映画『硫黄島からの手紙』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『硫黄島からの手紙』IMDbサイトにて作品情報・キャスト情報をご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『硫黄島からの手紙』(141分/R/アメリカ/2006)
原題『Letters from Iwo Jima』
【監督】
クリント・イーストウッド
【製作】
スティーブン・スピルバーグ ロバート・ロレンツ クリント・イーストウッド
【出演】
渡辺謙
二宮和也
伊原剛志
加瀬亮
中村獅童
映画『硫黄島からの手紙』NHK BSプレミアム放送 3月27日(金)午後1時00分〜3時22分
「硫黄島プロジェクト」第二弾です。クリント・イーストウッド監督作品です。
日本側からの視点で描かれています。
日本人俳優と日本語製作です。
西郷演じる二宮和也くんの演技が素晴らしいです。
二宮くんの最新作はカメラマン!
映画『硫黄島からの手紙』のオススメ度は?
星4つです
こんな時代があったです
死ぬのはいつも若者です
「止められなかった」時代です
不戦の誓いを立てましょう
今夏最大にヒット映画は中島みゆきさんの楽曲『糸』をモチーフ
映画『硫黄島からの手紙』の作品情報・概要
『硫黄島からの手紙』原題『Letters from Iwo Jima』2006年のアメリカ合衆国の戦争映画。『父親たちの星条旗』(原題『Flags of Our Fathers』)と企画された「硫黄島プロジェクト」の日本側視点の作品となる。栗林忠道陸軍大将が本土の妻子に当てた手紙『「玉砕総指揮官」の絵手紙』(栗林忠道・著 吉田津由子・編)に基づいて脚本を練られている。監督は『父親たちの星条旗』と同じくクリント・イーストウッド。
「硫黄島プロジェクト」第一弾はアメリカ側の視点から
映画『硫黄島からの手紙』のあらすじ・ネタバレ
元パン屋の西郷(二宮和也)は悪態をつきながら硫黄島の海岸で塹壕掘りを行なっている。しかし日本の悪口を聞かれ上官から体罰を受けているところに栗林忠道中将(渡辺謙)現れ助けられる。毎日、まともな食事がない。“雑草スープ”が主だ。栗林は塹壕掘りをやめて全土に洞窟を掘ることを決定する。しかし伊藤中尉(中村獅童)らは栗林に反感を覚えて独自の作戦を立てる有様。やがて米軍の攻撃が始まり擂鉢山が陥落する。それから日本軍の内部で何かが弾ける。脱走、投稿、、、逃亡、、、
映画『硫黄島からの手紙』の感想・内容
紛れもない“反戦映画”である
クリント・イーストウッド率いる『硫黄島プロジェクト』第二弾の反戦映画です。栗林中将が家族に送る手紙を主軸に展開して行きます。
もちろん第一弾の『父親たちの星条旗』も反戦映画ではありますが、本作の方が戦争という人間が作り出した恐ろしい惨状について明確なメッセージを送っています。
公開されたのが2006年です。第二次世界大戦終結から61年の節目というのも大きな意味があります。もう戦争体験者、特に元兵隊は少なくなっています。
勝ち目はないとわかっていたけど、、、、
この硫黄島という島は日本にとってとても重要な要衝でした。もしこの硫黄島が陥落するとなし崩しになり、米軍の侵攻を許すことになるからです。
ですから日本軍としては全力で守りたかったです。しかしながら戦況は思わしくありません。南方の日本軍はほぼ全滅、本土からの援軍も期待できません。
もうほとんど敗戦へと向かっています。それを栗林中将 はわかっていたと思います。というより駐米大使時代「日本はアメリカと戦争をしても勝ち目はない」と認識していたと思います。
でもなぜ戦争へ?という疑問は永遠に問われますが、そんなことに答えはありません。
その時の社会情勢、雰囲気、世俗、感情、世論、その他あらゆる情報の中「もう突き進むしかない」と決断せざるを得なかったのだと思います。
世界の渡辺謙です。応援しましょう!
動き出した企画は止められないことがある
安易に比較してはいけませんが、わたしたち日常生活においても「今さら断れない」とか「もう中止にできない」ってことあります。仕事などには顕著です。
一度決まった企画が動き出すとお金も時間もそして人件費もかかってきます。こうなると「ストップ」はなかなかできません。
大きな船が動き出すとそれを止める方がデメリットになることがあります。
これと戦争を止められなかったことを比較してはいけませんが、当時の日本の世界における立場とか社会の雰囲気、そして国民感情などから「行くしかない」と決断して戦争に突入したのだと思います。
そのことを今さら責めてはいけません。大事なのはもう二度と戦争をしないことです。
戦争はたった一人のエゴから生まれた。太平洋戦争も仕組まれた可能性が、、、
軍人というイメージにとらわれてはいけない
さて、映画『硫黄島からの手紙』で特に注目したのはやはり栗林忠道中将(渡辺謙)の人間性です。とても穏やかで物腰が柔らかく、従来の軍国主義のスパルタ上官ではありません。
体罰やいじめ、しごきなどはもってのほかです。彼自身が駐米大使をやっていたこともあり、日本の封建的で体罰を持って支配することに嫌悪を感じていたのでしょう。
知識教養がありました。西郷(二宮和也)との触れ合いなどはいい例です。まずは塹壕掘りをして暴言を吐いた西郷を助けた場面、そしてまたもや西郷が首をはねられそうになった時に助けています。
そして三度目はなんと栗林が西郷にお願いをするという場面です。普通であったなら下位の兵隊と話すことはおろかお願いなどしません。
少なくとも当時の軍隊はそうだったと思います。そのあたりの人間性をうまく引き出しているクリント・イーストウッドの演出は素晴らしいと言えます。
旧来の軍人イメージを一掃してくれたと思います。
イラク戦争で傷ついた兵士の心を如実に描いた名作
印象操作によって植えつけられる危険性
わたしたちの見聞きした日本軍は残虐、極悪人の集まりというイメージが植え付けられています。でもそれは間違っていると思います。
「戦争が人を変えた」のです。元々、普通の人でも戦地へ行くとおかしくなるでしょう。それは日本だけではなく世界中の戦地で見ることができます。
一部の悪の行いだけにクローズアップしてそれが全てだと喧伝するとに大きな刷り込みという危険を招くことを頭に入れることが大事です。
映画『硫黄島からの手紙』の結末・評価
笑いが全くない映画、、、
この映画『硫黄島からの手紙』は正直言って全編にわたって「暗い」です。
出演俳優は誰一人笑っていません。本当に笑い声がない映画です。
戦闘シーンも先の『父親たちの星条旗』より多いです。そして日本軍の自決場面が何度となく映し出されます。「玉砕」です。教科書で読んだことがあります。
「一億総玉砕」本当にあったことでしょう。今では考えられませんが、アメリカ人とイギリス人憎しの「鬼畜米英」叫んで国民が竹槍を突く練習をしていたそうです。
思想統制とは本当に恐ろしいことです。
戦禍の中、日本を舞台に繰り広げられた恋愛
西郷(二宮和也)の生き方が一番正しい
西郷(二宮和也)はいつもビクビクしています。上官の前ではペコペコしていないところでは悪態をついています。
でもこれが正しい人間だと思います。
西郷は兎にも角にも本土に残した妻子の元へ帰ることで命を繋いでいるのです、。西郷には希望があるのです。
だからこそ硫黄島から生還できたのだと思います。他の者たちも帰りたかったと思います。
でも帰ることを目指して殺された人たちがいることもこの映画では如実に表しています。清水(加瀬亮)は米軍に投稿しました。
日本軍を裏切ったのです。それは生きるのおいて正しい決断だったのでしょう。しかし白旗を持って米軍に投稿したのに米軍の見張り役に殺されました。
近年稀にみる反戦映画です。素晴らしい作品。
日本人俳優が日本語で演じているのが良い
この演出は素晴らしいす。クリント・イーストウッドはアメリカ人です。従来のステレオタイプの映画、特にアメリカ側から作られた映画では自身の国の兵士の残虐性を出すことはあまりしませんでした。
それを敢えて「米軍側にも問題ある人物がいた」ということを知らしめています。この場面で清水(加瀬亮) が殉死したのは加瀬さんにとって一番の財産になるのではないでしょうか。死に方が良かったです。
それとこの映画『硫黄島からの手紙』で一番良いと感じたのはちゃんとした日本人俳優でちゃんとした日本語で製作されているところです。
先にも書きましたが日本人を描いた映画の多くは「?」マークが付く作品が多いです。『ティファニーで朝食を』は筆頭ですが、『太陽の帝国』『ラストエンペラー』などは目も開けられません。
でも本映画『硫黄島からの手紙』は変な日本人は登場しません。それはそれで素晴らしかったと思います。でも若干、おかしな場面がありますがそれは目を瞑ります。
反戦映画っぽいですが、もう少しです
戦争の悲惨さと人間関係の崩壊も描いている
戦争の悲惨さを描くにはこれくらいが良いと思います。
でも、でもです。この映画はそれだけではありません。軍隊というひとつの組織の中で起きる人間関係の崩壊も描かれていることを忘れてはいけません。
栗林忠道中将(渡辺謙)に対して大杉海軍少将(阪上伸正)と伊藤中尉(中村獅童) とは意見が全く合いません。
そのため作戦の命令系統に支障が出て多くの兵士が亡くなります。これもこういうストレスを伴う戦地で起きるごく普通の出来事です。
戦況が厳しくなればなるほどストレスが溜まります。そして不満爆発して崩壊へと向かうのです。
こういった人間関係にストレスをうまく盛り込んでことも名作になった所以でしょう。
映画『硫黄島からの手紙』のキャストについて
栗林忠道中将(渡辺謙)
硫黄島へ赴任してきた陸軍のエリート。アメリカ駐在経験もあり国際感覚に優れている。上から目線ではなく部下と同じ目線で物事を見ることができる。家族思い。渡辺謙さんの演技は正直言って「まあまあ」です。何をやっても同じに見えてしまいます。特別抜き出た演技ではなかったように思えます。
西郷(二宮和也)
元パン屋。妻子を愛する優しい人。陸軍一等兵。硫黄島ではこき使われています。性格的にいじけてます。二宮和也さんはまさにこの役にうってつけだったのではないでしょうか。いじけて、文句ばかり言う役がぴったりでした。それでいてちょっとズルっこいところも良かったです。
バロン西(西竹一中佐)伊原剛志
かつてロサンゼルスオリンピックで華麗な馬術で金メダルを獲った英雄です。その名声は世界に知れ渡っています。洞窟の中に潜んでいた西に対して米軍は「バロン西、投稿しなさい」と涙の訴えをしたことで有名です。伊原さんの演技も「まあまあ」です。英語を披露する場面がありますが、イマイチでした。
清水(加瀬亮)
元憲兵隊。本土にいるとき、上司の命令を聞かなかったために硫黄島に流されました。他の兵士からスパイだと警戒されます。加瀬さんは良かったです。心のどこかに何か重たい闇を背負っている雰囲気が最後まで引っ張ってくれました。死に方も最高に良かったです。
伊藤中尉(中村獅童)
海軍大尉です。生粋の軍隊主義というか日本男児という美意識を持っています。栗林に反感を持っています。しかし最後は生き残るという、、、。中村獅童はこういう役をやらせたら天下一品です。本当に嫌な役です。あの顔であのようなセリフを言うと「憎たらしい」と思うのです。この人の持つ雰囲気は誰にも出せないでしょう。映画の中で最高のエッセンスだったと思います。
まとめ 映画『硫黄島からの手紙』一言で言うと!
「もう二度と戦争を起こしてはいけない」
不戦の誓いです。いっそのことわたしたちの暮らす日本は「永世中立国」になれば良いのにと思うことがあります。改憲運動が盛んです。自国の憲法ではないからです。改憲は賛成でしが、憲法9条を残したままがいいです。
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映画『運び屋』
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映画『荒野のストレンジャー』
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映画『この道』
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映画『硫黄島からの手紙』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
クリント・イーストウッド
製作
スティーブン・スピルバーグ ロバート・ロレンツ クリント・イーストウッド
製作総指揮
ポール・ハギス
原作
栗林忠道
脚本
アイリス・ヤマシタ
撮影
トム・スターン
美術
ジェームズ・J・ムラカミ
編集
ジョエル・コックス ゲイリー・D・ローチ
音楽
カイル・イーストウッド
栗林忠道中将(渡辺謙)
西郷二宮和也
バロン西(西竹一中佐)伊原剛志
清水(加瀬亮)
伊藤中尉(中村獅童)
花子(裕木奈江)
尾崎英二郎
坂東工
2006年製作/141分/R/アメリカ
原題:Letters from Iwo Jima
配給:ワーナー・ブラザース映画