映画『ナイチンゲール』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『ナイチンゲール』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『ナイチンゲール』(136分/R15+/オーストラリア・カナダ・アメリカ合作/2018)
原題『The Nightingale』
【監督】
ジェニファー・ケント
【製作】
クリスティーナ・セイトン ブルーナ・パパンドレア スティーブン・ハッテンスキー
ジェニファー・ケント
【出演】
アシュリン・フランシオーシ
サム・クラフリン
バイカリ・ガナンバル
デイモン・ヘリマン
ハリー・グリーンウッド
マイケル・シーズビー
ユエン・レスリー
- 映画『ナイチンゲール』のオススメ度は?
- 映画『ナイチンゲール』の作品情報・概要
- 映画『ナイチンゲール』のあらすじ・ネタバレ
- 映画『ナイチンゲール』の感想・評価・内容・結末
- 映画『ナイチンゲール』のキャストについて
- まとめ 映画『ナイチンゲール』一言で言うと!
- 『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
- 合わせて観たい映画
- 映画『ナイチンゲール』の作品情報
映画『ナイチンゲール』のオススメ度は?
星4つです
差別・偏見について考えさせられます
女性への暴力がテーマです
アボリジニへの人権も訴求しています
憎悪と復讐は連鎖します
過去の歴史認識も大事
未来を見るのも大事
映画『ナイチンゲール』の作品情報・概要
オーストラリア映画。女性監督ジェニファー・ケント長編第二弾作品。イギリス植民地時代のオーストラリアを舞台に、夫と子供を殺されてアイルランド人女性が復讐を果たすバイオレンススリラー。ならびに先住民のアボリジニ人の視点と思いも絡めて、差別・偏見と支配という苦悩も描いている。それらを内包しながら女性への暴力根絶を訴求している。2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で審査員特別賞ほか計2部門を受賞した。アシュリン・フランシオーシ主演。サム・クラフリン、バイカリ・ガナンバル、デイモン・ヘリマン、ハリー・グリーンウッド、マイケル・シーズビー、ユエン・レスリー共演。
映画『ナイチンゲール』のあらすじ・ネタバレ
アイルランド人のクレア(アシュリン・フランシオーシ)はケチは窃盗をしてオーストラリアのタスマニアに流刑されている。夫と子供も一緒に。歌が上手く美人であったために当地を支配するイギリス人将校ホーキンス(サム・クラフリン)の性奴隷となっている。刑期が終わっても自由になれないことを夫の エイデン(マイケル・シーズビー) が直訴する。しかしホーキンスの怒りを買い、クレアの面前で夫と赤ん坊は殺される。辛うじていい残ったクレアはホーキンスに復讐を誓う。タスマニアを縦断するために雇ったのが先住民のアボリジニ人の案内人ビリー(バイカリ・ガナンバル) だ。当初、クレアはビリを見下していたが、やがて気持ちを同調させていく。果てして復讐は成し遂げられるのか、、、、。
映画『ナイチンゲール』の感想・評価・内容・結末
ジェニファー・ケント監督「暴力についての物語」
すごい映画でした。衝撃的な内容でした。わたしたち日本人はオーストラリアの歴史を深くは知りません。
でもこの映画『ナイチンゲール』を観ると、どれだけ酷いことが行われていたのかについてショックを受けます。最初からこの映画で行われることを書きます。
略奪、暴力、支配、強姦、殺人が何度も繰り返し展開されます。映画祭で上映された際に気分が悪くなり途中退席した人が続出したくらいの描写です。
でもスクリーンから発せられるメッセージはとても強いものでした。監督はオーストラリア出身の女性監督のジェニファー・ケントです。
彼女が言いたかったことは「暴力についての物語。女性の視点から見る暴力の影響についての物語」なのです。
女性差別が激しかった時代に指揮者を目指す信念に感動
人種差別、女性差別根絶を訴える映画
まずこの映画『ナイチンゲール』がオーストラリア出身の女性監督が描いたことの意義がとても大きいと思います。自国の自身の先祖たちの“恥の物語”だからです。
デメリットも大きいからです。世界に自身の国の成り立ちや残虐非道な先祖について声を高らかにすることで失うことも多々あります。
まずはアボリジニの人たちを徹底的に差別し支配し、そして根絶したという罪、さらに女性を“性の玩具”として扱ってきた事実。
そして、イギリス人がアイルランド人に対しての迫害意識などです。
我らが草間彌生は差別・偏見に果敢に挑んだ
白人が世界を植民地化した時代背景もわかる
これらを一気に詰め込んでいます。一見するとイギリス人vsアイルランド人の戦いをオーストラリアに持ち込んだ民族紛争となりますが、その差別意識のピラミッド構造にはっとさせられます。
テッペンに君臨するのはイギリス人です。次にアイルランド人、そして最下層にアボリジニ人となっています。
主演のクレア(アシュリン・フランシオーシ) はアイルランド人ですが、道案内人のアボリジニ人のビリー(バイカリ・ガナンバル)に対して当初は強い差別感を持っています。
この構図に白人の支配欲という差別意識が読み取れます。いかに他者と比べて優秀であり、肌に色が濃くなる人間が下等であるかという白人至上主義につながります。
ならびに植民地開拓で覇権を争った帝国主義時代の悪しき時代を呈しています。
この女性弁護士がいたから今のアメリカ社会がある
かつてアジアではわれわれ日本人も、、、
これを頭に入れてアジアで暮らすわたしたちはどうでしょうか。日本人がアジア人で一番で、その下に勝手にピラミッドを作っていないでしょうか。
そう考えると本映画から受けるメッセージの強さに改めて共感を覚えました。
ただ日本人もかつて酷いことをしたのは事実です。
でもイギリス人を筆頭にヨーロッパの人たちはもっと酷いことをしていたことを事実は意外と知りません。
別にそれを責めて日本人の罪を消そうとは思いませんが、今は21世紀です。
過去の悲しき歴史を今一度デフォルトして前に進むことも大事な気がします。
フランスの文豪も女性差別と戦った
タスマニアの流刑地にある支配と陵辱
さて、映画ですがクレア(アシュリン・フランシオーシ) がちっぽけな窃盗をしたばかりにオーストラリアのタスマニアの流刑地に送られます。
当時はパンを盗んだだけでも流刑地に送られたそうです。もちろんイギリス人を除いてはの話です。
送られた流刑地を支配していたのがホーキンス(サム・クラフリン) です。イギリス人の軍将校です。
クレアは歌も上手く、そして美しかった。だからホーキンスの格好の餌食になったのです。
“性奴隷”です。夫も子どももいるクレアはホーキンスからの陵辱を耐える他ありません。
刑期が終わっているのに解放されません。
夫のゴーストライターにされた天才女性作家
実際に行われていた出来事を忠実に、、、
夫のエイデン(マイケル・シーズビー) はホーキンスに直談判に行きますが叶いません。それどころか面前でホーキンスがクレアをレイプします。
部下のルース(デイモン・ヘリマン)もレイプします。 そして夫のエイデンも殺すのです。
さらにホーキンスはジャゴ(ハリー・グリーンウッド)に 、クレアとエイデンを殺せと命令し撲殺させます。この描写は本当にキツかったです。
目を背けたくなりました。でもここでクレアは辛うじて生き残りました。そこから復讐へと矛先を変えていくのです。
監督のジェニファーは実際に過去の歴史を調査して、これらの惨劇は実際に行われていたとのことで脚本に盛り込んだそうです。
自由に恋をして自由に小説を書きたい女性作家の物語
クレア自身が支配する立場になった
失意のどん底のクレアは街を去ったホーキンス一行を追います。しかし未知の陸路は一人で進むのは無理です。
雇ったのがアボリジニ人のビリー(バイカリ・ガナンバル) です。
この時のクレアの振る舞いは酷いものでした。ビリーを人間とみなしていません。最初から“悪いやつ”と決めつけて銃を突きつけて支配しています。
ここにもジェニファー・ケント監督の意志が見えます。人間というものは常に誰かを支配したくなる生き物、ということ。
そして白人文化の中で育ったクレア自身もアイルランド人として差別されてきたことを忘れてしまって、自分が優越な人間だと錯覚してしまう恐ろしさを描いています。
時も変わり場所も変われば人間も変わるのです。
カースト制度ってとっても難しい問題
クレアとビリーの心情をとても上手く描かれている
そしてクレアはビリーとホーキンス一行を追いかけます。しかしここでクレアとビリーは心を通わせていくのです。
これはとてもいい展開だと思います。クレアが最初の復讐を果たした場面は凄惨でした。赤ん坊を撲殺したジャゴです。
殴る蹴る、そして何度も何度もナイフで刺します。息の根がなくなっても刺し続けます。もう狂気です。この殺人でクレアはすべての復讐エネルギーを使い果たしたように見えます。
やはり赤ん坊を殺したジャゴは許せなかったのでしょう。
さらにクレアとビリーは一行を追います。一番の悪党のホーキンスを射殺する絶好に機会が訪れます。
鑑賞していて「今だ、クレア撃て!」と応援の声をあげた人もいるのではないでしょうか。わたしなんか大声を出していました。
でも、でもです。クレアは殺せなかったのです。逆にホーキンスに追われてしまいます。しかもビリーはホーキンスに捕まります。
何だか見ていて消化不良を起こしました。しかし、なぜクレアが殺さなかったのかが後半にわかるのです。
クレアはホーキンスが合流したイギリス軍の上級軍師の面前でホーキンスの悪事を暴露するのです。これも一つの復讐の方法なのかもしれません。
言うなればクレアはジャゴを殺したことで、自身も殺人という罪に悩み、無駄な殺人をしても虚しいという思いにたどり着いたのでしょうか。
そして憎悪は何も生まないと悟ったのでしょうか。でも、これだけの悪事を暴露してもホーキンスには何もお咎めはないでしょう。それが当時のイギリス軍の“間違った英国紳士の誇り”だったからでしょう。
一夫多妻制のあったベトナムを舞台にした物語
まさかの「ビリーが、、、」という展開の答えがわかった
そして映画は予想もつかない方向に進んでいきます。何とアボリジニ人のビリーがホーキングとルースを殺すのです。
この展開に驚きましたが、よくよく考えてみるとジェニファー監督の意図が読み取れてきます。
「暴力についての物語、女性への暴力の物語」を描写していますが、最後にクレアが暴力的な解決をすると矛盾が生じてきます。
であるなら、このオースラリアを暴力で奪われたアボリジニ人が復讐を果たす、という心情を吐露すべきだと考えたのではないでしょうか。
元々はアボリジニ人たちが平和に暮らしていた土地です。それを代弁するかのようにホーキングを殺させたと思います。
オーストラリアだけの物語ではない
この映画『ナイチンゲール』は決してオーストラリアだけの物語ではありません。アメリカ大陸でもかつて行われていました。
もちろんわたしたち日本人もかつてアジアで同じようなことをやっていたことです。人間が人間に対して差別・偏見を持つのは生物的に備わっていることだという人もいます。
生存競争が本能にあるからだそうです。しかしながら人間は動植物を違って思考することができます。思考を繰り返すことで他者への慈しみが深くなるとわたしは信じています。
*わたしたちのイメージする黒人はアメリカに強制移住させられたアフリカ系アメリカ人かもしれませんが、本映画ではアボリジニ人のことを黒人と呼んでいます。
*タイトルの『ナイチンゲール』は、小夜啼鳥(サヨナキドリ)のことです。鳴き声が美しく西洋のうぐいす、夜鳴鶯(ヨナキウグイス)とも呼ばれている鳥です。看護婦のことではありません。
ディズニーは人種も身分も超えた愛の物語を描きます
映画『ナイチンゲール』のキャストについて
クレア(アシュリン・フランシオーシ)
アイルランド人。些細な窃盗を行い囚人なり、流刑地のタスマニアに送られた。夫と赤ん坊を持っている。歌がうまい。アシュリン・フランシオーシの演技は“あっぱれ”でした。冒頭はまるで清らかな女性というイメージを持ちました。清楚で夫と赤ん坊思いの良き女性です。でも将校に奴隷的な扱いを受けていた、、、。そして途中からはまるで戦士のように変貌して行きます。それが素晴らしいのです。心に傷を抱えている孤独な女性戦士です。終盤の復讐への思いが“失速”するあたりの心模様はなかなか理解できませんでしたが、全体的にはすごく良い女優さんだと思いました。
ホーキンス(サム・クラフリン)
横暴なイギリス軍将校で差別主義者でサディストという極悪非道人。イギリス人以外は人に非ずを宣言するかのように人を殺しまくります。心はありません。自身の出世のみを考えています。とにかくひどい人間です。暴力、レイプ、殺害を繰り返します。クレアの復讐対象となります。サム・クラフリンはとっても甘いハンサム顔です。若き日のウォーレン・ベイティを彷彿させます。でも本作では本当に憎たらしいです。クレアがホーキンスを追い詰めた時に「早く殺せ!」とスクリーンに叫んでしまうくらいの憎らしさでした。素晴らしい演技でした。
ビリー(バイカリ・ガナンバル)
先住民タスマニアン・アボリジニーの青年でクレアの案内人を務めます。自身の家族も白人たちに殺されています。クレアと気持ちを同化していきます。バイカリ・ガナンバルの身のこなしがとても軽やかで、美しく感じました。本作が役者として本格デビューとのことですが、見事に演じていたと思います。自身がアボリジニ人なので、過去の歴史も深く勉強して挑んだそうです。力強い“目線”を感じました。将来に期待したいです。
ルース(デイモン・ヘリマン)
ホーキンスの部下であり、同じく極悪非道人。知性教養が無い人物。ホーキンスにくっついていれば自身も安泰と考えているようで、命令を聞く。女とみれば全てが“性の対象”になり、誰であろうと容赦しない。ホーキンスが喜ぶだろうアボリジニ人の女性をさらってくるという極悪人。デイモン・ヘリマンの演技にも胸くそが悪くなりました。ニヤって笑ている表情に底知れぬ恐ろしさを感じました。サイコパス的な犯罪者の要素をうまく表していたと思います。
ジャゴ(ハリー・グリーンウッド)
同じくホーキンスの部下ですが、多少なりとも善悪の区別がつく人間です。ホーキンスの命令で赤ん坊を殺しますが、悔いています。心の心情曲線的には揺れ動いた演技でした。クレアに殺される凄惨な場面はきつかったです。
エイデン(マイケル・シーズビー)
クレアの夫です。クレアの刑期が終わっているから「解放」を望みますが、それが裏目に出ました。正義感はあるようです。目の前で妻がレイプされるのはとても辛いでしょう。怒り狂うのは当たり前です。
まとめ 映画『ナイチンゲール』一言で言うと!
「勝てば官軍」と言うけれど、、、。
わたしたち日本もかつてアジアにおいて悲惨な歴史を残しています。わたしは戦後生まれです。教科書でしか戦争は知りません。日本は戦争に負けたから“罪人”のレッテルを貼られています。もし「勝っていれば」などと考えるのは愚問です。しかし世界の歴史を勉強すると日本人とは比にならないほど残虐な歴史を行なってきた人たちの多いことがわかります。この映画もその一端です。かと言ってわたしたち国を正当化してはいけません。またずっと“反省”ばかりすることも望みません。必要なのは「二度と繰り返さない」ことです。
『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
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映画『ナイチンゲール』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ジェニファー・ケント
製作
クリスティーナ・セイトン ブルーナ・パパンドレア スティーブン・ハッテンスキー ジェニファー・ケント
製作総指揮
ブレンダ・ギルバート ジェイソン・クロス アンディ・ポラック アーロン・L・ギルバート ベン・ブラウニング アリソン・コーエン
脚本
ジェニファー・ケント
撮影
ラデック・ラドチュック
美術
アレックス・ホームズ
衣装
マーゴット・ウィルソン
編集
サイモン・ンジョー
音楽
ジェド・カーゼル
クレア(アシュリン・フランシオーシ)
ホーキンス(サム・クラフリン)
ビリー(バイカリ・ガナンバル)
ルース(デイモン・ヘリマン)
ジャゴ(ハリー・グリーンウッド)
エイデン(マイケル・シーズビー)
グッドウィン(ユエン・レスリー)
チャーリー・ショットウェル
2018年製作/136分/R15+/オーストラリア・カナダ・アメリカ合作
原題:The Nightingale
配給:トランスフォーマー