映画『小さいおうち』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト・予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
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『小さいおうち』
(2014年製作/136分/G/日本)
【監督】
山田洋次
【プロデューサー】深澤宏 斎藤寛之【原作】中島京子【脚本】山田洋次 平松恵美子【撮影】近森眞史【照明】渡邊孝一【録音】岸田和美【美術】出川三男 須江大輔【編集】石井巌【音楽】久石譲
【出演】
松たか子
黒木華 片岡孝太郎 吉岡秀隆 妻夫木聡 倍賞千恵子 橋爪功 吉行和子 室井滋 中嶋朋子 林家正蔵 ラサール石井 あき竹城 松金よね子 螢雪次朗 市川福太郎 秋山聡 笹野高史 小林稔侍 夏川結衣 木村文乃 米倉斉加年
【HPサイト】
映画『小さいおうち』IMDbサイト
【予告映像】
映画『小さいおうち』トレーラー
映画『小さいおうち』NHK BSプレミアム放送 2022年1月19日(水)午後1時00分〜3時17分
2022年1月19日(水)午後1時00分〜3時17分
とても良い映画です
昭和世代にとっては哀愁たっぷりです
反戦映画として素晴らしいです
映画『小さいおうち』のオススメ度は?
星4つです
「昭和」を思い出します
「反戦映画」です
人妻「松たか子さん」の色気がたまりません
黒木華さん「ベルリン女優」
「山田洋次監督」偉大なり!
映画『小さいおうち』の作品情報・概要
『小さいおうち』第143回直木賞を受賞した中島京子原作小説を映画化した作品。山田洋次監督作品。主演は松たか子(映画『ラストレター』や映画『アナと雪の女王2』)。黒木華(映画『浅田家!』や『億男』)、片岡孝太郎、吉岡秀隆(映画『鉄道員(ぽっぽや)』や映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』や映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』)、妻夫木聡(映画『ザ・マジックアワー』)、倍賞千恵子(映画『天気の子』)、小林稔侍(映画『新幹線大爆破』や映画『ホタル』)、橋爪功(映画『すばらしき世界』や映画『ある船頭の話』や映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』)、笹野高史(映画『スパイの妻 劇場版』)らが出演。黒木華は第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。山形出身の女中・布宮タキがかつて奉公していた「赤い三角屋根の小さいおうち」の平井家のことを回顧しながら、太平洋戦争へ向かう最中で繰り広げられた不倫をモチーフに罪悪感に包まれた人生をつぶさに描いている。
映画『小さいおうち』のあらすじ・ネタバレ
大学生の荒井健史(妻夫木聡) は年老いた大叔母・布宮タキ(晩年期)倍賞千恵子 の面倒みていた。彼女は生涯独身を貫いていた。トンカツをあげるのが上手な人だ。健史はタキに自叙伝を書くように依頼していた。しかしタキは亡くなっており、遺品整理の中、自叙伝を書き上げたノートを見つける。そこには未開封の手紙が挟まれていた。布宮タキは雪深い山形の生まれで、奉公先が東京の平井家だった。赤い屋根の「小さいおうち」である。玩具屋の常務である平井雅樹(片岡孝太郎) と妻・時子と息子・恭一の元で女中として働くことになる。時代は支那事変から太平洋戦争へ向かう最中である。国家、企業、国民が総意の元、戦争待望論を抱くような雰囲気であった。そんな暗澹とした空気の中、時子と雅樹の部下である板倉正治(吉岡秀隆) の不倫劇を目撃してしまう。女中として、そうすれば良いのか葛藤する日々が続く。二人の逢瀬はおわりをみせないどころか、次第に噂が持ち上がる。やがて日本はアメリカへ宣戦布告して太平洋戦争へ突入していく。そして板倉にも召集令状が届く。最後の逢瀬へ出かける時子を止めるタキ。そして手紙を書かせる。しかしその手紙は開封されることはなかった。
映画『小さいおうち』の感想・内容
「やっぱり昭和は良いと思える映画」です。『寅さん』しりーずの山田洋次監督作品です。山田監督は一貫して「昭和の物語」をスクリーンに送り続けている数少ない映画監督です。わたし自身も“昭和出身”なので、とても懐かしい気持ちにさせられます。撮影、演出、編集、音に至るまで「きっちり・かっちり」しています。撮影も固定ショットが多いのも安心感を与えてくれます。若い映像作家ほど、キャメラを振りまわしたり、編集点を無視してのジャンプショットで繋いだりと、冒険しますが、結局のところたどり着くのは固定ショットなのです。未来のフィルムメーカーを目指す人なら是非とも、山田洋次監督作品を観て勉強することをオススメします。
さて、本映画『小さいおうち』は第143回直木賞を受賞した中島京子の小説を原作として映画化されています。一言でいうと「反戦映画」となります。昭和の最大の大戦争である第二次世界大戦への責任の是非について色濃い演出がなされています。もちろん、映画は平井時子(松たか子) と板倉正治(吉岡秀隆)の不倫を軸に描かれていますが、バックグランドには「戦争反対」「責任は誰にあるのか」を強烈に突きつけてくるのです。ここの山田洋次監督の気概を感じます。山田監督は1931年生まれです。いま現在89歳です。本映画『小さいおうち』を撮影した時は83歳です。しかも脚本執筆も行なっています。これは本当にすごいと思うのです。とてつもないエネルギーが必要です。しかも本映画『小さいおうち』のように反戦がテーマの作品を作り続ける意思の強さは尋常ではありません。映画の中の演出で平井時子(松たか子) の夫の平井雅樹(片岡孝太郎) がやたらと日本賛美と戦争待望論を展開しています。それに対して板倉正治(吉岡秀隆)は反戦派の人間として描くことで、時子の心情光景をうまく表していると思います。不倫とはいえど、結果的に時子の心は反戦派の板倉に向かうのですから。こういう演出は素晴らしいですね。細かい演出にドキッとさせらる箇所もふんだんに楽しめます。時子が夫・雅樹に頼まれて、板倉にお見合いを勧める場面は二人の淡い心中に「ほっこり」してしまうのです。お見合いを固辞する板倉の腕を時子がつねるのです。それを背後から女中の布宮タキ(黒木華) が見ているのですが、この三者三様の心模様を一瞬で表しているのです。「上手い」と頷かずには要られません。
この場面ではまだ時子と板倉は男女の関係になっていません。でもお互い惹かれ合っているのは明確です。数日前の台風の夜のキスに紐づいています。板倉の心は人妻でしかも上司の妻という禁断の恋にまっしぐらになっているのに、その時子が突き放すように「女性の斡旋」ともとれる発言だったからです。時子の心中は「夫からの命令」もありますが、板倉と「接近するチャンス」と捉えていたと思います。ちょっと意地悪した方が恋愛って上手く行くことありますよね。一方、二人を見ていた布宮タキ(黒木華) は「見てはいけないものを見た」という罪悪感と正義感を持ち合わせてしまったのです。二人の行く末を予感し、「黙っているという罪悪感」と、旦那様に「報告すべきという正義感」が入り混じって、それが終生、タキを苦しめることになったのです。実に上手いです。その他にも時子が板倉の下宿を訪問して部屋に入る場面を階下から撮るショットは実にエロティックでした。男女の絡みがまったくないのに二人がこれから行う情事が映像として浮かんでくるのです。いやあ、あの美しい松たか子さんが吉岡秀隆さんに激しく愛されるのですから、、、。更に事を終えて小さいおうちに帰ってきた時子の帯の位置が左右反転していたことを発見してしまうタキの複雑な心中とそれ以後、時子は洋装で、出かけるようになったというところにもエロティシズム満載です。和服の着付けは大変ですから。
映画『小さいおうち』の考察・評価
さて、本映画『小さいおうち』は第二次世界大戦という未曾有の惨劇が繰り広げられる最中の『ロミオとジュリエット』的な映画と言えます。つまり「障害のある恋愛」です。恋愛というのは障害があればあるほど、燃え上がるのは古今東西共通でしょう。しかも命の炎が燃え尽きていく、戦争という舞台においては一段と激しくなるのでしょう。これは人間の本能ともいえる現象とも言われています。いわゆる子孫を残す使命に拍車がかかるらしいのです。単純には比較できませんが、遠距離恋愛をしているカップルって会った時はひたすら愛し合います。「離れたくない」と思う気持ちと「もう会えないかもしれない」から子孫を残さなくては、という気持ちも発動されると思います。
本映画『小さいおうち』は時子と板倉の不倫をぶち壊す展開へ進んでいきます。板倉に召集令状が届きます。最後のお別れをしたい時子をタキが止めるのです。タキの道徳的な正義感からですが、この行為によってタキは終生苦しむことになります。先にもあげました「罪悪感」です。出征する板倉と最後の情事を交わしたい時子の想いを打ち砕いてしまうのです。不倫はいけないという正義感といえば聞こえは良いのですが、よく考えてみると「戦時中にモラルなどない」とも言えます。しかもその戦争は国家のバカどもが作り出したものです。もはやそこには正義も悪も倫理など存在していません。タキは後世になって気がつきました。戦時中は「国は正しい」と思っていた側の人間でしたから。
映画『小さいおうち』の結末
本映画『小さいおうち』は観れば観るほど新しい発見がありますので、是非とも繰り返して鑑賞してほしいです。さて、出演俳優たちの演技はみなさん、本当に素晴らしいというしか思い浮かびません。松たか子さんと吉岡秀隆さんは上述したようにべた褒めです。黒木華さんは本映画『小さいおうち』で第64回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)と第38回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞したことで証明されています。そしてわたし的に素晴らしいと思ったのは晩年期の布宮タキを演じた倍賞千恵子さんです。まず姿勢が良いのです。年老いたタキの背中を曲げて部屋内を歩く姿、トンカツをあげる姿、文字を書く姿、中空を見つめる姿までのすべての所作に苦難だった人生を映し出していました。そしてタキが背負った「罪悪感」がはっきりと伝わってきたのです。当時73歳です。もう圧巻です。
本映画『小さいおうち』の結末はちょっと残酷な感じもします。荒井健史(妻夫木聡) が、年老いた平井恭一(米倉斉加年)生存を確認して訪問します。そしてタキが時子から託されて未開封の手紙を読み上げるのです。そこには母・時子と板倉の不倫の証拠があったからです。何とも言えないショックを与えてきます。でもこれはこれで良かったと思います。なぜならタキが背負ってきた罪悪感を未開封のままでは「昭和」が終わらないのです。この手紙を開封したことで「戦争責任の是非」と「二度と戦争は繰り返さない」といメッセージが明確になるからです。本当に素晴らしい映画でした。
映画『小さいおうち』のキャストについて
平井時子(松たか子)
布宮タキ(黒木華)
平井雅樹(片岡孝太郎)
板倉正治(吉岡秀隆)
荒井健史(妻夫木聡)
布宮タキ(晩年期)倍賞千恵子
小中先生(橋爪功)
小中夫人(吉行和子)
貞子(室井滋)
松岡睦子(中嶋朋子)
治療師(林家正蔵)
柳社長(ラサール石井)
カネ(あき竹城)
花輪の叔母(松金よね子)
酒屋のおやじ(螢雪次朗)
平井恭一(少年期)市川福太郎
平井恭一(幼年期)秋山聡
花輪和夫(笹野高史)
荒井軍治(小林稔侍)
荒井康子(夏川結衣)
ユキ(木村文乃)
平井恭一(米倉斉加年)
まとめ 映画『小さいおうち』一言で言うと!
「障害があるほど恋は燃え上がる」
と言っても戦争という、人間だけ作り出した最悪の「イベント」の最中の恋愛ですから、何とも悲しいです。
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映画『マディソン郡の橋』
映画『美女と野獣(1991)』
映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』
映画『ラストレター』
映画『アパートの鍵貸します』
映画『マチネの終わりに』
映画『ボーダー 二つの世界』
映画『あなたの名前を呼べたなら』
映画『秒速5センチメートル』
映画『マーウェン』
映画『ほしのこえ』
映画『COLD WAR あの歌、2つの心』
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映画『絶唱(1975)』
若き二人の恋愛を邪魔したのは戦争です
『アメリカン・スナイパー』
狙撃兵って「ヒーロー」なのだろうか?
映画『小さいおうち』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
山田洋次
プロデューサー
深澤宏 斎藤寛之
原作
中島京子
脚本
山田洋次 平松恵美子
撮影
近森眞史
照明
渡邊孝一
録音
岸田和美
美術
出川三男 須江大輔
編集
石井巌
音楽
久石譲
平井時子(松たか子)
布宮タキ(黒木華)
平井雅樹(片岡孝太郎)
板倉正治(吉岡秀隆)
荒井健史(妻夫木聡)
布宮タキ(晩年期)倍賞千恵子
小中先生(橋爪功)
小中夫人(吉行和子)
貞子(室井滋)
松岡睦子(中嶋朋子)
治療師(林家正蔵)
柳社長(ラサール石井)
カネ(あき竹城)
花輪の叔母(松金よね子)
酒屋のおやじ(螢雪次朗)
平井恭一(少年期)市川福太郎
平井恭一(幼年期)秋山聡
花輪和夫(笹野高史)
荒井軍治(小林稔侍)
荒井康子(夏川結衣)
ユキ(木村文乃)
平井恭一(米倉斉加年)
2014年製作/136分/G/日本
配給:松竹