映画『タイタニック(1997)』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト・予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『タイタニック(1997)』IMDbサイトにて作品情報・キャスト情報をご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『タイタニック(1997)』
(1997年製作/189分/アメリカ)
原題『Titanic』
【監督】
ジェームズ・キャメロン
【脚本】
ジェームズ・キャメロン【編集】ジェームズ・キャメロン コンラッド・バフ リチャード・A・ハリス【製作総指揮】レイ・サンキーニ【製作】ジェームズ・キャメロン ジョン・ランドー【共同製作】アル・ギディングス グラント・ヒル シャロン・マン【撮影】ラッセル・カーペンター【美術】ピーター・ラモント【音楽】ジェームズ・ホーナー【音楽監修】ランディ・ガーソン【衣装デザイン】デボラ・L・スコット【SFXスーパーバイザー】ロバート・レガート【特殊効果コーディネーター】トーマス・L・フィッシャー【スタント・コーディネーター】サイモン・クレーン【字幕】戸田奈津子【海洋部門コーディネーター】ランス・ジュリアン
【出演】
レオナルド・ディカプリオ ケイト・ウィンスレット
ビリー・ゼイン キャシー・ベイツ フランシス・フィッシャー ビル・パクストン バーナード・ヒル ジョナサン・ハイド ビクター・ガーバー デビッド・ワーナー ダニー・ヌッチ グロリア・スチュワート スージー・エイミス ヨアン・グリフィズ ジャネット・ゴールドスタイン
【HPサイト】
映画『タイタニック(1997)』IMDbサイト
【予告映像】
映画『タイタニック(1997)』トレーラー
- 映画『タイタニック』日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』2021.5.7 よる9時~10時54分放送(前半)と2021.5.14 よる9時~10時54分放送
- 映画『タイタニック(1997)』のオススメ度は?
- 映画『タイタニック(1997)』の作品情報・概要
- 映画『タイタニック(1997)』のあらすじ・ネタバレ(簡単)
- 映画『タイタニック(1997)』のあらすじ・ネタバレ(詳細)
- 映画『タイタニック(1997)』の感想・内容
- 映画『タイタニック(1997)』の考察・評価
- 映画『タイタニック(1997)』の結末
- 映画『タイタニック(1997)』のトリビア
- 映画『タイタニック(1997)』のキャストについて
- まとめ 映画『タイタニック(1997)』一言で言うと!
- 『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
- 合わせて観たい映画
- 【“障害”と戦う恋愛映画オススメ】
- 【格差社会を描いた映画】
- 映画『MOTHER マザー』
- 映画『ミッドナイトスワン』
- 映画『ばるぼら』
- 映画『滑走路』
- 映画『絶唱(1975)』
- 映画『万引き家族』
- 映画『誰も知らない』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『行き止まりの世界に生まれて』
- 映画『人数の町』
- 映画『天気の子』
- 映画『エリカ38』
- 映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
- 映画『パブリック 図書館の奇跡』
- 映画『凪待ち』
- 映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
- 映画『鵞鳥湖の夜』
- 映画『はちどり』
- 映画『レ・ミゼラブル』
- 映画『パラサイト 半地下の家族』
- 映画『ジョーカー』
- 映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
- 映画『希望の灯り』
- 映画『タロウのバカ』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『荒野にて』
- 映画『ドッグマン』
- 映画『マイ・フェア・レディ』
- 映画『ウエスト・サイド物語』
- 映画『愛と青春の旅だち』
- 映画『黒い司法 0%からの奇跡』
- 映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
- 映画『わたしは金正男を殺してない』
- 映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
- 映画『朝が来る』
- 映画『スキャンダル』
- 映画『七人の侍』
- 映画『ミリオンダラー・ベイビー』
- 映画『道』
- 映画『楽園』
- 映画『第三夫人と髪飾り』
- 映画『グラン・トリノ』
- 映画『赤い雪 Red Snow』
- 映画『帰れない二人』
- 映画『タイタニック(1997)』の作品情報
映画『タイタニック』日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』2021.5.7 よる9時~10時54分放送(前半)と2021.5.14 よる9時~10時54分放送
2021.5.7 よる9時~10時54分放送(前半)
2021.5.14 よる9時~10時54分放送(後半)
映画『タイタニック(1997)』のオススメ度は?
星4つ半です
楽しめます
若い恋愛が燃え盛ります
沈没しても想いは消えません
上流階級の「エゴ」が見えます
船上の『ロミオとジュリエット』に涙
映画『タイタニック(1997)』の作品情報・概要
『タイタニック』原題『Titanic』ジェームズ・キャメロン監督・脚本(映画『エイリアン2』)による1997年のアメリカ映画。沈みゆく豪華客船の中で描く『ロミオとジュリエット』的悲恋映画。上流階級と下層階級の人間模様を描いた傑作である。レオナルド・ディカプリオ(映画『仮面の男』や映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』や映画『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』))とケイト・ウィンスレット主演。ビリー・ゼイン(映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』)、フランシス・フィッシャー(映画『許されざる者(1992)』や映画『トゥルー・クライム』)、バーナード・ヒル、キャシー・ベイツ(映画『ミッドナイト・イン・パリ』や映画『リチャード・ジュエル』や映画『ビリーブ 未来への大逆転』)、グロリア・スチュアートらが出演。全世界で興行収入は21.9億ドルに達する。『ジュラシック・パーク』(1993年)を抜く。第70回アカデミー賞(1998年のアカデミー賞)において、作品賞、監督賞、撮影賞、美術賞、主題歌賞、音楽賞、衣裳デザイン賞、視覚効果賞、音響効果賞、音響賞、編集賞の11部門で受賞した。セリーヌ・ディオンが歌う主題歌「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」大ヒットした。
映画『タイタニック(1997)』のあらすじ・ネタバレ(簡単)
世界最大級の豪華客船タイタニック号が沈没したのは1912年。その84年後の1996年の大西洋にて、トレジャー・ハンターのブロック・ロベット(ビル・パクストン)らはタイタニック号と共に沈んだとされる最高峰のダイアモンド・『碧洋のハート』の在り処をしていた。幾度も最新の小型潜水艇を用い深海のタイタニックの調査を行っていたが、一向に手がかりが掴めなかった。
しかし遂に上流階級女性が搭乗していたと思われる1等客室の部屋から、保存状態の良い金庫を発見し、期待で胸を高めるブロック。テレビ中継の中、金庫を開けては見たものの、『碧洋のハート』は見当たらなかった。中には泥まみれになった紙切れ(スケッチブックの切れ端)だけが残されていた。
描かれていたのは上流階級出身であろう若き女性の裸婦画。偶然、テレビを見ていたMrs.カルバート(グロリア・スチュアート)は84年前に遠い記憶に胸を焦がし、ブロックに電話して「あの絵のモデルはわたしだ」と告げる。
映画『タイタニック(1997)』のあらすじ・ネタバレ(詳細)
タイタニック号沈没から84年後の1996年。1500人以上の乗員乗客を乗せて、沈没したタイタイニック号の引き上げ作業が行われていた。場所は北大西洋3773メートルの深海。作業を指揮しているのはトレジャー・ハンターのブロック・ロベット(ビル・パクストン)。彼は行方不明となったダイヤモンドの宝石「碧洋のハート」を見つけ出し、一攫千金を狙っていた。
幾度の調査の末、遂に歓喜の声を上げる。上流階級が宿泊していた部屋から保存状態の良い金庫から見つかったのだ。
テレビの生中継の中、引き上げられた金庫をブロックが開ける。しかし念願の「碧洋のハート」は無かった。代わりに泥まみれになった紙切れ(スケッチブック)があるだけだった。紙切れの泥を洗い流すと、そこには上流階級出身であろう美しく若い女性の裸婦画が描かれていた。そして彼女の胸につけられていたのはブロックが探し求める「碧洋のハート」だった。
偶然、テレビで見た101歳の女性ローズ・カルバート(グロリア・スチュアート)が孫娘のリジー(スージー・エイミス)に、ブロックへ電話させる。失望しているブロックは「どうせ、いたずら電話だろう」と受話器を取る。しかし彼女が言い放った言葉は「あの女性のモデルはわたしです」と言われ招待することに。
大量の荷物と共に現れたローズ・カルバート(グロリア・スチュアート)はタイタニック号の生存者のひとりであり、ローズの口からタイタニックの悲劇の航海が、ローズの船上での恋愛と共に語られていく。
遡ること84年前。1912年。イギリスのサウサンプトン港から処女航海に出ようとするタイタニック号。世界一の豪華客船に乗る上流階級の人たち、あるいはそれを見送ろうと集まった多くの群衆たちで溢れかえっていた。アメリカ・ウィスコンシン州出身の放浪画家ジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ)は帰国するための乗船券をギャンブルで手に入れて、イタリア人の友人・ファブリッチ(ダニー・ヌッチ)と三等船室に乗り込んだ。
一方、17歳のローズ・デウィット・ブケイター(ケイト・ウィンスレット)は上流階級のアメリカ人である。一家は父が亡くなっており、破産寸前であった。母親ルース・デウィット・ブケイター(フランシス・フィッシャー)の策略で大資産家のキャルドン・ホックリー (ビリー・ゼーン)と婚約していた。無論、ローズにとっては望まない結婚である。
若きローズは「望まない結婚」に悲観して、タイタニック号の舳先から海へ飛び降りようをする。船外で寝ていたジャックが彼女を助ける。ローズの命の恩人となったジャックは家族と上流階級の人たちから食事の招待を受ける。住む世界の相違に違和感を覚えるが、自分は「自由な放浪の画家」であることに誇りを持って応える。
画家の才能があるジャックにローズは胸をときめかせる。そして二人は激しい恋に落ちるのだった。ローズの母親ルースは下層階級にジャックを毛嫌いしており、婚約者のキャルも底知れぬ不安と嫉妬を覚えていた。しかしローズとジャックの燃え盛った恋の炎はますます燃え盛るのだった。
出港から二日後の4月14日、ローズはジャックにデッサンの依頼をして、裸婦画を描いてもらう。ローズはその裸婦画を金庫にしまう。そして二人は初めて結ばれる。
二人の行方を捜すキャル。ローズとジャックは船内を逃げる。ローズはジャックに「あなたと駆け落ちする」と告げる。ジャックも誠意を持って応える。何とかローズを取り戻そうと躍起になるキャルが罠を仕掛ける。ジャックのコートに「碧洋のハート」を忍ばせ、盗んだと濡れ衣を着せたのだ。そしてジャックは船の最下層の一室で手錠をかけられ監禁されてしまう。
次席一等航海士・ウィリアム・マードック(ユアン・スチュワート)は深夜の航行中、巨大な氷山を発見する。「取舵一杯、後進全速」の号令を出すがタイタニック号の右舷が衝突し激しく損傷してしまう。船底から海水が浸水していくる。
異常を聞きつけた、船の設計者トーマス・アンドリューズ(ヴィクター・ガーバー)は「2時間程度で船は沈んでしまう」と言う。船長のエドワード・スミス(バーナード・ヒル)は愕然としながらも救難信号を出した。近くを航行するかるカルパチア号が救助が到着するまでには4時間はかかるから絶望的だ。パニックになることを恐れる。救命胴衣を配布するが、やがて乗客たちも「沈みいくタイタニック号」の状況を理解して、不安に包まれていく。そして女性と子供を優先して救命ボートに乗り込んでいく。しかし、救命ボートは乗員・乗客1500人を収容する数がなかったことが判明する。
ローズは濡れ衣とわかった船底のジャック救出へと向かう。一度は救命ボートに乗ったローズだが、ジャックと離れたくない思いで、再びタイタニック号に飛び移る。二人は船内を右往左往し逃げ回る。しかしタイタニック号は船首を闇夜に向けて垂直に立ち上がる。二人は抱き合ったまま海中へと投げ出される。氷のように冷たい海で多くの人が溺死、あるいは凍死していく。辛うじて板切れに乗ったローズは体温を奪われることなく生き残る。ジャックは凍死してしまった。
ローズはジャックとの「どんなことがあっても諦めずに生きろ!」を約束として、救出の笛をちから強く吹く。救出されたカルパチア号で、ローズを捜すキャルから身を潜め、「ローズ・ドーソン」と名乗って生きることを決意する。
1996年。ブロック・ロベット(ビル・パクストン)らのタイタイニック号沈没と自らの恋物語を語ったローズ・カルバート(グロリア・スチュアート)。皆は温かい目で聞いてくれた。深夜、ローズはこっそり部屋を抜け出し、船上へ行く。ポケットから「碧石のハート」を取り出し、海へ投げ入れるのだった。その顔には「ジャック、もうすぐわたしも行くよ」という表情があった。
映画『タイタニック(1997)』の感想・内容
「格差社会を先取りした映画」だと思います。1997年製作です。もう24年前になります。改めて鑑賞しても真新しさがあると思います。CG技術は今より多少は劣りますが、それをカバーするのはやはりジェームズ・キャメロン監督の演出が「すごい」と言わざるを得ません。ジャック・ドーソン演じる若きレオナルド・ディカプリオとローズ・デウィット・ブケイター演じるケイト・ウィンスレットの鬼気迫る演技は間違いなくジェームズ・キャメロン監督の意のままの演技ではないでしょうか。
わたしは本映画『タイタニック(1997)』を映画館で3回観ています。当時、日本に合った最大級のスクリーンで鑑賞しています。正直、あまりにもスケールの大きい話と大迫力に「圧倒」されました。もちろん、映画のタイタニック号はセット、つまり模型だと事前に知っていましたが、映画が始まるとそんなことはどうでも良いくらいに物語に引き込まれていったことを鮮明に記憶しています。
本映画『タイタニック(1997)』の魅力な何といっても若い美男と美女の二人の恋愛が悲恋で終わるところに尽きます。もう最初からわかって観るから、感動するのです。これは映画製作の王道です。そのことをわかっているジェームズ・キャメロンの偉大さに脱帽せざるを得ません。若く美しい二人の恋愛、身分という障害、迫り来る困難、手を取り合って乗り越える二人、約束された死、生きる決意、生涯の秘密、回顧する若き日々、等です。映画がヒットする方程式を教科書通りになぞった名作です。素晴らしいです。
本映画『タイタニック(1997)』は若い人からお年寄りまで、もちろん男女問わず胸を締め付けられる内容になっています。沈みゆく豪華客船の中で繰り広げられる『ロミオとジュリエット』状態の二人を「応援」したくなるわたしたちがいます。「頑張れー」と声をあげたくなるのです。でも、結果はわかっているのです。「死」が訪れます。死は人間にとって、最も避けない運命です。よりによって若い男女が死に至るという運命ほど残酷なことはありません。わたしたちは本映画『タイタニック(1997)』を鑑賞しながら「わたしもこんな素敵な恋をしてみたい」と夢見るのです。でも心のどこかに「死ぬのがわたしでhなくて良かった」と思う自分もいます。
人間って人の不幸や悲劇にとても興味を持ちます。連日、テレビのワイドショーの悲劇的なニュースに釘付けになるのは、同情心と安心感を得られるからです。世界の悲惨な状況下に置かれている人たちに同情しますが、同時に「わたしでなくて良かった」とか「わたしの子どもにはあんな想いはさせたくない」と思うのは常道です。まったくもって正しい感情です。それを踏まえると本映画『タイタニック(1997)』が世界中の人々を感動の渦に巻き込んだ理由が見えてきます。“対岸の火事”に自己陶酔しながら、すぐさま安心な場所に帰って来られるからです。ここまで、計算して映画を作り上げたジェームズ・キャメロンは偉大です。
映画『タイタニック(1997)』の考察・評価
さて、本映画『タイタニック(1997)』は悲恋映画、あるいは恋愛パニック映画の代表的な一品と言われていますが、実は“格差社会”を描いた名画として海外では評価されています。
本映画『タイタニック(1997)』の中には「差別」と「分断」がきっちり描かれています。
いま世界中で起きている現象をタイタニックという豪華客船の中で描いているのです。
ジャックとローズの恋愛を応援するあまり、一見、見過ごしてしまいそうですが、これこそジェームズ・キャメロンが最も訴求したかったことではないでしょうか。
ご存知の通り北米に住む人たちの多くは移民です。ヨーロッパの重たい階級社会から逃れるようにアメリカ大陸にやってきました。
ジェームズ・キャメロンの祖先も然り。ヨーロッパで暮らしていてはいつまで経っても、上流社会への道は約束されません。
ですから、誰も知らない、自由に生きることができる新大陸へ夢と希望を求めたのです。
本映画『タイタニック(1997)』にはローズの母親、婚約者のキャル、その他、ジョン・ジェイコブ・アスター4世などの上流階級のお金持ちと、英語を話さないどこかの国に人や、貧しい身なりの人たちの「区別」がしっかりと描かれています。
かつて上流階級の人たちが、大陸を目指す時って、おそらく貧しい身分の人たちと同じ境遇だったのではないでしょうか。
でも、かつての自身の祖先とは違って、現在は成功と富を手に入れている「わたしたち」にとって、下層階級出身の人たちなど、「虫けら同然」のような目つきで見ています。
最も悪役的に描かれているはローズの婚約者・キャルドン・ホックリー(ビリー・ゼイン) ですが、わたし的にはローズの母親・ルース・デウィット・ブケイター(フランシス・フィッシャー) になります。
彼女がジャックを見る目は冷酷で、本当に差別的です。このフランシス・フィッシャーの演技は本当に素晴らしいです。
彼女はクリント・イーストウッド監督の『許されざる者(1992)』で、娼婦たちのボスとしても良い演技をしています(しかもクリント・イーストウッドとの間に娘を設けています)
本映画『タイタニック(1997)』の中で、「差別」と「分断」が象徴的なのは冒頭の出航場面からもわかります。
上流階級の人たちと下層階級の人たちの服装がまったく異なります。
紳士・淑女をイメージさせる帽子、ステッキに対比させるかのように、汚い身なりのジャック。船室は一番の船底でタコ部屋です。
上流階級の部屋は上階、もしくは最上階で、デッキ付きです。いわゆる「ペントハウス」です。高いところへ行けばいくほど、下の景色は良く見えるものですが、本映画『タイタニック(1997)』ではそれを描いていません。
ここにもジェームズ・キャメロン監督の皮肉が込められていると思います。
さらに、もうひとつ忘れられない場面があります。タイタニックが海に垂直に立ち上がる場面です。
多くの人たちは「上へ上へ」を目指します。ここは必見です。“生物の性”の象徴ではないでしょうか。
全ての生き物は種の繁栄のため産まれて、戦って、死にます。絶えず誰かを犠牲にして生き残って来ました。植物とて同じです。
植物が繁茂する森へ行くと、光を求めて我先にと「上へ上へ」と目指す戦いに出会います。わたしたちには静かに映りますが、植物の世界ほど過酷な生き方はありません。
ですから、下層階級の貧乏人ジャックがタイタニックの先端にたどり着いた瞬間こそ、「勝利宣言」だったと言っても良いのです。
ここが全てを物が立っています。もうジャックは満足したのです。一度、「天下をとった」から死んでも本望と言えば本望なのです。
もし、生きることへの強い生存本能があったのであれば、冷たい海の中でも生きながらえたのです。
実際、あの冷たい海の中で6人が生き残っています。ジャックにはそこまで、生きることへの渇望がなかったと言えます。
映画『タイタニック(1997)』の結末
さて、本映画『タイタニック(1997)』は結果的には上流階級の人たちが多く生き残ります。
ローズも、母親のルースも憎っくきキャルも生き残ります。下層階級のジャックは無残にも冷たい深海へと沈んでいきました。
ただヨーロッパの騎士道精神はちゃんと描かれていたのは救いです。「女、子どもを優先に」です。この場面は平等に描かれていたと思います。
大きな集団が出くわす、危機的な状況下では身分など関係ないこともわかります。お金も役に立ちません。
次席一等航海士・ウィリアム・マードック(ユアン・スチュワート)はキャルからもらった賄賂であるドル紙幣を投げつける場面は強烈です。
また、危機的状況下の人間は「保身」に走ることも描かれています。後に不沈艦モリーで名を成すマーガレット・“モリー”・ブラウン(キャシー・ベイツ) が「助けに行きましょう!」と言った時、全員が下を向きます。
「あそこへ行ったら巻き添えを食らう」です。「自分だけは助かりたい」という一心がうまく描かれていました。
ジェームズ・キャメロン監督は史実を踏まえながら、恋愛と格差社会を絶妙な脚本で描き切った才能と技術、そして先見性に感謝と敬意を送りたいと感じる映画でした。
映画『タイタニック(1997)』のトリビア
ジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ) の死因は凍死?
これは名作だから沸き起こる論争です。最期、ジャックはローズをドアの板切れに乗せて、自分は冷たい海水に浸かって救助を待ちます。4月の大西洋の海はとても冷たいです。ですからジャックは凍死してしまうのです。このジャックの死の場面に異を唱える人が続出します。ドアの板切れは「二人を乗せるに十分な大きさであった」とされているからです。映画ファンの多くは二人とも助かって「ハッピーエンド」を観たかったとの期待からですが、キャメロン監督は「ストーリー上、ジャックは死ぬ必要があった。芸術上の理由であって、物理学の話じゃない」と反論しています。映画製作者としての懸命な決断で、ジャックに死んでもらったということです。
ケイト・ウィンスレットがキャメロンに手紙を出して出演をアピール
ローズ役については、ケイトとウィノナ・ライダーとユマ・サーマン、そしてグウィネス・パルトロウが最終選考に残っていたことがわかっています。まだ女優としては実績がなく、アルバイトをしながらのケイトはキャメロン監督に「あなたローズより」と一筆を添えたバラの花束を贈ったそう。もちろん、それで出演が決まったかどうかはわからないが、ケイトの熱意は伝わったと予想できます。
「世界は俺のものだ!(I am the king of the world!)」と叫ぶシーンは即興演出
ジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ)がタイタニックの先取んで叫ぶ有名なシーンですが、最初の台本にはなかったセリフ。キャメロンが即興で考えて、ディカプリオに伝えたが、ディカプリオは難色を示した。でも監督に言われて絶叫する。後のアカデミー賞授賞式のコメントでキャメロンは同じセリフを言って、世界を沈黙させた。
製作費は当時史上最高額の2億ドル
製作費は尋常ではなかったようです。2億ドルですから、200億円を超えたそうです。キャメロンは破産寸前だったようです。タイタイニックとほぼ同じ大きさ(タイタニックは263メートルに対してセットは236メートル)の船舶セットを作り上げます。船内の調度品も当時と同じまま。
映画『タイタニック(1997)』のキャストについて
ジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ)
アメリカ合衆国ウィスコンシン州出身の19歳。下層階級出身者。画家として成功することを目指して、ヨーロッパを数年に渡って放浪(パリ在住が多いとみられる)帰国しようと意を決してイギリスへ渡る。サウサンプトン港近くのパブにてポーカーでタイタニック号の切符を手に入れる。イタリア人の友人・ファブリッツィオ・デ・ロッシ(ダニー・ヌッチ)駆け込みで乗船する。そしてローズと出会う。ローズ・デウィット・ブケイター(ケイト・ウィンスレット) 正義感が強い青年。一途な性格。好きになったらひけない。ヨーロッパからアメリカへ帰国する理由は「階級社会では勝負できない」からとみられる。
ローズ・デウィット・ブケイター(ケイト・ウィンスレット)
アメリカ合衆国出身で両家の生まれで17歳。イギリスの上流階級が通う学校に通っていた。父が亡くなってから、財政状況が思わしくなく、破産寸前。母・ルース・デウィット・ブケイター(フランシス・フィッシャー) に政略結婚を強要され、成金富豪のキャルドン・ホックリー(ビリー・ゼイン) と婚約。ローズにとってはタイタニックは奴隷船と同じである。失意の航行となり、人生に絶望し、海への投身自殺を試みようとしたところを、ジャックに助けられる。そして恋に落ちる。芸術的な感性が高く、ジャックの画家としてニオ才能を見抜く。高い知性と教養を持っている。元来は激しい性格であるが、家督を守るために我慢していたが、ジャックとの出会いで「自分の人生を生きる」気持ちになる。
キャルドン・ホックリー(ビリー・ゼイン)
ローズの婚約者。アメリカの大富豪の御曹司。知性教養はそれほどない。自分の欲しいものを手にいれるためなら犯罪まがいのことも平気で行う。お金で人の心を買うことができると思っている。最高峰のダイアモンド・『碧洋のハート』を手に入れた。ずる賢く性格で、タイタニック沈没寸前に孤児の女児を「わたしがいないとこの子はダメだ」と嘘をついて救命ボートに乗り生き残る。後の世界恐慌で破産してピストル自殺する。
マーガレット・“モリー”・ブラウン(キャシー・ベイツ)
新興成金。ローズの母・ルースらの老舗の上流階級者からは成金であり、品性がないと見下されている。しかし実力で成功をつかんだ彼女は平然と受け流している。貧乏人であるジャックに彼女は息子の礼服を貸し出したり食事のマナーを耳打ちしたりしてジャックを陰から支える。タイタニック沈没の時に救命ボート上で救助のため引き返すのを主張した。1996年のローズが彼女を「後に不沈のモリー・ブラウンと呼ばれる」と説明している。
ルース・デウィット・ブケイター(フランシス・フィッシャー)
ローズの母。とても厳しい性格。権威主義。上流階級以外は「人間に非ず」というような態度をとっている。ローズを支配している。毒親である。保身的で自らの生活を守るためにローズとキャルを政略結婚に導く。その理由は破産寸前だったから。
E・J・スミス船長(バーナード・ヒル)
タイタニック号の船長。とても有名な船長出る。定年を間近であり、最後の航行がタイタニックの処女航海であった。スミスが船長ということで多くの乗客の乗船した。引退最後の偉業として、イギリスとアメリカの航行の最短記録を目指していた。自身の名誉を優先したばかりに氷山衝突を招いたと非難されることもある。
ブロック・ロベット(ビル・パクストン)
トレジャー・ハンター。タイタニックの研究を行ってる。実際はタイタニックと共に沈んだ金銀財宝を探している。一番の目的は『碧洋のハート』(The Heart of the Ocean)である。
ブルース・イスメイ(ジョナサン・ハイド)
タイタニック号を建造したホワイト・スターライン社の社長。処女航海に同船している。実は破産寸前の会社であった。会社再建のためにメディアを駆使して、猛烈にタイタニック号の素晴らしさをアピール。イギリスrとアメリカ間の最短記録更新を狙うことで、さらにタイタニックの権威を得てビジネス的な成功を求めている。
トーマス・アンドリュース(ビクター・ガーバー)
タイタニック号の設計主任。完璧主義者であるが、救命ボートの数を少なくしてしまうという最大のミスを犯す。タイタニックが氷山に激突した際、「2時間で沈没する」と予測してその通りとなった。最期はタイタニック号と共に水死を選ぶ。その顔には「申し訳ない」という表情があった。
スパイサー・ラブジョイ(デビッド・ワーナー)
まとめ 映画『タイタニック(1997)』一言で言うと!
「沈みゆく船上の『ロミオとジュリエット』の差別物語の最高峰」
ジェームズ・キャメロン監督の知性教養の高さを窺い知れる映画です。豪華客船沈没の最中に繰り広げられる悲恋。そして階級社会の実情。こういう状況の中ではお金も地位も名誉も何も役に立たない。
『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
合わせて観たい映画
【“障害”と戦う恋愛映画オススメ】
映画『ロミオとジュリエット』
映画『伊豆の踊子(1974)』
映画『潮騒 しおさい(1975)』
映画『絶唱(1975)』
映画『マディソン郡の橋』
映画『美女と野獣(1991)』
映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』
映画『ラストレター』
映画『アパートの鍵貸します』
映画『マチネの終わりに』
映画『ボーダー 二つの世界』
映画『あなたの名前を呼べたなら』
映画『秒速5センチメートル』
映画『マーウェン』
映画『ほしのこえ』
映画『COLD WAR あの歌、2つの心』
映画『リヴァプール、最後の恋』
【格差社会を描いた映画】
映画『MOTHER マザー』
毒親が生まれたのは格差社会が原因?
映画『ミッドナイトスワン』
LGBTQに対する差別・格差は早急に解決して欲しい
映画『ばるぼら』
ばるぼらは社会の“排泄物”のように扱われた
映画『滑走路』
イジメから非正規社員問題まで絡めた名作
映画『絶唱(1975)』
封建制度の時代の格差ってどうしようなかった、、、
映画『万引き家族』
是枝監督の描く映画は「痛い」
映画『誰も知らない』
是枝監督が世界の映画作家に与えた影響は多大なり!
映画『存在のない子供たち』
戸籍も存在もない社会って“格差”どころじゃあない
映画『行き止まりの世界に生まれて』
格差と虐待は比例するのか
映画『人数の町』
格差もまったく存在しない町へ行こう!
映画『天気の子』
このふたりも日本社会からはみ出していると言える
映画『エリカ38』
エリカが詐欺師になったのは貧しい生い立ちから
映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
黒人というだけで“チャンス”が与えられない社会がある
映画『パブリック 図書館の奇跡』
「笑うな!」ホームレスにだって人権があります!
映画『凪待ち』
社会の底辺で生きてきた男、、、
映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
無教養が格差を広げている
映画『鵞鳥湖の夜』
発展すればするほど格差が広がります
映画『はちどり』
韓国社会の現実は恐ろしい
映画『レ・ミゼラブル』
この少年たちの“怨恨”は根深い
映画『パラサイト 半地下の家族』
アカデミー作品賞獲得という快挙!
映画『ジョーカー』
格差が招いた犯罪
映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
日本の底辺男の希望映画です
映画『希望の灯り』
かつての東西冷戦の格差って?
映画『タロウのバカ』
タロウが悲しすぎる
映画『存在のない子供たち』
生まれたという存在がないとは、、、
映画『荒野にて』
無学な父親を亡くしてしまい、、、
映画『ドッグマン』
不条理すぎる映画です
映画『マイ・フェア・レディ』
イギリスの階級社会で這い上がるのは難しい、、、
映画『ウエスト・サイド物語』
人種が絡んだ格差社会って辛い
映画『愛と青春の旅だち』
パイロット目指す若者と工場で働く女の子の恋愛
映画『黒い司法 0%からの奇跡』
いつも黒人が“容疑者”にされてしまう理由はなに?
映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
差別・嫌悪される理由は本人にも問題ありでは、、、
映画『わたしは金正男を殺してない』
貧しい国から来た女性を使っての犯罪です
映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
少年たちはアメリカ社会の未来を憂いての犯行だったのか
映画『朝が来る』
格差社会もあるけれど教育が大事だと思う、、、
映画『スキャンダル』
男どもに「一泡吹かせてやる!」ダンサーたちの挑戦!
映画『七人の侍』
黒澤明が描く“格差社会”はダイナミックだ
映画『ミリオンダラー・ベイビー』
ど貧乏育ちだけど「成功したい」気持ちに嘘はない
映画『道』
人生は厳しい“道”ばかりだけど「間違い」はしたくない
映画『楽園』
田舎の“ムラ社会”の中の“格差社会”って陰険だ
映画『第三夫人と髪飾り』
格差というより“習慣”とか“伝統”と言った理由で、、、
映画『グラン・トリノ』
人種差別者が“格差社会”に初めて気がついたら!
映画『赤い雪 Red Snow』
貧しいことは悲劇です
映画『帰れない二人』
中国の発展がもたらす“格差社会”は速度が早い
映画『タイタニック(1997)』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ジェームズ・キャメロン
脚本
ジェームズ・キャメロン
編集
ジェームズ・キャメロン コンラッド・バフ リチャード・A・ハリス
製作総指揮
レイ・サンキーニ
製作
ジェームズ・キャメロン ジョン・ランドー
共同製作
アル・ギディングス グラント・ヒル シャロン・マン
撮影
ラッセル・カーペンター
美術
ピーター・ラモント
音楽
ジェームズ・ホーナー
音楽監修
ランディ・ガーソン
衣装デザイン
デボラ・L・スコット
SFXスーパーバイザー
ロバート・レガート
特殊効果コーディネーター
トーマス・L・フィッシャー
スタント・コーディネーター
サイモン・クレーン
字幕
戸田奈津子
海洋部門コーディネーター
ランス・ジュリアン
ジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ)
ローズ・デウィット・ブケイター(ケイト・ウィンスレット)
キャルドン・ホックリー(ビリー・ゼイン)
マーガレット・“モリー”・ブラウン(キャシー・ベイツ)
ルース・デウィット・ブケイター(フランシス・フィッシャー)
ブロック・ロベット(ビル・パクストン)
E・J・スミス船長(バーナード・ヒル)
ブルース・イスメイ(ジョナサン・ハイド)
トーマス・アンドリュース(ビクター・ガーバー)
スパイサー・ラブジョイ(デビッド・ワーナー)
ファブリッツィオ・デ・ロッシ(ダニー・ヌッチ)
ミセス・カルバート(グロリア・スチュワート)
リジー・カルバート(スージー・エイミス)
ロウ 五等航海士(ヨアン・グリフィズ)
Irish Mommyジャネット・ゴールドスタイン
1997年製作/189分/アメリカ
原題:Titanic
配給:20世紀フォックス映画