映画『ノマドランド』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト・予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『ノマドランド』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
- 【第93回アカデミー賞総括】「ノマドランド」が作品賞、監督賞、主演女優賞の主要3部門含む最多3冠!
- 映画『ノマドランド』のオススメ度は?
- 映画『ノマドランド』の作品情報・概要
- 映画『ノマドランド』のあらすじ・ネタバレ
- 映画『ノマドランド』の感想・内容
- 映画『ノマドランド』の考察・評価
- 映画『ノマドランド』の結末
- 映画『ノマドランド』のキャストについて
- まとめ 映画『ノマドランド』一言で言うと!
- 『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
- 合わせて観たい映画
- 【格差社会を描いた映画】
- 映画『MOTHER マザー』
- 映画『ミッドナイトスワン』
- 映画『ばるぼら』
- 映画『滑走路』
- 映画『絶唱(1975)』
- 映画『万引き家族』
- 映画『誰も知らない』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『行き止まりの世界に生まれて』
- 映画『人数の町』
- 映画『天気の子』
- 映画『エリカ38』
- 映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
- 映画『パブリック 図書館の奇跡』
- 映画『凪待ち』
- 映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
- 映画『鵞鳥湖の夜』
- 映画『はちどり』
- 映画『レ・ミゼラブル』
- 映画『パラサイト 半地下の家族』
- 映画『ジョーカー』
- 映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
- 映画『希望の灯り』
- 映画『タロウのバカ』
- 映画『存在のない子供たち』
- 映画『荒野にて』
- 映画『ドッグマン』
- 映画『マイ・フェア・レディ』
- 映画『ウエスト・サイド物語』
- 映画『愛と青春の旅だち』
- 映画『黒い司法 0%からの奇跡』
- 映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
- 映画『わたしは金正男を殺してない』
- 映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
- 映画『朝が来る』
- 映画『スキャンダル』
- 映画『七人の侍』
- 映画『ミリオンダラー・ベイビー』
- 映画『道』
- 映画『楽園』
- 映画『第三夫人と髪飾り』
- 映画『グラン・トリノ』
- 映画『赤い雪 Red Snow』
- 映画『帰れない二人』
- 【格差社会を描いた映画】
- 映画『ノマドランド』の作品情報
【第93回アカデミー賞総括】「ノマドランド」が作品賞、監督賞、主演女優賞の主要3部門含む最多3冠!
アジア系のクロエ・ジャオ監督快挙!
素晴らしいニュースです。アメリカで開催されるアカデミー賞でアジア系の女性として初の監督賞を受賞しました。
映画産業は長らく白人社会と言われている中、女性でしかもアジア系のクロエ・ジャオ監督が受賞したことは後世のフィルムメーカーに与える影響は大きいを思われます。
もちろん昨年、世界を席巻した『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞を受賞したことも本映画『ノマドランド』の後押しをしたことも忘れてはいけません。
『ノマドランド』
(2020年製作/108分/G/アメリカ)
原題『Nomadland』
【監督】
クロエ・ジャオ
【製作】
フランシス・マクドーマンド ピーター・スピアーズ モリー・アッシャー ダン・ジャンビー クロエ・ジャオ【原作】ジェシカ・ブルーダー【脚本】クロエ・ジャオ【撮影】ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ【美術】ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ【編集】クロエ・ジャオ【音楽】ルドビコ・エイナウディ
【出演】
フランシス・マクドーマンド
デビッド・ストラザーン
リンダ・メイ
スワンキー
ボブ・ウェルズ
【HPサイト】
映画『ノマドランド』公式サイト
【予告映像】
映画『ノマドランド』トレーラー
映画『ノマドランド』のオススメ度は?
星4つ半です
フランシス・マクドーマンド最高演技
クロエ・ジャオ監督を応援したくなる
“ノマド”とは「自然崇拝」への道
モノを持たないことが自由である
映画『ノマドランド』の作品情報・概要
『ノマドランド』原題『Nomadland』2021年に公開されたアメリカ合衆国のドラマ映画。クロエ・ジャオ監督作品。主演はフランシス・マクドーマンド(アカデミー賞を二度獲得)本映画はジェシカ・ブルーダーが発表したノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』(2017年)をモチーフとして製作された。他の出演デビッド・ストラザーン、リンダ・メイ、スワンキー、ボブ・ウェルズは実際にノマド生活を送る人たち。クリント・イーストウッドの映画『15時17分、パリ行き』』を彷彿させる演出も注目されている。
映画『ノマドランド』のあらすじ・ネタバレ
2008年、未曾有の経済危機が世界を襲う。俗にいう「リーマンショック」である。ファーンは教員としてネバダ州で暮らしていた。しかしリーマンショックの煽りを受けて連鎖倒産に巻き込まれて町自体が閉鎖されることになる。夫は死別。一切の家事道具を売り払いキャンピングカーを買って、車中生活を始めることになる。「ホームレスではなくハウスレス」とファーンは言う。ファーンは季節労働者のように全米を放浪する。行く先々でおなじよう車中生活をする“ノマド”と出会う。最初こそ、失意に包まれていたモノを持たない自由に気がつくことで何か変わっていく。
映画『ノマドランド』の感想・内容
「芸術的であり、哲学的な映画」です。本映画『ノマドランド』を鑑賞して様々な想いに包まれました。
“ノマド”とは漂流者的な生き方をする人たちで、一見、自由気ままに旅行者のように移動して人生を謳歌しているような印象もあります。
また、“世捨て人”であり、誰とも交流を持たない偏屈な人というイメージも持ちます。
わたし自身かつて「いつかノマドのように世界を放浪したい」と思ったことがあります。
それはパソコンだけを持って、世界各地の都市からブログを投稿して生活費を稼ぐというものでした。
しかしながらその目標は未だに成し得ていません。甘い考えという指摘もありますが、わたしのイメージしたノマドはまさにそれでした。
しかし、本映画『ノマドランド』の登場するノマドたちはまったく異なる人たちでした。
最初こそ、悲壮感を背負っていましたが、最後には勇気を希望の光に包まれたような印象を持って幕を閉じました。
もちろん、観た人によって異なりますが、わたしは主人公ファーン(フランシス・マクドーマンド) は本当の「人生」が始まったと感じたのです。
本映画『ノマドランド』は近年、世界中で公開されている「格差社会の映画」の部類に入ると思います。
多くの格差社会の映画では貧困を中心にDV、虐待、薬物・アルコール依存、人種差別問題等をモチーフに描かれていますが、本映画『ノマドランド』ではそれほど重たいテーマを内包していないところが新鮮だと思います。
確かにファーンは夫の死によって、生活が困窮していきます。家を手放します。
冒頭で「ホームレスではなくハウスレス」と答える場面がアメリカ社会の現状をうまく語っています。
映画『ノマドランド』の考察・評価
アメリカ社会は資本主義国家で生きた人々の行く末をリアルタイムで見ることができます。
あれだけ若い頃、一生懸命に働いても、年金だけでは暮らしていけないのです。
ですから家を手放し「ハウスレス」になり、車中生活者にならざるを得ないのです。
一見、車中生活をする人々を哀れむ感情が出て来ますが、実は「モノに固執」することから解放されると「自由で素晴らしい人生」が待っているということも暗に伝えてきます。
電気・ガス・水道といったライフラインが断たれると生きていけない恐怖感に包まれますが、本映画『ノマドランド』ではまったく心配不要だと教えてくれます。
車中生活者にとって一番の悩みは“排泄物”の処理だということも納得させられます。
しかしながら、ファーンはお金がありません。いくら家を手放しても現金収入が無ければ食料も買えません。
ファーンが働く場所として、とても印象に残ったのはアマゾンです。もう世界中に倉庫を持っていますが、アマゾンを支えているのはファーンのような車中生活者であるということに驚きました。
アマゾンの倉庫は全米のあちこちにありますから、ファーンのようなノマドは移動して、働き、また移動してを繰り返せば生きていけることになります。
ファーンは最初こそ、お金を稼がなければ生きていけないような悲壮感いっぱいでしたが、同じようにノマドとして暮らすデイブ(デビッド・ストラザーン) 、リンダ(リンダ・メイ)、スワンキー(スワンキー) 、ボブ(ボブ・ウェルズ)との出会いを通じて物質主義から精神主義へと心が変容していきます。
この心情風景の描き方秀逸だと感じました。
いわゆるモノを所有することから「何も持たない」自由は、つまり自然と一体化することを指します。
欧米諸国がかつて展開して植民地政策である帝国主義はまさに「所有する」最上級の支配でした。
それによってもたされた紛争・戦争は上げたらきりがありません。
本映画『ノマドランド』では所有することを止めると「平和な人生が訪れる」ことを描かれていると思います。
それは自然へ戻ることは何も持たないことです。
ファーンも他のノマドの人たちも自然崇拝に心が始めます。そこにはキリスト教的なニュアンスは一切はいいていません。
映画の中で映し出される美しい風景に「神さまが宿っている」ように感じるのです。
それを最大限に印象つけるには“太陽”の光です。日中のドピーカンの太陽ではありません。
大抵は傾いた優しい光です。夕方の“マジックアワー”が多いです。
この“マジックアワー”を多用したのはテレンス・マリック監督の影響だとクロエ・ジャオ監督も明言しています。
マリックの映画にはキリスト教への深い信仰心が描かれています。
彼の作品で最も美しいと言われる『天国の日々』の撮影は全編が「天国に近い時間であるマジックアワー」のみで撮られています。クロエ・ジャオ監督は特定の宗教を持っていないようです。
マリックと違う観点で自然崇拝の中に「神の存在」を求めて描いているのです。この感覚が素晴らしいです。
ちなみにわたしたち日本には「神道」があります。もう数千年前から自然の中に神の存在を見出していたことになります。
本映画『ノマドランド』の後半からファーンの表情が明るくなったのは「囚われる必要がなくなった」からではないでしょうか。
映画『ノマドランド』の結末
本映画『ノマドランド』を観ているとアメリカ社会でアメリカ人らしく生きるとはどういうことかを教えてくれた一品であると思いました。
車だけで生きていく様子はかつて移民としてアメリカへやってきた先祖たちが「馬」と共に開拓した様子にリンクするからです。
アメリカ社会で生きる人たちの多くは移民であり、開拓民であるのです。時代は変わって新しいスタイルを手に入れただけです。
わたしたちはファーンのように家を失った人を可哀想に思いがちですが、失った穴は埋めるのではなく、自然に「満たされていく」ということも知ることができました。
日本も高齢化社会が到来しています。年金は満額貰えるのかわかりません。
近い将来、本映画『ノマドランド』のように日本各地で車中生活を営む人たちが現れるでしょう。
でもそれは決して不幸ではないことを願っています。多くのひとは「選択」するのでしょう。
自然へ戻るという最も生き物として当たり前の生き方を祝福しなければいけないと思わせてくれた映画でした。
映画『ノマドランド』のキャストについて
ファーン(フランシス・マクドーマンド)
デイブ(デビッド・ストラザーン)
リンダ(リンダ・メイ)
スワンキー(スワンキー)
ボブ(ボブ・ウェルズ)
まとめ 映画『ノマドランド』一言で言うと!
「何も持たないことこそ真の自由だ」
人間は所有するから、争いへと発展するのだと改めて気がつきました。「モノ」を持たないと守るべきことがないので、余計な争いは起きないのです。しかしながら、一度でも便利で快適な生活を手に入れると、「モノ」を持たない生活イコール貧乏で不自由を決めつけがちです。わたしも“ノマド”に憧れますが、一歩踏み込めないのが現状です。
『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
合わせて観たい映画
【格差社会を描いた映画】
映画『MOTHER マザー』
毒親が生まれたのは格差社会が原因?

映画『ミッドナイトスワン』
LGBTQに対する差別・格差は早急に解決して欲しい

映画『ばるぼら』
ばるぼらは社会の“排泄物”のように扱われた

映画『滑走路』
イジメから非正規社員問題まで絡めた名作

映画『絶唱(1975)』
封建制度の時代の格差ってどうしようなかった、、、

映画『万引き家族』
是枝監督の描く映画は「痛い」

映画『誰も知らない』
是枝監督が世界の映画作家に与えた影響は多大なり!

映画『存在のない子供たち』
戸籍も存在もない社会って“格差”どころじゃあない

映画『行き止まりの世界に生まれて』
格差と虐待は比例するのか

映画『人数の町』
格差もまったく存在しない町へ行こう!

映画『天気の子』
このふたりも日本社会からはみ出していると言える

映画『エリカ38』
エリカが詐欺師になったのは貧しい生い立ちから

映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
黒人というだけで“チャンス”が与えられない社会がある

映画『パブリック 図書館の奇跡』
「笑うな!」ホームレスにだって人権があります!

映画『凪待ち』
社会の底辺で生きてきた男、、、

映画『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
無教養が格差を広げている

映画『鵞鳥湖の夜』
発展すればするほど格差が広がります

映画『はちどり』
韓国社会の現実は恐ろしい

映画『レ・ミゼラブル』
この少年たちの“怨恨”は根深い

映画『パラサイト 半地下の家族』
アカデミー作品賞獲得という快挙!

映画『ジョーカー』
格差が招いた犯罪

映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
日本の底辺男の希望映画です

映画『希望の灯り』
かつての東西冷戦の格差って?

映画『タロウのバカ』
タロウが悲しすぎる

映画『存在のない子供たち』
生まれたという存在がないとは、、、

映画『荒野にて』
無学な父親を亡くしてしまい、、、

映画『ドッグマン』
不条理すぎる映画です

映画『マイ・フェア・レディ』
イギリスの階級社会で這い上がるのは難しい、、、

映画『ウエスト・サイド物語』
人種が絡んだ格差社会って辛い

映画『愛と青春の旅だち』
パイロット目指す若者と工場で働く女の子の恋愛

映画『黒い司法 0%からの奇跡』
いつも黒人が“容疑者”にされてしまう理由はなに?

映画『ファナティック ハリウッドの狂愛者』
差別・嫌悪される理由は本人にも問題ありでは、、、

映画『わたしは金正男を殺してない』
貧しい国から来た女性を使っての犯罪です

映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』
少年たちはアメリカ社会の未来を憂いての犯行だったのか

映画『朝が来る』
格差社会もあるけれど教育が大事だと思う、、、

映画『スキャンダル』
男どもに「一泡吹かせてやる!」ダンサーたちの挑戦!

映画『七人の侍』
黒澤明が描く“格差社会”はダイナミックだ

映画『ミリオンダラー・ベイビー』
ど貧乏育ちだけど「成功したい」気持ちに嘘はない

映画『道』
人生は厳しい“道”ばかりだけど「間違い」はしたくない

映画『楽園』
田舎の“ムラ社会”の中の“格差社会”って陰険だ

映画『第三夫人と髪飾り』
格差というより“習慣”とか“伝統”と言った理由で、、、

映画『グラン・トリノ』
人種差別者が“格差社会”に初めて気がついたら!

映画『赤い雪 Red Snow』
貧しいことは悲劇です

映画『帰れない二人』
中国の発展がもたらす“格差社会”は速度が早い

映画『ノマドランド』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
クロエ・ジャオ
製作
フランシス・マクドーマンド ピーター・スピアーズ モリー・アッシャー ダン・ジャンビー クロエ・ジャオ
原作
ジェシカ・ブルーダー
脚本
クロエ・ジャオ
撮影
ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ
美術
ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ
編集
クロエ・ジャオ
音楽
ルドビコ・エイナウディ
ファーン(フランシス・マクドーマンド)
デイブ(デビッド・ストラザーン)
リンダ(リンダ・メイ)
スワンキー(スワンキー)
ボブ(ボブ・ウェルズ)
2020年製作/108分/G/アメリカ
原題:Nomadland
配給:ディズニー