映画『彼らは生きていた』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『彼らは生きていた』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『彼らは生きていた』
(99分/R15+/イギリス/2018)
原題『They Shall Not Grow Old』
【監督】
ピーター・ジャクソン
【製作】
ピーター・ジャクソン クレア・オルセン
【出演】
若者たち
映画『彼らは生きていた』のオススメ度は?
星4つです
是非とも映画館で観て欲しい映画です
初めての世界大戦
いつも犠牲者は弱き人たちです
塹壕戦のおぞましさ
兵器の発明と開発の愚かしさ
映画史にも残るドキュメンタリー
映画『彼らは生きていた』の作品情報・概要
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどのピーター・ジャクソン監督作品。イギリスの帝国戦争博物館が所蔵する2,200時間を超える第一次世界大戦を記録した映像を最新のデジタル技術で修復・着色・3D化して制作している。退役軍人のインタビュー音声も交えて戦争、主に塹壕戦のおぞましさを伝えている。
映画『彼らは生きていた』のあらすじ・ネタバレ
当時のイギリス人の陽気な顔が映し出される。戦争へ行くことを楽しみにしている若者たち。こぞって入隊検査へと向かう。街中の人々も若者に「戦争へ行け」と誘導している姿もある。中には「なぜ戦争へ行かないのだ」という人もいる。若者たちは年をごまかして入隊する。そして戦地では悲惨な塹壕戦がに苦しむ。放置された遺体、遺体に群がるネズミ。昼夜問わず降り注ぐ砲撃。戦争は新しい戦術の時代へ突き進む。ダイナマイト、機関銃、生物兵器、そして戦車、、、、。いつも犠牲になるのは弱き者たちだ。
映画『彼らは生きていた』の感想・評価・内容・結末
『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督作品
とても衝撃的な映画です。この映画『彼らは生きていた』は是非とも映画館で観て欲しいです。
監督は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソンです。世界的な巨匠が戦争映画を世に送り出しました。
しかもドキュメンタリー映画です。ジャクソン監督が作った意義がとても大きいです。
この映画は世界中で賛否両論を浴びています。残念ながら日本ではあまり脚光を浴びていません。
それは第一次世界大戦において、日本はあまり大きく関わっていないからです。でもヨーロッパ諸国にとっての第一次世界大戦のトラウマは今現在も長く続いていることを新たに知り驚いています。
サム・メンデス監督の塹壕戦も悲惨です
古い映像を再編集・再構成したことが素晴らしい
さて、映画『彼らは生きていた』は約100年前の戦場および戦争へ行くであろう若者たちの映像を再編集して作られています。
白黒映像で無音声のフィルムに色を付け、さらに想像しうる“音”も乗せられています。これについて事実を捻じ曲げていると批判的なコメントがありますが、わたしはジャクソン監督を擁護したいです。
まずとても観やすくなっています。昔のフィルムはせいぜい一コマ18コマです。ですから再生するとカクカク、チョコマカした映像になります。それをジャクソンは24コマに再編成して一本の映画に仕立て上げたのです。
作家性も高いですが、やはり職人としてのこだわりが如実に表れています。フィルムの色彩においては当時の軍服や銃器、さらに山、川、空から想像すれば割と簡単だと思います。
しかし音声においては難しいと思います。そこでジャクソンは白黒映像の中の人物の口を読み取り、何を喋っているのかを突き止め、新たにナレーション録りを行なっているのです。
もちろん脚色もされています。しかしその作家気質に感嘆せざる得ません。ただジャクソン監督は勝利したイギリス側からの視点ですから、敗戦国のドイツ側からの意見も聞きたいところです。
泣けます。第二次世界大戦下のドイツを舞台の映画。
最初の20分がとても重要
この映画『彼らは生きていた』は冒頭から約20分は正直言って眠たくなりそうでした。
なぜなら期待したカラー映像ではなく100年前の白黒映像と年寄りらしき人たち(つまり退役軍人)がナレーションで戦争について語っているからです。しかも話す内容が戦争賛歌に聞こえてくるのです。
「俺は生き残った」「また戦争があったら行く」「戦争に行ってこそ英国人」「あの戦争へ行ったから何事にも負けなくなった」等々。
そして国家が戦地へ行くことを賞賛しているポスター、国民も皆が若者は戦争へ行くべきという恐るべきプロパガンダが映し出されていきます。戦争へ行った多くは若者です。
19歳以上でないと軍に入れませんが、そんなの建前だけです。16、17歳でも面接で適当に「19歳」と言えば即入隊です。
中には14歳で入隊した人の証言もあります。いい加減と言えばいい加減ですが、当時はコンプライアンスもありませんし、戦争を美化するような教育もあったことがわかります。
ですから最初の20分が後半になるとボディーブローのように効いてきます。
塹壕戦のおぞましさと疲弊する精神性
しかし戦地は悲惨です。塹壕戦のおぞましさをこれぞとばかりに映し出しています。
奇しくも同時期に映画『1917 命をかけた伝令』が公開されて話題になっていますが、こちらの映画の方が胸を打ちます。いや引きちぎるような感覚に落とされます。
塹壕の中はとても安全とは言えず危険であること。逃げ場がありません。逃げるのは後ろですが、塹壕が狭いので渋滞が起きるでしょう。その間にやられます。
更に非衛生的であること。死体の回収もできませんから、ネズミが増殖します。さらに腐乱し異臭が立ちこめます。
そしてトイレ。これも重大です。大便をしても紙がありませんから手で拭くか、そのままズボンをはくかです。
そして敵兵から降り注ぐ砲撃の雨あられ。時には後方に陣取る味方が放つ砲撃も落下する危険性もはらんでいます。本当に危険しかありません。
スティーブ・マックイーンが突撃して自死します
第一次世界大戦は兵器の発明・開発の実験場であった
わたしなりにこの戦争について勉強しました。まず初めての世界大戦が第一次世界大戦であったこと。そして産業革命がもたらした開拓、開発の大実験場になった戦いだったことです。
筆頭はダイナマイト、次に機関銃、そして毒ガスの発明です。
これが塹壕戦を生み出しました。それまでのヨーロッパの戦い方は馬を用いて銃剣を武器に突撃して戦っていました。
しかしダイナマイトの発明によって遠くからの攻撃が可能となり突撃できなくなります。さらに機関銃は遠くから一気に数十人を殺戮することができます。
そしてもっと卑劣なのは生物兵器である毒ガスです。ガスは空気より重いので塹壕の中まで浸透していきます。
まさに第一次世界大戦は兵器の発明合戦だったのです。
ちなみにその後、戦車の発明で塹壕戦は終結を迎えます。
そして戦闘機の開発へ繋がり第二次世界大戦は空の戦いへと悲惨な翼を広げていきます。
戦車が登場して戦況は一変する映画です
有史以来「人間はまったく学習していない」
人間とは一体なんなのでしょうか?有史以来ずっと変わっていません。
武器・兵器は変われど人を殺すことに変わりはありません。わたしはもちろん戦争を知らない世代ですが、過去の歴史から学ぶことができます。
戦争の悲惨さを伝える書物、写真、そして何と言っても映像。これらから見聞きした情報を吟味すれば「戦争は人類が“発明”した最もおぞましい諸行」だとわかります。
近作の戦争映画は重苦しい理由は
最近の映画作品全体はなぜか重苦しい雰囲気の作品が多いことも気になります。
戦争映画は毎年多く作られていますが、近作の様相は違います。『1917 命をかけた伝令』『ジョジョ・ラビット』、そして本作もです。
世界の優秀なフィルムメーカーたちの完成は敏感です。サム・メンデスもピーター・ジャクソンもタイカ・ワイティティも、ひょっとして迫り来る第三次世界大戦を危惧して戦争映画を作ったような気がします。
いつも戦争で犠牲になるのは弱きものたちです。つまり若者と女性と子どもです。
戦争を起こした権力者たちは何も傷つきません。
動き出したら戦争はもう止められないのか。
映画『彼らは生きていた』のキャストについて
若者たち
まとめ 映画『彼らは生きていた』一言で言うと!
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
オットー・フォン・ビスマルクの言葉でとても有名です。愚か者は自分だけの見識しか持ち合わせておらず、人の意見を聞きません。でも賢い人は人からの意見を取り入れます。そして何より書籍などに書かれている過去の出来事を学ぶことも大事だと言っています。偉人の人生をまとめた200ページの書物があったとします。それは2、3日かけて読めばその偉人の人となりがわかります。偉人の歴史を知ることで、それを今現在に活かすことが可能です。そして今は書籍のみならず映像作品が膨大です。このことわざに当てはめると過去の映像を学ぶことで戦争を避けることができると言っても良いでしょう。
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映画『彼らは生きていた』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ピーター・ジャクソン
製作
ピーター・ジャクソン クレア・オルセン
製作総指揮
ケン・カミンズ テッサ・ロス ジェニー・ウォルドマン
編集
ジャベツ・オルセン
音楽
デビッド・ドナルドソン ジャネット・ロディック
2018年製作/99分/R15+/イギリス
原題:They Shall Not Grow Old
配給:アンプラグド