映画『罪の声』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『罪の声』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『罪の声』
(142分/G/日本/2020)
【監督】
土井裕泰
【原作】
塩田武士
【脚本】
野木亜紀子
【プロデューサー】
那須田淳 渡辺信也 進藤淳一
【撮影】
山本英夫
【照明】
小野晃
【録音】
加藤大和
【美術】
磯見俊裕 露木恵美子
【編集】
穗垣順之助
【音楽】
佐藤直紀
【主題歌】
Uru
【出演】
小栗旬
星野源
松重豊 古舘寛治 宇野祥平 篠原ゆき子
原菜乃華 阿部亮平 尾上寛之 川口覚
阿部純子 市川実日子 火野正平
宇崎竜童 梶芽衣子
【HPサイト】
映画『罪の声』公式サイト
【予告映像】
映画『罪の声』トレーラー
映画『罪の声』のオススメ度は?
星4つです
面白いです
原作がしっかりしています
脚本も良いです
もちろん役者陣も素晴らしい
小栗旬「ステキ」
星野源「真面目」
引き込まれる映画です
映画『罪の声』の作品情報・概要
『罪の声』(つみのこえ)塩田武士のサスペンス小説。講談社にて2016年発表。『グリコ・森永事件』をモチーフに“子どもの声”を主軸に解き明かす物語。塩田武士が大学生時代に本事件関連の書籍を読み「自分と同世代の子どもの声が」に衝撃を受けて構想を練る。実に20年近くかけて書き上げる。映画化には土井裕泰監督で小栗旬と星野源のW主演で公開。
映画『罪の声』のあらすじ・ネタバレ
京都でテーラーとして生業を立てる曽根俊也(星野源)は、押入れの中から懐かしい子ども時代の歌声の入ったカセットテープを見つけ聴いていた。亡き父親の声も入っている。しかし途中で「きょうとへむかって いちごうせんを にきろ ばーすてーい じょーなんぐちの べんちの こしかけ」に変わる。聞き覚えのある声だ。そう、かつて日本中を恐怖のどん底に陥れた『ギン萬事件』の子どもの声だ。「まさか自分が、、、」の衝撃から独自に調査を始める。「誰が録ったのだろう」を求めて。一方、大日新聞の文化部でペラペラの記事を書いていると上司からからかわれている阿久津英士(小栗旬)は突如、『ギン萬事件』を洗い直せと命令される。「過去を掘り起こして何になる?」と固辞するが仕方なく取材することに。すると次々と新たな真相が浮かび上がってくることに。そして阿久津はかつて社会部の記者であったかのように夢中になって取材を重ねることに、、、。
映画『罪の声』の感想・内容
原作者・塩田武士さんの想像力と創造性に驚愕する
『罪の声』観ました。「とても素晴らしい映画」でした。まず原作がすばらしいと思います。塩田武士さんです。
事件の家族あるいは関係者であろう“子どもの声”を主軸に描いた作品です。原作者・塩田武士さんが子どもの声を主軸に物語を書くと言う発想が作家としての素晴らしさを表しています。
本映画『罪の声』は昭和最大の未解決事件である『グリコ・森永事件』をモチーフにした作品です。この事件を元に書かれた小説はたくさんあります。
しかし本映画『罪の声』のように子どもの声を主軸に描いたものはありません。
「子どもが巻き込まれた」ことを想像するとなんとも痛ましい事件だと言える
ゆえに原作者の塩田武士さんの想像力の高さに驚かされたのです。
確かに「もし自分があの声の持ち主であったのなら」大きな葛藤を抱えて人生を過ごしていると思います。もちろん幼少時の記憶はないかもしれません。
いまどこかで「わたしの声かも」と思い当たる人がいるのであれば、本映画『罪の声』の三人の子どものように心中は苦しいのではないでしょうか。
「子どもが巻き込まれた」ことを想像するとなんとも痛ましい事件だと言えます。
さらにこの大事件に巻き込まれてリストラされた人々、連鎖倒産に追い込まれた人たち、自ら命を絶った人や未だに心に闇を抱えている人もいるのだろうと改めて思うと胸が痛みます。
脚本家・野木亜紀子さんの才能と技量も素晴らしい
さて本映画『罪の声』は原作も良いのですが脚本も素晴らしいといえます。脚本は野木亜紀子さんです。野木さんが2時間22分に纏め上げています。
原作から読み取るとテレビドラマにして、ワンクール並みの内容です。また映画にするのなら4時間くらいの尺が必要になる物語です。
野木さんの手腕で要所要所を拾い集めて見事、2時間22分人まとめあげています。才能もありますが技量の高さに驚かされました。
小栗旬と星野源はまさにはまり役の「見事な演技」
そして俳優陣。小栗旬と星野源はまさにはまり役でした。見事な演技です。
特に小栗旬は「一番脂がのっている時期」に、この新聞記者という役を演じた事は大きな意義があるのではないでしょうか。
今後の役者人生にどう活かされるのかとても楽しみです。
星野源はミュージシャンですが最近テレビドラマに出演してコミカルな演技で注目を集めています。
映画においてはまだまだ未知数だと思っていましたが、見事に“罪の声”の当事者をやりきっていたと思います。
彼は体が細く動きも繊細なのでテーラーという職人の生き方が「なんてステキなのだろう」と思わせてくれました。
「自分の声が犯罪に使われていたとは、、、」という衝撃
さて本映画『罪の声』は二人の人物がそれぞれの問題を解決しようと単独で動いてますが、最終的には考えが一致して解決する物語構成となっています。
間違いなく“バディムービー”です。
曽根俊也(星野源) はテーラーとして妻と娘、そして末期ガンの母と京都で暮らしています。素朴な男です。
ある日、押入れの中から古いカセットテープを見つけました。再生すると懐かしい自身の歌声が聴こえてきます。
しかし直後に「きょうとへむかって いちごうせんを にきろ ばーすてーい じょーなんぐちの べんちの こしかけ」という声です。
記憶にはないが間違いなく自分の声です。しかも聞き覚えがある内容です。そうです。世間を騒がせ恐怖のどん底に陥れた『ギン萬事件』です。
当時の俊也は幼くて知りませんでしたが、あまりにも有名な事件なのである程度は知っていました。
それから俊也は「自分の声が犯罪に使われていたとは、、、」と衝撃を覚えます。
阿久津英士(小栗旬)は上司の水島洋介(松重豊)と鳥居雅夫(古舘寛治) から「『ギン萬事件』を取材しろ」と命令される
一方、大日新聞の文化部でペラペラの記事を書いている阿久津英士(小栗旬) に上司の水島洋介(松重豊)と鳥居雅夫(古舘寛治) から「『ギン萬事件』を取材しろ」と命じられます。
今さら35年前の事件を調べたところで何の価値もないと固辞しますが、命令ですからやらざるを得ません。
上司たちは当時、首謀者である「くらま天狗」と名乗る犯人グループに散々と舐めらた忸怩たる思いがあります。
犯人を追い詰めるどころが翻弄されて終わった事件です。その事件の真相を暴かない限り新聞社としての名誉は保てないと考えているのです。
それをもう一つ、かつて社会部で敏腕記者だった阿久津にもう一度奮起してして欲しいという気持ちもありました。
俊也は「一体誰が俺の声を録音したのか?」阿久津は「事件の首謀者は誰なのか?」
こうしてそれぞれの事情から曽根俊也(星野源) と阿久津英士(小栗旬) は『ギン萬事件』追及へと踏み込んでいきます。そして二人は出会うのです。
俊也は「一体誰が俺の声を録音したのか?」が本題です。阿久津は「事件の首謀者は誰なのか?」になります。
二人の集めた情報を精査すると次々と犯人像が浮かんできます。しかしながらすでに故人も多く、中々進展しません。
俊也にとってもうひとつ重要なことは「他の子どもたちの安全」があります。それを阿久津に託します。
小栗旬の冷静と淡々とした“怒り”に震えを覚える
本映画『罪の声』は松本清張の『点と線』あるいは『砂の器』を彷彿させるように、ひとつ一つの事実を積み重ね交差させながら進展していくので、とてもスリリングです。
全く飽きさせません(ただ会話劇中心なのが少し気になります)最終的には事件の「首謀者」と「誰が録音したのか」がわかります。
事件を起こした人物に怒りをぶつける阿久津が素晴らしいです。
「あなたの身勝手な思い込みのせいで」とか「あなたの権力への逆恨みから」とか「あなたの正義の犠牲になった子どもたちがいる」などと投げつけます。
観ているわたしも怒りを張り上げたいのですが、演じる小栗旬さんがあまりにも冷静に淡々に語る方が説得力があるのです。素晴らしかったです。
映画『罪の声』の結末・評価
犯人像を学生運動の残党に選んだことが良い“団塊の世代”の人たちです
本映画『罪の声』はもちろんフィクションですが、犯人像を学生運動の残党に選んだことがとても良いと思います。
つまり“団塊の世代”です。
彼らほど役に立たない人たちはいません。本当に彼らは後の世代に“負の遺産”しか残していません。
自分たちの正義を押し付けることで「脅しビジネス」を展開して“良い人アピール”をしている人たちです。
体制や権力に反対することで真の民主主義の実現、もしくは共産革命を目指しているわけですが、結局のところ毎日が“お祭り”で何も日本の財産になるものは残さなかったのです。
おそらく原作者の塩田武士さんは新聞記者時代に団塊の世代の残党たちと言われる上司に悩まされたのではないかと思います。
「過去の墓起こしをして何になるのか?」と阿久津が言い放つ場面でわかりました。
報道に自由とか、真実は何かなどと綺麗事を並べ立てる新聞社やテレビ局などのマスコミこそ旧態然としていて「人の不幸をエンタメ化して商品として儲けている」だけなのです。
本映画『罪の声』では阿久津がかつて社会部時代の自分を語る場面で明らかにしています。
身勝手な正義「警察や社会に見せつけたかった」と言うが「何も変わらなかった」
本映画『罪の声』の結末で阿久津が曽根達雄(宇崎竜童)が「警察や社会に見せつけたかった」と言った言葉に対して「それで何かが変わったのですか?何も変わりません」
さらに「あなたは子どもの運命を変えてしまった」と言います。続けて「(甥の)俊也さんから伝言があります。私は決してあなたのようにはならない、決して!」
それを聞いて達雄は絶句します。ここの場面は震えました。
そして俊也も幼い自分の声を録音した人物と対決、いや対話します。
母・曽根真由美(梶芽衣子)です。彼女は達雄と同じく学生運動に没頭していました。
理由は父親が窃盗の罪を被せられて自殺したことに対する恨みからです。権力への恨みです。しかし俊也の父に出会って闘争をやめます。
俊也も生まれて幸せな日々でしたが、そこへかつての仲間である達雄が現れて「声を録ってくれ」と頼まれます。
最初は躊躇したけれど、何か弾けます。「奮い立った」そうです。
父を失った悲しみと怒り、そして学生運動へ闘志を燃やしていたあの頃の想いを思い出して「奮い立った」のです。
それを聞いて俊也は「そんなことのために俺の声を録音したのか」と冷静に言います。
もう母は死期が近いので厳しいことは言いません。
しかしその表情には「この声の子どもたちはずっと苦しんでいる」というメッセージは伝わってきました。
とても良い映画でした。
映画『罪の声』のキャストについて
阿久津英士(小栗旬)
大日新聞文化部記者。かつては社会部。上司の命令で『ギン萬事件』を取材することに。最初はやる気なさげだが、次第にのめり込んでいく。この取材をきっかけに社会部へ戻ることに。小栗旬さん「ステキ」でした。もう最高に素晴らしかったです。俳優人生の最盛期ではないでしょうか。また新たな境地に達した感がありました。
曽根俊也(星野源)
職業はテーラー。妻と娘あり。母は末期ガンで入院中。押入れの奥からカセットテープを発見。再生すると自分の声が。あの『ギン萬事件』の子どもの声だった。独自に調査を開始する。
水島洋介(松重豊)
大日新聞・元社会部記者。かつて『ギン萬事件』を取材していた。しかし結局は犯人グループに翻弄されて終わり。忸怩たる想いがある。新聞社としての名誉を挽回したい。
鳥居雅夫(古舘寛治)
大日新聞社会部デスク。『ギン萬事件』当時は新人記者だった。 阿久津英士をなんとか社会部へ戻したい思いから指名する。
生島総一郎(宇野祥平)
子どもの声の男の子の一人。事件後、父は殺され、母と姉ととらわれの身になる。逃亡生活に入る。目も見えなくなる。
まとめ 映画『罪の声』一言で言うと!
「恐るべし!塩田武士」
本当に面白い物語だと思います。まず“子どもの声”に主軸を置くところが秀逸です。塩ただんが大学生の頃から温めてきた作品ということも驚きました。一時書こうと編集者に相談したところ「筆力がまだ足りない」と言われてストップしたそうです。その後、自身に子どもが生まれたことも良い作品に繋がったそうです。
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映画『罪の声』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
土井裕泰
原作
塩田武士
脚本
野木亜紀子
プロデューサー
那須田淳 渡辺信也 進藤淳一
撮影
山本英夫
照明
小野晃
録音
加藤大和
美術
磯見俊裕 露木恵美子
衣装
宮本まさ江
編集
穗垣順之助
音楽
佐藤直紀
主題歌
Uru
助監督
藤江儀全
記録
加山くみ子
制作担当
吉田智 間口彰
キャスティング
おおずさわこ
ラインプロデューサー
橋本靖
阿久津英士(小栗旬)
曽根俊也(星野源)
水島洋介(松重豊)
鳥居雅夫(古舘寛治)
生島総一郎(宇野祥平)
生島千代子(篠原ゆき子)
生島望(原菜乃華)
生島秀樹(阿部亮平)
曽根光雄(尾上寛之)
若き日の達雄(川口覚)
若き日の真由美(阿部純子)
水澤紳吾
山口祥行
堀内正美
木場勝己
橋本じゅん
桜木健一
浅茅陽子
高田聖子
佐藤蛾次郎
佐川満男
宮下順子
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2020年製作/142分/G/日本
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