『荒野にて』
(122分/英/2017)
原題 『Lean on Pete』
- 父親に死なれ、孤独な少年は馬のピートだけが友人だ あまりにも貧しく、モノ悲しい物語に胸が締め付けられる
- 『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
- 合わせて観たい映画
- 【格差社会を描いた映画】
- 映画『MOTHER マザー』
- 映画『ミッドナイトスワン』
- 映画『ばるぼら』
- 映画『滑走路』
- 映画『絶唱(1975)』
- 映画『万引き家族』
- 映画『誰も知らない』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『行き止まりの世界に生まれて』
- 映画『人数の町』
- 映画『天気の子』
- 映画『エリカ38』
- 映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
- 映画『パブリック 図書館の奇跡』
- 映画『凪待ち』
- 映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
- 映画『鵞鳥湖の夜』
- 映画『はちどり』
- 映画『レ・ミゼラブル』
- 映画『パラサイト 半地下の家族』
- 映画『ジョーカー』
- 映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
- 映画『希望の灯り』
- 映画『タロウのバカ』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『荒野にて』
- 映画『ドッグマン』
- 映画『マイ・フェア・レディ』
- 映画『ウエスト・サイド物語』
- 映画『愛と青春の旅だち』
- 映画『黒い司法 0%からの奇跡』
- 映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
- 映画『わたしは金正男を殺してない』
- 映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
- 映画『朝が来る』
- 映画『スキャンダル』
- 映画『七人の侍』
- 映画『ミリオンダラー・ベイビー』
- 映画『道』
- 映画『楽園』
- 映画『第三夫人と髪飾り』
- 映画『グラン・トリノ』
- 映画『赤い雪 Red Snow』
- 映画『帰れない二人』
- 【格差社会を描いた映画】
父親に死なれ、孤独な少年は馬のピートだけが友人だ あまりにも貧しく、モノ悲しい物語に胸が締め付けられる
アメリカの西部で撮影されてこそ、成り立つ映画だ
この映画のポスターを見た時、それほど暗い映画では無いように思えた。アメリカ映画と言うこともあり、少年が荒野を旅をする過程で大人への扉を開くという映画を想像していた。しかし、かなり想像とは違う映画であった。画面が明るいのだ。明度も彩度も高めに撮影ならびに編集されているように感じた。でも映画の内容は暗い物語だった。だからこそアメリカの西部で撮影した意味がわかった。
孤独に気がつかないほど少年は孤独で貧乏だ 貧乏は罪だ
この少年はとにかく孤独だ。終始孤独だ。家族からも社会からも孤立している。友人などいない。心を通い合わせる人がいない。救いようのないよほど遠い世界にいるように感じた。この映画を観ながら思い出した映画がある。ダルデンヌ兄弟の作った『ロゼッタ』(1999年)だ。ロゼッタ同様この映画に出てくる主人公のチャーリーは万引きをしたり無銭飲食をしたりと犯罪に手を染めてしまう。共通してる理由はお金がないこと、つまり貧乏であるということだ。よく清貧とは美である、と言うがそんなことはない。お金がないと言う事は罪だ。何故ならば心が荒んでいくからだ。
この青年は父と2人暮らしだ。父はまるでその日暮らしと言うような肉体労働者で、父には人妻の愛人がいる。幼い頃、母もいたが精神がおかしくなり消えてしまったそうだ。二人は住居を転々しながら暮らしている。少年は学校にも通っていない。教養もあまりない。ただ少年は走ることが好きなようだ。
初めての労働 初めての友人 ピートと言う馬に愛情を注ぐ
ある日、父親が手を出した人妻の旦那に殴られ怪我をし病院に運ばれてしまった。少年は治療費を稼ぐために馬の飼育の手伝いをする。その手伝いが見事に少年にはまった。馬が好きになってしまったのだ。次第に馬に対する愛情が深まっていく。学校なんて行かずに馬の世界で何とか生きていきたいと思うようになった。
父親の死の衝撃 親友のピートまで失いたくないのは当然か
父の見舞いに行くと父が死んでいた突然だった。少年はさらに孤立を深める。少年にとっては唯一の友人は馬のピートだ。しかしピートはもう競走馬としては老齢で屠殺されるか、良くて売られるの道しか残されてない。飼い主にとって馬はただの商売道具で愛情はない。若くて人生経験が少ないチャーリーには理解できない。チャーリーはピートを盗み出す。唯一の肉親である叔母のワイオミングを目指す。車が故障しピートを荒野を歩いて行く。
ピートも死なせてしまった 少年にはもはや何もない
チャーリーは初めて自分の本心を語れる相手を見つけた。ピートだ。チャーリーは自らの生い立ちや生活について馬に話しかける。しかし少年の不注意で馬が手綱を外し走り出し車にひかレテ死んでしまう。さぁ果たしてこれからどうなるのだろうと言う物語だ。
こんな悲しい眼差しをする少年は見たことがない
少年は本当に悲しい眼差しをしている。観ているだけでこちらの心が細くなっていく。この映画を見ていると何てこの少年は不幸なのだ、何て孤独なのだと胸がえぐられる。犯罪などしないでくれと願わずにはいられなかった。万引きをしたり、無銭飲食をする少年にこれ以上やってはいけないと叫びたくなる。
やっと落ち着く場所が見つかったと願いたい
馬をなくした少年は確かに悲しかったが、そこから何とか自立を目指そうと頑張る姿は良い。そして唯一の肉親である叔母さんを見つけ出し一緒に暮らすときのあの会話が何とも言えない。「しばらくの間で良いからここに置いて欲しい」それに対して叔母が答えたのは「もう離さないわ、ずっと一緒よ」ほっとする。でも少年は「邪魔になったら追い出してくれ」と言う。その健気さが胸を打つ。
ランニングする いつも走っていたい 明日に向かって
叔母と一緒に暮らすことになった少年は好きだったランニングに出かける。髪の毛も切った。顔は明るい。そして立ち止まって振り返る。それは過去を思い出しているのだろうか。いや未来を見ているのだ思う。そう思いわなければ救われない。頑張って生き抜いて欲しいと願わずにはいられない一瞬だ。
アメリカ西海岸で撮影された意義と意味がわかる ここはヨーロッパの果てなのだ
この映画をアメリカ西海岸ではなくてヨーロッパで撮っていたら本当に暗い雰囲気の映画になったと思う。敢えてアメリカの西海岸で撮ったことが意義を考えてみる。ヨーロッパの暗い暗い世界、そして重い重い階級世界から抜け出してきたヨーロッパ人は西へ西へとその歩を進めた。その果てにたどり着いたのがこの西の世界だったのだ。だから西の明るい世界で良かったのだ。『荒野にて』と言う邦題はイマイチだが、荒野にポッカリと浮かぶ月がとても印象的だった。あれは少年の心だろう。満ちたり欠けたり、はっきりしたり、ぼやけたり、、、。素晴らしい映画です。
『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
合わせて観たい映画
【格差社会を描いた映画】
映画『MOTHER マザー』
毒親が生まれたのは格差社会が原因?
映画『ミッドナイトスワン』
LGBTQに対する差別・格差は早急に解決して欲しい
映画『ばるぼら』
ばるぼらは社会の“排泄物”のように扱われた
映画『滑走路』
イジメから非正規社員問題まで絡めた名作
映画『絶唱(1975)』
封建制度の時代の格差ってどうしようなかった、、、
映画『万引き家族』
是枝監督の描く映画は「痛い」
映画『誰も知らない』
是枝監督が世界の映画作家に与えた影響は多大なり!
映画『存在のない子供たち』
戸籍も存在もない社会って“格差”どころじゃあない
映画『行き止まりの世界に生まれて』
格差と虐待は比例するのか
映画『人数の町』
格差もまったく存在しない町へ行こう!
映画『天気の子』
このふたりも日本社会からはみ出していると言える
映画『エリカ38』
エリカが詐欺師になったのは貧しい生い立ちから
映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
黒人というだけで“チャンス”が与えられない社会がある
映画『パブリック 図書館の奇跡』
「笑うな!」ホームレスにだって人権があります!
映画『凪待ち』
社会の底辺で生きてきた男、、、
映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
無教養が格差を広げている
映画『鵞鳥湖の夜』
発展すればするほど格差が広がります
映画『はちどり』
韓国社会の現実は恐ろしい
映画『レ・ミゼラブル』
この少年たちの“怨恨”は根深い
映画『パラサイト 半地下の家族』
アカデミー作品賞獲得という快挙!
映画『ジョーカー』
格差が招いた犯罪
映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
日本の底辺男の希望映画です
映画『希望の灯り』
かつての東西冷戦の格差って?
映画『タロウのバカ』
タロウが悲しすぎる
映画『存在のない子供たち』
生まれたという存在がないとは、、、
映画『荒野にて』
無学な父親を亡くしてしまい、、、
映画『ドッグマン』
不条理すぎる映画です
映画『マイ・フェア・レディ』
イギリスの階級社会で這い上がるのは難しい、、、
映画『ウエスト・サイド物語』
人種が絡んだ格差社会って辛い
映画『愛と青春の旅だち』
パイロット目指す若者と工場で働く女の子の恋愛
映画『黒い司法 0%からの奇跡』
いつも黒人が“容疑者”にされてしまう理由はなに?
映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
差別・嫌悪される理由は本人にも問題ありでは、、、
映画『わたしは金正男を殺してない』
貧しい国から来た女性を使っての犯罪です
映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
少年たちはアメリカ社会の未来を憂いての犯行だったのか
映画『朝が来る』
格差社会もあるけれど教育が大事だと思う、、、
映画『スキャンダル』
男どもに「一泡吹かせてやる!」ダンサーたちの挑戦!
映画『七人の侍』
黒澤明が描く“格差社会”はダイナミックだ
映画『ミリオンダラー・ベイビー』
ど貧乏育ちだけど「成功したい」気持ちに嘘はない
映画『道』
人生は厳しい“道”ばかりだけど「間違い」はしたくない
映画『楽園』
田舎の“ムラ社会”の中の“格差社会”って陰険だ
映画『第三夫人と髪飾り』
格差というより“習慣”とか“伝統”と言った理由で、、、
映画『グラン・トリノ』
人種差別者が“格差社会”に初めて気がついたら!
映画『赤い雪 Red Snow』
貧しいことは悲劇です
映画『帰れない二人』
中国の発展がもたらす“格差社会”は速度が早い
スタッフ
監督 アンドリュー・ヘイ
製作 トリスタン・ゴリハー
製作総指揮 ベン・ロバーツ リジー・フランク ダニエル・バトセック サム・ラベンダー デビッド・コッシ ビンセント・ガデル ダーレン・M・デメトレ
原作 ウィリー・ブローティン
脚本 アンドリュー・ヘイ
撮影 マウヌス・ノアンホフ・ヨンク
美術 ライアン・ウォーレン・スミス
衣装 ジュリー・カーナハン
編集 ジョナサン・アルバーツ
音楽 ジェームズ・エドワード・バーカー
キャスト チャーリー・プラマーチャーリー・トンプソン スティーブ・ブシェーミデル・モンゴメリー クロエ・セビニーボニー トラビス・フィメルレイ スティーブ・ザーンシルバー
作品データ
原題 Lean on Pete
製作年 2017年
製作国 イギリス
配給 ギャガ
上映時間 122分
映倫区分 G