映画『居酒屋兆治』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
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『居酒屋兆治』
(125分/日本/1983)
原題『Love』
【監督】
降旗康男
【脚本】大野靖子【原作】山口瞳【製作】田中壽一【制作補】佐々木健一【撮影】木村大作【美術】村木与四郎【音楽】井上尭之【録音】紅谷愃一【照明】安河内央之【編集】鈴木晄【助監督】桃沢裕幸【スチール】橋山直己
【出演】
高倉健
加藤登紀子
大原麗子 田中邦衛 伊丹十三 左とん平 英二 佐藤慶 山谷初男 河原さぶ 平田満 池部良 小松政夫 石山雄大 細野晴臣 東野英治郎 大滝秀治 石野真子 小林稔侍 三谷昇 佐野秀太郎 ちあきなおみ 好井ひとみ 水木薫 中島唱子 立石涼子 山満由美 あき竹城 武田鉄矢 伊佐山ひろ子
【HPサイト】
映画『居酒屋兆治』IMDbサイト
【予告映像】
映画『居酒屋兆治』トレーラー
映画『居酒屋兆治』NHK BSプレミアム放送 11月23日(月)午後1時00分〜3時08分
11月23日(月)午後1時00分〜3時08分
『居酒屋兆治』(いざかやちょうじ)は、山口瞳の連作的長編小説です。『兆治』(ちょうじ)と題し『波』(1979年10月号から1980年11月号に連載、改題して新潮社より1982年6月に刊行されました)
東京・国立にある広さ5坪の縄のれんのモツ焼き屋「兆治」を舞台に、店に集う客たちのさまざまな愛憎劇を描いています。
本映画は1983年に降旗康男監督、高倉健主演により映画化された作品です。
この小説は1992年7月10日、フジテレビによってもテレビドラマ化されています。兆治役は映画渡辺謙です。
また2020年に遠藤憲一主演によりテレビドラマ化されています。NHKです。
映画『居酒屋兆治』のオススメ度は?
星3つです。
男の美学でしょうか。
黙っている男が持て囃された時代です。
昭和ですね。
映画『居酒屋兆治』の作品概要
映画『居酒屋兆治』(いざかやちょうじ)は、山口瞳の小説をもとに製作された日本映画。降旗康男監督作品。主演は高倉健(『南極物語(1983)や『新幹線大爆破』 や『鉄道員(ぽっぽや)』)加藤登紀子、大原麗子、田中邦衛出演。『兆治』(ちょうじ)と題し『波』1979年10月号から1980年11月号に連載された。リメイクが多い作品で1992年に渡辺謙主演(『硫黄島からの手紙』や『名探偵ピカチュウ』や『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』)2020年に遠藤憲一主演(『誰も知らない』)によりテレビドラマとして製作されている。
映画『居酒屋兆治』のあらすじ・ネタバレ
居酒屋を営む兆治はかつて甲子園を目指したこともある有望な投手だった。しかし肩を壊しプロ入りを断念。その後、就職しサラリーマンになる。しかしオイルショック際、自身の出世と引き換えに総務部で“人員整理(首切り)”の仕事に反発して退職し、その後、居酒屋を開業した。謙虚な彼の性格で店は繁盛している。妻子も幸せだ。しかし昔付き合った女が事件を起こし、兆治は巻き込まれていく、、、、。
映画『居酒屋兆治』の感想・内容
『居酒屋兆治』は正に“THE SHOUWA”と言える映画
この映画『居酒屋兆治』は正に“THE SHOUWA”と言える映画だと思います。映像はとても懐かしいです。
北海道の田舎町でロケされています。
兆治演じる高倉健さんの朴訥さが良いです。妻の茂子は加藤登紀子さんですが、夫の秘密を知っているのにじっと耐えている様に共感を覚え応援したくなります。
そしてさよ演じる大原麗子さんが本当に綺麗なんです、“幸なき女”で、薄命な運命を予感させますが、そのダメっぷり女が見事です。
クリント・イーストウッドの「背中」にはハリウッドが見える
「過去を背負って生きる美学」を押し付けられる
この『居酒屋兆治』を観ていると男は黙っている方がかっこいいとか、賢者は貝になるとか考えさせれれますが、今では通用しない気もします。
一言でいうなら「過去を背負って生きる美学」を押し付けられる気もします。
兆治はかつて甲子園を目指すほどの実力のある投手でした。しかし肩を痛めて野球選手の夢を断念します。
その後、サラリーマンになり順調に出世するが、総務部に移され、人員整理の職の担当に嫌気がさし退職します。
その後、居酒屋を始めます。
アラン・ドロンの「背中」には死の匂いがある
地元へ帰ってヒーローだけど「過去の女性」に、、、
兆治は地元も戻りますが、かつての仲間たちの間ではいまだにヒーローです。
その夢を持った40、50代の連中が店の常連です。仲間と楽しく暮らしています。妻子もいます。
でもここに過去付き合ったさよの存在が兆治に災難をもたらします。
さよは兆治と恋人関係でしたが、別れて地元のお金持ちと結婚して子供もいます。でも兆治のことが忘れられません。
精神的にも追い詰めれて蒸発を繰り返します。そして放火騒ぎを起こして行方不明になります。
いつか二宮くんも「背中」で演技できる俳優になってほしいと願う
映画『居酒屋兆治』の結末・評価
妻は「黙っている」ことが美学の時代があった、、、、
ここで兆治が疑われます。警察はかつての恋人であった兆治と共犯しているといいます。
街の人々は兆治とさよのことは知っていますが、妻の茂子は知らない設定になっています。
でも実際は茂子は知っていますが、さよの件について兆治に尋ねたりしません。兆治も言いません。
この黙っていることが良いことかわかりません。わたしでしたらはっきりと聞くと思います。
その方が夫婦としての信頼関係が築けます。この映画のこの夫婦関係がいいという人もいますが、わたしは何だか逆に希薄な気がするのです。
長澤まさみさんは「背中」が美しい女性です
昭和の人たちみんなが「過去を背負っている」
さて、冒頭にこの映画は“THE SHOUWA”と書きましたが、風景や雰囲気だけのことではありあません。
高倉健さんそのものもそうですが、みんなが過去を背負っている感が半端ないのです。
まるで戦争で負けた罪を背負っているようにも見えます。1983年ですから終戦後、38年です。
あの戦争以後、日本人は心のどこかに「俺が悪いんだ」とか「わたしが我慢すれば良いのだ」という生き方を美化するようになった気がします。
人間は最初に自身の非を認めると楽になる生き物です。
また弱点をさらしておくことで、みんなが真綿を扱うように優しく接してくれます。
三浦友和さんの「背中」はでっかい人生を背負ってます
日本人に植え付けられた戦争敗者の劣等感が見えてくる映画
よく「俺はダメな奴なんですよ」「わたし、クズなんです」などと言われたら「そうだね」とは言えません。
逆に「そんなことないよ」「大丈夫だよ」って励ますじゃあないですか。あれって一種の自己防衛です。
ですからこの『居酒屋兆治』を観ているとか「過去を背負って生きる美学」を押し付けられるような気がするのです。
でもこの映画が悪いと言っているのではありません。
この映画から戦後、日本人に植え付けられた戦争敗者の劣等感が見えてくるのです。そう言った意味でこの『居酒屋兆治』を観ると面白いと思います。
*追伸
この映画『居酒屋兆治』は過去に引きずられる人間を描いた名作です。でもよくよく鑑賞してみると、兆治は過去のことを懐かしんだり、後悔したりしていません。兆治は堅実に今を生きているのです。でもなぜか兆治が過去を引きずって生きているかのような印象を与えるのは、周囲の人たちが兆治の元へ集まり、思い出話ばかりするからでしょう。兆治はそれらの話については頷くだけです。そして一番、兆治が「過去を引きずる男」にしたのはさよです。普通、女の人って過去の男を捨ててどんどん未来へ歩いていくものです。ましては子どもを産んでからは子どもに全力をかけます。でも本映画『居酒屋兆治』のさよは「ずっと兆治」です。ここはあんまり納得できません。なぜ兆治が良いのかをもっと描いて欲しかったです。だた昭和映画の代表作なのでやっぱり「戦争」を背負っている感を前面に出す必要があったので、さよの後悔度を強くしたのかもしれません。
石原裕次郎の「背中」も「人間」もデカかった
映画『居酒屋兆治』のキャストについて
藤野伝吉(兆治)(高倉健)
高校時代は投手として活躍。地元の英雄。プロ野球選手の道を目指していたが肩の怪我で断念。、その後、一流企業に入るが退社して地元で居酒屋を開く。高倉健さんはやっぱり「高倉健さん」でした。理屈抜きで良いのです。
藤野茂子(加藤登紀子)
兆治の妻。おそらく兆治の過去のことを知っている。でも一切、聞かない。加藤登紀子さんの演技は本当に“芯”が入っているものでした。一切ブレません。
神谷さよ(大原麗子)
かつて兆治と恋愛関係にあった。お金持ちを結婚して子どももいる。しかし兆治のことが忘れられない。家出を繰り返す。そして放火騒ぎ。大原麗子さんの「ダメっぷり」が見ものです。こんな綺麗な人をダメにしたらダメ。でもさよが一番「過去を背負っている」人でした。
岩下義治(田中邦衛)
兆治の親友。兆治のためなら命をかけるくらい気持ちの強い男。田中邦衛さんは本当に独特の演技を魅せてくれます。とても味のある人ですね。ずっと観ていたい俳優さんです。
河原(伊丹十三)
嫌味な人。本映画『居酒屋兆治』で一番印象が強い演技をしていたのが伊丹十三さんだと思います。上手かったです。。憎まれ役がぴったりでした。劇中、河原が言っていることって当たっていると思うのです。本当に良い演技でした。
神谷久太郎(左とん平)
井上美里(英二)
吉野耕造(佐藤慶)
有田(山谷初男)
小寺(河原さぶ)
越智(平田満)
堀江(池部良)
秋本(小松政夫)
峰子(ちあきなおみ)
松川(東野英治郎)
相場先生(大滝秀治)
相場多佳(石野真子)
まとめ 映画『居酒屋兆治』一言で言うと!
「昭和の男の背中を見ろ!」
高倉健さんと言えば、もう「背中」なんですよ。この人の後ろ姿を見るだけで何も要りません。哀愁とか悲恋とか、悲しい出来事を全てが詰まっているというか。もちろん高倉健さんのことを知っている訳ではありません。しかしこれほどまでに背中だけで演技できる人はいないのではないでしょうか。素晴らしすぎる。
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山田洋次監督はずっと昭和にこだわっています
映画『居酒屋兆治』
高倉健さんの顔って本当に「芸術的」にハンサム
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薬師丸ひろ子と松田優作の恋愛映画
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映画『カツベン!』
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映画『エリカ38』
エリカは間違いなく昭和の女です
映画『居酒屋兆治』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
降旗康男
脚本
大野靖子
原作
山口瞳
製作
田中壽一
制作補
佐々木健一
撮影
木村大作
美術
村木与四郎
音楽
井上尭之
録音
紅谷愃一
照明
安河内央之
編集
鈴木晄
助監督
桃沢裕幸
スチール
橋山直己
藤野伝吉(兆治)(高倉健)
藤野茂子(加藤登紀子)
神谷さよ(大原麗子)
岩下義治(田中邦衛)
河原(伊丹十三)
神谷久太郎(左とん平)
井上美里(英二)
吉野耕造(佐藤慶)
有田(山谷初男)
小寺(河原さぶ)
越智(平田満)
堀江(池部良)
秋本(小松政夫)
沢井(石山雄大)
佐野(細野晴臣)
松川(東野英治郎)
相場先生(大滝秀治)
相場多佳(石野真子)
小関警部(小林稔侍)
中村巡査部長(三谷昇)
桐山少年(佐野秀太郎)
峰子(ちあきなおみ)
ミーコ(好井ひとみ)
エミリー(水木薫)
河原洋子(中島唱子)
秋本鈴子(立石涼子)
岩下靖子片(山満由美)
モツ屋(あき竹城)
アベックの男(武田鉄矢)
アベックの女(伊佐山ひろ子)
1983年製作/125分/日本
原題:Love
配給:東宝