映画『愛と死の記録』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
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『愛と死の記録』
(92分/日本/1966)
【監督】
蔵原惟繕
【脚本】
大橋喜一 小林吉男
【企画】
大塚和
【出演】
渡哲也
吉永小百合
中尾彬
浜川智子
佐野浅夫
滝沢修
【日活公式サイト】
『愛と死の記録』
【HPサイト】
映画『愛と死の記録』IMDbサイト
【予告映像】
映画『愛と死の記録』トレーラー
- 映画『愛と死の記録』NHK BSプレミアム放送 8月21日(金)午後1時00分~2時33分
- 映画『愛と死の記録』のオススメ度は?
- 映画『愛と死の記録』の作品情報・概要
- 映画『愛と死の記録』のあらすじ・ネタバレ
- 映画『愛と死の記録』の感想・内容
- 映画『愛と死の記録』の結末・評価
- 映画『愛と死の記録』の演出について
- 映画『愛と死の記録』のキャストについて
- 三原幸雄(渡哲也)
- 松井和江(吉永小百合)
- 藤井(中尾彬)
- ふみ子(浜川智子)
- 岩井(佐野浅夫)
- 原爆病院長(滝沢修)
映画『愛と死の記録』NHK BSプレミアム放送 8月21日(金)午後1時00分~2時33分
8月21日(金)午後1時00分~2時33分
渡哲也さんがお亡くなりになりました。
偉大な俳優でした。
ご冥福をお祈ります。
本映画の渡哲也さんの演技を観てください。
吉永小百合さんもです。
等身大の二人がいます。
「核兵器反対」映画です。
映画『愛と死の記録』のオススメ度は?
星4つです
とても重たい映画です
「死」が繰り返されます
悲劇的な恋愛映画です
「核兵器反対」「戦争反対」のメッセージがあります
若き渡哲也さんと吉永小百合さんの等身大の演技
映画『愛と死の記録』の作品情報・概要
『愛と死の記録』1966年製作の日本映画。吉永小百合、渡哲也主演。中尾彬、芦川いづみ、浜川智子共演。蔵原惟繕監督作品。原作は大江健三郎の「ヒロシマ・ノート」の中で紹介された実話をベースにしている。当初は浜田光夫だったが右目を負傷し、渡哲也が代役となった。本映画で共演した吉永小百合と渡哲也は私生活でも恋愛に発展したことで話題となる。
映画『愛と死の記録』のあらすじ・ネタバレ
終戦から21年経った1966年の広島。印刷会社で働く三原幸雄(渡哲也)はバイクが好きな青年だ。ある朝の出勤時、危うくバイクで女性を轢きそうになる。レコード店に勤務する松井和江(吉永小百合) だ。その際、レコードを割ってしまう。弁償としてお金を渡すが、二人には共通の友人がいて交際に発展する。デートを重ね結婚を意識するようになる二人。しかし幸雄の親代わりである岩井(佐野浅夫)が難色を示す。理由は幸雄は被爆者であり、いつ「発症するか」がわからないから。幸雄の体は次第に弱っていく。和江は懸命に看病するが、、、、、
映画『愛と死の記録』の感想・内容
渡哲也さんと吉永小百合主演の「悲恋」はキツすぎる
正直申し上げて本映画『愛と死の記録』は「キツイ」映画です。もっと言うなら「重たい」映画であり、「救いようがない」映画です。
と言うのは完全なバッドエンドなのです。ハッピーエンドへ向かう雰囲気が一切ありません。“死、死、死”の繰り返しが強烈です。
もちろん時代が1960年代の発展する日本を舞台に美男美女の若手俳優たちが、輝きを描くことで悲劇性がより強調されると言う狙いもあったのでしょう。
それが見事に成功していると思われます。この映画の言いたいことは明確です。「核兵器反対」「戦争反対」です。それを心して観ることをオススメします。
そして何よりも渡哲也さんが死去して間もない最中で、本映画『愛と死の記録』を観るとより一層、“死の気配”を強くしているのです。さて、以下になぜ本映画がこれほど“ズシリ”とわたしの心にのしかかるかを分析してみました。
2、原爆投下の広島が舞台
3、青年は「白血病で死」へ向かう
4、若い男女の恋は成就せず
5、私生活の渡哲也さんと吉永小百合さんも破局
などが挙げられます。本当は原爆投下地の広島に哀悼の意を込めて、一番最初に書かなければいけないのですが、直近の渡哲也さんの死去のニュースの方が強いのでご了承ください。
でも言い方は悪いのですが、2020年のこの夏に本映画『愛と死の記録』がテレビで放映されることは被爆地・広島な長崎を忘れないためにはグッドタイミングと捉えれば良いのではないでしょうか。
わたしは原爆も核兵器も大反対です。
日本映画最高傑作「平和を願う」映画です
原爆投下の広島が舞台
さて、2の原爆投下の広島が舞台ですが、映画の端々に1966年の広島の光景が出てきます。町は一見、復興を遂げたように見えますが、まだまだ未整理の場所もチラホラを見えます。
松井和江(吉永小百合)が住んでいる家の周囲はバラック小屋が多いですし、道も未舗装です。
もちろん、大きな道路には車や電車が走り交通網の整備は充足しています。でもです。
若き二人、三原幸雄(渡哲也)と 松井和江(吉永小百合)デートを重ねたり、重要な告白をする場面で平和記念公園、原爆ドーム、供養塔、原爆の子像、原爆慰霊碑、原爆病院、そして原爆ドームの内部が用いられています。
この演出が最後まで効いてくるのです。どう効いてくるかと言うと「原爆は恐ろしい」となります。
吉永小百合さんが沖縄で、、、
青年は「白血病で死」へ向かう
次に3の青年は「白血病で死」へ向かうですが、タイトルが「愛と死」って入ってますから、「ああ、この幸雄は死ぬんだ」とわかってしまうところが勿体無いです。
でも新進気鋭俳優の渡哲也さんが良い味を出しています。
冒頭から飛びっきりの笑顔で登場します。藤井(中尾彬)とジャレ合います。 動きも軽くて、超健康的な青年をイメージさせます。バイクも乗り回します。
でもこの青年の体には、、、。と言う展開が少しずつ忍び寄ってきます。最初は過労でダウンしますが、右足に異常をきたします。
そして圧巻だったのは原爆ドーム内で和江に「俺の体には放射能があるんだ」と叫ぶ場面です。これはキツかったです。
全被爆者の心情を吐露しているセリフかと思いますが、今から50年前にこの言葉を映画で言ったことは大きな勇気が必要だったことでしょう。
幸雄の体は徐々に弱っていきます。もう「死へ一直線」なんです。どんな治療をしても助かることは不可能です。
医者も白血病に対しての治療法はないと諦めています。その死へ向かう幸雄を懸命に愛する和江の美しさがさらに悲劇を助長するのです。
後半に向かうにつれて和江にも“死”のイメージが重なってきます。幸雄を亡くして、一時的には失意に落ちますが、和江は元気を取り戻します。
でもです、でもなんです。まさかの結果に、、、
やっぱり広島で描かれると胸が締め付けられる
若い男女の恋は成就せず
次に4の若い男女の恋は成就せずですが、映画の構成的に成就しない方がヒットすると考えたのではないと思います。
実際に被爆した人の恋愛を調査、取材して盛り込んでいるはずです。
被爆した人たちはやはり自分の体のことがとても心配だったでしょうし、恋愛し、結婚した後で体調に異変が起こり、亡くなった方も多いと思います。
若い恋人たちも相手が原爆の後遺症で苦しんだり、亡くなった方も多いでしょう。
ですから本映画『愛と死の記録』を観ていると「これは実際にあった物語だ」と痛感させられます。
そして渡哲也さんと吉永小百合さんを通して、その背後の多くの「原爆の影響による死者」たちの叫び声が心に重たくのしかかってくるのです。
それが本当に悲しいし、やるせないし、許せない気持ちになるのです。結果的に二人の恋の成就を阻んだのは「原爆」「戦争」であったのです。キッツイです。
まさ戦争の匂いがかすかに残る時代
私生活の渡哲也さんと吉永小百合さんも破局
そして5は蛇足かもしれませんが、私生活の渡哲也さんと吉永小百合さんは恋愛関係にありました。
本映画『愛と死の記録』での共演がきっかけとのことです。映画の中でのお二人のお芝居は本当に新鮮です。お似合いのカップルです。
ハンサムな渡さんと美人な吉永小百合さんという申し分ないカップルです。こんな二人が街を歩いていたら二度見どころではありません。
二人の恋愛は順調だったそうです。特に渡さんは性格的に「一直線」ですから吉永さんに誠心誠意尽くされていたそうです。
でも結果的には二人は別れます。若荒れた原因は多々あると思いますが、外部の人たちの反対からだそうです。
別れた原因が二人のものでしたら、何も言いません。でもそれが他者からの妨害というのがさらに悲劇を誘ってくるのです。
恋愛映画の名作は「障害を乗り越えて」という作品が多いです。成就した時は大きな感動を得ます。
でも実は成就しなかった方が観客の心に深く残るのです。
となると二人の私生活での恋愛も成就せず、本映画『愛と死の記録』も成就せず、というダブルパンチなんです。
これって結構、効いてきます。ボディーブローを打たれたように、、、。
渡哲也の親分の石原裕次郎の名演を観よ!
映画『愛と死の記録』の結末・評価
さて、それでなんですが、、、、。実は6があるんです。
上記してませんが、これが奈落の底に突き落とされて「立ち上がれなくなる」ほどの衝撃があるのです。「ここまでやるのか」って愕然とします。
もちろん、若き二人の恋愛映画ですが、最後の最後で蔵原惟繕監督からの痛烈なメッセージを受け止めるのです。
松井和江(吉永小百合) が後追い自殺します。服毒自殺です。三原幸雄(渡哲也)を失って人生を止めてしまうのです。
これはキツイです。いやあ、本映画『愛と死の記録』は、もちろん良い映画です。
間違いなく「核兵器反対」「戦争反対」映画ではあります。改めて今ある平和に感謝しなければいけません。
平和で自由で安心な国を作りたいと切望している映画です
映画『愛と死の記録』の演出について
冒頭の不穏な音楽がちょっと怖い印象です。また平和の象徴であるハトの群れを登場させていますが、飛び立った後の二羽残っているショットは秀逸です。しかも一羽は傷ついています。これから始まる映画は「そんなに甘くないぞ」をうまく表しています。
幸雄がバイクに乗る場面はとても素晴らしかったです。若者とバイクがとても時代を象徴しています。
「自由」を追い求める若者と無鉄砲だけど、「未来」へ夢も表されていました。
そしてもうひとつ、やはり渡哲也演ずる幸雄がバイクを乗り回す姿「刹那的」な雰囲気も現れていました。疾走イコール喪失も描写していると思われます。
幸雄が死んで和江が、原爆病院長(滝沢修)との会話ですが、頻繁に「神様しかわからない」という言葉出てきます。
その際、和江が「卑怯」という場面があります。確かに全てを神様に委ねたら答えになりません。このやり取りはとても面白いです。
和江が親友のふみ子(浜川智子)と愛について語る場面も面白いです。「愛とは、、、愛である」です。
その言葉が意味深で最後の自殺をイメージさせる伏線です。
ジブリ作品には「反戦」へのメッセージがある
https://undazeart.com/from-up-on-poppy-hill/
映画『愛と死の記録』のキャストについて
三原幸雄(渡哲也)
原爆で両親を亡くし自らの被爆。印刷会社で働いている。バイクが好き。次第に体が弱っていく。渡哲也さんの演技は本当に「まっすぐ」でした。一本筋が通ってました。
松井和江(吉永小百合)
レコード店で働いている。大家族。兄がうるさい。「幸雄、幸雄」の連呼が切ない。吉永小百合はもうこの時はベテランの域だったのではないでしょうか。健気な女性を見事に演じていました。
藤井(中尾彬)
三原幸雄の同僚。ふみ子(浜川智子)と恋愛関係。中尾彬さん、意外とカッコいいです。演技も飄々としています。バイクで駆けつけた場面は危なかった。
ふみ子(浜川智子)
和江の同僚で藤井と恋愛関係。浜川智子さんは綺麗ですね。笑った顔がちょっと小悪魔ぽくて良かったです。
岩井(佐野浅夫)
幸雄の親代わり。幸雄のことを気にしている。佐野浅夫さんの演技は圧巻ですね。ちょっと意味深な雰囲気が「この人悪者?」って思わせるところが良かったです。
原爆病院長(滝沢修)
医者。死について語る。滝沢修さんはお医者さんぴったりです。無神論者なのか崇拝者なのかわからないような演技が良かったです。
まとめ 映画『愛と死の記録』一言で言うと!
「やっぱり核兵器はダメだ」
世界唯一の原爆被爆国の日本はやっぱり「核兵器反対」と声高に言い続ける必要がああると思います。この映画を観ていると本当にキツイ気持ちになりました。いまだに原爆の後遺症で苦しんでいる方々の気持ちもわかりました。
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映画『愛と死の記録』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
蔵原惟繕
脚本
大橋喜一 小林吉男
企画
大塚和
撮影
姫田真佐久
美術
大鶴泰弘
音楽
黛敏郎
録音
紅谷愃一
照明
岩木保夫
編集
丹治睦夫
スチール
目黒祐司
三原幸雄(渡哲也)
松井和江(吉永小百合)
藤井(中尾彬)
ふみ子(浜川智子)
岩井(佐野浅夫)
病院長(滝沢修)
和江の兄(垂水悟郎)
和江の母(三崎千恵子)
和江の義姉(鏑木はるな)
近所の娘(芦川いづみ)
看護婦長(漆沢政子)
患者A(日野道夫)
患者B(河瀬正敏)
恩師(宇野重吉)
看護婦(萩原光子)
1966年製作/92分/日本
配給:日活