映画『スケアクロウ』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『スケアクロウ』IMDbサイトにて作品情報・キャスト情報をご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『スケアクロウ』
(112分/アメリカ/1973)
原題『Scarecrow』
【監督】
ジェリー・シャッツバーグ
【脚本】
ギャリー・マイケル・ホワイト
【製作】
ロバート・M・シャーマン
【出演】
ジーン・ハックマン
アル・パチーノ
ドロシー・トリスタン
アン・ウェッジワース
【HPサイト】
映画『スケアクロウ』IMDbサイト
【予告映像】
映画『スケアクロウ』トレーラー
映画『スケアクロウ』NHK BSプレミアム放送 2021年2月22日(月)午後2時47分〜4時40分
2021年2月22日(月)午後2時47分〜4時40分
ジーン・ハックマンとアル・パチーノ共演のアメリカン・ニューシネマの金字塔『スケアクロウ』がNHK BSプレミアムで放送されます。
今はもう絶対に共演はありえない二人です。若き日の二人のエネルギーがスクリーンから強烈に伝わってきます。観ているだけで体が震えてしまいます。
ジーン・ハックマンは引退しましたが、アル・パチーノはまだまだ健在です。ベトナム戦争末期の暗く重たい時代に製作された映画ですが、最後には希望が見えます。
今現在、世界中がコロナ渦にまみれていますが、必ず「希望」に溢れる日が訪れると信じさせてくれる映画だと思います。
映画『スケアクロウ』のオススメ度は?
星4つ半です
47年前にこんな素晴らしい映画があったのです
ジーン・ハックマンとアル・パチーノ共演作品です
最後には心が温まります
悪の心から善の心へ
人間は救われるのだと教えてくれる映画です
映画『スケアクロウ』の作品情報・概要
『スケアクロウ』原題『Scarecrow』1973年公開のアメリカ映画。製作会社はワーナー・ブラザース。ジェリー・シャッツバーグ監督作品。主演はジーン・ハックマンとアル・パチーノ。題名は日本語で「案山子」とか「みすぼらしい人」あるいは「痩せ衰えた人」という意味。第26回カンヌ国際映画祭においてパルム・ドールと国際カトリック映画事務局賞をダブル受賞。アメリカン・ニューシネマの中で異色の部類に入る作品。
映画『スケアクロウ』のあらすじ・ネタバレ
マックス(ジーン・ハックマン)は生来の短気で荒くれ者。気に入らない奴にはすぐさま手をあげてしまい、暴行罪で6年服役し出所したばかり。 ライオン(アル・パチーノ) は根無し草で放浪癖がある心優しいユーモアのある青年。そんな二人が南カルフォルニアでヒッチハイクをしている時に知り合う。反対車線のマックスの陽気なライオンが声をかけるが無視される。しかしライターのオイル切れのマックスにライオンが最後のマッチを貸したことで意気投合し二人で旅を始める。マックスはピッツバーグで洗車屋を開く夢がありライオンを誘う。その前にデンバーのマックスの妹、そしてデトロイトのライオンの妻に会ってから事業を始めると約束するが、、、
映画『スケアクロウ』の感想・内容
ジーン・ハックマンとアル・パチーノの驚異の共演作品
今では決して実現することのない二人が共演しています。ジーン・ハックマンとアル・パチーノです。
この二人は最早レンジェントです。
ハックマンはすでに引退しましたが、パチーノは『アイリッシュマン』で健在ぶりを見せつけてくれました。
本映画『スケアクロウ』が製作されたのは1973年です。ハックマン43歳、パチーノが33歳の時です。
この時のハックマンは上り調子であったことは間違いありません。
71年の『フレンチ・コネクション』でアカデミー主演男優賞を獲得していますし、本作は第26回カンヌ国際映画祭においてパルム・ドールと国際カトリック映画事務局賞をダブル受賞をもたらしています。
さらに74年の『カンバセーション…盗聴…』も第27回カンヌ国際映画祭では最高賞であるグランプリを獲得しています。最早、敵なし状態のジーン・ハックマンでした。
ジーン・ハックマンがニューヨークを走る走る走る!
アル・パチーノはここから快進撃を始めた
一方、アル・パチーノは「さあ、これからだ」という時期だったと思います。
72年の三作目の映画ゴッドファーザー』で圧巻の演技を見せつけて、一気にスターダム街道へ躍り出ています。
心優しいマイケルが次第にマフィアへと変貌する様を美ししくも残虐に演じています。
そして本作『スケアクロウ』では大人しくも心優しい青年に豹変し、性格俳優としての期待を示してくれました。
さらに73年『セルピコ』74年の『ゴッドファーザー PART II』と続き、75年の『狼たちの午後』でその人気と実力は世界を席巻しました。
まだまだアル・パチーノはスクリーンで活躍します
映画『スケアクロウ』の考察・評価
出演俳優の経歴を重なることで見えてくる“映画”がある
映画を観るにあたり、このように出演俳優の経歴を合わせてみることで更に面白く鑑賞できます。
いわば俳優がどのような映画を選択し、演技し、ヒットすることで彼らの物語が見て取れるのです。
映画を観ながら彼らの“映画”を想像することもできるのです。
本映画『スケアクロウ』から47年経ちました。
ハックマンはクリント・イーストウッド監督作品『許されざる者』で二度目のアカデミー賞(助演男優賞)を獲得しています。
アル・パチーノはアカデミー賞に於いてノミネートはされますが、なかなか受賞できませんでしたが、93年『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』でようやくアカデミー主演男優賞を獲得しています。
そしてハックマンは引退し、パチーノはまだまだ現役です。
もう一度、「二人の共演を!」という声もありますが、わたし的にはもう要らないです。
やはり若き日の二人であったから名作になったのです。正直、映画俳優は若いのに限ります。
歳をとると確かに良い味を出すかもしれませんが、将来に期待を寄せることが大事だと思うのです。
年寄りが自身の過去を懐古するような映画は観たくありません。
若い人が挑戦し失敗し、挫折し、再び格闘していく姿にこそ人間としての美しいエネルギーがあると思っています。
このジーン・ハックマンは本当に憎たらしい!
男同士の友情物語から生まれる善なる心
さて、映画についての感想を書きます。これはとても面白い映画です。まず男同士の友情物語が挙げられます。二人は全く性格が異なります。
マックス(ジーン・ハックマン)は短気で気むづかしく人に心を開きません。いつも誰かと喧嘩ばかりします。
ライオン(アル・パチーノ)は大人しく心優しい青年です。
二人は南カリフォルニアの道路でヒッチハイクをしている時に出会いました。
ライオンはマックスに気軽の声をかけますが、マックスは邪険にします。
でもタバコに火を点けるライターのオイルがなくなり、ライオンからマッチの火をもらったことで心を通じあわせます。この演出はとても良かったです。
カルフォルニアで繰り広げられる恋愛映画
アル・パチーノが天使のように寄り添う様が可愛い
怒って喧嘩ばかりするマックスに対してライオンは笑い話を披露してマックスの心を和ませていきます。
タイトルの『スケアクロウ』は“案山子(カカシ)”です。
ライオンはマックスに「カラスは笑っている」というとマックスは馬鹿にしたように「カラスが笑うわけないだろ」と言い返します。
ライオン曰く「カラスはカカシに笑わせてもらっているから、その農地は荒らさずに他へ行くよ」と言って飛び立つそうです。
つまり、もし農地を守りたかったら「笑わせれば良い」ということです。
マックスに対して怒ってばかりじゃあなく、笑う人生を送ろうぜ!というメッセージなのです。
本当に友情を築こうとするライオンの思いやりに胸が熱くなります。
悪の心を持つマックスに善の心を持つライオンがまるで天使のように寄り添うところがとても素晴らしい。
本映画『スケアクロウ』は刹那的なアメリカン・ニューシネマの部類に入りますが、他の作品では観られないような温かいエッセンスを感じます。それは73年時のアメリカ社会を表しているのでしょう。
73年製作の『ダーティハリー2』もアメリカ社会を反映しています
映画『スケアクロウ』の結末
LGBTQの雰囲気も内包している名作
次に若干でありますが、“ホモセクシャル的”な要素もあります。
ライオンがマックスを見つめる眼差しや、マックスにくっつく演技とか、あるいはマックスが女とセックスする場面を邪魔するようなくだりがあります。
更にライオンが刑務所で乱暴される場面では必死に自分の操を守ります。
そして映画の最後の最後でマックスは自分の夢を捨てて、ライオンのために生きる選択をします。
男同士の友情を超えた愛があるからでしょう。
マックスが空港でピッツバーグ行きのチケットを買います。「往復ですか?」と聞かれ「そうだ」と迷わず答えます。
その時のマックスの顔が実にいいのです。映画の始まりでは人を信じることがなかった男、短気で狼藉者だった男が、ハミ噛むように笑っているのです。
映画というは“人間成長物語”だと思うのです。
ですからこの映画では人間の成長していく姿を様々に見せつけられて良い気持ちにさせてくれました。
ハリウッドの過渡期を描いたタランティーノの名作
映画『スケアクロウ』のキャストについて
マックス(ジーン・ハックマン)
生まれながらの短気で人を信用しない荒くれ者。暴行傷害の罪で服役し、6年間の刑期を終えたばかり。ピッツバーグの銀行に預けてあるお金をおろして洗車屋を開こうとしている。とにかく喧嘩っ早い。気にくわないことがあったら、すぐに手を出す。ジーン・ハックマンにうってつけの役です。すごい演技です。とにかく癖の強い俳優です。目が離せません。
ライオン(アル・パチーノ)
妻を残して家出。5年間、船乗りをしていた。妻へは毎月仕送りをしていた。放浪生活をやめて帰郷しい。まだ見ぬ子どもに会いたい。アル・パチーノがこんなに優しい眼差しを見せる映画は知りません。荒くれ者のマックスと対比しての演技ですから、埋没しないように取り組んだと思います。「上手い」実に素晴らしい演技でした。
まとめ 映画『スケアクロウ』一言で言うと!
「友情とは最高の情熱であり、最後に捨てるべき情熱である」
この映画を観ているとボナールの言葉を思い出しました。性格も生き方も全く異なる二人が次第に心を寄せて友情を築いていきます。お互い欠けたピースを埋めるように助け合う姿が良いのです。なんの得にもならないことってあります。でも友人とのちっぽけな約束のひとつも守れないような生き方ってそれを繰り返す人生になります。わたしも友達は少ないですが、約束は守ろうと思って生きたいと思います。
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映画『スケアクロウ』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ジェリー・シャッツバーグ
脚本
ギャリー・マイケル・ホワイト
製作
ロバート・M・シャーマン
撮影
ビルモス・ジグモンド
音楽
フレッド・マイロー
編集
エヴァン・ロットマン
字幕
高瀬鎮夫
Max(ジーン・ハックマン)
Lion(アル・パチーノ)
Coley(ドロシー・トリスタン)
Frenchy(アン・ウェッジワース)
Riley(リチャード・リンチ)
Darlene(アイリーン・ブレナン)
Annie(ペニー・アレン)
Micke(リチャード・ハックマン)
Skipper(アル・シンゴーロニー)
1973年製作/112分/アメリカ
原題:Scarecrow
配給:ワーナー映画