映画『ペイン・アンド・グローリー』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『ペイン・アンド・グローリー』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『ペイン・アンド・グローリー』
(113分/R15+/スペイン/2019)
原題『Dolor y gloria』
【監督】
ペドロ・アルモドバル
【脚本】
ペドロ・アルモドバル
【製作】
アグスティン・アルモドバル
【出演】
アントニオ・バンデラス
アシエル・エチェアンディア
レオナルド・スバラーリャ
ノラ・ナバス
フリエタ・セラーノ
ペネロペ・クルス
【HPサイト】
映画『ペイン・アンド・グローリー』公式サイト
【予告映像】
映画『ペイン・アンド・グローリー』トレーラー
映画『ペイン・アンド・グローリー』のオススメ度は?
星4つ半です
素晴らしい映画です
勇気をもらえます
「人生を諦めるな!」
「痛みの先に未来の道が開ける」
映画『ペイン・アンド・グローリー』の作品情報・概要
『ペイン・アンド・グローリー』原題『Dolor y gloria』英題『 Pain and Glory』2019年のスペインのドラマ映画。ペドロ・アルモドバル監督・脚本作品。アントニオ・バンデラス主演。ペネロペ・クルス、アシエル・エチェアンディア、レオナルド・スバラーリャ、ノラ・ナバス、フリエタ・セラーノ共演。第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、バンデラスが男優賞を受賞した。ペドロ・アルモドバルの自伝的要素が色濃く反映されている。母の死によって心身ともに満身創痍になった映画監督が復活への道を歩むまでを過去を回想しながら描いている。過去が栄光なら現在は痛み。
LGBTQにテーマをおいた映画
映画『ペイン・アンド・グローリー』のあらすじ・ネタバレ
かつてはスペイン映画界で一世風靡した映画監督のサルバドール(アントニオ・バンデラス) は今や死に体同然。きっかけは4年前の母の死。さらに脊椎の痛みが拍車をかけ、とうつ状態へと陥れた。毎日何もやる気なく過ごしている。そんな時、過去作の上映会が開かれることに。そして出演俳優のアルベルト(アシエル・エチェアンディア) と再会する。しかしドラッグを教えられて中毒になる。
映画『ペイン・アンド・グローリー』の感想・内容
ペドロ・アルモドバル監督「人生はいくらでもやり直せる」
ペドロ・アルモドバル監督の映画監督としての深淵に触れた気がしました。
同時にアルモドバル自身がこれからも「映画を作っていく」という強いメッセージを送っているように感じられました。
胸がえぐられました。
映画監督として映画を撮っていないことがどれだけ不安な気持ちにさせるのか、そして再び復活するためにさらなる苦しみと闘わなければいけないのかを考えると本当に涙が出てきました。
わたし自身の心に「人生はいくらでもやり直せる」という強いメッセージを打ち込んでくれました。
ペネロペ・クルス最高演技間違いなし!
ペドロ・アルモドバルの先見性
この映画『ペイン・アンド・グローリー』はペドロ・アルモドバルの自伝的要素が色濃く反映されています。
アルモドバルはいち早く自身が“ゲイ”であることをカミングアウトした映画監督です。
過去の作品にも男性同士の恋愛が描かれています(ただいまや男性とか女性とか性で恋愛を図る時代ではなくなっています)
そう言った意味ではペドロ・アルモドバルは先見性を持った映画監督と言えます。
ペドロ・アルモドバルプロデュース作品は超美男子俳優
アントニオ・バンデラスが最高の演技を魅せてくれます
本映画『ペイン・アンド・グローリー』の主役のサルバドールを演じるのはアントニオ・バンデラスです。このバンデラスの演技が実に素晴らしいのです。
多くの方はバンデラスをハリウッド的なアクション俳優をイメージするかと思いますが、実は筋金入りのスペイン出身の演技派の俳優なのです。
本作では大仰な演技は皆無で終始、静かでおとなしい人物を演じています。サルバドールが活動を止めてしまった映画監督です。
かつては華々しく活躍しましたが、今は脊椎の激しい痛みと憂鬱な日々を送っています。
彼がなぜ憂鬱な日々、つまりうつ病になったのは4年前の母の死がきっかけです。
ゲイであるサルバドールにとって、唯一心を通い合わせた女性の母の死は深い絶望感を与えたのは間違い無いのでしょう。
宗教と性の問題は難しい
映画監督の才能を“天”は放っておくわけがありません
しかし成功した映画監督を天は放っておきません。サルバドールの過去作の上映会が催されます。
当時、キャスティングしたアルベルト(アシエル・エチェアンディア) と招待されます。
実はサルバドールとアルベルトはその映画で喧嘩をして絶縁状態でした。
それが32年ぶりに再会するところから物語は一気に進展していきます。
もちろんサルバドールの復活を目指すのですが「到底、難しいのでは」と思わせます。まずアルベルトに誘われてドラッグに手を出します。
脊椎の痛みから解放されます。それからサルバドールはドラッグを中毒患者のように街で売人からドラッグを購入します。
実際、これは映画の演出なのか、本当にスペインでは容易にドラッグが手に入るのかはわかりませんが、物語はどこへ向かっているのかわからなくなり不安を覚えました。
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母の死によって絶望の淵へ堕とされた、、、
映画監督であるサルバドールの痛みは過去の栄光から発せれているのは間違いありません。
監督としての栄光よりもずっと以前の母との想い出、そして若き日の叶わなかった恋愛です。
映画の冒頭で美しい母親ハシンタ(ペネロペ・クルス)が登場します。貧しい生活の中でも笑顔を絶やさず元気に生きる姿が見受けられます。
バレンシアの洞窟を住居としていた幼き日々を回想します。スクリーンはまさに“グローリーデイ”な色彩なのです。
「母と暮らしたあの日々は幸せだった」という声が聞こえてきます。それが母の死で一気に色あせてしまい、深い失望をもたらしたのです。
女性監督グレタ・ガーウィグの時代到来
過去が“栄光”いまは“痛み”
そして幼少の頃に出会った青年との日々も思い出されます。こちらも必見です。
若く体が引き締まった青年の裸を見てサルバドールは気絶してしまうくらいの衝撃を覚えるのです。
女性より男性に性的な欲求を感じてしまった描写を表しています。こちらの“グローリーデイ”はもっと輝いて魅せています。
そしてこれらの輝かしい日々の果てに出会った恋人との生活には“ペイン(痛み)”が伴っていたことが明らかになっていきます。
つまり過去が“栄光”いまは“痛み”なのです。
好きになったら止まらないのが若き二人の愛です
ほつれた糸を修復するように人生を描く
映画監督として成功する前に淡い恋です。母を失って脊椎の痛みやうつ病などで満身創痍になった体で本を書いています。
それが貧しい時代を支え合って過ごしたフェデリコ(レオナルド・スバラーリャ) との日々の物語です。
若い二人は一緒に暮らし愛し合いますが、フェデリコはドラッグ中毒になることで、二人は別れることになります。そして今の自分は奇しくもドラッグ中毒に成り下がっている有様です。
ペドロ・アルモドバルの作品はこのように過去と現在のほつれた糸を手繰り寄せながら修復していくような演出が秀逸だと思います。
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映画『ペイン・アンド・グローリー』の結末・評価
登場人物の復活劇が繰り返される
さてさて、満身創痍の中で書いた本を過去作において絶縁したアルベルトが「演じたい」と言います。
そしてアルベルトは舞台で見事に復活していきます。ここにも過去と現在の断絶した関係を修復するという希望が見えてきます。
そして、そしてです。遂に愛したフェデリコと再会するのです。
フェデリコはブエノスアイレスに移住して結婚して子どもを持っています。
偶然、訪れたスペインでアルベルトの舞台を観ました。もう直感で「これはサルバドールが書いた本だ」とわかりました。
失った愛は大きかった
深い悲しみを静かに演出する素晴らしいペドロ
二人は再会します。そして懐かしい日々に想いを寄せます。二人の語らいの場面は本当に涙が出てきました。
特にサルバドール演じるバンデラスが素晴らしかったのです。まだフェデリコに想いはあるのがはっきりと現れています。
でももう一度「あの時の二人」のように愛し合うことはしません。わかっているのです。
フェデリコには家庭があるのです。もしここで愛し合うようなことがあれば“焼け棒杭に火が付く”からです。
本当はフェデリコの胸の中で思う存分泣きたかったに違いありません。その深い悲しみを静かに演出したペドロ・アルモドバルに尊敬の念を禁じえません。
愛の形も千差万別です
ゲイである苦しみを前面に出してないのが良い
さてさて、サルバドールは母の死、そして性の目覚めの青年、そしてフェデリコとの再会を通して復活への道を歩み始めます。
ドラッグも全て止めます。人生には痛みがある程度必要なのかもしれません。
特に創作活動を行う芸術家にとっては痛みを表現することで人々の心の琴線に触れ、さらに安らぎを与えれることが出来るからです。
ゲイであるサルバドールは多くの差別・偏見とも戦ってきたと思われます。自身も“性”について深く苦しんだと思います。
でも映画の中ではそれは描かれていません。それが実に良いのです。ここがペドロ・アルモドバルの技です。
もう“性別”で愛し合うことなど全く意識していないと言っているようでした。
そして今現在、失意のどん底にいてももう一度「輝くことができる」と伝えてくれました。人生とは何度でもチャンスがあるのだ、と。本当に素晴らしい映画でした。
オードリー・ヘプバーンは恋愛映画が似合う
*ペネロペ・クルスが出ていますがわずかです。田舎で苦労する母親ですが、あまりにもペネロペが洗礼されており、しかも美しすぎるので、苦労の姿が見えませんでした。しかも“歯並び”と良く、真っ白に輝いていたのが、逆な印象を持ってしまいました。
映画『ペイン・アンド・グローリー』のキャストについて
サルバドール(アントニオ・バンデラス)
かつて一世風靡した映画監督。母の死と脊椎の痛みでうつ状態になっている。やる気なし。アントニオ・バンデラスの演技は絶品でした。最初から最後まで大仰にはならず人物の影と明を表現していました。
アルベルト(アシエル・エチェアンディア)
俳優。かつてはスター、今は落ち目。サルバドールにドラッグを教える。アシエル・エチェアンディアは雰囲気がいいですね。ハンサムです。色気があります。
フェデリコ(レオナルド・スバラーリャ)
サルバドールのかつての恋人。ブエノスアイレスに移住いている。レオナルド・スバラーリャの優しい微笑みはたまりません。
メルセデス(ノラ・ナバス)
女優。サルバドールの復活を期待している。
年老いたハシンタ(フリエタ・セラーノ)
サルバドールの母親。フリエタ・セラーノはピリッとした演技を見せてくれました。
若いころのハシンタ(ペネロペ・クルス)
サルバドールの母親。とにかく美しい。陽気です。でも厳しさがありました。ペネロペ・クルスは実生活でも母親でありますからそのままだと思います。ただ美しすぎるのが気になりました。
まとめ 映画『ペイン・アンド・グローリー』一言で言うと!
「人生はいくらでもやり直せる」
わたしの率直な感想です。誰もが過去に痛みを持っています。それがトラウマとなって立ち止まっている人も多いと思います。わたし自身も立ち止まっているのかもしれません。成功した人はさらに過去への栄光にしがみつきます。役に立たないプライドが邪魔します。でも本映画『ペイン・アンド・グローリー』を観て「人生はいくらでもやり直せる」というメッセージをもらい勇気が出てきました。
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映画『ペイン・アンド・グローリー』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ペドロ・アルモドバル
製作
アグスティン・アルモドバル
製作総指揮
エステル・ガルシア
脚本
ペドロ・アルモドバル
撮影
ホセ・ルイス・アルカイネ
編集
テレサ・フォン
音楽
アルベルト・イグレシアス
サルバドール(アントニオ・バンデラス)
アルベルト(アシエル・エチェアンディア)
フェデリコ(レオナルド・スバラーリャ)
メルセデス(ノラ・ナバス)
年老いたハシンタ(フリエタ・セラーノ)
若いころのハシンタ(ペネロペ・クルス)
2019年製作/113分/R15+/スペイン
原題:Dolor y gloria
配給:キノフィルムズ