映画『リトル・ジョー』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『リトル・ジョー』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『リトル・ジョー』
(105分/オーストリア・イギリス・ドイツ合作/2019)
原題『Little Joe』
【監督】
ジェシカ・ハウスナー
【脚本】
ジェシカ・ハウスナー ジェラルディン・バヤール
【製作】
ローズ・ガーネット メアリー・バーク ビンセント・ガデル
【出演】
エミリー・ビーチャム
ベン・ウィショー
ケリー・フォックス
キット・コナー
デビッド・ウィルモット
フェニックス・ブロサール
セバスティアン・フールク
リンゼイ・ダンカン
【HPサイト】
映画『リトル・ジョー』公式サイト
【予告映像】
映画『リトル・ジョー』トレーラー
映画『リトル・ジョー』第72回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞。
本映画の主演女優のエミリー・ビーチャムは第72回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞しています。
独特の演技でした。目立たず騒がず、そして上品で、意味深な表情を持って観客を魅惑したと言って良いでしょう。
映画『リトル・ジョー』のオススメ度は?
星3つ半です
母親の物語です
仕事と子育ての狭間で悩んでいます
幸せになれる“花”があったなら?
欲しいですか?
母親はどっちの“ジョー”を選ぶのか?
映画『リトル・ジョー』の作品情報・概要
『リトル・ジョー』原題『Little Joe』2019年制作のオーストリア・イギリス・ドイツの映画。ジャンル的にスリラー、サスペンスに分類されているが、女性の生き方映画である。主演のエミリー・ビーチャムが第72回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞。監督はジェシカ・ハウスナー。かつてミヒャエル・ハネケのアシスタントしていた。『Lovely Rita ラブリー・リタ』(96)『ルルドの泉で』(11)『AMOUR FOU(原題)』(14)等で着実に力をつけている期待の女性監督。
映画『リトル・ジョー』のあらすじ・ネタバレ
バイオ企業で働くアリス(エミリー・ビーチャム)は新種の植物開発に情熱を燃やしている。アリスには一人息子ジョー(キット・コナー)がいる。ワーカホリックである彼女は子育てを“蔑ろ”にしているという罪悪感に悩まされている。仕事と子育ての両立が難しい。彼女が開発した花は、一定条件を守ると持ち主に幸せをもたらすというもの。アリスはその花を一輪持ち帰り息子ジョーにプレゼントする。それから次々と奇妙なことが起き始める、、、、。
映画『リトル・ジョー』の感想・内容
女性監督ジェシカ・ハウスナーの世界観に魅了される
独特の雰囲気を持った映画だと思います。監督はジェシカ・ハウスナーです。女性監督です。
彼女の経歴を見て「やっぱり」と思いました。巨匠ミヒャエル・ハネケのアシスタントをしたことがあるからです。
ハネケ独特の感覚は唯一なもので、ジェシカも影響されたのだろうと感じました。
本映画『リトル・ジョー』は若干、荒削りなところがありますが、その世界観は唯一な創造物であることは間違いありません。
母親・長澤まさみが演じる“毒親”は本当に存在する
テーマは「母親の物語」
本映画『リトル・ジョー』は植物が人間に如何なる影響を与えるかについてをベースに勧められます。
“幸せになる香り”です。花の香りを嗅いだことで人類みんなが平和に、そして幸せになれればそんな良いことはありません。
一見、恐怖映画を彷彿させながら進んでいきます。
遺伝子操作、精神疾患、母子家庭などの要素を含んでいますが、本映画『リトル・ジョー』のテーマは「母親の物語」なのです。
子どもを“蔑ろ”にしてしまっている罪悪感とは?
母親のアリス(エミリー・ビーチャム) はバイオ企業で新種の植物開発に取り組み研究者です。一人息子と暮らしています。
仕事が忙しく子育てに十分な時間が取れません。食事もほとんどデリバリーです。自分では作りません。
彼女は仕事が好きです。ワーカーホリックです。
監督は「働くことで子どもを“蔑ろ”にしてしまっているのではないかと罪悪感に苦しめられている母親の物語」と言っています。アリスは仕事に情熱を持っています。
新開発した花に“リトル・ジョー”と名付けたのは自身の息子ジョー(キット・コナー)に因んでのことです。
最後の最後には我が娘の“夢”を応援するのが母親の役目です
二つの“ジョー”と格闘する母親の物語
仕事と家事と子育ての板挟みに悩んでいます。ジョーもリトル・ジョーもアリスの子どもなのです。
両方を選んで幸せになれるのであれば良いのですが、二兎を追うことは難しいのです。アリスは終始、この二つの“ジョー”と格闘していく物語です。
それをベースとして遺伝子組み替え、新ウイルス問題、精神疾患などの諸問題を織り交ぜて展開しています。これは素晴らしいアイデアだと思います。
荒削りだけど最後まで観ることに飽きない
ただデリケートは科学的実験を行う工場の描写については少々、荒削りなところが散在しています。
セキュリティー突破が簡単なことや、犬なども平気で室内にいること、さらに温度・空調調整がずさんなこと、などです。
このあたりはもっと厳重にして欲しかったです。厳重であるからこそ“突破”する意味が成り立つからです。
ペネロペ・クルスの母親役は美しすぎる
映画『リトル・ジョー』の結末・評価
花の香りを嗅いで“幸せな気分”になれるのであれば欲しくなる
さて、肝心の映画の内容ですがシングルマザーのアリス(エミリー・ビーチャム) がバイオ技術で新しい植物を開発するのです。
その花の香りを嗅ぐと“人は幸せ”になれるという画期的な製品です。
もしこの商品開発が成功すれば世界に販売できます。しかも誰もが幸せな気持ちになれるため「世界平和が実現する」のです。
アリスは離婚した夫との間にジョー(キット・コナー)がいます。正直言ってアリスはダメな母親です。
息子ジョーに自らが開発した花の“リトル・ジョー”をプレゼントします。そこからが奇妙な現象が起き始めます。
ジョーが変わっていくのです。というかアリスがそう思い込んでいるのです。さらに会社の同僚たちも変わっていき気がするのです。
彼らに共通しているのはみんながリトル・ジョーの花粉を吸い込んでしまったことです。でもアリスは身近にいるのに何も変化は起きません。
ここです、ここなんです。物語の進行がちょっとお伽話っぽくなってくるのです。観ていて少々混乱してしまいます。
でも「この映画はアリスの一人称で描いている」と気がつくのです。
無常の愛で息子を見守る母親は強いです
母親アリスの葛藤とは何から来ているのか?
同僚のクリス(ベン・ウィショー) やベラ(ケリー・フォックス) の奇妙な行動もアリスの想像の賜物であり、その中心にある基本的な思考は上記した“母親の葛藤”から生まれた産物なのです。
産みの苦しみも表しています。最終的にアリスは一人息子を別れた夫に任せて“リトル・ジョー”を選びます。
その表情には一点の曇りはありませんでした。「これで研究に没頭できる」という安堵たる顔で終わるのです。
薬物依存になった息子を救いたい一心の母親
最終的にアリスが選択したのは“リトル・ジョー”には共感しますか
ミステリーとかホラーの要素をうまく絡めた現代女性の生き方を描いた秀作だと感じます。
仕事への情熱と子育て、、、。この二つを両立させたいけれど、やはり新しい植物開発への情熱は捨てられない。
それゆえに子育てを蔑ろにしている自分への罪悪感。その罪悪感が恐怖を助長させていくのです。
子育てをとれば「情熱を捨てなければいけない」逆に仕事をとれば「子どもとの絆を失うことになる」の狭間で悩みます。
そして、そして、最終的にアリスが選んだのは“リトル・ジョー”だったのです。この選択は数年前の女性ではあり得なかったことかもしれません。
でも現代社会において女性の社会的立場は“性差別”によって損失を招いている背景を鑑みればとてもハッピーな終わり方だと言えます。
先の映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』でグレタ・ガーウィグ監督が「新しい女性の時代到来」を宣言しています。
日本人作曲家、故・伊藤貞司さんの音楽が秀逸
さて、この映画をより一層ミステリアスに導いたのは音楽だと言えます。冒頭から日本人には聞き覚えのある“音”が流れてきます。
「尺八の音」です。
最初は「あれ、西洋の楽器かな」と思っていましたが、息の吐き方や擦れるような音で尺八とわかりました。
この尺八を用いた楽曲は日本人作曲家、故・伊藤貞司さんとのこと。恥ずかしながらわたしは知りませんでした。
ネットには賛否両論がありますが、わたしとしてはすごく良い音楽だと感じました。後半につれ、和太鼓や琴も入ってきます。
わたしたち日本人にとってもミステリアスな雰囲気になりますから、西洋人はもっと恐怖心を抱いたと思います。
スカーレット・ヨハンソンが演じる母親は必見!
余談ですが、わたしの知り合いでオーガニックで野菜を育ている人がいます。
彼女は「野菜に話しかけるとよく育ち、美味しくなるよ」と言っていたことを思い出しました。
なぜなら本映画『リトル・ジョー』を育てる条件が1、必ず暖かい場所で育てること。2、毎日欠かさず水をあげること。3、何よりも愛すること、があります。
特に3番目は“話しかけること”が重要なのです。都市伝説ならぬ農業伝説かと笑われそうですが、わたし自身は植物にも愛情は伝わるような気がします。
畑へ行っていやいや「面倒臭いなあ」と言って作業するより、「今日も頑張るから、キュウリも頑張って!」という気持ちで作業した方が絶対に生産性が上がると思うからです。
つまり「思考が実現する」です。この映画を通してポジティブに生きる大切さを痛感しました。
映画『リトル・ジョー』のキャストについて
アリス(エミリー・ビーチャム)
バイオ企業の研究者。ワーカーホリック。研究開発に情熱を燃やしている。でも子育てを蔑ろにしている罪悪感に悩まされている。 エミリー・ビーチャムの演技はとても気品があります。目立たず騒がず、そして知性的です。一見、植物的で冷たいのかなあって思わせましたが、どんどん心が吸い寄せられていきます。
クリス(ベン・ウィショー)
アリスのアシスタントでアリスに恋している。ベン・ウィショーはハンサムですね。物腰が低く聡明な感じがしました。でも「豹変しないか」という期待を持たせてくれました。案の定、少しだけ凶暴になります。もう少し暴れて欲しかった。
ベラ(ケリー・フォックス)
研究者。精神を病んでいる過去あり。ケリー・フォックスは一瞬で不安に陥れるような演技をします。この人の存在が一番怖かったです。
キット・コナー(ジョー)
アリスの一人息子。子どもと少年の狭間の演技だったと思います。やはり子どもの真っ直ぐな視線は力強いです。難しい物語ですが、子どもは感性で乗り切れる能力が高いと感じました。
デビッド・ウィルモット
フェニックス・ブロサール
セバスティアン・フールク
リンゼイ・ダンカン
まとめ 映画『リトル・ジョー』一言で言うと!
「植物って賢い」
とても不思議な映画でした。親子の関係を描きつつ、植物との交流も描くというか、、、。新しい感性の映画でした。
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映画『リトル・ジョー』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ジェシカ・ハウスナー
製作
ブルノ・ワグナー ベルトラン・フェブル フィリップ・ボベール マルティン・ゲシュラハト ジェシカ・ハウスナー ジェラルディン・オフリン
製作総指揮
ハインリヒ・ミス ローズ・ガーネット メアリー・バーク ビンセント・ガデル マリーナ・ペラレス・マルエンダ ミヒェル・メルクト
脚本
ジェシカ・ハウスナー ジェラルディン・バヤール
撮影
マルティン・ゲシュラハト
美術
カタリーナ・ブーペルマン
衣装
ターニャ・ハウスナー
編集
カリーナ・レスラー
アリス(エミリー・ビーチャム)
クリス(ベン・ウィショー)
ベラ(ケリー・フォックス)
キット・コナー
デビッド・ウィルモット
フェニックス・ブロサール
セバスティアン・フールク
リンゼイ・ダンカン
2019年製作/105分/オーストリア・イギリス・ドイツ合作
原題:Little Joe
配給:ツイン