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『王様になれ』(115分/日本/2019年)
映画『王様になれ』のオススメ度は?
星3つです。
アーチスト出演の映画です。
構成が難しいと思います。
青春映画です。
夢に向かって突き進む青年の挑戦と苦悩と格闘です。
若干、恋愛もあります。
師匠の優しさにジーンときます。
友だち、恋人と観にいってください。
映画『王様になれ』の作品概要
オルタナティヴ・ロックバンド「the pillows」の30周年記念企画「Thank you, my highlight」の一環として制作された。原案はthe pillowsのメンバーである山中さわお。
映画『王様になれ』のあらすじ・ネタバレ
ミュージシャン専門のフォトグラファーを目指す神津祐介(岡山天音)は叔父の営むラーメン屋で働きながら写真スタジオのアシスタントして悶々とした毎日を過ごしていた。ある日、店に訪れた藤沢ユカリ(後東ようこ)と仲良くなりthe pillowsのライブへ行き更なる刺激を得た。しかしスタジオをクビになり自暴自棄に。そしてミュージシャン専門のフォトグラファー虻川塁(岡田義徳)に弟子入りする事で運命が大きく変わっていく。
映画『王様になれ』の感想・評価・内容・結末
アーチスト原案の映画製作はとても難しい
アーチスト主導の映画を作るのは本当に難しいと思います。オクイシュージ監督はよくまとめ上げたと思います。
映画としては可もなく不可もなしの出来だと思います。この映画は若者が夢への挑戦する過程で、苦悩、葛藤、格闘、失意、恋愛、再挑戦を通して成功を勝ち取ることがテーマになっていると思います。
ですが、その挑戦の過程の苦悩がいまひとつだったような気がします。途中までは良かったのです。
原因はアーチストが出過ぎてる点です。あまりにもライブ映像が多すぎるのと長いのです。
そのせいで挑戦者である若者へ心情移入が寸断されてしまったのです。そこが勿体無いと思いました。
監督は確かにアーチストに気を使ったでしょう。特にグレイのTERUとJIROの演奏はフルバージョンで見せてますから。
あの場面は必要ないでしょう。たぶんファンサービスだと思いますが、全く物語に関係がありませんから思い切ってカットすべきです。
もし活かすのであれば、主人公の過去の経験や懸命に生きている様子をカットバックで入れるなどの工夫があっても良かったと思います。
ピロウズのセールスプロモーションビデオなのか
昨今、音楽映画が数多く作られています。『ボヘミアン・ラプソディ』や『ロケットマン』も然り。この2作はとてもうまく出来ていたました。
音楽の挿入が物語の邪魔にならないように、もっというなら更なるエッセンスを加える要素になっていました。
でも本作は「ピロウズのセールスプロモーションビデオ?」と思ってしまうくらいピロウズ色が強かったのが残念です。
確かにメンバーの山中さわおさんが原作ですからその気持ちを汲んで脚本にする苦労があったと思いますが、もう少しひねるべきだと思います。
登場人物の設定は良いと思う
さて、肝心の映画の方ですが、亡き父の影響でカメラが好きになり写真専門学校へ行き卒業したがいまだに芽が出ない青年、神津祐介(岡山天音) がミュージシャン専門のフォトグラファーを目指し挑戦していく物語となっています。
その過程で女の子と恋したり、スタジオをクビになったりとドタバタします。
まずこの祐介ですが“空気読めない、人に気持ちがわからない、自己中心”といった性格の持ち主で周りの人間の不信感を買っています。
その設定はとても良いと思います。岡山天音くんが絶妙の演技で祐介の不信感を出しています。
空気読めないは悪くない、純粋なのだ
スタジオをクビになる理由も笑えます。勝手に写真にレタッチしたり、モデルに失礼な振る舞いをしたりと通常ではあり得ない事ばかりです。
この映画を観ていると実際にこんなアシスタントはいるのだろうかと思ってしまいますが、稀にいます(わたし自身スタジオに出入りしていたのでわかります)
でも大抵のアシスタントは数ヶ月で先生の意図を理解します。そういう人が独立できる世界です。
ですから祐介が芽が出ない理由を如実に表している場面であると言えます。
岡山天音くん、めっちゃ可愛い
恋もします。でもその恋の相手にも不信感を募らせます。
藤沢ユカリ(後東ようこ) は幼い頃から心臓の病を患っています。ユカリは演劇をやっていますが、彼女もまた芽が出ません。
二人は急接近します。ユカリの人生はピロウズの存在無しでは語れません。
そのピロウズの悪口を言ってしまうというバカをやってしまいます。本当に人の気持ちがわからない青年です。
でもこういう青年っていましたよ。読めないからこそ純粋なのではないかと思うのです。わたしはどちらかというとこういう祐介みたいな青年が好きですね。
師匠の優しさが身に染みます
スタジオをクビになった祐介はアーチスト専門のフォトグラファー虻川塁(岡田義徳) に弟子入りを懇願します。
最初は断られますが、何度も土下座して受け入れてもらいます。わたしはこの映画の唯一素晴らしいと感じたのが、この師匠の優しさです。
大きな心で祐介を受け入れるところです。通常でしたらあり得ないミスを弟子がしたら「即クビ」ですが、虹川は暖かく見守るのです。
ミスを責めるのではなくチャンスさえ与えます。本当にいい師匠だと思います。虹川の言葉にグッときました。
「あいつにチャンスを与えたいんだ、あいつの人生を雑にしたくないんだ」これは本当に人間としての深みがある言葉です。
師匠は弟子に全てを与えることが仕事
写真でも映像でもはたまた陶芸でも、あるいは寿司職員でも大工仕事でも師匠の技を盗めとか、数年は修行だ、とか言われてずっと下働きをする習慣が日本にはありますが、わたしはそんなの不要だと思うのです。
そんなことしていたら若者は育ちません。特に現在の目まぐるしく進展する世界をみてください。その中で職人的な仕事を目指す若者が稀有です。大切にしないと伝統が途切れてしまいます。
ですから師匠はあっさりと技術や感覚、さらにはチャンスを与える事こどがその職人世界の繁栄に繋がるのです。
祐介は師匠から頂いたチャンスをきっちりモノにしたと思います。映画の最後の笑顔でわかりました。
つまりはピロウズ結成30周年の記念映画なのだ
この映画をまとめるとピロウズ結成30周年の記念映画として、ファンに感謝の気持ちを込めて制作された作品でなければいけない。
だから映画の中には感動がないとダメである。若者が夢への挑戦を通して成長していく物語にしよう、となる。
まあ、動機はどうであれ一応、最後は監督の力技でまとめあげた作品になっている。
岡山天音について
天音くんはしっかりと脚本を読み込んでいるのがわかりました。この祐介の性格と挙動不信感を見事に演じています。あれだけの不信か雰囲気は中々出せないのではないでしょうか。顔はとてもハンサムですが、気色の悪さを浮き出す表情がたまりません。観ていてキューブリックの『シャイニング』のジャック・ニコルソンを彷彿させました。ただカメラの構え方がいまひとつでした。
藤沢ユカリについて
良い演技だったと思います。年上のお姉さん感がとてもよく出ていました。不治の病という設定だったのですが、出演シーンが少ないせいかその苦悩が伝わるには不十分でした。1番のお気に入り場面はやはり祐介を叱るところです。「お金もらってるんだよね、それってプロでしょ。文句ばかり言わないで」とても迫真の演技でした。着物姿を観てみたいと思いました。
虻川塁について
この人の演技は温かみがありますね。一見クールで自分が一番大事なフォトグラファーのイメージだったのですが、とても心が広くて優しさに溢れている人だわかると涙腺が緩みました。若者の未来のためにお願いする場面は秀逸でした。これからの活躍を期待できる役者さんだと思います。
映画『王様になれ』まとめ 一言で言うと!
「青は藍より出でて藍より青し」
まさにこの映画の未来像はそうなって欲しいです。この世界は若者のためにあると思っています。若者が夢を描いて生きていける世界が本来あるべき姿です。ですから師匠たるや自身の持っている経験、技術、人脈からチャンスまでの全てを若者に捧げるのが本命だと思います。
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映画『王様になれ』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
オクイシュージ
原案
山中さわお
脚本
オクイシュージ
製作
坂本敏明 門池三則 中林千賀子
エグゼクティブプロデューサー
山口幸彦 三浦一城
プロデューサー
三宅はるえ
アソシエイトプロデューサー
山内拓哉 新井千絵
撮影
福本淳
照明
市川徳充
録音
西山徹
装飾
徳田あゆみ
スタイリスト
阪上秀平
ヘアメイク
外丸愛
編集
鈴木理
音楽
山中さわお
音響効果
勝亦さくら
助監督
市原直
制作担当
星野友紀
神津祐介(岡山天音)
藤沢ユカリ(後東ようこ)
西小路健(岩井拳士朗)
曽田(奥村佳恵)
モデル(平田敦子)
古志野(村杉蝉之介 )
里子(野口かおる )
大将(オクイシュージ)
虻川塁(岡田義徳)
TERU
JIRO
ホリエアツシ
ナカヤマシンペイ
日向秀和
高橋宏貴
佐々木亮介
田淵智也
新井弘毅
鈴木浩之
yoko
楠部真也
平田ぱんだ
ビートりょう
星川ドントレットミーダウン
本間ドミノ
千葉オライリー
宮本英一
藤田恵名
宮崎朝子
松岡彩
吉川美冴貴
the pillows山中さわお
the pillows真鍋吉明
the pillows佐藤シンイチロウ
2019年製作/115分/G/日本
配給:太秦