映画『勝手にしやがれ』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト・予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『勝手にしやがれ』IMDbサイトにて作品情報・キャスト情報をご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『勝手にしやがれ』
(1960年製作/90分/フランス)
原題『A bout de souffle』
【監督】
ジャン=リュック・ゴダール
【製作】
ジョルジュ・ド・ボールガール
【原案】
フランソワ・トリュフォー
【脚本】
ジャン=リュック・ゴダール
【撮影】
ラウール・クタール
【音楽】
マルシャル・ソラル
【監修】
クロード・シャブロル
【出演】
ジャン=ポール・ベルモンド
ジーン・セバーグ
ダニエル・ブーランジェ
ジャン=ピエール・メルビル
アンリ=ジャック・ユエ)
ジャン=リュック・ゴダール
【HPサイト】
映画『勝手にしやがれ』IMDbサイト
【予告映像】
映画『勝手にしやがれ』トレーラー
映画『勝手にしやがれ』NHK BSプレミアム放送 2021年1月21日(木)午後1時00分~2時31分
2021年1月21日(木)午後1時00分~2時31分
ゴダールです
ジャン=リュック・ゴダールです
いまや映画の神様でしょう
長編デビュー作品です
画期的です
刹那的です
映画『勝手にしやがれ』のオススメ度は?
星4つ半です
疾走感があります
刹那的です
世界の映画史を変えました
石原慎太郎の影響も多し!
映画『勝手にしやがれ』の作品情報・概要
『勝手にしやがれ』原題『À bout de souffle』英題『Breathless』1959年製作のフランスの映画。ジャン=リュック・ゴダール長編デビュー作。1960年、ベルリン国際映画祭銀熊賞 (監督賞)受賞。原案はフランソワ・トリュフォーで、実際にあった事件をモチーフに製作された。「ヌーヴェルバーグ」の先駆け的映画。石原慎太郎著作・脚本『狂った果実』の影響あり。
ゴダールの近作はやっぱり超芸術的でした
映画『勝手にしやがれ』のあらすじ・ネタバレ
始まりはマルセイユ。ミシェル・ポワカール(ジャン=ポール・ベルモンド) はアメリカ人俳優ハンフリー・ボガートに心酔している。仕事も全くしていない。パリに住むアメリカ人の留学生パトリシア・フランキーニ(ジーン・セバーグ) に会うために車を盗む。お気楽に車を走らせるが、警察に追いかけられて場当たり的に殺してしまう。でも全く悪びれない。お金も尽きる。途中、女友達を訪ねて財布からお金をくすねる。パリについてパトリシアのアパートに居候する。お金もない、根無し草のミシェルはパトリシアに「イタリアへ行こう」と誘うがミシェルは断る。パトリシアはミシェルが殺人を起こして追われている身と知る。そして警察に密告する。密告した事実もミシェルに教える。ミシェルは警察が追っていることを知った上で街へ出る。そして背後から撃たれる。撃たれて路上で天を仰ぐミシェルにパトリシアが駆け寄る。ミシェルが「最低だ」と告げる。それを聞いたミシェルは「最低って何?」と言って振り返って去る。
映画『勝手にしやがれ』の感想・内容
『勝手にしやがれ』は映画史に燦然と輝く名作
ゴダール曰く「死を考える男と考えない女の話」となります。「とても鮮烈な映画」です。
本映画『勝手にしやがれ』は映画史に燦然と輝く名作です。映画を学ぶ大学では必ず紹介されます。
監督のジャン=リュック・ゴダールと、彼の友人のフランソワ・トリュフォーと一緒に学びます。
この二人は当時に世界の映画業界に新しい波を起こした「ヌーヴェルバーグ」の急先鋒なのです。
「犯罪者」の夫が死をかけて残してくれるお金
石原慎太郎著作・脚本で石原裕次郎が初主演した『狂った果実(1956)』の影響
本映画『勝手にしやがれ』が製作される過程ですが、日本の映画『狂った果実(1956)』が影響を与えたことはご存知でしょうか。
そうです。石原慎太郎著作・脚本で石原裕次郎が初主演した映画です。
この映画はパリのシネマテークで上映されました。その時にゴダールは鑑賞して衝撃を受けたそうです。
撮り方はもちろん異なりますが、若者の刹那的な生き方を描いた物語に心を動かされたそうです。
それから4年後に本映画『勝手にしやがれ』が完成するのですが、そこまでの過程が面白いのです。
母が「犯罪者」って薄々気が付いた息子の心中はいかに?
構想と原案はフランソワ・トリュフォー
まず本映画『勝手にしやがれ』の構想はフランソワ・トリュフォーが温めていました。
実話があるのです。1952年に殺人事件を起こしたミシェル・ボルタイユという人物がいます。
同年11月24日、ミシェルはル・アーヴルへ向かう途中、オートバイ警官を殺します。
そしてパリへ行きアメリカ人女性記者と優雅に暮らします。彼は全く普通に暮らしていたそうです。
そしてコンコルド広場で逮捕されました。マスコミはこぞって報道します。
彼は終身刑となりました。
愛する彼はサムライ魂を持った「犯罪者」
トリフォー、ゴダール、石原慎太郎が結ばれて傑作誕生
トリフォーはこの事件にひどく関心を持ち、新聞や雑誌の詳細な切り抜きを集めていました。
その時、映画のテーマを探していたいゴダールがトリフォーに頼んで、初稿の脚本を書いてもらったのです。
初稿の脚本とはかなり異なりますが、一貫して物語は「死を考える男と考えない女の話」となっています。
この時、トリフォーは初長編映画『大人は判ってくれない』が1959年度のカンヌ映画祭で監督賞を獲得し、世界に衝撃を与えてきます。
トリフォーとは親友と言えど、ゴダールは内心焦っていたのではないではないでしょうか。
そしてゴダールはトリフォーからもらった脚本を改変して本映画『勝手にしやがれ』を撮り、翌年1960年のベルリン国際映画祭で監督賞を獲得します。
この二人の出会いから確執までもとても興味深いですが、その間に石原慎太郎作品が割り込むっていうのも嬉しい限りです。
未成年でも恐喝したら「犯罪者」になりますよ
撮影・編集も全てが画期的で誰もやったことない演出
さて、本映画『勝手にしやがれ』を観ると違和感を覚える人もいると思います。
中には「まるで素人ではないか」と言う人もいます。それは全編にわたって手持ちカメラで撮影されていて、手ブレ感が辛いからとか、編集が雑すぎるとかがほとんどです。
しかも男と女の会話も「ダラダラしている」とか。
でも、でもですね、これが画期的な理由は従来の映画って大きくて重たい機材で撮影されていまして、一般の人からは遠い世界の仕事だったんです。
でもゴダールは小さな16ミリのキャメラを街中へ持ち出して、縦横無尽に撮影したんです。
ほぼ手持ちです。三脚などほとんど使っていないでしょう。
しかも街中のロケのほとんどゲリラ的に行われています。突然、撮影が始まるのです。「パッと撮って、サッと撤収」なんです。
隠し撮りも行なっています。そして、編集も素早くやっています。
普通の編集ですと、遠景のショット、中景のショット、そしてクロースアップへとリズムよく繋げていきますが、ゴダールはそんなの全く御構い無しで、遠景、クロース、クロース、クロース、遠景と繋いでいくのです。
またその際、役者の動きの導線も全く無視しています。時間的な経過を全く無視したジャンプショットという手法を用いています。
これって今までになかった映画撮影・編集方法なんですよ。
贋作作って笑ってますが立派な「犯罪」です
映画『勝手にしやがれ』の結末・評価
死に急ぐ男を観ていやが応にも心拍数が速くなり「緊張感が高まる」
冒頭に書いたようにこの映画の主人公ミシェル・ポワカール(ジャン=ポール・ベルモンド) は死に急ぐ男です。
この死へ向かう衝動を手持ちカメラと目まぐるしく切り替わる編集で、観ているわたしたちはいやが応にも心拍数が速くなり、緊張感を高めていきます。
恐ろしい気持ちになるのです。
劇中のミシェルの発言や行動は本当にやさぐれているというか、「なんて横暴なのだ」とか「自分勝手すぎる」などと考えてしまいます。
でも従来の凶悪犯罪者には見えないのです。まずハンサムでオシャレで、身のこなしもスマートなんですよ。
わたしたちの持つ犯罪者のイメージから逸脱しているのです。しかもミシェルは警察官を殺したことをまるで悔いていないところも良いのです。
すべてはゴダールがベルモンドに求めた演技だったのです。
殺す気はなかった言っても「犯罪」は牢屋で償うことに、、、
パトリシアの「最低ってなに?」
映画の結末でパトリシア・フランキーニ(ジーン・セバーグ) が「最低ってなに?」で終わるところも面白いのです。
本映画『勝手にしやがれ』の展開でミシェルとパトリシアは本当に愛し合っているのかにも疑問を持つのです。
ミシェルは口癖のように「寝たい」「今から寝よう」と言います。パトリシアの態度も思わせぶりだったり、「妊娠した」と言って、ミシェルの気持ちを確かめたりしています。
ミシェルが殺人犯であるとわかっても逃げませんし、警察に密告したことも正直に話します。
ミシェルが撃たれて路上に倒れた際は走って駆け寄ります。でも抱きついたりしません。上から見下ろしています。
そしてミシェルが「最低だ」というと「最低ってなに?」と言ってカメラを見て、唇をなぞります。
この場面の女心の表し方が素晴らしいと言われています。単に「愛していたか否か」などの議論も不要だと思います。
パトリシアは振り返ります。彼女の心にはもうミシェルはいないでしょう。
*トリフォーとゴダールについて。1949年二人は出会う。ゴダール19歳、トリフォー17歳。同じ映画館の同じ列で同じ記事を読んでいた。そして1950年9月ビアリッツの『呪われた映画祭』に現れた二人の写真は有名。寄宿舎で二人は何百本の映画を観て過ごす。続く。
夫殺しの仕返しは「犯罪」になってしまう、、、
映画『勝手にしやがれ』のキャストについて
ミシェル・ポワカール/ラズロ・コヴァックス(ジャン=ポール・ベルモンド)
パトリシア・フランキーニ(ジーン・セバーグ)
ヴィダル刑事(ダニエル・ブーランジェ)
作家パルヴュレスコ(ジャン=ピエール・メルビル)
アントニオ・ベルッチ(アンリ=ジャック・ユエ)
密告者(ジャン=リュック・ゴダール)
まとめ 映画『勝手にしやがれ』一言で言うと!
「カッコよく死にたい男」
男の人って自分なりの美学を持っている人が多いです。日本の武士道もその一環だと思います。何かの道を貫くことで自己満足していると思うのですが、あまり人や社会に貢献的ではないことが多いような気がします。もちろん、人生とは必ず「貢献しなくてはいけない」わけではないので、オッケーです。生きたいよに生きれば良いのです。でも、女は違います。結構、現実的に生きる生き物だと思うのです。やっぱり子どもを産むという宿命を果たしたいものです。
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映画『ボーダー 二つの世界』
映画『あなたの名前を呼べたなら』
映画『秒速5センチメートル』
映画『マーウェン』
映画『ほしのこえ』
映画『COLD WAR あの歌、2つの心』
映画『リヴァプール、最後の恋』
映画『勝手にしやがれ』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ジャン=リュック・ゴダール
製作
ジョルジュ・ド・ボールガール
原案
フランソワ・トリュフォー
脚本
ジャン=リュック・ゴダール
撮影
ラウール・クタール
音楽
マルシャル・ソラル
監修
クロード・シャブロル
ミシェル・ポワカール/ラズロ・コヴァックス(ジャン=ポール・ベルモンド)
パトリシア・フランキーニ(ジーン・セバーグ)
ヴィダル刑事(ダニエル・ブーランジェ)
作家パルヴュレスコ(ジャン=ピエール・メルビル)
アントニオ・ベルッチ(アンリ=ジャック・ユエ)
密告者(ジャン=リュック・ゴダール)
1960年製作/90分/フランス
原題:A bout de souffle
配給:オンリー・ハーツ
日本初公開:1960年3月26日