映画『希望の灯り』は東西統一後のドイツが抱える格差社会への提言と未来を憂う人々の物語。ネタバレ、評価。

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映画「希望の灯り」
1989年ベルリンの壁崩壊、1990年東西再統一。置き去りにされた人達の哀しみを、スーパーマーケットの灯りが優しく包む。慎ましく幸せな物語/原題:In den Gängen/英題:In the Aisles

『希望の灯り』(125分/独/2018)
原題『In den Gangen』

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映画『希望の灯り』の作品情報

【日本公開】
2018年
【原題】
『In den Gangen』
【原作】
クレメンス・マイヤー
【監督】
トーマス・ステューバー
【脚本】
クレメンス・マイヤー
【キャスト】

フランツ・ロゴフスキクリスティアン サンドラ・フラーマリオン ペーター・クルトブルーノ アンドレアス・レオポルトルディ ミヒャエル・シュペヒトクラウス ラモナ・クンツェ=リブノウイリーナ ヘニング・ペカー マティアス・ブレンナー クレメンス・マイヤー

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映画『希望の灯り』の作品概要

米ソ冷戦の終結の象徴であるベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一によってもたらされた人々のその後と新しい時代に生まれ、生きていく若者の姿をスーパーマーケットを舞台に描いた作品。崩壊は誕生か、それとも崩壊は破滅だったのか、、、。

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映画『希望の灯り』のあらすじとネタバレ

見た目に寄らず真面目なクリスティアンと強面だが優しいブルーノ

全身入れ墨の若いクリスティアンは巨大なスーパーマーケットの倉庫で働くことになる。

配属先の上司ブルーノは穏やかで優しい。面倒見がいい。無口で素直なクリスティアンは真面目に働く。

まずはフォークリフトの免許を取らなければいけない。如何せんセンスがない。

人妻に恋するもあっけなく失恋

一生懸命働く気持ちに火をつけたのがマリオンという女性の存在だ。恋は人を動かす。しかし彼女は人妻だった、、、。

自暴自棄になるがブルーノの助けあり仕事を続ける。しかしある日、恩師のブルーノが、、、。

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映画『希望の灯り』の感想と評価

時の流れはあっという間だ。それが残酷な事もある


この映画を観て時の経つのが早いと感じた人も多いと思う。

1989年のベルリンの壁崩壊から翌年の東西ドイツ統一からもう30年近く経とうとしている。

ベルリンの壁によじ登ってハンマーで壁を叩き壊す人、あるいはボロボロの車で西ドイツ国境を越える旧東ドイツの人々の意気揚々とした顔がまだ脳裏に焼き付いている。

当時はテレビ中継で民主化の流れを観ていた。若気ながら「世界は変わる」と震えたものだ。

ベルリンの壁崩壊 あの瞬間から世界は大きく変わった

実際、世界は大きく変わった。それは良い意味でもあるが、中には変化に対応できず懐古する人がいることも確かである。

本映画『希望の灯り』はどちらかというとかつての社会主義体制に評価するメッセージもあると思う。

当時は社会主義=不自由というイメージが先行していたが、ある程度平等であったことは間違いない。

人々は管理された社会の中で普通に働けば何の不自由もなく食べていけたし、保証もあった。でも一旦、民主化が始まり自由に職業を選び、尚且つ起業するとなるとそれほど甘くないのだ。

食べるためには懸命に働かなければならない。成功すれば金銭が生活を保証してくれる。しかし金銭を得られない場合は地獄の苦しみを味わうことになるのだ。

東西冷戦終結で希望を失った人もいるのか、、、

旧東ドイツの人たちが資本主義に対応できなかったという話はよく聞く。

この映画では若きクリスティアンは旧東ドイツ時代を知らない世代である。上司のブルーノ以下、年配の人たちは社会主義時代を知っている。

クリスティアンは全身刺青で一見、薬物でもやってそうに見える。ブルーノは非常に真面目だ。二人が働くのは巨大なスーパーマーケット。

ベテラン従業員のブルーノの元に新人のクリスティアンが配属され、ブルーノが優しく仕事を教える。クリスティアンはとても無口である。余分なことは一切喋らない。

フランツ・ロゴフスキ演じるクリスティアンがとても良い。見た目とは違いとても繊細で素直なのだ。

世代を越えた友情物語に見え隠れする現代ドイツの闇

映画は世代を越えた二人の友情物語として進行していく。若いクリスティアンは同僚のマリオンに恋するが、人妻と判明し失恋する。

余程、恋に免疫がなかったのかクリスティアンは自暴自棄になり酒を浴び、かつても悪友と過ごす。失恋を通して人間の成長を演出していると言える。

ブルーノの助けもあり、辛うじて失業の危機からは逃れ、再び一生懸命に働く。

倉庫での仕事で重要なのはフォークリフトの運転と管理。

映画の主役はフォークリフト

この映画の中でもう一つの主役はフォークリフトと言えるのだ。

新人はフォークリフトの運転を覚えることで一人前と評価されるのだ。もちろんクリスティアンは必死に覚えるが如何せん、センスがないのだ。

ブルーノの指導で何とか免許を取る。そしてマリオンとも再び仲良くなっていく。

ブルーノが語る場面が秀逸だ。ブルーノは東西統一前は長距離トラックの運転手だった。他の同僚もだ。

しかし統一後は運転手の仕事はなくなり倉庫内での作業員となった。かつてのようにトラックに乗りたいと願っているがそれはもう不可能だ。

彼にとっては不自由の中でも自由に走ることが出来たあの時代が懐かしいのだろう。ブルーノは資本主義に対応出来なかったのか、、、。

倉庫の高い場所には“海”がある

映画の最後の最後がロマンティックだ。

クリスティアンとマリオンがリフトに乗って倉庫を走り、荷台を天井近くまで上げて、ブルーノに思いを寄せる。

聞こえて来たのは“波の音”。

ブルーノが長距離トラックの運転手時代に訪れたであろう海なのかもしれない。波の音は記憶を過去へと誘うから不思議だ。とても良い映画です。

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まとめ映画『希望の灯り』を一言で言うと!

“温故知新”
この一言に尽きます。

懐古する気持ちは大事かもしれません。でも過去は戻ってきません。

新しい物事は思考はついていけないこともあります。

でも懐かしむより古き時代の経験や知識を用いて、新しいことを学び活かすことの方が建設的な生き方ではないでしょうか?

*邦題の『希望の灯り』は良いタイトルだと思う。

原題を邦訳すると「廊下で」となる。意味を考えると想像の海が広がる。

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映画のことなら映画.comより引用

スタッフ
監督 トーマス・ステューバー
製作 ヨヘン・ラウベ ファビアン・マウバッフ
原作 クレメンス・マイヤー
脚本 クレメンス・マイヤー トーマス・ステューバー
撮影 ペーター・マティアスコ
美術 ジェニー・ルースラー
衣装 ユリアーネ・マイヤー クリスティアン・ロアーズ
編集 カヤ・イナン

キャスト
フランツ・ロゴフスキクリスティアン
サンドラ・フラーマリオン
ペーター・クルトブルーノ
アンドレアス・レオポルトルディ
ミヒャエル・シュペヒトクラウス
ラモナ・クンツェ=リブノウイリーナ
ヘニング・ペカー
マティアス・ブレンナー
クレメンス・マイヤー

作品データ
原題 In den Gangen
製作年 2018年
製作国 ドイツ
配給 彩プロ
上映時間 125分
映倫区分 G