映画『ステージ・マザー』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト・予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『ステージ・マザー』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
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『ステージ・マザー』
(2020年製作/93分/PG12/カナダ)
原題『Stage Mother』
【監督】
トム・フィッツジェラルド
【製作】J・トッド・ハリス アン・クレメンツ ブラッド・ヘンニク ローリー・クラウス・ラコブ ダグ・ペティグルー【製作総指揮】トム・フィッツジェラルド クレイ・エプスタイン【脚本】ブラッド・ヘンニク【撮影】トーマス・M・ハーティング【美術】マイケル・ピアソン【衣装】ジェームズ・ワーセン【編集】ヤニーブ・ダバフ【音楽ウォーレン・ロバート
【出演】
ジャッキー・ウィーバー
ルーシー・リュー エイドリアン・グレニアー マイア・テイラー アリスター・マクドナルド オスカー・モレノ レノーア・ザン ジャッキー・ビート アンソニー・スコーディ ヒュー・トンプソン エルドン・シール
【HPサイト】
映画『ステージ・マザー』公式サイト
【予告映像】
映画『ステージ・マザー』トレーラー
映画『ステージ・マザー』のオススメ度は?
星3つ半です
LGBTQ映画だけの物語ではありません
薬物・アルコール問題もあります
男性からの暴力問題も描かれています
映画『ステージ・マザー』の作品情報・概要
『ステージ・マザー』原題『Stage Mother』2020年に公開されたカナダのドラマ映画。トム・フィッツジェラルド監督作品。主演はジャッキー・ウィーヴァー。ルーシー・リュー、エイドリアン・グレニアー、マイア・テイラー、アリスター・マクドナルド、オスカー・モレノ、ジャッキー・ビート。音信不通だった息子の訃報が届き、サンフランシスコへ葬儀に出かけた母親がドラァグクイーンに魅了されて、一緒にゲイバーの再建に乗り出す。アメリカ社会の闇である薬物・アルコールから暴力・虐待問題も描いている。
LGBTQにテーマをおいた映画
映画『ステージ・マザー』のあらすじ・ネタバレ
音信不通だった息子・リッキーが死んだ。リッキーはゲイであるとカミングアウトしてから勘当当然となっていた。母親・メイベリン(ジャッキー・ウィーバー) は夫・ジェブ・メトカーフ(ヒュー・トンプソン)の反対を押し切って、葬儀が行われるサンフランシスコへ飛ぶ。葬儀はドラァグクイーンたちの華やかなステージで送られるという異色のものだった。メイベリンはリッキーの最後のパートナーであるネイサン(エイドリアン・グレニアー) を訪ねる。しかしネイサンはリッキーと共同経営していたゲイバーの権利を持つ母親を敵対視する。事の真相を知ったメイベリンはリッキーの意思を継ぐ決意をして、ネイサンと店の経営を立て直していく。
映画『ステージ・マザー』の感想・内容
「スカッと爽やかな気持ちなる映画」です。アメリカらしい映画だと思います。冒頭は何となく「悲し気な映画かな」と思わせますが、途中から中年おばさんの青春映画と成って行きます。本映画『ステージ・マザー』の予告を観た時は、たぶんいま流行りのLGBTQを扱った“感動ポルノ”かなっと思っていました。それはそれで楽しみしていました。性の多様性についての訴求作品は大歓迎です。近年の日本でも多く製作されるようになっています。とりわけ有名なのは元スマップの草なぎ剛さん主演の映画『ミッドナイトスワン』です。すごい作品でした。そして草薙さんは第44回日本アカデミー賞において最優秀主演男優賞を受賞しています。
映画って本当に素晴らしいと思います。LGBTQ問題を取り扱うことで、世界中に“多様性と寛容”なる精神の必要性を浸透させました。ですから、本映画『ステージ・マザー』も自身の性に対して悩む物語と期待していました。でも少し雰囲気が違う作品になっていました。まず、ドラァグクイーンとは何かについて説明します。女性の姿で行うパフォーマンスの一種で、纏った衣装の裾を引き摺る(drag)ことからこのように呼ばれるようになりました。元々は男性の同性愛者が性的指向の違いを超えるための手段として考えられたパフォーマンスに紐づきます。ドレスやハイヒールなどの派手な衣裳と厚化粧、そして威圧するような大仰な態度をすることも大きな特徴です。目的の一端は男性の理想像が求める「女性の性」を過剰に演出することとされています。
映画『ステージ・マザー』の考察・評価
さて、本映画『ステージ・マザー』では音信不通だった自身の息子・リッキーの死の知らせを受け取った母親・メイベリン・メトカーフ(ジャッキー・ウィーバー)が、息子が残したゲイバー再建のために奮闘する物語です。最初こそ、少しだけセンチな気分にさせます。リッキーの死の影が漂うのです。でも次第に気分が明るくなっていく要因のひとつは、はやりゲイの聖地であるサンフランシスコを舞台にしているからでしょう。街はとてもきれいだし、多種多様の人種が自由に生きている雰囲気満載です。
リッキーがゲイであることはメイベリン・メトカーフの夫・ジェブ・メトカーフ(ヒュー・トンプソン)にとっては一族の恥であり、勘当となっています。でもやはり母親は息子が可愛いものです。息子が最後を迎えたサンフランシスコへ飛び、リッキーの仲間たち催す葬儀へ参列します。葬儀は実に明るいものでした。ドラァグクイーンたちがステージで歌い踊って、リッキーに別れを告げていました。メイベリンはリッキーの最後の恋人であるネイサン(エイドリアン・グレニアー) の元を訪ねます。でもネイサンはつれないのです。というか、メイベリンを敵視するような視線を投げかけます。不審に思うネイベリンですが、謎が解けて納得します。実はリッキーとネイサンは共同経営のゲイバーを営んでおり、経営権は母親に委ねるという内容だったからです。ネイサンは愛するリッキーとの愛が詰まったゲイバーですから、手放したくありません。おそらくメイベリンが「高値で売り飛ばす」と疑心に思ったのでしょう。でも、でもですね、このネイサンの拗ねたようなキャラクター設定って、ちょっと無理があるんですよ。下手したらゲイの人たちって心が狭いという印象を与えかねません。ここはちょっと勿体ないです。どうせなら、最初からメイベリンの事情を話して「この店はリッキーの思いが詰まっています。僕にください」と言って、物語の可能性を広めた方が良いのではないかと思いました。もちろん、母親のメイベリンも参加しての共同経営です。
さてさて、本映画『ステージ・マザー』は母親メイビリンが大活躍します。まず店は売りません。ネイサンは店長で、メイベリンがオーナーとして客集めに奔走します。ここにメイベリンの商才が発揮されていくのです。大手ホテルに営業へ行き、宿泊客を誘致します。さらにステージの演出も考えます。バーの経営は右肩上がりになります。そしてメイベリン自身がステージに上がるのです。そして観客から盛大な拍手を受けます。これが快感なのです。ステージには魔物が宿っています。観衆の視線が一気に向けられると大スター、あるいは女王になったような気分になるのでしょう。わたしたちもカラオケで歌った後にみんなが拍手をしてくれる快感って忘れられません。メイベリンはリッキーの死によって新たな世界を見つけた瞬間って、わたしたちにも伝わってきます。
映画『ステージ・マザー』とは、芸能ビジネスでよく耳にする、“ステージママ”とは違います。ステージママは自身の子どもをプロデュースすることです。でも映画『ステージ・マザー』は自らステージに立つ母親の物語です。そして物語は展開します。メイベリンの夫・ジェブがテキサスから駆けつけるのです。お決まりですが「店を売ろう」と提案します。メイベリンは拒否します。ジェフが店を売らない条件は「テキサスへ帰ること」です。メイベリンは経営権すべてをネイサンに譲り、テキサスに帰ります。
しかし、閉鎖的な田舎町で元のようにおとなしく暮らすことは出来ません。一度、大海を知ってしまうともう、小さい世界には興味を無くすのは当然と言えば当然でしょう。わたしたちも東京での暮らしに一度慣れてしまうと、なかなか田舎へは戻れません。そして、サウンフランシスコへ戻ってステージに立つのです。本映画『ステージ・マザー』はLGBTQの物語と初老を迎えた女性が新しい生き方を見つけて活躍する物語なのです。ここが従来のLGBTQ映画とは異なります。
映画『ステージ・マザー』の結末
そして本映画『ステージ・マザー』のサイドストーリーにはアメリカ社会の闇が見事に描かれていることも忘れてはいけません。まずリッキーの死は薬物の過剰摂取に端を発していることです。さらに同じドラァグクイーンたちで、薬物問題を抱えているものが多く登場します。メイベリンは彼女たちに、薬物を断つようにやさしく諭します。そして、もうひとつ忘れてはいけないのが、女性に対する男性からの暴力です。メイベリンのルームメイトのシエナ(ルーシー・リュー) が新しい恋人から暴力を受けているところを助けます。銃を突きつけて言い放ちます。「女に暴力を振るう奴を撃ち殺すのが夢だった」と。これは痛快でした。もちろん、男性が女性に暴力を振るうのはアメリカだけではなく、全世界で行われている悲しき“習慣”です。もう習慣と言ってしまいます。昔からです。体力的に男性の方が強いのが生物です。動物ではオスが無理やりメスを押さえつけて、交尾を行うことがあります。動物は仕方ありません。でも、人間は女性や子どもに対して暴力・虐待を行なってはいけません。それは人間は「知性教養を身につけることが出来る唯一の生き物」だからです。
本映画『ステージ・マザー』はLGBTQを主軸にしながら、薬物問題から男性からのDV問題を提起して、初老を迎えた女性が新しい生き甲斐を見つけるという素晴らしいメッセージがあります。映画を観終わってから、本当に清々しい気持ちになりました。アメリカという国は確かに問題が多いと思います。差別・偏見が身近にあります。でも何かに情熱を燃やして、一生懸命に頑張っている人を素直に評価して応援してくれる社会があることも事実です。犯罪を犯してしまった人、薬物中毒でどん底を見た人、さらに倒産した人も、再度這い上がるチャンスもあると思います。そして周囲の人々は応援し、賛辞を送ってくれる社会です。本映画『ステージ・マザー』の舞台となっているサンフランシスコはとても平和的なイメージを与えてきます。多様性を大事にする人たちって知性教養が高い人たちです。このような街が日本にあるのだろうかと夢想してしまいました。
映画『ステージ・マザー』のキャストについて
メイベリン(ジャッキー・ウィーバー)
シエナ(ルーシー・リュー)
ネイサン(エイドリアン・グレニアー)
チェリー・ポピンズ(マイア・テイラー)
ジョーン・オブ・アーカンサス(アリスター・マクドナルド)
テキーラ・モッキングバード(オスカー・モレノ)
ビヴェット(レノーア・ザン)
ダスティ・マフィン(ジャッキー・ビート)
オーガスト(アンソニー・スコーディ)
ジェブ・メトカーフ(ヒュー・トンプソン)
リッキー・メトカーフ(エルドン・シール)
まとめ 映画『ステージ・マザー』一言で言うと!
「ステージには魔物が宿っている」
みんなが自分を注目して拍手喝采を送ってくれるのはとても気持ちが良いことです。SNSの「いいね」同様、承認欲求が満たされるからです。人間って「マズローの6段階欲求」通りの生き物であることが証明された映画でもあります。
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映画『プラダを着た悪魔』
これを「パワハラ」と呼ばずになんという?
映画『事故物件 恐い間取り』
映像業界には「イジメ」はないのか?
映画『MOTHER マザー』
親が子どもを「イジメる」ことを虐待と言います
映画『誰も知らない』
世間から無視されることは「イジメ」かもしれない
映画『万引き家族』
「イジメられる」から学校へ行かないのではない
映画『レ・ミゼラブル』
移民に対する「イジメ」は怨念を産みます
映画『リチャード・ジュエル』
メディアが寄ってたかって弱者を「イジメる」構図は世界共通
映画『楽園』
ムラ社会という閉鎖的な「イジメ」はどこにでもあります
映画『ジョーカー』
アーサーがジョーカーになったのは社会的な「イジメ」から
映画『ドッグマン』
この「イジメ」の構図はひどすぎる
映画『ステージ・マザー』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
トム・フィッツジェラルド
製作
J・トッド・ハリス アン・クレメンツ ブラッド・ヘンニク ローリー・クラウス・ラコブ ダグ・ペティグルー
製作総指揮
トム・フィッツジェラルド クレイ・エプスタイン
脚本
ブラッド・ヘンニク
撮影
トーマス・M・ハーティング
美術
マイケル・ピアソン
衣装
ジェームズ・ワーセン
編集
ヤニーブ・ダバフ
音楽
ウォーレン・ロバート
メイベリン(ジャッキー・ウィーバー)
シエナ(ルーシー・リュー)
ネイサン(エイドリアン・グレニアー)
チェリー・ポピンズ(マイア・テイラー)
ジョーン・オブ・アーカンサス(アリスター・マクドナルド)
テキーラ・モッキングバード(オスカー・モレノ)
ビヴェット(レノーア・ザン)
ダスティ・マフィン(ジャッキー・ビート)
オーガスト(アンソニー・スコーディ)
ジェブ・メトカーフ(ヒュー・トンプソン)
リッキー・メトカーフ(エルドン・シール)
2020年製作/93分/PG12/カナダ
原題:Stage Mother
配給:REGENTS