映画『楽園』ネタバレ・あらすじ・結末。ムラ社会は日本社会の縮図。長老(独裁者)の「決めつけ」こそ悪害なのだ。綾野剛、佐藤浩市もOKだが村上虹郎が最高だ!

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映画『楽園』公式サイト
ベストセラー作家「吉田修一」の最高傑作と評される「犯罪小説集」が遂に映画化!綾野 剛、杉咲 花、佐藤 浩市ら豪華キャスト陣による重厚なドラマ作品!!大ヒット上映中!
映画『楽園』超特報/心えぐられる衝撃作

『楽園』(129分/G/日本/2019

【監督】
瀬々敬久
【製作】
堀内大示 宮崎伸夫 松井智 楮本昌裕 杉田成道
【出演】
綾野剛
杉咲花
村上虹郎
柄本明
佐藤浩市

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映画『楽園』のオススメ度は?

4

4つ半です。

これは名作です。

ムラ社会とは、、、

差別と偏見の恐ろしさとは、、、

人間は決めつけたがります。

レッテルを貼りたがります。

それがどんな悲劇を生むのか、、、

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映画『楽園』の作品概要

『悪人』『怒り』など映像化が続くベストセラー作家・吉田修一の最高傑作と評される『犯罪小説集』を基に映画化。監督は『64-ロクヨン』『友罪』の瀬々敬久。ムラ社会を舞台に人間に持つ愚かさや存在するために他者を犠牲にする卑しさを描いています。

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映画『楽園』のあらすじ・ネタバレ

田園、山、川が綺麗な田舎。とても犯罪など起きるとは想像できない。夏祭り、リサイクル品を売る母子が、チンピラ風の男から暴行を受けます。暴行を受けているのは日本語が拙い母親で、息子は気弱で何も抵抗できません。多くの人は見て見ぬふりです。そんなある日、村のY字路で事件は起きます。少女が失踪したのです。村をあげて捜索しましたが見つかりません。当然、その母子にも疑いの目が向けられます。ですが、証拠がありません。その事件から数年後、再び少女が消えます。それから、、、。

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映画『楽園』の感想・評価・内容・結末

瀬々敬久監督作品はこれまでも何本か観ています。前作の『友罪』が今ひとつであったので、本作は抜群の作品だと思いました。邦画界でこれほど社会派の映画を撮れる監督は瀬々監督と大森立嗣監督、そして白石和彌が挙げられます。この3人は本当に昔のATGのような骨太な映画を撮ります。興行的にヒットはしませんが、世界的に評価されるべき映画人です。

映画は日本のムラ社会の閉鎖性というか陰湿性というか、残酷性を見事に描いている名作と言えます。田舎社会には田舎社会の掟があります。ずっと長く住んでいる人がその社会の中で最も重宝され、全てを支配している構図があります。ムラの中で区切られた地域の班長がボスとして君臨しています。一言で言ってしまえば「裸の王様」です。外のことなど全く知らない田舎モンです。でもその地域ではエライさんなのです。ムラの人たちはエライさんに嫌われないように尽くします。嫌われたら村八分にされるからです。村八分にされると生きていけません。死ぬこともできません。それくらい厳しいのです。

本映画は数年前に行方不明になった少女失踪事件を主軸に展開して行きます。でも少女失踪の真相や犯人を探すものではありません。まず登場するのは中村豪士(綾野剛) です。彼の母親は日本へ出稼ぎに来た外国人で、豪士を産んでそのまま日本に居着いています。豪士は幼い頃からイジメにあっており人とのコミュニケーションがとれません。自閉症的なところがあります。彼らはこの小さな村で暮らしますが、差別と偏見にいつも苦しんでいます。そこに例の少女失踪事件が起きます。当然、村の人間はよそ者である豪士を疑います。でも結局、真相不明のまま数年の月日が流れます。再び少女が行方不明になります。今度は村人総動員で豪士を追い詰めます。パニックになった豪士は食堂に逃げて焼身自殺します。その後、犯人は捕まります。

もう一人は田中善次郎(佐藤浩市)です。(近作の『赤い雪 Red Snow』ではダメっぷりを演じてくれました)中学まではこの村に住んでいましたが、卒業と同時に町の工場で働き、数年ぶりに故郷へ帰ってきました。両親も亡くなり空き家になった家と土地で養蜂を始めます。彼には妻がいましたが亡くなっています。普通、故郷に戻ってくる人間を重宝するイメージがありますが、全くそんなのはありません。村では60歳はまだまだ若者で、草刈りや水路の掃除、その他の雑用をやらされます。彼は村の繁栄を願って養蜂ビジネスを立ち上げます。長老以下のみんなにそのいアイデアを提案し快諾をもらいます。すぐさま町に助成金を申請し助成金を獲得します。するとムラの長老が激怒するのです。「俺の許可なしで助成金を取りやがって」と。それから村八分です。裸の王様の長老のお気に召さなかったばかりに仕事もできず、食べることにも窮します。それから善次郎も精神がおかしくなり長老以下、数人を殺します。

なんとも恐ろしい悲劇でしょうか。まず豪士はイジメにあっていたため心に傷を持っています。でも悪いことはせずに働いています。ただ仕事はバッタ屋みたいなもんです。心優しい青年です。でもあのように村人全員が豪士を殺人犯と決めつけて襲撃してきたら、それは恐ろしくなるのが当たり前です。パニックになった豪士は焼身自殺を図り、真犯人が捕まりますが、村人は何も悪いとは思っていません。それどころか数年前の少女失踪事件の祖父である藤木五郎(柄本明)は「あいつ(豪士)が犯人だと言ってくれ。そうすれば楽になるんだ。区切りをつけたいのだ」と言います。なんとも哀れな瞬間でしょうか。(柄本明さんの近作『ある船頭の話』

この映画の進行役に湯川紡(杉咲花) がいます。(『十二人の死にたい子どもたち』)彼女は数年前の少女失踪事件の際に直前まで五郎の孫娘・愛華といたのです。Y字路で別れましたが、それが愛華との最後です。紡はそれがトラウマとなっています。村で高校まで育ちましたが、東京へ逃げるように旅立ちました。でも夏のお祭りなどには帰省して催しを手伝っています。彼女の心の中には故郷だから仕方ないという気持ちがあるのと同時にこの閉鎖的なムラ社会にさよならしたい気持ちが読み取れます。彼女自身も愛華失踪の真実と犯人を探していましたが、最後の最後でそれに意味がないことに気がつきます。

豪士の死と善次郎の殺人がもたらし根源についてわかったのです。それがムラ社会のあったからです。小さな小さなムラ社会の長老たちへのご機嫌取りや、外部から入ってきた者への厳禁な態度、そして集団でのイジメ、、、。しかも「あいつが悪い」と決めつける文化、風習に嫌気がさしたと思います。五郎の「あいつ(豪士)が犯人だと言ってくれ」が全てを物語っています。紡のこれからの人生で唯一、ムラとの接触になるのは同郷の野上広呂(村上虹郎) だけでしょう。当初は嫌っていましたが、広呂の不器用なりの優しさに気が付いて愛を誓う場面は泣けてきました。頑張って欲しいです。

もしこの映画を観ていて犯人探しをするようであれば、それはやはりムラ社会で生きる人間の特性だと思います。安心したいのです。曖昧なままでは怖いからです。誰かを悪者にしていなければ自分の身が危ないから他者のせいにしたり、イジメるのです。これが日本の縮図なのです。もう一度繰り返します。人間は「誰かを悪者にしていることで自身の安全を守りたい生き物なのです」

タイトルの『楽園』は瀬々敬久監督は希望の意味を込めて名付けたそうです。

*補足ですが、このムラ社会というシステムは悪いことばかりではありません。良いこともあると補足しておきます。日本人はムラ社会で生きてきた理由は国土が狭いことと周囲を海に囲まれていることも挙げられます。こんな狭い土地で人と揉め事を起こして、隣の村へ行ってもすぐに噂は広がります。だから我慢して生きるしかありません。でも大きな大陸で生まれたのなら無限の大地が広がっていますから、嫌なら他所へ行けばいいのです。

*それとムラ社会のイジメとか差別や偏見は厳しいと思われがちですが、他の国のそれと比べたらまだマシではないでしょうか。人種差別を筆頭に宗教差別、文化の差別を押しつてくる国や地域はまだまだたくさんあります。

*村上虹郎さんの演技がとても良い。どこか飄々としているのが良い。最初の登場で「ちょっとやばいやつかも」と思わせた。でも後半になってくると「なんて良いやつなんだ」自然に思えてくる。目が良い。動物のような目だ。素直な目なのだ。近作の『ある船頭の話』の演技が活かされている気がする。将来が楽しみだ。

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まとめ 映画『楽園』一言で言うと!

「知らぬが仏」

これは本当のことを知ってしまうと、怒りや悲しみに囚われてしまいます。であるならばいっその事、知らない方が幸せなのではないかという意味です。確かにそうかもしれません。本映画ではみんな「知ろう、知ろう」とします。でも知ってしまうとさらに不具合がおきます。確かに家族が消えた理由と真相は知りたいです。でも誤った情報は他者を傷つける可能性があります。ですから正確な情報を入手する術を持つことが大切です。

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映画『楽園』の作品情報

映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
瀬々敬久
原作
吉田修一
脚本
瀬々敬久
エグゼクティブプロデューサー
井上伸一郎
製作
堀内大示 宮崎伸夫 松井智 楮本昌裕 杉田成道
企画
水上繁雄
プロデューサー
二宮直彦 橋口一成 千綿英久
アソシエイトプロデューサー
飯田雅裕
ラインブロデューサー
石渡宏樹
撮影
鍋島淳裕
照明
かげつよし
録音
高田伸也
美術
磯見俊裕
装飾
大庭信正
スタイリスト
纐纈春樹
ヘアメイク
リョータ
編集
早野亮
音響効果
岡瀬晶彦
音楽
ユップ・ベビン
音楽協力
安川午朗
主題歌
上白石萌音
主題歌(作詞・作曲・プロデュース)
野田洋次郎
助監督
海野敦
スクリプター
江口由紀子
VFXスーパーバイザー
立石勝
タイトルデザイン
赤松陽構造
制作担当
田辺正樹
中村豪士(綾野剛)
湯川紡(杉咲花)
野上広呂(村上虹郎)
久子(片岡礼子)
中村洋子(黒沢あすか)
藤木朝子(石橋静河)
田中紀子(根岸季衣)
藤木五郎(柄本明)
田中善次郎(佐藤浩市)
2019年製作/129分/G/日本
配給:KADOKAWA