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『レディ・マエストロ』(139分/オランダ/2018)
原題『De dirigen』
【監督】
マリア・ペーテルス
【製作】
デイブ・シュラム
【出演】
クリスタン・デ・ブラーン
ベンジャミン・ウェインライト
スコット・ターナー・スコフィールド
映画『レディ・マエストロ』のオススメ度は?
星4つです。
勇気がもらえる映画です。
頑張れば夢は叶います。
一生懸命やればみんなが応援してくれます。
どんな困難でも乗り越えられます。
友だち、恋人と観に行ってください。
映画『レディ・マエストロ』の作品概要
未だに世界の音楽界は閉鎖的な空気が蔓延している。指揮者の多くは男性ばかりで女性には情緒豊かな指揮ができないと囁かれているそうだ。本映画は約100年前、女性蔑視が厳しかった時代に果敢に指揮者への夢の階段を上った勇気あるアントニア・ブリコの実話物語である。どんなに馬鹿にされても邪魔されても決して自分の夢を捨てなかった強い魂を持った女性の映画です。
映画『レディ・マエストロ』のあらすじ・ネタバレ
オランダ移民の貧しい家庭に生まれたウイリーは音楽への夢を捨てきれずにいた。ピアノを練習したいがアパートはボロくて筒抜けで音を出せない。音楽学校へ通いたくてもお金がない。運よくナイトクラブでピアノを弾くことになり、学費に当てる。恋人もできるが、夢を掴むためにオランダ、ドイツと渡り歩き、ついに師匠に支える。ベルリンフィルでも公演も大成功してアメリカへ凱旋帰国するが、、、、、。
映画『レディ・マエストロ』の感想・評価・内容・結末
何もないところから夢を掴んだアントニア
「キャリアもお金も人脈もない、でも情熱があれば夢は叶う!どんな困難でも乗り越えられる」
この映画を観て一番強いメッセージがこの言葉でした。本当に勇気をもらいました。
でも同時に怒りがこみ上げてくるのも事実です。
今わたしたちは21世紀に生きています。女性への差別(性差別)をなくそうという運動がありますが、この映画のクレジットに書かれているテキストを読んで愕然としました。
世界初の女性指揮者で、成功者であるのに指揮者の権威付けランキングのベスト100にも選ばれていません。
このアントニアだけではなく、女性が誰一人として選ばれていない現状に怒りを感じるのです。
まだまだ世界は性差別で溢れていると認識させられた映画でした。
女性の挑戦を邪魔するオンパレードばかり
さてさて、映画は若き貧しい少女が指揮者になりたくてなりたくてどうしようもない、何とかチャンスを掴みその夢を達成するというものです。
いたく単純な物語に思えますが、ちゃんと恋と別れがありロマンスムードを高めてくれるのが劇中ずっと流れる音楽たちです。
そしてこの映画の中で忘れてはいけないのが、やはりハラスメントや女性蔑視の風潮があった時代のこと、そして性について悩むジェンダーの姿も盛り込まれていることです。もうひとつ、毒親の存在もあります。
ちょっと盛り込みすぎている感もありましたが、最後にはうまくまとめあげています。とてもわかりやすい構成となっています。
実母に捨てられたのではない、ほぼ誘拐に近い生い立ち
この物語は実話をベースに製作されています。主人公のアントニア/ウィリー(クリスタン・デ・ブラーン)はオランダで生まれて間もなく一時的な養子に出されます。
しかし養父母は実母にアントニアを返さずアメリカへ渡ってしまいます。ほぼ誘拐に等しいです。名前はウイリーと変えられニューヨークで貧しく育ちます。
ひょんなことからピアノを習い音楽への興味が広がります。
そして指揮者を目指すのです。当時、1920年代はまだまだ女性への差別が厳しく、さらに追い討ちをかけるように世界大恐慌に見舞われます。
音楽の大学で本格的なレッスンを学びたいのですが、不可能でした。
とにかく諦めないこと、挑戦することを貫いた
しかし彼女は諦めません。
夜のナイトクラブでピアノを演奏する仕事を見つけてなんかが学費を稼ぎます。
彼女は大金持ちのフランク・トムセン(ベンジャミン・ウェインライト) と恋に落ちますが、それを振り切ってドイツで指揮者の修行をします。
そこからも七転び八起きを経てアメリカへ帰国しますが、さらに厳しい差別と蔑視、嘲笑に合います。
それだけ女性が百人からなる男性の音楽隊を指揮するなんて生意気だと思われていた時代です。
どんなに辛かったことでしょう。
一生懸命に頑張っている人は美しいから応援したくなる
映画の中で彼女を支える人が何人か登場します。
別れた大金持ちのフランクは彼女が窮地の時に影から支えるし、ナイトクラブのリーダーのロビン(スコット・ターナー・スコフィールド )は遠くアメリカからドイツで勉強中のアントニアに匿名で仕送りをします。
わたしなりに、なぜみんなが彼女を応援したくなる理由を考えてみました。
それはやっぱり一生懸命に頑張っている人は美しいからです。そして応援したくなるのです。
わたしたちの身近でも多く見られます。
例えばマラソン競技などを沿道で見ると本当に頑張っているのが直に伝わり応援してしまいます。それを同じではないでしょうか。
かつての師匠のハラスメントを許す
映画の終盤でかつてのピアノの師匠があの手この手で嫌がらせをします。嫉妬ですね。嫉妬は醜い感情ですね。
弟子時代に性的関係を拒絶され、しかも今じゃ有名になった弟子への嫌がらせです。セクハラ、パワハラです。
本当に最低な男ですが、アントニアは彼を許すのです。この場面は通常のアメリカ映画でしたら全面対決に持っていくのですが、割とアジアンティック発想だったのでホッとしました。
アントニアは全米で多くのコンサートを実施します。
そして女性だけの楽団を世界で初めて作り世界的な名声も集めていきます。
一応、女性指揮者のパイオニアになりますが、冒頭に挙げた通り実際は世界の指揮者ランキングベスト100にも選ばれていません。
技術がなかったのかわかりませんが、それはちょっと憤りを覚えました。
指揮者の才能は異次元の世界の能力だ
わたしは音楽についての専門家ではありませんが、指揮者というのは途轍もない才能を持っているそうです。人間とは思えません。宇宙人ではないかと思えます。
譜面てあるじゃないですか。わたしなど辛うじて読めますが、指揮者の場合、全ての楽器のスコアの一音一音を瞬時に読み、さらに物語を落とし込んでいくという全く訳のわからない世界があるそうです。
例えば10分くらいの曲でしたらわたしたちは音楽プレイヤーで聴くじゃないですか。でも彼らはスコアを読むことで聴くらしいのです。
ページをパラパラむめくり通常再生10分の曲をわずか1、2分で聴くことが出来るそうです。
もちろん頭の中ではちゃんと10分流れているそうです。
一体、どんな頭になっているのでしょうか?さっぱりわかりません。やっぱり天才なのです。
もうひとつ、彼女の師匠が言った言葉で「専制君主になれ!」も印象的でした。
支配者、独裁者、誰にも文句を言わせるな、力ずくでも従ってもらう、それくらいの強さがないと指揮者はできないということでしょう。
女性差別が激しかった時代にこれだけ頑張ってのですからアメリカ社会は彼女を時代のアイコンとして利用したことは言うまでもありません。
でも、でもです。何だか未だに評価が低いというのが解せない気持ちになりました。
昨年、今年と『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』『ビリーブ 未来への大逆転』などの女性の社会進出を支えた勇気ある人の映画多くなっています。
それはとても良いことです。けれど数年後、この映画のように何も評価されないような作品にならないことを祈るだけです。
*ドヴォルザークから、マーラー「交響曲第4番」、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」まで楽しめます。
まとめ 映画『レディ・マエストロ』一言で言うと!
「挑戦する情熱こそが最高の才能である」
人間は自分で壁を作って、困難だと決めつけて諦めてしまうところがあります。わたしもそうですが、失敗した時の言い訳を作っているのです。でも人間はどんな困難でも乗り越えられる力があることを忘れてはいけません。そしてその情熱を見ている人がきっと応援してくれます。何事も一生懸命が大事と言うことです。
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映画『レディ・マエストロ』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
マリア・ペーテルス
製作
デイブ・シュラム
製作総指揮
アンドレアス・クライン アンドリュー・アーンスター ディルク・シュバイツァー エリック・イングラン アド・ウエストレイト
脚本
マリア・ペーテルス
撮影
ロルフ・デケンズ
美術
ヤン・ルガース
衣装
リンダ・ボジャース
編集
ロビン・デ・ヨング
音楽
ボブ・ジマーマン クイントン・スクラム
アントニア/ウィリー(クリスタン・デ・ブラーン)
フランク・トムセン(ベンジャミン・ウェインライト)
ロビン(スコット・ターナー・スコフィールド)
アントニアの母(アネット・マレァブ)
アントニアの父(レイモント・ティリ)
マーク・ゴールドスミス(ゾーマス・F・サージェント)
ミスター・トムセン(シアン・トーマス)
ミセス・トムセン(ティム・アハーン)
ウィレム・メンデルベルクハイス・ショールテン・バン・アシャット
ディレクター・バーンズジェームズ・ソボル・ケリー
コンサートマスターピーター・バーシャム
2018年製作/139分/G/オランダ
原題:De dirigen
配給:アルバトロス・フィルム