映画『雲のむこう、約束の場所』ネタバレ・あらすじ。新海誠劇場長編デビュー作品はアニメ業界に革命を起こす。そびえる巨匠たちに挑む勇気。

アニメーション
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雲のむこう、約束の場所

『雲のむこう、約束の場所』91/日本/2004
英題『The place promised in our early days

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映画『雲のむこう、約束の場所』のオススメ度は?

4.5

4つ半

若者の憧れと約束を果たすと純粋な姿に心打たれます。

新海誠が日本アニメ界に革命を起こした作品です。

不屈、挑戦、飛翔を感じます。

子どもと観るのがオススメです。

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映画『雲のむこう、約束の場所』の作品概要

新海誠は前作『ほしのこえ』のヒットによって、劇場長編デビューを果たす。舞台は1996年。共産国のユニオンが統治する蝦夷地にそびえ立つユニオンの塔を主軸に3人の若者の憧れと約束をテーマに進行していく。新海にとって革命的な気持ちを持って作られた作品である。

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映画『雲のむこう、約束の場所』のあらすじ・ネタバレ

中学時代、仲良く過ごした3人の少年少女。一つの約束をした。蝦夷の地にそびえ立つユニオン塔へ飛行機で行くこと。でも約束は少女が消えたことで果たせないままになっていた。数年後、眠り病に罹っている少女を見つけて再びユニオンを目指す。眠る少女は目覚めるか、そして3人の恋の行方はどうなるのか、、、。

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映画『雲のむこう、約束の場所』の感想・評価・内容・結末

新海誠監督が起こした一人ぼっちの革命

この映画は新海誠が日本アニメ業界で起こした『革命』であると言えます。巨大なユニオン塔は新海にとって何を、誰を指しているのでしょうか。

憧れでもありますが、乗り越えたい相手、倒したい相手なのではないでしょうか

前作『ほしのこえ』で新海は大きな評価を得ました。でも新海に対して旧態依然の古い人たちは少なからず新海のことを批判したのは確かです。

相当、新海は悔しかったでしょうし、涙を流したのではないでしょうか。だからこそ、新海が映画制作を行うにあたっての決意がにじみ出ている強い作品であると言えます。

既得権益に負けず挑戦する新海誠自身なのだ

映画は戦後の日本を仮想的な物語として進行しています。その中で確実に権力に対して勇気を持って挑む若者の姿が描かれています東大安田講堂が登場するのはその筆頭です。

学生運動を行なっていたであろう人物の描写でわかります。学生運動が終焉したのは講堂の崩壊からです。

象徴的だった建物の崩壊は彼らに大きな失意を与えました。新海誠は『雲のむこう、約束の場所』を現代風に作り変えていますが、新海本人の気質はとても先鋭的で計画的で既得権益を持った人たちに対して抗う本能的に革命家なのだとわかりました。

それがとっても嬉しく思いました。権力に媚びず、独自の道を歩んで欲しいと応援したい気持ちが強くなりました。

アニメーション映画の現場は過酷だが、やりがいは大きい

新海誠監督長編デビュー作。前作の『ほしのこえ』はほとんど一人で作っていますが、、本作はプロのスタッフの多く参加しています。

でも相変わらず原画、脚本、監督、編集、音響と大部分は新海監督がやっているから驚きます。アニメ映画の制作は本当に大変でチームワークが大切になってくるそうです。

ある有名なアニメーション監督の「アニメは描かなければ進まないからなあ」という名言に全て表れています。本作でも新海はコンテを切りまくっています。

描くことに没頭する姿を勝手に想像すると仏像を彫る彫刻家のように見えます。

もし第二次世界大戦で日本が分断されていたら

映画はどこか退廃的な時代を思い出させます。もし第二次世界大戦で日本が分断されていたらどうなっていたのだろう、と。北海道はソ連に占領されていたでしょう。

そして北海道を取り返そうと政府も、そしてゲリラ活動をする若者も表れていたのではないでしょうか。映画の中で東大安田講堂などと出てくるのは、これは団塊の世界を中心に活動した学生運動の終焉であることの証明です。

新海監督はかつての若者へのオマージュを込めて作っていると感じました。

憧れと約束の向こうて待っているものは何だろう

映画『雲のむこう、約束の場所』は憧れ約束がテーマになっています。主人公の浩紀の憧れは何と言っても佐由理です。

友人の拓也も密かに佐由理に思いを寄せています。3人は大きな目的を持っています。蝦夷にそびえ立つユニオン塔へ飛行機で行くことです。

3人は強く約束しました。でも佐由理が消えてしまって達成が難しくなります。浩紀は佐由理がいなくなり、東京でダラダラ過ごしていましたが、佐由理が生きており、眠り病に罹っていると知り再びやる気を出します。

かつて約束したユニオン塔へ佐由理を連れていくことです。

新海映画の“障害”を乗り越える若者に心打たれる

新海誠の映画は何かの障害が設けられています。この障害、つまり困難を乗り越えようとする姿に感動を覚えるのです。

紀はかつての憧れの佐由理の生存がわかると俄然とやる気を出します。佐由理への思いと3人で約束したことを達成するための頑張るのです。

約束といっても数年前の中学生だった時に交わした途方もないものだけど、浩紀はその約束を果たそうと懸命になるのです。拓也も心を動かされます。

ユニオンの塔は権力の象徴であるが、乗り越えるべき存在

3人がユニオン塔にこだわる理由はやはり巨大建造物は人々を惹きつける力があるからでしょう。それは権力の象徴だからです。

エジプトのピラミッドなどは王様の力を誇示することで、政治の安定を図りました。人間は圧倒的に強い存在にひれ伏してしまうところがあります。

でも少なからず、そういった巨大な国家権力に抵抗する人も存在することは確かです。新しい息吹を入れないと長く栄えません。

本映画に込める新海誠の映画人としての強い決意

それが実は浩紀たちだったのではないでしょうか。団塊の世代の人たちでいう革命家です。そして何を隠そう、新海誠自身なのです

映画を通して新海誠は自身の監督人生の指針を表しています強い決意と野望です。

蝦夷地の国家が共産主義国家というのも意味深です(映画業界は共産主義者が多いです)本映画の舞台が1996年。

日本アニメ映画を振り返ってみます。前年、1995年は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、1997年は『もののけ姫』の空前の大ヒットがあります。

その狭間の1996年を舞台にした新海誠監督

とっても勇気ある作品です。

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映画『雲のむこう、約束の場所』まとめ 一言で言うと!

迷わず行けよ、行けばわかるさ!

生きていると目の前に立ちはだかる存在は欠かせない。例えばスポーツであればそれはライバルとなって自身のモチベーションとなりお互いが向上できる。でも社会に出るとどうしようないほど巨大な存在に打ちのめされてしまいそうになる。でも道は前にしかないのだ。恐ろしい相手を避けて進んでいたら、いつかやられる。でも頭を使って上手く立ち回れば何とでもなる。自分の信じた道を行くことの大切さを教えてくれた作品です。

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https://undazeart.com/tenkinoko/

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映画『雲のむこう、約束の場所』の作品情報

映画.comより一部引用
スタッフ
監督
新海誠
原作
新海誠
脚本
新海誠
キャラクターデザイン
田澤潮
絵コンテ
新海誠
総作画監督
田澤潮
作画監督補佐
西村貴世
鈴木ひろみ
美術
丹治匠
新海誠
色彩設計
新海誠
色指定・検査
一瀬美代子
撮影
新海誠
CGワーク
新海誠
ヴェラシーラ設定・モデリング
新海誠
編集
新海誠
音響監督
新海誠
アフレコ演出
三ツ矢雄二
音楽
天門
制作
新海誠
コミックス・ウェーブ
ラインプロデューサー
伊藤耕一郎
プロジェクト管理人
川口典孝
キャスト(声の出演)
吉岡秀隆藤沢浩紀
萩原聖人白川拓也
南里侑香沢渡佐由理
石塚運昇岡部
井上和彦富澤
水野理紗笠原真希
木内秀信有坂
岩崎征実蝦夷製作所工員/駅・車内アナウンス/病院院長
竹本英史蝦夷製作所工員/TVニュース
平野貴裕蝦夷製作所工員/大学院生
前田剛大学院生/ラジオ放送
中川里江女子生徒/女性看護士
中尾友紀女子生徒
齊藤真紀女子生徒/女性看護士
鯨井康介男子生徒
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上世博及巡視船警告
作品データ
製作年 2004年
製作国 日本
配給 コミックス・ウェーブ
上映時間 91分

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