映画『愛と死をみつめて』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『愛と死をみつめて』IMDbサイトにて作品情報・キャスト情報をご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『愛と死をみつめて』
(1964年製作/118分/日本)
原題『Gazing at Love and Death』
【監督】
斎藤武市
【脚本】
八木保太郎
【原作】
大島みち子 河野実
【企画】
児井英生
【撮影】
萩原憲治
【美術】
坂口武玄
【音楽】
小杉太一郎
【出演】
浜田光夫
吉永小百合
笠智衆 原恵子 内藤武敏 滝沢修
北林谷栄 ミヤコ蝶々 笠置シヅ子
【HPサイト】
映画『愛と死をみつめて』IMDbサイト
映画『愛と死をみつめて』NIKKATSUサイト
【予告映像】
映画『愛と死をみつめて』トレーラー
映画『愛と死をみつめて』NHK BSプレミアム放送 11月17日(火)午後1時00分~2時58分
11月17日(火)午後1時00分~2時58分
実話を元に製作
吉永小百合の「美人薄命」映画
ミヤコ蝶々「拝み屋ではない、創価学会だ」の意味は?
笠智衆がまさかの「落涙」小津安二郎から解放されて路線変更か?
映画『愛と死をみつめて』のオススメ度は?
星3つです
吉永小百合さんが美しすぎて
「感情移入」が出来ない
創価学会布教映画?
「拝み屋?」
最後は神様にすがるのか?
映画『愛と死をみつめて』の作品情報・概要
『愛と死をみつめて』原題『Gazing at Love and Death』は実話を元も製作された。大学生河野實(マコ)と、軟骨肉腫に冒され21年の生涯を閉じた大島 みち子(ミコ)との3年間に及ぶ文通を書籍化され、大ベストセラーとなった。その書籍をモチーフに斎藤武市監督が映画化。主演は浜田光夫と吉永小百合。笠智衆が父親役で出演。 軟骨肉腫という不治の病で死に行くミコと彼女を支えるマコの純愛を主軸に描いている。
映画『愛と死をみつめて』のあらすじ・ネタバレ
高校生の小島道子(吉永小百合) は顔に軟骨肉腫ができる難病に侵されて阪大病院に入院した。同じ病棟に浪人生である高野誠(浜田光夫) がおり、仲良くなる。二人は共に18歳で、阪神タイガースファンという共通点があった。互いを「ミコ(道子)」「マコ(誠)」と呼び合う。やがてミコが京都の同志社大学、マコが東京の中央大学へ進学する。二人は離れ離れになっても文通を続けた。ミコの病気が進行する。マコは東京から駆けつけて看病する。不治の病に冒されながらも「元気で明るく、美しい」ミコとの結婚を夢見るマコだが、、、、。
映画『愛と死をみつめて』の感想・内容
「創価学会」は1964年当時は破竹の勢いがあったのか?
吉永小百合主演映画です。本映画『愛と死をみつめて』の評論はなかなか難しいものがあります。
第一に宗教団体の名前が出てくるからです。創価学会です。
当時、創価学会は破竹の勢いで信者を増やしていたのでしょうか。本映画愛と死を見つめてでは2回にわたり創価学会のことを話しています。
それも病院の入院患者同士がしゃべるからさらに宗教色が強く感じるのです。
つまり“死”の淵にいる人たちの救いは「宗教へ向かう」のか「いつの時代も同じ」なのかと感じてしまうからです。
宗教は確かに人の心を救う存在かもしれません。
特に自身が窮地に陥っている時、あるいは命の危機が迫っている時などは救いの手を宗教へ求める人が多いのは事実です。
吉永小百合さんは「社会派映画」に出演する勇気ある女優です
「死の恐怖」に怯え「祈ることで救い」を得て苦痛から逃れたい生き物
どんな治療を行っても改善されなかった病気が、宗教に入信して「祈り」をすることで寛解したという例は腐るほど耳にしたことがあります。
わたし自身も心身ともに弱っている状態の時に、どこからともなくある宗教の信者が訪れて熱心な勧誘を受けたことがあります。
本当にジャストタイミングでやってきます。まるで「病人を狙っている」かのような印象を受けます。
また刑務所に入っている犯罪者の多くが宗教に救いを求めるということも知られています。特に死刑囚です。
迫り来る死の恐怖から逃れるための入信かと思いますが、人間というのは太古より「死の恐怖」に怯え「祈ることで救い」を得て、苦痛から逃れたい生き物だと露呈しています。
「拝み屋とは違う、創価学会や」と言う(ミヤコ蝶々)
ただ本映画『愛と死をみつめて』で、なぜ創価学会の登場するのかは物語となんら繋がりがありません。
小島道子(吉永小百合) が迫り来る死に怯えて、その救世主として創価学会を選ぶのであれば説得力が出ます。逆にそこまでして欲しいくらいです。
でも単なる“宣伝”としか思えないタイミングで次のようなやりとりがあります。
佐竹トシ(ミヤコ蝶々) が道子の顔の軟骨肉腫の病気になった原因を医師のK先生(内藤武敏) に尋ねると「それは神様にしかわからん」と答えます。
すると中井スマ(笠置シヅ子)「あんたみたいな拝み屋とは違う」佐竹トシ(ミヤコ蝶々) 「拝み屋とは違う、創価学会や」中井スマ(笠置シヅ子)「創価学会とは拝み屋とは違うの?」となるのです。
そこから神様へ発展するのかと思いましたが、そんな様子はなく何もなかったかのように物語は進んでいきます。
でもなんとなく違和感が残るのです。
しかも佐竹トシ(ミヤコ蝶々)の後ろには仏壇らしきものがあります。
沖縄では罪のない「女子学生」たちが戦争の犠牲者になりました
「佐竹さん、あんたに創価学会のことしつこく言ってましたやろ?」(北林谷栄)
さらに小島道子(吉永小百合) 吉川ハナ(北林谷栄)が病室で二人っきりの時にハナが「道子さん、あんた創価学会のことどう思います?」と尋ねます。
道子は「別に」と答えます。すると「佐竹さん、あんたに創価学会のことしつこく言ってましたやろ?」と続けます。
その会話の流れは道子がクリスチャンであるのか否かになりますが、一見、創価学会の勧誘のしつこさを揶揄している表現にも聞こえるのです。
ここも違和感を覚えました。
物語の進行に関係があるのだろうか、と不安になるのです。
強引にまとめると「道子はこんな難病に罹っても笑顔を絶やさず元気で明るくしているから信仰心の強いクリスチャンであろう」となります。
映画『愛と死をみつめて』の結末・評価
不治の病で死にいく恋愛映画の出発点と言っていい
さて本映画『愛と死をみつめて』の内容について書きます。この映画は美しい若い女性・小島道子(吉永小百合) が不治の病に罹り死を迎えるまでの日々を日記形式の独白で描いた作品です。
そして道子を支えるのが恋人の高野誠(浜田光夫) です。二人は純愛を貫きます。
道子はミコ、誠はマコとあだ名が付けられています。
当時、このように不治の病で死にいく恋愛映画はあまりなかったとのことですから衝撃は大きかったでしょう。
愛する人が「原爆」の後遺症で亡くなる悲しみとは、、、
若者が不治の病で死に行く“泣ける映画”の必須パターン
以後、こういう物語の潮流は現在まで多く生まれています。
アリ・マッグローとライアン・オニールの『ある愛の詩』、山口百恵と三浦友和の『風立ちぬ(1976)』、さらに長澤まさみの『世界の中心で愛を叫ぶ』や『いま、会いにゆきます』など。
もう“泣ける映画”の必須パターンです。観る方としてもわかっているけど「泣いてしまう」です。
これは主人公が若ければ若いほど感動具合も深いと言われています。
ちなみに吉永小百合はのちに『愛と死の記録』で死にいく渡哲也を看取る役を演じています。こちらは不治の病というより「原爆症」に対する悲恋を描いた名作です。
清純路線の吉永小百合さんのイメージを守りすぎたのでは
さて本映画『愛と死をみつめて』の道子演じる吉永小百合には悲壮感というのがあまり見られません。終始笑顔なのです。
もちろん多少の涙は流しますが、印象としては「明るく、元気で美しい」のです。
その姿のギャップとして“死”が隣り合わせにあり、「涙を誘う」演出なのですが、いまひとつ心を同調させることが出来ないのです。
なぜなのか考えてみました。第一に吉永小百合さんの顔が右半分だけでも十分に美しすぎるからではないでしょうか。安心してしまうのです。
顔に多少の傷や疲労感および、顔面が崩壊していくメイクを施していればもっと同調できたのではないかと思うのです。そこが勿体ないのです。
美しきモノが壊れていく、汚されていく様は観ているわたしたちの心の琴線に触れます。
残念ながら本映画『愛と死をみつめて』にはそれがなかったのです。理由はわかります
。吉永小百合という女優を売り出すためには清純路線を貫かなければいけません。
あの美しい顔が醜くなるのはイメージダウンでしょう。しかも映画という大スクリーンで映し出すのはリスクが高すぎます。
とっても初々しい吉永小百合さんです
本映画『愛と死をみつめて』でもっとも観て欲しいのは「笠智衆の涙」
実は本映画『愛と死をみつめて』でもっとも観て欲しいのは「笠智衆の涙」なのです。
小津安二郎御用達の名優です。
笠智衆は小津安二郎の泣く演出に顔と首を振って「明治の男は泣かない」と断ってきました。
でも本映画『愛と死をみつめて』ではしっかりと泣いているのです。なぜなのでしょうか。
泣く演技は絶対にしなかった笠智衆が涙を流すのです。これには驚きました。
本映画『愛と死をみつめて』の製作は1964年です。
小津安二郎は前年の1963年に亡くなっています。
このことを考えると小津安二郎が亡くなったことで「泣く演技」に挑戦しても良いのではないかと考えたのかもしれません。
絶望的な終わりを迎える映画の代表作です
悲劇ではありますが「悲恋ではない」ところに感情移入が出来ない
何れにしても本映画『愛と死をみつめて』は悲劇ではありますが、「悲恋ではない」ところに感情移入が出来なかったです。
小島道子(吉永小百合)と高野誠(浜田光夫) の愛し合い方が子どもすぎたのです。
多少なりともラブシーンが必要だと思います。
それと上記しましたが、病気の吉永小百合が「明るく、美しく、元気すぎる」ところにも心が引っ張られなかったと思います。
愛する人を失って発狂した後「投身自殺」とは、、、
*本映画『愛と死をみつめて』に登場する医師のK先生(内藤武敏) がミコの病室でタバコを吸う場面には驚きました。当時は病室での喫煙もオッケーだったことなのでしょう。同じように医師がタバコを吸うシーンは『風立ちぬ』でもありました。時代を感じます。
映画『愛と死をみつめて』その後
『愛と死をみつめて』のマコこと原作者の河野實さんのその後の人生にも大きく注目を集めました。河野さんと大島みち子ことミコとの手記が出版されると想像を絶する大ベストセラーとなりました。180万部です。1960年代としてはとてつもない印税収入になります。現在価値として5億円です。河野さんはマスコミからもてはやされますが、はやがて“バッシング”の日々へと追い詰められていきます。“妬み”“僻み”“そねみ”です。火を点けたのはマスコミです。一回の学生であった河野さんの私生活からを面白おかしく報道していきます。世間の目も変わります。河野さんの元には寄付金や援助の申し込みが殺到します。近しい人たちも同様にお金の無心にきたそうです。
しかも税金の申告の際、職業欄には「学生」で記入するように税務署から言われたそうです。もし「作家」として申告すると経費が認めれ税金を徴収することができないからだそうです。ほどほど嫌気がさした河野さんは進学していた中央大学を辞めて写真専門学校に通ってカメラマンになります。フリーランスとして。その後、「文章も書けるカメラマン」として出版社で活躍することになります。その後『マコは生きた!―ミコとの別れから50年 』を出版しています。現在は家庭菜園を楽しむ日々を送っているそうです。
映画『愛と死をみつめて』のキャストについて
高野誠(浜田光夫)
同い年で阪神ファンであったことからミコ仲良くなる。進学で東京へ行くがミコと文通を行う。ミコが入院すると大阪へ戻りアルバイトをしながらミコの看病をする。浜田さんの演技派いたって普通だったと思います。
小島道子(吉永小百合)
軟骨肉腫という不治の病にかかる。当時の医学では完治が困難だった。明るく、元気で、健気で美しい。迫り来る“死”にも怯えることなくマコとの手紙のやりとりを楽しみにしている。吉永小百合さんの演技派初々しいです。「一生懸命」にやっているところが良いです。
小島正次(笠智衆)
ミコの父親。ミコのことが可愛くて仕方ない。しかし高額医療費のことも心配。マコとの交際も容認している。笠智衆さん「泣くんです」よ。これは珍しいです。
母(原恵子)
ミコの母親。心優しい様子。
K先生(内藤武敏)
放射線専門の医師。ミコの主治医。院内で堂々とタバコを吸います。内藤武敏さんは本当に真面目な役柄が似合います。刑事ドラマとかで拝見した記憶があります。
佐竹トシ(ミヤコ蝶々)
ミコと同室の患者。創価学会の信者と思われる。「拝み屋ではない、創価学会や」と言っています。枕元に仏壇があります。ミヤコ蝶々さんの大阪弁は良いですね。
中井スマ(笠置シヅ子)
ミコと同室の患者。トシに対して疑問を持っている。つまり創価学会に対して。ミコのことを「偉い」と褒めている。
吉川ハナ(北林谷栄)
ミコと同室の患者
中山仙十郎(滝沢修)
まとめ 映画『愛と死をみつめて』一言で言うと!
「美しい存在が壊れていく様が観たい」
大変残酷ではありますが、人間とは他人の悲劇を見たがる生き物です。他人の悲劇を見て「ああ、自分でなくて良かった」と安堵するのです。他人の悲劇に涙することで得られる幸せがあるのです。
『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
合わせて観たい映画
【オススメ昭和を感じる映画】
映画『風立ちぬ(1976)』
山口百恵と三浦友和、、、素晴らしい
映画『あいつと私(1961)』
石原裕次郎と芦川いづみの純愛
映画『太陽の季節』
石原裕次郎衝撃のデビュー作
映画『嵐を呼ぶ男』
暴れん坊ドラマーの裕次郎です
映画『夜霧よ今夜も有難う』
男は背中で泣いている
映画『七人の侍』
日本を代表する映画と言ったらこれ!
映画『キューポラのある街』
吉永小百合さんって本当に永遠のアイドル
『男はつらいよ お帰り 寅さん』
山田洋次監督はずっと昭和にこだわっています
映画『居酒屋兆治』
高倉健さんの顔って本当に「芸術的」にハンサム
映画『探偵物語(1983)』
薬師丸ひろ子と松田優作の恋愛映画
映画『Wの悲劇』
「ああ、薬師丸ひろ子、ああ、薬師丸ひろ子」ため息が出ます
映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』
寅さんは帰ってきたのでしょうか?
映画『炎の舞』
戦争が二人を引き裂いたのか、、、
映画『ホワイト・ラブ』
山口百恵&三浦友和がスペインで親になる
映画『若い人(1962)』
石原裕次郎と吉永小百合のまさかの共演
映画『となりのトトロ』
わたしもとなりに「トトロ」が欲しい
映画『父と暮せば』
宮沢りえちゃんと応援したくなる映画です
映画『絶唱(1975)』
あまりにも悲劇すぎる映画です
映画『潮騒 しおさい(1975)』
三浦友和の「男気」に山口百恵が惚れます
映画『七人の侍』
黒澤明という「昭和の怪物」がいました
映画『カツベン!』
成田凌くんの最高演技かも!
映画『エリカ38』
エリカは間違いなく昭和の女です
【“障害”と戦う恋愛映画オススメ】
映画『ロミオとジュリエット』
映画『伊豆の踊子(1974)』
映画『潮騒 しおさい(1975)』
映画『絶唱(1975)』
映画『マディソン郡の橋』
映画『美女と野獣(1991)』
映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』
映画『ラストレター』
映画『アパートの鍵貸します』
映画『マチネの終わりに』
映画『ボーダー 二つの世界』
映画『あなたの名前を呼べたなら』
映画『秒速5センチメートル』
映画『マーウェン』
映画『ほしのこえ』
映画『COLD WAR あの歌、2つの心』
映画『リヴァプール、最後の恋』
映画『愛と死をみつめて』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
斎藤武市
脚色
八木保太郎
原作
大島みち子 河野実
企画
児井英生
撮影
萩原憲治
美術
坂口武玄
音楽
小杉太一郎
録音
高橋三郎
照明
大西美津男
編集
近藤光雄
スチール
目黒祐司
高野誠(浜田光夫)
小島道子(吉永小百合)
小島正次(笠智衆)
母(原恵子)
K先生(内藤武敏)
中山仙十郎(滝沢修)
吉川ハナ(北林谷栄)
佐竹トシ(ミヤコ蝶々)
中井スマ(笠置シヅ子)
大久保(杉山元)
黒木(木下雅弘)
寮の賄いのおじさん(紀原土耕)
病院の用務院(河上信夫)
オールドミス(楠侑子)
市場の売手(光沢でんすけ)
照子(加藤洋美)
二組の夫婦(大谷木洋子)
二組の夫婦(石丘伸吾)
二組の夫婦(坂巻祥子)
二組の夫婦(小柴隆)
同志社の学生(恩田恵子)
同志社の学生(岩記照栄)
同志社の学生(水森久美子)
同志社の学生(西原泰江)
アベック(平塚仁郎)
アベック(樽井純子)
アベック(宮川敏彦)
アベック大塚トミエ
若い看護婦(有田双美子)
中年の看護婦(鏑木はるな)
看護婦(北出桂子)
看護婦(清水千代子)
看護婦(高田栄子)
寮生(浜口竜哉)
寮生(藤野宏)
寮生(宇田川守雄)
寮生(新村猛)
寮生(井田武)
患者(三船好重)
患者(深川真喜子)
患者(鈴木俊子)
1964年製作/118分/日本
原題:Gazing at Love and Death
配給:日活