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『フリーソロ』
(100分/アメリカ/2018)
原題『Free Solo』
監督:エリザベス・チャイ・バサルヘリィ ジミー・チン
出演:アレックス・オノルド トミー・コールドウェル ジミー・チン
サンニ・マッカンドレス
製作:エリザベス・チャイ・バサルヘリィ ジミー・チン
エバン・ヘイズ シャノン・ディル
映画『フリーソロ』NHK BSプレミアム放送 2021年5月1日(土)午後11時30分〜1時11分
5月1日(土)午後11時30分〜1時11分
映画『フリーソロ』のオススメ度は?
星4つ半です。
とても素晴らしいドキュメンタリーです。
ハラハラドキドキします。
人間の持つ力は無限だと感じさせくれます。
映画『フリーソロ』の作品概要
命綱も金具も、あらゆる安全装置を着用せず、岩だけの絶壁を登って行く男の物語です。なぜ安全装置をつけないのか?「危険を犯し安心感を実感したいんだ」と言います。誰一人として登ったことのない難攻不落で有名な米カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にそびえる巨岩エル・キャピタンに挑みます。米アカデミー賞を長編ドキュメンタリー部門受賞しました。撮影隊の心の動きも見えます。恋人の存在もクライマーにとって良し悪しもあることも描いています。人間の持つ未知なる力を見たような気がします。
映画『フリーソロ』のあらすじ・ネタバレ
世界的なクライマー、アレックス。彼はフリーソロと言って一切の安全装置を持たずに岩山を登る数少ないクライマーだ。彼の挑戦はナショナルジオグラフィックで特集するほど有名だ。アレックスは今まで数多くのクライマーの壁となって立ちはだかる米カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にそびえる巨岩エル・キャピタンに挑みます。肉体、精神、そして運を持って挑みます。撮影隊の喜怒哀楽もうまく描かれています。
映画『フリーソロ』の感想・評価・内容・結末
命知らずのクライマー、アレックスは何を求めている
とても素晴らしいドキュメンタリー映画だと思います。本作品は命知らずのクライマー、アレックス・オノルドを追いかけた力強い物語です。
彼は一切の金具やロープなどの安全装置を使わず絶壁を登ることにこだわっている。“フリーソロ”と言います。
今回、アレックスは過去に誰も登ったことのない難攻不落で有名な米カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にそびえる巨岩エル・キャピタンに挑みます。
撮影隊側の葛藤が描かれている珍しいドキュメンタリー
こういったドキュメンタリーは主人公の心情を中心に追いかけていくのが主流ですが、この映画では撮影隊側の心情も同時に表現しているのがとても面白いと感じました。
冒頭であげた通り、アレックスはとにかく何も使わずにクライミングするのにこだわって生きています。さぞ変わり者か思いきや、どこにでもいる普通の青年です。
気難しいアスリートかと思っていましたが、全くそんな風情は見せず皆との調和をとても大事にしています。
彼の心の支えは恋人のサンニです。彼女がまた良い味を出してくれます。彼女と付き合い始めたアレックスは2度、大きな怪我に遭うことになります。周囲の人はクライマーに恋人は不要だという人もいます。
撮影隊のアレックスへの距離感を大事にしている優しさが良い
フリーソロは多くのクライマーを死の底へと追いやってきました。アレックスの友人も数多く死んでいます。なぜ彼らがフリーソロにこだわるかについて撮影班は追いかけています。
しかしここで面白いのは撮影隊がアレックスと時間を共有するにつれ、心が揺れ動き、葛藤する様も描かれているのです。「もしアレックスが、、、」という不安が源にありますが、こういった取材をする人たちは、仕事と割り切っているので冷酷に映像を記録して行くのが普通です。
対象に対して同情などして要られません。もっというなら喜怒哀楽など捨てなけれがいけないのがプロなのです。
でも違うのです。撮影隊はアレックスがクライミングしている時、祈る者、あるいは恐ろしくて目を背ける者の心の様子を捉えているのです。
アレックスが登頂した時、撮影隊は互いに抱き合い泣き、そして喜び合う場面に人間の暖かさを感じました。同時にこういったドキュメンタリーがあることをわたしも嬉しくなりました。
数多くのドキュメンタリー映像番組を制作してきた人間としては失格だと言う人もいるかもしれません。でも私はこの映画を見ていると撮影班の気持ちが手に取るようにわかるのです。
対象者のアレックスと記録者の撮影隊の双方の心情が描かれて、見事なドキュメンタリー映画としては成り立っていると思います。
アレックスの脳についての研究も
さて映画の主人公のアレックスですが、なぜフリーソロで登るのかについては「危険を犯し安心感を実感したいんだ」と言って退けます。
安全装置なしで登ることで生きているということを実感できるそうです。そして安全装置があることで「集中力途切れてしまい、面白くない」とも言っています。
やはり高みを目指す人間の言葉は深いです。彼がどうしてこのような精神に及んだかについて医学的にMRIを撮り脳を調べています。特に異常はありません。
一人で過ごすことが大好きだったアレックス
ただアレックスは幼い頃から1人が好きだったそうです。とても人見知りで、人前で話すことが苦手でした。
今は講演や本の出版発表などで人と話すことができますが、当時はどこの群れにも属さずたった1人で過ごしていたそうです。
そして父親の影響でクライミングを始めたそうです。父と母は不仲で離婚したそうですが、ネガティブな母とは違って父はとてもポジティブな考え方だったそうです。「やればできる」と言う父親だったらしいです。
様々なプレーシャーがアレックスを追い詰めて行く
さていよいよ巨岩エル・キャピタンに挑戦です。残念ですが1回目の挑戦は失敗に終わります。集まった多くの観衆にビビってしまったそうです。
もちろん撮影隊の存在も影響を与えています。アレックスが挑戦を止めたり、失敗して落下すれば映画の企画は終わってしまいます。それがプレッシャーにもなっていました。もちろん恋人サンニとの事も大きな負担になっています。
撮影隊は記録したい気持ちと、できればやめてほしい気持ちが混じりあっています。目の前で人が死ぬのを見たくないでしょう。
アレックスの恋人サンニも願わくばやめて欲しいのですが、“フリーソロ”が彼のアイデンティティーの唯一の確認方法であることを知っています。自分よりアレックスがフリーソロを愛していると知っているのです。そこをわかっているあたりが健気で可愛い女性だと思いました。
そしてアレックス再び挑戦します「戦士になるんだ」と言って出かけていきます。クライミングしてる時の気持ちは“侍”そのものになるそうです。
ドローンが最大限に活かされた映像作品
最近の映画はドローンばかりの映像が多く飽き飽きしていましたが、この映画を観るとドローンはこの映画のためにあったのではないかと思えるくらい活かされています。
断崖絶壁を登っていくアレックス、それを邪魔しないように絶壁に張り付いて捉えるキャメラマン、壮大なバックグラウンドミュージック、そしてドローン。緊張感が否が応でも高まります。
隣の人がツバを飲む音さえ聞こえてくるほど、集中させてくれる映像です。そしてアレックスが登頂した時には本当にこちらも力が抜けてしまいました。とても嬉しかったです。
このドキュメンタリー映画は人間の成長物語をじっくりと見せてくれました。天才アレックスが悩み挑戦する過程で、取材班の葛藤がうまく、目立たないように溶け込んでいます。
観終わった後に爽快感を与えてくれます。もちろん勇気と力の大切さをわたしたちに教えてくれます。
欲を言えばもっと“引き”の映像があっても良かったのではないでしょうか。スケール感をもっと出して欲しかったと言うのがあります。あれだけセリたった断崖の迫力をもう少し見せて欲しかったと思います。せっかく大画面の映画館で観るのであれば。でも良かったです。
映画『フリーソロ』まとめ 一言で言うと!
生まれてきたからには、やりたいことをやるべし!
映画の中でアレックスの恋人のサンニが上記のように言っています。確かにそうです。子どもの頃は無鉄砲で、世間のことをあまり意識していなかったから何も考えず突き進んでいきました。でもある程度、年をとって、社会を知ってくると人間は弱腰になります。もっというなら臆病になります。そして挑戦しない理由を「人に迷惑がかかる」と言い訳を作ります。確かにそうかもしれませんが、本当にやりたいことをやった方が迷惑をかけない場合もあります。というか、そもそも人のことばかり考える時間は勿体無いし、人生は自分の生きたいように生きた方が良いでしょう。
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映画『フリーソロ』の作品情報
スタッフ・キャスト
監督
エリザベス・チャイ・バサルヘリィ ジミー・チン
製作
エリザベス・チャイ・バサルヘリィ ジミー・チン エバン・ヘイズ シャノン・ディル
製作総指揮
ウォルター・パークス ローリー・マクドナルド ティム・ポストレ マット・レナー
撮影
ジミー・チン クレア・ポプキン マイキー・シェイファー
編集
ボブ・アイゼンハルト
音楽
マルコ・ベルトラミ
音楽監修
トレイシー・マクナイト
主題歌
ティム・マッグロウ
アレックス・オノルド
トミー・コールドウェル
ジミー・チン
サンニ・マッカンドレス
2018年製作/100分/G/アメリカ
原題:Free Solo
配給:アルバトロス・フィルム