『希望の灯り』(125分/独/2018)
原題『In den Gangen』
- 映画『希望の灯り』の作品情報
- 映画『希望の灯り』の作品概要
- 映画『希望の灯り』のあらすじとネタバレ
- 映画『希望の灯り』の感想と評価
- まとめ映画『希望の灯り』を一言で言うと!
- 『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
- 合わせて観たい映画
- 【旧東側諸国を舞台にした映画】
- 【格差社会を描いた映画】
- 映画『MOTHER マザー』
- 映画『ミッドナイトスワン』
- 映画『ばるぼら』
- 映画『滑走路』
- 映画『絶唱(1975)』
- 映画『万引き家族』
- 映画『誰も知らない』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『行き止まりの世界に生まれて』
- 映画『人数の町』
- 映画『天気の子』
- 映画『エリカ38』
- 映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
- 映画『パブリック 図書館の奇跡』
- 映画『凪待ち』
- 映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
- 映画『鵞鳥湖の夜』
- 映画『はちどり』
- 映画『レ・ミゼラブル』
- 映画『パラサイト 半地下の家族』
- 映画『ジョーカー』
- 映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
- 映画『タロウのバカ』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『荒野にて』
- 映画『ドッグマン』
- 映画『マイ・フェア・レディ』
- 映画『ウエスト・サイド物語』
- 映画『愛と青春の旅だち』
- 映画『黒い司法 0%からの奇跡』
- 映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
- 映画『わたしは金正男を殺してない』
- 映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
- 映画『朝が来る』
- 映画『スキャンダル』
- 映画『七人の侍』
- 映画『ミリオンダラー・ベイビー』
- 映画『道』
- 映画『楽園』
- 映画『第三夫人と髪飾り』
- 映画『グラン・トリノ』
- 映画『赤い雪 Red Snow』
- 映画『帰れない二人』
映画『希望の灯り』の作品情報
【日本公開】
2018年
【原題】
『In den Gangen』
【原作】
クレメンス・マイヤー
【監督】
トーマス・ステューバー
【脚本】
クレメンス・マイヤー
【キャスト】
フランツ・ロゴフスキクリスティアン サンドラ・フラーマリオン ペーター・クルトブルーノ アンドレアス・レオポルトルディ ミヒャエル・シュペヒトクラウス ラモナ・クンツェ=リブノウイリーナ ヘニング・ペカー マティアス・ブレンナー クレメンス・マイヤー
映画『希望の灯り』の作品概要
米ソ冷戦の終結の象徴であるベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一によってもたらされた人々のその後と新しい時代に生まれ、生きていく若者の姿をスーパーマーケットを舞台に描いた作品。崩壊は誕生か、それとも崩壊は破滅だったのか、、、。
映画『希望の灯り』のあらすじとネタバレ
見た目に寄らず真面目なクリスティアンと強面だが優しいブルーノ
全身入れ墨の若いクリスティアンは巨大なスーパーマーケットの倉庫で働くことになる。
配属先の上司ブルーノは穏やかで優しい。面倒見がいい。無口で素直なクリスティアンは真面目に働く。
まずはフォークリフトの免許を取らなければいけない。如何せんセンスがない。
人妻に恋するもあっけなく失恋
一生懸命働く気持ちに火をつけたのがマリオンという女性の存在だ。恋は人を動かす。しかし彼女は人妻だった、、、。
自暴自棄になるがブルーノの助けあり仕事を続ける。しかしある日、恩師のブルーノが、、、。
映画『希望の灯り』の感想と評価
時の流れはあっという間だ。それが残酷な事もある
この映画を観て時の経つのが早いと感じた人も多いと思う。
1989年のベルリンの壁崩壊から翌年の東西ドイツ統一からもう30年近く経とうとしている。
ベルリンの壁によじ登ってハンマーで壁を叩き壊す人、あるいはボロボロの車で西ドイツ国境を越える旧東ドイツの人々の意気揚々とした顔がまだ脳裏に焼き付いている。
当時はテレビ中継で民主化の流れを観ていた。若気ながら「世界は変わる」と震えたものだ。
ベルリンの壁崩壊 あの瞬間から世界は大きく変わった
実際、世界は大きく変わった。それは良い意味でもあるが、中には変化に対応できず懐古する人がいることも確かである。
本映画『希望の灯り』はどちらかというとかつての社会主義体制に評価するメッセージもあると思う。
当時は社会主義=不自由というイメージが先行していたが、ある程度平等であったことは間違いない。
人々は管理された社会の中で普通に働けば何の不自由もなく食べていけたし、保証もあった。でも一旦、民主化が始まり自由に職業を選び、尚且つ起業するとなるとそれほど甘くないのだ。
食べるためには懸命に働かなければならない。成功すれば金銭が生活を保証してくれる。しかし金銭を得られない場合は地獄の苦しみを味わうことになるのだ。
東西冷戦終結で希望を失った人もいるのか、、、
旧東ドイツの人たちが資本主義に対応できなかったという話はよく聞く。
この映画では若きクリスティアンは旧東ドイツ時代を知らない世代である。上司のブルーノ以下、年配の人たちは社会主義時代を知っている。
クリスティアンは全身刺青で一見、薬物でもやってそうに見える。ブルーノは非常に真面目だ。二人が働くのは巨大なスーパーマーケット。
ベテラン従業員のブルーノの元に新人のクリスティアンが配属され、ブルーノが優しく仕事を教える。クリスティアンはとても無口である。余分なことは一切喋らない。
フランツ・ロゴフスキ演じるクリスティアンがとても良い。見た目とは違いとても繊細で素直なのだ。
世代を越えた友情物語に見え隠れする現代ドイツの闇
映画は世代を越えた二人の友情物語として進行していく。若いクリスティアンは同僚のマリオンに恋するが、人妻と判明し失恋する。
余程、恋に免疫がなかったのかクリスティアンは自暴自棄になり酒を浴び、かつても悪友と過ごす。失恋を通して人間の成長を演出していると言える。
ブルーノの助けもあり、辛うじて失業の危機からは逃れ、再び一生懸命に働く。
倉庫での仕事で重要なのはフォークリフトの運転と管理。
映画の主役はフォークリフト
この映画の中でもう一つの主役はフォークリフトと言えるのだ。
新人はフォークリフトの運転を覚えることで一人前と評価されるのだ。もちろんクリスティアンは必死に覚えるが如何せん、センスがないのだ。
ブルーノの指導で何とか免許を取る。そしてマリオンとも再び仲良くなっていく。
ブルーノが語る場面が秀逸だ。ブルーノは東西統一前は長距離トラックの運転手だった。他の同僚もだ。
しかし統一後は運転手の仕事はなくなり倉庫内での作業員となった。かつてのようにトラックに乗りたいと願っているがそれはもう不可能だ。
彼にとっては不自由の中でも自由に走ることが出来たあの時代が懐かしいのだろう。ブルーノは資本主義に対応出来なかったのか、、、。
倉庫の高い場所には“海”がある
映画の最後の最後がロマンティックだ。
クリスティアンとマリオンがリフトに乗って倉庫を走り、荷台を天井近くまで上げて、ブルーノに思いを寄せる。
聞こえて来たのは“波の音”。
ブルーノが長距離トラックの運転手時代に訪れたであろう海なのかもしれない。波の音は記憶を過去へと誘うから不思議だ。とても良い映画です。
まとめ映画『希望の灯り』を一言で言うと!
“温故知新”
この一言に尽きます。
懐古する気持ちは大事かもしれません。でも過去は戻ってきません。
新しい物事は思考はついていけないこともあります。
でも懐かしむより古き時代の経験や知識を用いて、新しいことを学び活かすことの方が建設的な生き方ではないでしょうか?
*邦題の『希望の灯り』は良いタイトルだと思う。
原題を邦訳すると「廊下で」となる。意味を考えると想像の海が広がる。
『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
合わせて観たい映画
【旧東側諸国を舞台にした映画】
映画『スターリンの葬送狂騒曲』
映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』
映画『僕たちは希望という名の列車に乗った』
映画『COLD WAR あの歌、2つの心』
【格差社会を描いた映画】
映画『MOTHER マザー』
毒親が生まれたのは格差社会が原因?
映画『ミッドナイトスワン』
LGBTQに対する差別・格差は早急に解決して欲しい
映画『ばるぼら』
ばるぼらは社会の“排泄物”のように扱われた
映画『滑走路』
イジメから非正規社員問題まで絡めた名作
映画『絶唱(1975)』
封建制度の時代の格差ってどうしようなかった、、、
映画『万引き家族』
是枝監督の描く映画は「痛い」
映画『誰も知らない』
是枝監督が世界の映画作家に与えた影響は多大なり!
映画『存在のない子供たち』
戸籍も存在もない社会って“格差”どころじゃあない
映画『行き止まりの世界に生まれて』
格差と虐待は比例するのか
映画『人数の町』
格差もまったく存在しない町へ行こう!
映画『天気の子』
このふたりも日本社会からはみ出していると言える
映画『エリカ38』
エリカが詐欺師になったのは貧しい生い立ちから
映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
黒人というだけで“チャンス”が与えられない社会がある
映画『パブリック 図書館の奇跡』
「笑うな!」ホームレスにだって人権があります!
映画『凪待ち』
社会の底辺で生きてきた男、、、
映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
無教養が格差を広げている
映画『鵞鳥湖の夜』
発展すればするほど格差が広がります
映画『はちどり』
韓国社会の現実は恐ろしい
映画『レ・ミゼラブル』
この少年たちの“怨恨”は根深い
映画『パラサイト 半地下の家族』
アカデミー作品賞獲得という快挙!
映画『ジョーカー』
格差が招いた犯罪
映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
日本の底辺男の希望映画です
映画『タロウのバカ』
タロウが悲しすぎる
映画『存在のない子供たち』
生まれたという存在がないとは、、、
映画『荒野にて』
無学な父親を亡くしてしまい、、、
映画『ドッグマン』
不条理すぎる映画です
映画『マイ・フェア・レディ』
イギリスの階級社会で這い上がるのは難しい、、、
映画『ウエスト・サイド物語』
人種が絡んだ格差社会って辛い
映画『愛と青春の旅だち』
パイロット目指す若者と工場で働く女の子の恋愛
映画『黒い司法 0%からの奇跡』
いつも黒人が“容疑者”にされてしまう理由はなに?
映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
差別・嫌悪される理由は本人にも問題ありでは、、、
映画『わたしは金正男を殺してない』
貧しい国から来た女性を使っての犯罪です
映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
少年たちはアメリカ社会の未来を憂いての犯行だったのか
映画『朝が来る』
格差社会もあるけれど教育が大事だと思う、、、
映画『スキャンダル』
男どもに「一泡吹かせてやる!」ダンサーたちの挑戦!
映画『七人の侍』
黒澤明が描く“格差社会”はダイナミックだ
映画『ミリオンダラー・ベイビー』
ど貧乏育ちだけど「成功したい」気持ちに嘘はない
映画『道』
人生は厳しい“道”ばかりだけど「間違い」はしたくない
映画『楽園』
田舎の“ムラ社会”の中の“格差社会”って陰険だ
映画『第三夫人と髪飾り』
格差というより“習慣”とか“伝統”と言った理由で、、、
映画『グラン・トリノ』
人種差別者が“格差社会”に初めて気がついたら!
映画『赤い雪 Red Snow』
貧しいことは悲劇です
映画『帰れない二人』
中国の発展がもたらす“格差社会”は速度が早い
スタッフ
監督 トーマス・ステューバー
製作 ヨヘン・ラウベ ファビアン・マウバッフ
原作 クレメンス・マイヤー
脚本 クレメンス・マイヤー トーマス・ステューバー
撮影 ペーター・マティアスコ
美術 ジェニー・ルースラー
衣装 ユリアーネ・マイヤー クリスティアン・ロアーズ
編集 カヤ・イナンキャスト
フランツ・ロゴフスキクリスティアン
サンドラ・フラーマリオン
ペーター・クルトブルーノ
アンドレアス・レオポルトルディ
ミヒャエル・シュペヒトクラウス
ラモナ・クンツェ=リブノウイリーナ
ヘニング・ペカー
マティアス・ブレンナー
クレメンス・マイヤー作品データ
原題 In den Gangen
製作年 2018年
製作国 ドイツ
配給 彩プロ
上映時間 125分
映倫区分 G