映画『泥だらけの純情(1977)』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト・予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『泥だらけの純情(1977)』IMDbサイトにて作品情報・キャスト情報をご確認ください。
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『泥だらけの純情(1977)』
(1977年製作/96分/日本)
【監督】
富本壮吉
【脚本】
石森史郎
原作
藤原審爾
【製作】
堀威夫 笹井英男
【制作補】
金沢博 近井一成
【撮影】
安藤庄平
【美術】
佐谷晃能
【音楽】
鏑木創
【出演】
山口百恵
三浦友和
西村晃 大坂志郎 若杉透 石橋蓮司 有島一郎 原知佐子 加藤治子 泉じゅん
清水理絵 島本すみ 緑魔子 永島暎子 早川雄三 神山勝 内田良平
【HPサイト】
映画『泥だらけの純情(1977)』IMDbサイト
【予告映像】
映画『泥だらけの純情(1977)』トレーラー
映画『泥だらけの純情(1977)』のオススメ度は?
星3つ半です
面白いです
等身大の二人がいます
『ロミオとジュリエット』状態の映画です
ラストの真夜中の新宿の刺殺シーンが見ものです
映画はバッドエンドです
でも実生活はハッピーエンドな二人です
映画『泥だらけの純情(1977)』の作品情報・概要
『泥だらけの純情』藤原審爾の1962年に発表された短篇小説を映画化(過去1963年に吉永小百合と浜田光夫で映画されている)本作は山口百恵と三浦友和を主演に迎え1977年に製作された。監督は溝口健二、伊藤大輔、豊田四郎、成瀬巳喜男、島耕二らの作品の助監督で実績を積んだ富本壮吉。身分の違う若い二人の悲恋を描いた名作。ヤクザとお嬢様という設定の恋物語『ロミオとジュリエット』状態の映画。三浦友和が望んだヤクザ役が初々しい。
映画『泥だらけの純情(1977)』のあらすじ・ネタバレ
財産家の娘である樺島真美(山口百恵) は都内の大学に通う女子大生。彼女の友だちはパティー券を買ってくれる真美を大事にしている。真美も「利用されている」と知りながらも女友達からのお願いを聞いている。ある日、友だちとドライブしていた時に、ヤクザまがいの暴走族に絡まれる。車から引きずり降ろされそうなところを助けてくれたのが、本物のヤクザだった。真美たちは難癖と付けられ、ホテルへ連れ込まれそうになる。ヤクザの目的は彼女たちを“ヤク漬け”にして、売春させること。二人の悲鳴を聞いた高島次郎(三浦友和) がヤクザたちをやっつけて真美たちを助ける。しかし次郎は腹を刺されて重傷を負う。しかもそのドサクサの最中にヤクザが死に、次郎が容疑者になる。旧知の知り合いの医者・飯塚医師(有島一郎)が緊急手術を施し命は助かる。しかしヤクザたちは“ヤク”の取引を知られた次郎と真美を執拗に追い回す。真美は命の恩人である次郎に心を寄せていく。次郎は身分も立場も違う真美を怪訝にしながらも次第に惹かれていく自分を抑えきれない。二人の前にはいくつもの障害が待ち受けるが、、、。
映画『泥だらけの純情(1977)』の感想・内容
山口百恵と三浦友和の「等身大の二人を観ることができる映画」です。本映画『泥だらけの純情(1977)』は百恵&友和コンビの映画としては初めての現代劇に挑戦した物語です。設定されたキャラクターの年齢も二人にドンピシャだと思います。この時の山口百恵は19歳で、三浦友和は25歳です。百恵は女子大生役で友和は念願のヤクザ役です。念願というのは三浦友和は兼ねてより、アウトロー的な生き方の役柄を求めていたそうです。萩原健一や松田優作、原田芳雄に憧れていたことも自ら語っています。でも百恵と共演の映画は文芸シリーズが多く、自身が望む役柄ではなかったそうです。そして本映画『泥だらけの純情(1977)』ではヤクザな役をゲットしたのです。
でもですね。正直言って、三浦友和さんは育ちの良さのせいでしょうか、「お上品なヤクザ」って感じなんですよ。まあ、そこが三浦友和さんの魅力なんですけど。食事をする場面でその育ちの良さが出ているんですよ。乱雑に食べようとしていますが、やっぱりお行儀が良いんです。例えばフランスの大俳優であるアラン・ドロンの食事の場面だけを観ると、やっぱり実生活の育ちの悪さが出ているんですよ。犯罪やアクション系の映画でなら活かされるのですが、ちょっと高貴な役でアラン・ドロンが食事をしている場面を観ると、ちょっとゲンナリしてしまうのです。育ちは隠せませんね。
さて本映画『泥だらけの純情(1977)』は山口百恵がお金持ちの令嬢(父親はスペイン大使)で女子大生の樺島真美(山口百恵) を演じ、三浦友和が新宿で意気がる一匹狼のヤクザ・高島次郎(三浦友和) を演じています。育ちも身分も違う二人の恋には障害があります。さしづめ『ロミオとジュリエット』状態の映画であると言って良いでしょう。結末的には悲劇で終わります。二人とも死にます。この死に方が良いのです。深夜の新宿でナイフで刺されて死にます(東口のワシントン靴店の交差点辺りです)
まず映画のトップカットですが、少し乱暴な始まりなところも見逃せません。樺島真美(山口百恵) と友だちが車でドライブしていると暴走族らしき集団に絡まれます。恐怖におののく二人を救出したのがヤクザです。そしてそのヤクザたちにホテルへ連れ込まれそうになるところを、今度もヤクザの高島次郎(三浦友和) が助けるのです。良い人が全く登場しないという始まりに嵐の予感だらけです。ただこの場面で、ヤクザたちが真美をホテルへ連れ込むのは“ヤク漬け”にして売春をさせる目的であることが後々明かされます。ここはとても良い伏線だと思います。なぜなら、真美と次郎が殺される原因になったのは「覚せい剤の存在を知った」からです。口封じですね。
真美たちを救出した次郎はその際に腹部を刺されます。そのドサクサで、ヤクザの一人が死にます。次郎は医者には行きたくありません。旧知の医者・飯塚医師(有島一郎)に身を寄せます。あと5ミリ深かった死んでいたそうです。ここでベッドで横たわる次郎の生い立ちを飯塚がうまく語っています。なぜヤクザになったのかも少しづつ紐解いていきます。第三者に自身のプロフィールを語らせながらの演出は実に良いですね。後半、次郎が真美に「なぜヤクザになったのか」を語ることで一本の線が繋がります。
一方、命を救ってもらった真美は次郎に会いたくて仕方ありません。そして新聞を開くと次郎が殺人犯で逮捕されてる記事を見つけて、急いで警察へ行きます。そして次郎の無実を証言して釈放へと導くのです。本来なら「君子危うきに近寄らず」で、育ちも身分も違う人間には近づかないことが賢明ですが、如何せん“好奇心”の強い真美は危険な男に引き寄せられていくのです。「うーん」て感じなのですが、やっぱり多感な年頃の女の子ってちょっと危険な匂いがする男に惹かれがちなのでしょうか。現代でも綺麗な女優さんが六本木あたりのちょっと悪い人たちと付き合っているって話などがあるように、時代が変われど綺麗な花には刃物が似合うということですかね。
そしてですね、真美は樺島家のパーティーに次郎を呼ぶのです。叔父の樺島栄一郎(西村晃)が嫌な奴なんですよ。紳士淑女が集うパーティーで、ヤクザな次郎はみんなから怪訝な目で見られて、気まずいです。叔父は次郎に対して「真美を助けてくれたお礼にお金を出そう」と言って50万円を渡すのです。それをされたら次郎にメンツは丸つぶれです。次郎は屋敷を飛び出します。真美がすかさず追いかけます。「俺とあんたは身分が違うんだ」と言って去っていきます。ここで思うのですが、やはり真美の“心配り”が足りないのです。最初からこういう赤っ恥な展開になると予想できたはずです。この場面を観ていて思い出したの映画『タイタニック』と『マイ・フェア・レディ』です。前者はディカプリオがローズに誘われて、食事をする場面、後者はオードリー・ヘプバーンが競馬場で下品な言葉を使ってしまう場面です。両者とも「住む世界が違う」「メッキが剥がれる」ことを表しています。そして赤っ恥という結果に繋がるのです。
映画『泥だらけの純情(1977)』の結末・評価
さてさて次郎はヤクザとして出世したい気持ちが強いです。でも実際はまだヤクザの組に入ることができないチンピラです。ここで次郎は新宿を収めているヤクザ組織から命を狙われることになります。それが“覚せい剤”の売買の秘密を知ったからです。なんで覚せい剤を扱うヤクザは人間のクズらしく、人道に反するそうで、次郎は異を唱えたから命を狙われる代償を背負うことになりました。
真美は来る日も来る日も次郎を探します。そして次郎を見つけて何とか話を聞いてもらえるところまで接近します。それから次郎は真美をディスコやバーへ連れていき、大人の遊びを教えます。真美の叔父さんはとても心配です。真美の父親はスペイン大使で、しかも資産家。彼女は莫大な財産を相続する権利を持っています。ですから叔父は次郎というヤクザから切り離そうと躍起になります。でもですね、恋というのは障害があればあるほど激しく燃え上がるもんですよね。
真美は叔父が仕組んだフランス留学で、日本を経たなくてはいけません。それを次郎に伝えにいきます。ちょうどその頃、次郎もヤクザから追われています。真美は次郎に「一緒にどこかへ逃げて暮らそう」と提案します。次郎は最初こそ固辞しますが、真美の気持ちにほだされて一緒に逃げることにします。そして車に乗って出発しようとした時に、ヤクザたちが襲ってきます。複数人の襲撃に太刀打ちできません。次郎も真美もメッタ刺しにあって、命がつきます。真夜中の新宿です。横断歩道のど真ん中で二人は血まみれで横たわります。
いやはや、本映画『泥だらけの純情(1977)』は紛れもない『ロミオとジュリエット』状態で終わりました。若い二人が共に死ぬということは悲劇です。これが還暦を越えた年寄りの二人だったのなら感動はあまりしないでしょう。百恵と友和の映画で二人が一緒に死ぬ作品は本映画『泥だらけの純情(1977)』だけです。『絶唱』や『風立ちぬ』は百恵だけだし、『炎の舞』は友和は戦場で戦死、百恵は狂乱の末の海へのダイビングです。『春琴抄』は友和は自分の目を針で突き刺し、百恵への愛を全うします。『古都』は姉妹愛が中心になっています。
冒頭で本映画『泥だらけの純情(1977)』は「等身大の二人」と書いたのは、当時の二人はおそらく秘密を持ちながらお付き合いをしていたと思うからです。お互いに大スターですから、誰にも知られないように細心の注意を持っての交際だったと思うのです。二人だけの秘密を持つことで、連帯感と信頼感が湧き上がり、確実に恋の炎は燃え上がります。そして相まって「強いストレスを伴う」ことになります。もしバレてしまったら二人とも芸能界でどうやって生きて行けば良いのかわかりません。毎日、断崖絶壁を歩いているような気持ちでしょう。そういう気持ちが本映画『泥だらけの純情(1977)』の真美と次郎の“刹那的”な生き方、あるいは“悲劇的な幕切れ”を最高潮に盛り上げているのです。これは恋愛の当事者である二人じゃないと演じられない迫力に繋がったと思います。わたし的には二人の映画の中で「最も好きな映画」になっています。
映画『泥だらけの純情(1977)』のキャストについて
樺島真美(山口百恵)
高島次郎(三浦友和)
樺島栄一郎(西村晃)
中丸刑事(大坂志郎)
田口秀人(若杉透)
赤井武(石橋蓮司)
飯塚医師(有島一郎)
まとめ 映画『泥だらけの純情(1977)』一言で言うと!
「これほど一途に人を好きになってみたかった」
人を好きになる時って若い時は一瞬。というより“瞬殺”で好きになりましたが、年齢と経験を重ねると時間がかかるようになります。警戒してしまうんですよね。ですから若い時のあの感覚をもう一度、体感したくなります。映画『泥だらけの純情(1977)』の二人は本当に燃えるような恋愛だったと羨ましい限りです。
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映画『リヴァプール、最後の恋』
映画『泥だらけの純情(1977)』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
富本壮吉
脚本
石森史郎
原作
藤原審爾
製作
堀威夫 笹井英男
制作補
金沢博 近井一成
撮影
安藤庄平
美術
佐谷晃能
音楽
鏑木創
録音
福島信雅
照明
川島晴雄
編集
鈴木晄
助監督
伊藤秀裕
スチル
中尾孝
樺島真美(山口百恵)
高島次郎(三浦友和)
樺島栄一郎(西村晃)
中丸刑事(大坂志郎)
田口秀人(若杉透)
赤井武(石橋蓮司)
飯塚医師(有島一郎)
看護婦(原知佐子)
乳母・千加(加藤治子)
長門智子(泉じゅん)
野末光子(清水理絵)
高野香苗(島本すみ)
佐竹七重(緑魔子)
上條ユキ(永島暎子)
関刑事(早川雄三)
山岸刑事(神山勝)
塚田功市(内田良平)
1977年製作/96分/日本
配給:東宝