映画『ヒューマン・フロー 大地漂流』中国の現代美術家・社会運動家のアイ・ウェイウェイが世界を漂流する

上映中
映画『ヒューマン・フロー 大地漂流』公式サイト
2019年1月12日(土)シアター・イメージ・フォーラム他にてロードショー。23ヵ国40ヵ所もの難民キャンプと国境地帯を巡る、全世界に警笛を鳴らす衝撃のドキュメンタリー。アイ・ウェイウェイ監督作品
「ヒューマン・フロー 大地漂流」オリジナル予告編

『ヒューマン・フロー 大地漂流』(140分/独/2017)
原題 『Human Flow』

スポンサーリンク

難民を生み出したのは先進国の利権確保のために行った戦争に起因していることを忘れてはいけない

画角構成の美しさにこだわるのは良いが、芸術性の有無は必要だろうか

 世界の難民の姿をとても美しく撮影しています。美術家だけあって画角構成がとても良いと思います。綺麗に収めることで現実の悲惨な光景を際だたせようとしているのですが、今ひとつ感情移入ができませんでした。なぜだろうか?映画は淡々た静かに展開して行きます。音楽も薄くひかれています。固定ショットは大賛成です。余計な感情が入ってきませんから。でもなぜでしょうか、私にはスクリーンから無機質な感情しか伝わってきません。

 確かに難民たちの現状は悲惨で苦痛で絶望的なのはわかりますが、あまりが撮影意図が傍観者であろうとしているのです。映画のメッセージを受け取るのは観客の役目ですが、本作からはなぜか温かみが伝わってこないのが残念でした。もう少し難民の人たちのリアルな感情を入れて欲しかったです。

メディアと言う残酷、視聴者という傍観者の上書き

 シリア、イラク、パレスチナ、バングラデシュ、アメリカ、メキシコ国境等を監督の中国人現代美術家が旅しながら現状を伝えていくが、何かが足りないのだ。まず、なぜ難民になったかについての掘り下げ方が足りない。難民になる理由は人種、宗教、国籍などの迫害、差別があるが、どうしてそう言った現象が起きているかについて明確に述べていない。理由の多くは五大国の利権が絡んでいる場合が多い。利権を確保するために戦争を行い、その犠牲者となっているのが彼らなのだ。私たちは遠い日本で暮らしている。まるで他人事のように見えるがよく考えてみると間接的に彼らを難民にしている可能性もある。また彼らを助けたいと思うが、それは単なる良い人アピールで実際に行動に移す人は少ないだろう。

 私もそうである。私の生活で手一杯である。メディアとはとても残酷である。残酷な理由はまず不幸を売り物にして商売を成り立たせている。不幸を報道すると新聞も売れる、テレビの視聴者も増える。人間というのは自分の現状より不幸な人を見て安堵のため息を吐く生き物だそうだ。「ああ、私は彼らより恵まれてる。良かった、あんな風にならなくて」と思うらしい。だからテレビでは視聴率を稼ぐのは不幸な事件や事故、そして悲惨な戦争映像である。メディアは見る人の心を残酷ショーで上書きすることで稼ぎ、更なる強烈な上書きのネタを絶えず探している。

世界の美術家、人権活動家であるならチベット問題も取り上げるべきだ

 この映画はそれほど凄惨な映像はないが、淡々とした演出を施すことで傍観者という冷酷人間を生み出しているかもしれない。実際、私はこの映画を観て、難民のための支援活動をしていない。本当に申し訳ないがそんな余裕もない。

 あと、この映画に感情移入できなかった最大の理由は中国のチベット問題が全く触れられていない点だ。中国人で人権活動家であったなら是が非でもチベット問題に踏み込んで欲しかった。難民も多いだろう。いや難民にさせる前に何らかの処罰を与えているかもしれない。全く情報がないからわからない。

 人間というのは自らの恥を外部に晒したくないものだ。国家も然り。

 難民になった人たちに同情はするが、助けれらない自分もまた愚か者である。難民を作った側の人間が作った映画はやはり傍観者を増やすための宣伝映画のような気がした。

【宗教観について考える映画】

映画『歎異抄をひらく』

親鸞聖人の考えをわかりやすく映画にしました

映画『歎異抄をひらく』親鸞聖人を読み解く時代 石坂浩二 ネタバレ・あらすじ・感想・評価 生きる意味とはなんだ!
人はなぜ生きているのか?という問いに立ち止まる時がある。多くは人生の終盤を迎えて過去を振り返ることで“死”の準備をしている気がする。本作は『歎異抄をひらく』はそう言う疑問に答えている。親鸞聖人の弟子たちが書き残した名著をわかりやすくアニメで説明している。人間は誰もが悪人であると言うショッキングな言葉から始まる。

映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』

ヒンディー教徒とイスラム教徒の心温まる物語

笑いと涙『バジュランギおじさんと、小さな迷子』サルマン・カーンが贈るインドとパキスタンの和平への道 ネタバレ、感想
インドとパキスタンはかつては一緒の国だった。それがイギリス没落と共に双方が独立することになった。これが悲劇を生み出したと言われている。確かに宗教の違いは大きい。ヒンズーとイスラム。しかし両者は数百年も平和に共存していたのだ。それがなぜ争うことになったのかをこの機会で考えてほしい。争いの原点を知れば世界の仕組みもわかってくる。

映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』

宗教上の問題で女性の性がタブーとされている

映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』は愛妻家の鏡。女性の地位向上に貢献。作品情報・ネタバレ・あらすじ・感想・評価
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(137分/印/2018) 原題  『Padman』 宗教的な理由で生理用品が使えない人たちが未だに多くいる。一人の男がタブーを破って挑戦した勇気はインドに光を与えた。パッドマンは英...

映画『ヒア アフター』

臨死体験でたどり着いた独特の世界観

映画『ヒア アフター』の津波はCG。クリント・イーストウッドは来世を描く。来世への入り口で彷徨う人。感想、ネタバレ、感想。
死後の世界はあるのだろうか。いわゆる来世である。人間は死んでからの世界を想像している。つまりいつまでも“生きていたい”のだ。永遠の命が欲しいと言う想いから生まれた想念だが、実際に臨死体験をすると死後の世界があるように思えてくる。この作品は三人の青年、少年、女性が死についての想いを巡らせることで自らの人生を考えるものだ

映画『魂のゆくえ』

キリスト教の牧師が禁断の恋に挑む

イーサン・ホーク主演『魂のゆくえ』はポール・シュレイダー監督最高傑作。『地球のゆくえ』とも言える作品である。ネタバレ・あらすじ・評価
ポール・シュレイダー監督作品。50年の構想を得て書き上げた脚本を自ら監督した映画。教会の牧師があバリーコーガンつ夫婦との出会いによって自らのアイデンティティーについて深く考える。また自分のせいで戦死した息子への悔恨の思いが強く、自身も死へと向かう刹那的な物語だ。人間のせいで地球は破壊へと向かう。それを止めるべく取った行動とは、、、。

映画『ある少年の告白』

父親が牧師。でも自分がゲイであることに悩み、生き方を見つける

映画『ある少年の告白』LGBTへ理解を深めてくれます。ネタバレ、評価、あらすじ。
近年LGBTに関する映画が多く公開されている。今まで差別されてきた歴史もあるが、なぜこれほど多作されているのかを考えてみる。特にアメリカでは性的マイノリティーへの差別意識が高いことに改めて驚いた。その背景にはキリスト教プロテスタントの一派であるバプティスト教会の影響が大きい。本作を観ることでトランプ大統領とアメリカが観えてくる。

映画『幸福なラザロ』

悲しきラザロの物語

イタリア映画『幸福なラザロ』の純粋無垢な瞳に癒される。宗教的な内容もあるが理解できる。ネタバレ、評価。
映画『幸福のラザロ』はイエスの友人であり聖人のラザロを現代に蘇らせ、人間とは何か?人間はなぜ生まれて、どこを目指し、なぜ死んでいくのかを刹那的に描いた作品である。ラザロ演じるアドリアーノ・タルディオーロの純粋無垢な瞳が切ない。人のためならどんな苦行でも行う自己犠牲の精神に心が揺り動かされる。宗教的なメッセージは深く勉強になる。

映画のことなら映画.comより引用

スタッフ
監督
アイ・ウェイウェイ
製作
アイ・ウェイウェイ
チン=チン・ヤップ
ハイノ・デッカート
ダイアン・ワイアーマン
製作総指揮
アンディ・コーエン
ジェフ・スコール
撮影
アイ・ウェイウェイ
クリストファー・ドイル
編集
ニルス・ペー・アンデルセン
音楽
カルステン・フンダル

作品データ
原題
Human Flow
製作年
2017年
製作国
ドイツ
配給
キノフィルムズ

140分