映画『プライベート・ウォー』公式サイトにて作品情報・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『プライベート・ウォー』(110分/イギリス・アメリカ合作/2019)
原題『A Private War』
映画『プライベート・ウォー』のオススメ度は?
星3つ半
日本は世界の極東であることを認識できます。
世界では今日も紛争が続いています。
ジャーナリストとは一体なんなのか?
どうして危険な場所へ行くのか?
何を伝えたいのか。
友だち、恋人と観に行ってください。
映画『プライベート・ウォー』の作品概要
戦地、紛争地を中心に取材するメリー・コルビンさんの半生を映画化しています。ロザムンド・パイクの熱演が素晴らしい。メリーは2012年2月、シリア取材中に死亡した。
映画『プライベート・ウォー』のあらすじ・ネタバレ
スリランカ取材中に左目を負傷し失明。以後、隻眼のジャーナリストとして多くの戦地、紛争地を取材。数々のスクープを獲得するが、実生活ではアルコール依存症、とPTSDで苦しむ。子どもが欲しかったが二度の流産。新しいパートナーができるがメリーは戦地へ向かう。
映画『プライベート・ウォー』の感想・内容
メリー・コルビンという勇気あるジャーナリストがいた事実
恥ずかしながらメリー・コルビンさんというジャーナリストのことはまったく知りませんでした。
戦地を取材するジャーナリストは男性が圧倒的に多いです。それはやはり女性の場合、拉致されて乱暴される可能性が高いから行きたくないと思います。
でもこのメリー・コルビンは戦地・紛争地に好んで取材に出かけて殉職しました。本映画ではなぜ彼女が紛争地へ行き取材をし続けたのかを描いています。
日本人ジャーナリストと外国人ジャーナリスの違い
個人的ではありますが、数年前にあるテレビ局(受信料で成り立っている会社です)のカメラマンと話す機会がありました。
彼は2004年頃、イラクに赴いて現地で取材を行っていました。社内から選ばれた百戦錬磨のカメラマンが数ヶ月おきに交代しながらの取材だったそうです。
現地は本当に破壊され尽くしてひどい状況で、いつ殺されるかわからないような日々だったそうです。
しかし首都のバクダットは割と安全でちゃんとしたホテルに泊まり、取材の際はセキュリティー会社の護衛の元、安全な場所にだけ行ってカメラを回していたそうです。
もちろん、外国人記者でスクープを追いかけるツワモノの多さに驚き、彼らの命を張る姿に日本のジャーナリストを重ねることは出来なったそうです。
映画『プライベート・ウォー』の考察・評価
戦争とは本当に心を壊す出来事である。PTSDは恐ろしい。
それで、彼は無事帰国しますが、それからが大変だったと言っていました。
ずっと緊張状態が続いていて、眠れない日々を過ごしていると。しかもちょっとした大きな音にびっくりしてしまうと。
現地では数分おきに銃声や砲撃の音が聞こえていたそうで、日本へ帰国しても周囲を見回してドキドキしているとのこと。
この映画を観てメリーがPTSDに陥るのは当然のことだと思います。
本当に地獄にいる日々だったのでしょう。でも、普通だったらもう二度と戦地へ行かないと思います。彼女は普通ではないから戦地へ何度も足を運んだのです。
恐怖の果てで得られる快感が存在するそうだ
おまけに彼女はアル中でセックス依存症です(ドラッグもやっていたような描写もありました)常にタバコをくゆらしています。
それも戦争というストレスから逃れるために身につけた手法、もしくは習性にしてしまったのではないでしょうか。
ジャーナリスの多くは戦地から戻るとしばらくは平和な生活に幸せを感じるそうですが、でもすぐに飽きて再び戦地が懐かしくなるそうです。
自身の存在理由は戦地にあるのです。
あの生きるか死ぬかの状況の中でアドレナリンが身体中を駆け巡り快感状態になるのだそうです。
頭上を銃弾、砲弾が飛び交い、いつ殺されるかわからない状況は地獄ですが、一瞬の天国も味わえるらしいのです。
天国と地獄を両方味わって帰還し記事や写真を発表すると多くの人から賞賛されます。
人間は人に認めれらたい承認欲求が強いですからさらなる快感が包まれるのです。
そうなると次回の戦争が楽しみになるのです。おそらくメリーもそうだったのでしょう。これは冒険家と同じですね。未知なる時代のアマゾンの探検を想像してみてください。
真実を書くのがジャーナリストというが、創作もある
映画の中でメリーが記事を書く場面にとても興味を持ちました。もちろん正確な取材をしていますが、良い表現を掴むために格闘しています。
部屋の中を歩き回り、モノを壊したり、さらに酒を浴びるように飲んだりと、、、。
そして言葉を掴むのですが、それはある種“創作”が多く含まれていることを示唆していました。その創作の中には善悪が設けらています。
話は逸れてしまいますが、ジャーナリストの筆次第で事実が捻じ曲げられてしまう恐ろしさもあるのです。
最後のシリア取材で放った大スクープは世界を震撼させた
本映画でホッとしたのはメリーが最後の取材先のシリアでも出来事で、当初、世界中の「人はシリアを破壊しているのはイスラム原理主義者達と思っていましたが、実際は政府であるアサドが一般市民を多数殺していた事実を明らかにしたところです。
この事実が世界にも報じられたことがメリーにとって一番嬉しいことだったのではないでしょうか。
あの報道の前と後ではシリアの情勢はとても大きく変わったと思います。
アメリカ、イギイスを始め多くのメディアは虚像の報道をしてきました。メディアによって引き起こされた戦争は数多くありました。
メリーの報道姿勢は常に弱い女性や子どもの立場を優先するモノでした。それはとても素晴らしいことです。
映画『プライベート・ウォー』の結末
結果、メリーはシリアで砲撃を受けて死にます。
彼女にとって生きる目的は「スクープを取る」ことが全てであり、実際に数々のスクープをとり多くの賞を獲得しています。
言い方は適切かどうかわかりませんが、自身の選んだ仕事先で死ねたのは本望ではないでしょうか。
エベレスト初登頂はエドモンド・ヒラリーとネパールのテンジン・ノルゲイです。
ヒラリーに「なぜ、山を登るのか?」と尋ねたら「そこに山があるからだ」という名言がありますが、メリーにとっても同じで「そこに争いがある」と答えるのではないでしょうか。
勇気をもらえる映画でした。
映画『プライベート・ウォー』まとめ 一言で言うと!
本当の恐怖は全てが終わってから訪れる。
この言葉は映画の中でメリーが言っていました。全てが終わってからとは戦争が終わってからという意味でしょうか。終わったのになぜ恐怖が来るのでしょうか。それは彼女自身のことで、戦地から帰ってきた後に訪れるPTSDのことを指すのでしょうか。
『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
合わせて観たい映画
【紛争やテロをテーマにした映画】
映画『 ホテル・ムンバイ』
インドとパキスタンの終わらない憎悪
映画『存在のない子供たち』
無国籍の子どもと無責任な大人、移民、差別
映画『ヒューマン・フロー 大地漂流』
地球はどこへ向かっているのか考えてしまう
【中東地域に関係した映画】
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』
正義のジャーナリストは必ずいるはずだ
映画『バイス』
なぜイラク戦線が起きたか、誰が起こしたか!
【オススメ反戦映画】
映画『絶唱(1975)』
山口百恵と三浦友和が描く「反戦映画の傑作!」
映画『ホタル』
高倉健さん自身が「反戦」の代表的な俳優
映画『父と暮せば』
宮沢りえさんと原田芳雄さん親子が描く被爆都市・広島
映画『アメリカン・スナイパー』
クリント・イーストウッドはまっすぐ「戦争反対!」と言及!
映画『スパイの妻 劇場版』
黒沢清監督の恐ろしさを改めて知る、、、
映画『炎の舞』
戦争が二人を切り裂いたことは間違いなし!
映画『オフィシャル・シークレット』
一人の女性の勇気が戦争を阻止する!
映画『愛と死の記録』
原子爆弾は本当に恐ろしいものです
映画『あゝひめゆりの塔』
彼女たちには大きな夢と希望があっただろうに、、、
映画『この世界の片隅に』
反戦映画の最高傑作です
映画『硫黄島からの手紙』
二宮くん「演技うますぎ」です
映画『名もなき生涯』
「絶対に戦争へは行かない!」強い人間の物語
映画『この道』
北原白秋は偉大だったことがわかる映画
映画『1917 命をかけた伝令』
映画『彼らは生きていた』
第一次世界大戦の少年たちは悲惨すぎる、、、
映画『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』
鬼軍曹・クリント・イーストウッド参上
映画『父親たちの星条旗』
この戦争での勝者は誰なのだ!
映画『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』
フィンランドとソ連の戦争は泥沼だった
映画『家へ帰ろう』
戦争によって引き裂かれた人たちの再会物語
映画『田園の守り人たち』
愛する男たちは戦争にとられてしまった
映画『プライベート・ウォー』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
マシュー・ハイネマン
製作
ベイジル・イバニク マリッサ・マクマホン マシュー・ジョージ マシュー・ハイネマン シャーリーズ・セロン
製作総指揮
エリック・リー ジョナサン・ファーマン アシュリー・シュライファー ジェフリー・ソブラト ジョー・ゲルシオン ベス・コノ A・J・ディックス デビッド・ディナースタイン ジェイソン・レスニック ウィリアム・サドラー ウェイン・マーク・ゴッドフリー ロバート・ジョーンズ
原作
マリエ・ブレンナー
脚本
アラッシュ・アメル
撮影
ロバート・リチャードソン
美術
ソフィー・ベッカー
衣装
マイケル・オコナー
編集
ニック・フェントン
音楽
H・スコット・サリナス
音楽監修
ローラ・カッツ
主題歌
アニー・レノックス
メリー・コルビン(ロザムンド・パイク)
ポール・コンロイ(ジェイミー・ドーナン)
ショーン・ライアン(トム・ホランダー)
トニー・ショウ(スタンリー・トゥッチ )
2019年製作/110分/G/イギリス・アメリカ合作
原題:A Private War
配給:ポニーキャニオン