映画『翔んだカップル』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『翔んだカップル』IMDbサイトにて作品情報・キャスト情報をご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『翔んだカップル』
(106分/日本/1980)
【監督】
相米慎二
【脚本】
丸山昇一
【製作】
多賀英典
【出演】
鶴見辰吾
薬師丸ひろ子
尾美としのり
石原真理子
円広志
【HPサイト】
映画『翔んだカップル』IMDbサイト
映画『翔んだカップル オリジナル版』NHK BSプレミアム放送 2021年4月29日(木)午後11時15分〜1時18分
4月29日(木)午後11時15分〜1時18分
薬師丸ひろ子初主演映画
相米慎二監督デビュー作品
本映画『翔んだカップル』に主演したとこで薬師丸ひろ子が映画女優としての道を歩もうと決心した重要な作品です。
長回しの相米慎二監督の片鱗が伺い知れます。
鶴見辰吾も映画初主演
石原真理子は本作で映画デビューとなります。
薬師丸ひろ子の最高演技を観よ!
映画『翔んだカップル』のオススメ度は?
3つ半です
薬師丸ひろ子が初々しいです
鶴見辰吾をこれでもかと引っ叩きます
相米慎二監督の演出が光ります
石原真理子が綺麗
映画『翔んだカップル』の作品情報・概要
『翔んだカップル』日本の青春映画(1980年7月26日に東宝系で全国公開)相米慎二初監督作品。脚本は丸山昇一。鶴見辰吾と薬師丸ひろ子の初主演映画。石原真理子のデビュー作。漫画家の柳沢きみおが週刊少年マガジンで連載していた作品を映像化。高校生が“同棲”するというトピックスで人気を博した。
映画『翔んだカップル』のあらすじ・ネタバレ
鹿児島から東京の高校に進学した田代勇介(鶴見辰吾)は外国へ行っている叔父夫妻の家に住む。空き部屋があるため同居人探しを不動産屋に依頼。「男」の同居人を募集したはずが不動産の手違いから広島から上京してきた少女・山葉圭(薬師丸ひろ子) が入居することに。しかも同じ高校でクラスメート。学校にバレたら即退学。果てして二人は、、、
映画『翔んだカップル』の感想・内容
いま改めて観ると物語としてはそれほど深みはありません。
今や『特命係長 只野仁』で有名な漫画家・柳沢きみおが週刊少年マガジンで連載していたものを映画化した作品です。
ただ本映画は日本映画界にとても鮮烈な印象を与えたことは言うまでもありません。
それは相米慎二監督の劇場デビュー作品であること。そして薬師丸ひろ子が映画界で生きる決意をした作品であることが大きいのです。
相米慎二監督の演出は今ではあり得ないほど過酷なものです。まず役者を「ゴミ」と呼びます。
それから「自分で考えろ」と要求して役者自らの最高のパフォーマンスを引き出す手法をとったからです。
相米慎二監督の映画をきっかけに日本映画界で羽ばたいた役者はたくさんいます。薬師丸ひろ子は筆頭ですが、永瀬正敏、田畑智子もそうです。
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若者の恋愛に障害がつきものです
本映画『翔んだカップル』主演は薬師丸ひろ子と鶴見辰吾です。共演に尾美としのりと石原真理子がいます。
この4人の高校生の恋と青春を描いたものですが、やはり薬師丸と鶴見中心に話は展開していきます。
不動産の手違いで同居することになった田代勇介(鶴見辰吾) と山葉圭(薬師丸ひろ子) はよりによって同じ高校のクラスメート。
予期せぬ同棲状態になります。高校生が同棲していると言うことを隠しながらも、恋愛を育むお話です。とっても可愛いお話です。
お互いに「好き」なのですが、意地も照れもありいつも喧嘩ばかりです。両思いなんだけどそこに介在するのが“性的欲求”も内包しているところが良いと思います。
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現在であったのなら許されるお話ではないでしょうか。「シェアハウス」の住民で済まされるからです。
しかし本作が制作されたのは1980年。
まだまだ日本人は未成年の恋愛、そして同棲にはネガティブなイメージを強くしていた時代だったのでしょう。
同棲イコール“性”の問題もあるから、未成年の高校生が同じ屋根の下で暮らしていると知れ渡ると大変だったのです。
そういった意味では柳沢きみおさんの作家性の高さに驚かされます。
こんな気持ちのまま離れ離れになれない
当時の高校生もちゃんと恋愛していたはずですが、やはり東京の高校生は進んでいるなあと感じます。
杉村秋美(石原真理子) が勇介に「ウチで一緒に住みましょう」とか「夏休みは一緒に旅行しましょう」と誘ったりします。
これは今でもなかなかない気がします。最近の若い人たちは結構慎重ですから。こういう高校生のことを指して“翔んだ”と意味つけているのだと思います。
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さてさて、映画の内容に話を戻します。本映画『翔んだカップル』は地方から東京の高校へ進学し、引っ越してきた2人が同居するところから始まります。
今では東京へ進学するために田舎を出ると言う事はあまりないような気がするのです。よほどのお金持ちや政治家のご子息などは例外ですが。
勇介演じる鶴見は鹿児島男児という設定です。山葉圭(薬師丸ひろ子) は広島からです。勇介の叔父夫妻が東京に家を持っているが、海外赴任のため家を空けるのでそこを間借りします。
家には部屋が余っており、不動産に同居人の依頼を出します。もちろん男性の同居人です。まさにいま流行りの“シェアハウス”です。
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しかし不動産屋の手違いから女の子が引っ越してきたのです。それが山葉圭(薬師丸ひろ子) でした。
当初は一ヶ月だけの約束でしたがズルズルと同居生活を続けます。そして二人は同じ高校でクラスメート。やりにくいです。
勇介はボクシング部に入部します。圭はチアリーダー部。ここで一番心を悩ませるのが、やはり男の勇介です。もう性的な欲求がほとばしっています。
なんとか抑えますが、抑えれば抑えるほど、圭に対して意地悪なそぶりをするのです。子どもですね。男は。
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さらに同じクラスに成績優秀な杉村秋美(石原真理子) が勇介に、中山わたる(尾美としのり) が圭に好意を持つからてんやわんやへと発展していきます。
まあまあ、何とか隠しながら同居しますが、やはりいつかはバレるものです。もちろん映画的にバレなければ面白くありません。
「いつバレるんだろう?」と期待して観るから映画は面白くなるのです。そしてその期待を引っ張るのが監督の相米慎二なのです。
実にうまいのです。普通、隠し事をしているのならヒソヒソと暮らすのですが、二人は割と大胆に行動しています。
観ている方でも「ヤバいんじゃないの」と不安にさせる演出なのです。そこが相米慎二監督という新しい才能なのです。
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相米慎二監督の演出は独特だったそうです。この映画の主人公の薬師丸ひろ子と鶴見辰吾のことを「ゴミ」と呼んでいたそうです。
その他、「アホ」「ボケ」とかなりの暴言を言い放って演出していくのです。
現在では考えられません。ハラスメントです。
しかしながら後に薬師丸ひろ子は相米監督と組んだことが映画業界に残るきっかけになったと言っています。
ハラスメントを否定したいのですが結果的には自己肯定してしまう「芸能界の悪しき通過儀礼」のようなものを感じてしまいます。
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映画『翔んだカップル』の結末・評価
この映画は当時の学園モノ作品とはひと味もふた味も違います。やはり映像に力があるのです。
後の相米監督は“長回しの相米”と呼ばれるほどですが、本映画『翔んだカップル』ではそれほどの長回しはありません。
監督デビュー作だったというのもありますが、きっちりかっちりときれいに撮っています。大きなスクリーンを意識しての映画だということがわかります。
つまり相米監督のスクリーン愛が見えるのです。
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物語がとても単純なので相米監督は苦労したのではないでしょうか。
大きな見所と言えば薬師丸ひろ子が自転車で坂を下って来て、雑貨屋にぶつかる場面です。この場面は結構勢いがあります。
実際に薬師丸ひろ子が演じています。なんどもテイクを重ねたそうです。よく怪我しなかったなあ、と今観ても心配になるくらいのぶつかり方です(もともと薬師丸さんは走るのが速く、運動神経が良いとのこと受け身が取れたと思います)
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そして東京の街を見事に表している場面が印象に残ります。
坂道の“上り”と“下り”の両方を一直線に収めているのです。
初めてこのカットと見た時は妙な安心感に包まれました。それは東京という街が真っ平らで、人間も冷たい人ばかりというイメージを持っていたからです。
ですからこの坂道の上りと下りの映像を見たときは何だか人間味を感じて安心したのです。
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そして山葉圭(薬師丸ひろ子) が田代勇介(鶴見辰吾) を叩きまくるシーンは今見ても必見です。これでもかってくらいに叩きまくります。
ほっぺたを「パンパンパン」と力強くやるのです。鶴見辰吾は薬師丸ひろ子のことを引っ叩きませんが、結構乱暴に肩を押したりしています。
この2人の激しい押し問答はとてもリアルです。本当に演技なのか、と疑いたくなります。
きつい相米監督の演出へのストレス発散のように薬師丸ひろ子は鶴見辰吾を叩きまくるのです。
あり得ませんが、プライベートでこの二人は付き合っているのでは、と勘ぐってしまうほどの迫力です。
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その喧嘩の中でもお互いが相手のことが好きで好きでたまらないと言うことが伝わってくるのです。
しかもその様子を杉村秋美(石原真理子)が見ています。この秋美の前で喧嘩をするところに相米監督の醍醐味があるのです。
秋美は勇介のことが好きです。圭と勇介とのことを疑っていますが、あのキス以降、勇介の心は自分にあると思っています。
でも二人の激しい喧嘩を見て気がつくのです。「自分が入る余地はない」と。つまりこの演出は三者三様の心をひとつの場面に表した瞬間なのです。
映画として一人一人心模様を順番に紹介するよりも一気に紹介した方が躍動感が出ますし、その後のストーリー展開にも活かされるのです。
さらに尺の短縮にも成功します。編集も楽になります。
「絶唱」ならぬ「絶句」してしまう恋愛映画です
最後のモグラ叩きの場面も秀逸です。
圭と秋美の女子、勇介と中山わたる(尾美としのり) の男子。
ここはわかりにくいですが、4人の若者の心情を見事に表していると思います。勇介がはっきりしないんですよね。
それと突然泣き出すわたるにも注目します。勇介と圭が同居していることを学校に密告したのはわたるです。彼が悔いている場面なのです。
ここに相米慎二監督の演出の醍醐味を感じるのです。
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さて本映画『翔んだカップル』は勇介と圭が結ばれるのかとハラハラさせますが結果としては結ばれていません。
最後は勇介がボクシングの試合に向かうアップの顔で終わります。
*漫画版では勇介、圭、秋美の壮絶な三角関係が描かれています。勇介と秋美は激しく愛し合っています。しかも『新・翔んだカップル』『続・翔んだカップル』『翔んだカップル21』と続きます。ほとんどが三角関係を軸にしています。結果的に勇介の優柔不断さが招いた悲劇ですね。
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映画『翔んだカップル』のキャストについて
田代勇介(鶴見辰吾)
鹿児島男児。将来は弁護士を目指している。素直に圭に想いを伝えられない。鶴見辰吾さんはちょっと頼りない感じがとても良いと思いました。女性にモテますね。
山葉圭(薬師丸ひろ子)
広島出身。明るく元気が良い、活発です。 勇介に惹かれていきます。でもやはり意地があります。薬師丸ひろ子さん、体当たりの演技でした。当初は出演する気持ちはなかったとのこと。映画の裏方の仕事に興味があったとのこと。、ですが、本作品で女優を続けることにしたそうです。
中山わたる(尾美としのり)
頭脳明晰。勇介の最初の友達。頭はいいのですが、ちょっと人の気持ちがわからないところがある。密告します。尾美としのりは奇妙な演技でした。良かった。
杉村秋美(石原真理子)
容姿端麗、頭脳明晰。勇介のことが好きです。留学を決意します。石原真理子さん、綺麗です。エレガントです。
和田先生(円広志)
まとめ 映画『翔んだカップル』一言で言うと!
「高校生は素直に恋しなきゃね」
高校生の分際で意味深な態度をとったり、なにやら策略をしてはダメです。好きになったら「当たって砕けろ!」です。優柔不断はダメ。
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映画『秒速5センチメートル』
映画『マーウェン』
映画『ほしのこえ』
映画『COLD WAR あの歌、2つの心』
映画『リヴァプール、最後の恋』
映画『翔んだカップル』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
相米慎二
脚本
丸山昇一
原作
柳沢きみお
製作
多賀英典
プロデューサー
伊地智啓 金田晴夫
撮影
水野尾信正
美術
徳田博
音楽
小林泉美
録音
酒匂芳郎
照明
野口素胖
編集
井上治
スタイリスト
中山寛子
助監督
渡辺寿
スチール
遠藤功成田代勇介(鶴見辰吾)
山葉圭(薬師丸ひろ子)
中山わたる(尾美としのり)
杉村秋美(石原真理子)
和田先生(円広志)
織田キャプテン(西田浩)
サル(吉見秀幸)
キツネ(酒井康明)
タヌキ(斉藤建夫)
榊岡竜也
静子(長谷川純代)
マリ(石川ルミ)
教頭(三谷昇)
文化祭のバンドH2O
星田(真田広之)
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
相米慎二
脚本
丸山昇一
原作
柳沢きみお
製作
多賀英典
プロデューサー
伊地智啓 金田晴夫
撮影
水野尾信正
美術
徳田博
音楽
小林泉美
録音
酒匂芳郎
照明
野口素胖
編集
井上治
スタイリスト
中山寛子
助監督
渡辺寿
スチール
遠藤功成
田代勇介(鶴見辰吾)
山葉圭(薬師丸ひろ子)
中山わたる(尾美としのり)
杉村秋美(石原真理子)
和田先生(円広志)
織田キャプテン(西田浩)
サル(吉見秀幸)
キツネ(酒井康明)
タヌキ(斉藤建夫)
榊岡竜也
静子(長谷川純代)
マリ(石川ルミ)
教頭(三谷昇)
文化祭のバンドH2O
星田(真田広之)
志津(原田美枝子)
1980年製作/106分/日本
配給:東宝