貧乏だ 貧乏は罪だ

この少年はとにかく孤独だ。終始孤独だ。家族からも社会からも孤立している。友人などいない。心を通い合わせる人がいない。救いようのないよほど遠い世界にいるように感じた。この映画を観ながら思い出した映画がある。ダルデンヌ兄弟の作った『ロゼッタ』(1999年)だ。ロゼッタ同様この映画に出てくる主人公のチャーリーは万引きをしたり無銭飲食をしたりと犯罪に手を染めてしまう。共通してる理由はお金がないこと、つまり貧乏であるということだ。よく清貧とは美である、と言うがそんなことはない。お金がないと言う事は罪だ。何故ならば心が荒んでいくからだ。

この青年は父と2人暮らしだ。父はまるでその日暮らしと言うような肉体労働者で、父には人妻の愛人がいる。幼い頃、母もいたが精神がおかしくなり消えてしまったそうだ。二人は住居を転々しながら暮らしている。少年は学校にも通っていない。教養もあまりない。ただ少年は走ることが好きなようだ。

初めての労働 初めての友人 ピートと言う馬に愛情を注ぐ

ある日、父親が手を出した人妻の旦那に殴られ怪我をし病院に運ばれてしまった。少年は治療費を稼ぐために馬の飼育の手伝いをする。その手伝いが見事に少年にはまった。馬が好きになってしまったのだ。次第に馬に対する愛情が深まっていく。学校なんて行かずに馬の世界で何とか生きていきたいと思うようになった。

父親の死の衝撃 親友のピートまで失いたくないのは当然か

父の見舞いに行くと父が死んでいた突然だった。少年はさらに孤立を深める。少年にとっては唯一の友人は馬のピートだ。しかしピートはもう競走馬としては老齢で屠殺されるか、良くて売られるの道しか残されてない。飼い主にとって馬はただの商売道具で愛情はない。若くて人生経験が少ないチャーリーには理解できない。チャーリーはピートを盗み出す。唯一の肉親である叔母のワイオミングを目指す。車が故障しピートを荒野を歩いて行く。

ピートも死なせてしまった 少年にはもはや何もない

チャーリーは初めて自分の本心を語れる相手を見つけた。ピートだ。チャーリーは自らの生い立ちや生活について馬に話しかける。しかし少年の不注意で馬が手綱を外し走り出し車にひかレテ死んでしまう。さぁ果たしてこれからどうなるのだろうと言う物語だ。

こんな悲しい眼差しをする少年は見たことがない

少年は本当に悲しい眼差しをしている。観ているだけでこちらの心が細くなっていく。この映画を見ていると何てこの少年は不幸なのだ、何て孤独なのだと胸がえぐられる。犯罪などしないでくれと願わずにはいられなかった。万引きをしたり、無銭飲食をする少年にこれ以上やってはいけないと叫びたくなる。

やっと落ち着く場所が見つかったと願いたい

馬をなくした少年は確かに悲しかったが、そこから何とか自立を目指そうと頑張る姿は良い。そして唯一の肉親である叔母さんを見つけ出し一緒に暮らすときのあの会話が何とも言えない。「しばらくの間で良いからここに置いて欲しい」それに対して叔母が答えたのは「もう離さないわ、ずっと一緒よ」ほっとする。でも少年は「邪魔になったら追い出してくれ」と言う。その健気さが胸を打つ。

ランニングする いつも走っていたい 明日に向かって

叔母と一緒に暮らすことになった少年は好きだったランニングに出かける。髪の毛も切った。顔は明るい。そして立ち止まって振り返る。それは過去を思い出しているのだろうか。いや未来を見ているのだ思う。そう思いわなければ救われない。頑張って生き抜いて欲しいと願わずにはいられない一瞬だ。

アメリカ西海岸で撮影された意義と意味がわかる ここはヨーロッパの果てなのだ

この映画をアメリカ西海岸ではなくてヨーロッパで撮っていたら本当に暗い雰囲気の映画になったと思う。敢えてアメリカの西海岸で撮ったことが意義を考えてみる。ヨーロッパの暗い暗い世界、そして重い重い階級世界から抜け出してきたヨーロッパ人は西へ西へとその歩を進めた。その果てにたどり着いたのがこの西の世界だったのだ。だから西の明るい世界で良かったのだ。『荒野にて』と言う邦題はイマイチだが、荒野にポッカリと浮かぶ月がとても印象的だった。あれは少年の心だろう。満ちたり欠けたり、はっきりしたり、ぼやけたり、、、。素晴らしい映画です。

映画のことなら映画.comより引用

スタッフ

監督 アンドリュー・ヘイ
製作 トリスタン・ゴリハー
製作総指揮 ベン・ロバーツ リジー・フランク ダニエル・バトセック サム・ラベンダー デビッド・コッシ ビンセント・ガデル ダーレン・M・デメトレ
原作 ウィリー・ブローティン
脚本 アンドリュー・ヘイ
撮影 マウヌス・ノアンホフ・ヨンク
美術 ライアン・ウォーレン・スミス
衣装 ジュリー・カーナハン
編集 ジョナサン・アルバーツ
音楽 ジェームズ・エドワード・バーカー
キャスト チャーリー・プラマーチャーリー・トンプソン スティーブ・ブシェーミデル・モンゴメリー クロエ・セビニーボニー トラビス・フィメルレイ スティーブ・ザーンシルバー
作品データ
原題 Lean on Pete
製作年 2017
製作国 イギリス
配給 ギャガ
上映時間 122
映倫区分 G