映画『霧の旗(1977)』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト・予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『霧の旗(1977)』IMDbサイトにて作品情報・キャスト情報をご確認ください。
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『霧の旗(1977)』
(1977年製作/95分/日本)
【監督】
西河克己
【脚本】服部佳【原作】松本清張【製作】堀威夫 笹井英男【制作補】金沢博 斉藤正勝【撮影】前田米造【美術】佐谷晃能【音楽】佐藤勝【録音】福島信雅【照明】川島晴雄【編集】鈴木晄【助監督】山口友三【スチル】吉崎松雄
【出演】
山口百恵
三浦友和
関口宏 三國連太郎 加藤治子 小山明子 夏夕介 石橋蓮司 児島美ゆき 町田祥子 桑山正一 神山繁 金田龍之介 石井トミコ 大和田伸也 林ゆたか 若杉透 安西拓人玉川伊佐男 原泉 西村まゆ子 高橋昌也
【HPサイト】
映画『霧の旗(1977)』IMDbサイト
【予告映像】
映画『霧の旗(1977)』トレーラー
映画『霧の旗(1977)』NHK BSプレミアム放送 未定
映画『霧の旗(1977)』のオススメ度は?
星4つです
山口百恵さんの「悪女」は必見!
三國連太郎さんの弁護士も見ものです
三浦友和さんの記者役も似合ってます
百恵さんの着物姿が素敵すぎます
映画『霧の旗(1977)』の作品情報・概要
『霧の旗』松本清張の長編小説で、映画化、テレビ化も何度もされている不朽のサスペンス物語。西河克己監督作品。山口百恵主演。初めての悪女役に挑む際「歌にもいろんなレパートリーがあるように、映画の私の役柄にもこういうのがあってもいいんじゃないか」との弁を述べている。三浦友和、関口宏 、三國連太郎 、加藤治子 、小山明子、夏夕介 、石橋蓮司ら共演。
映画『霧の旗(1977)』のあらすじ・ネタバレ
柳田桐子(山口百恵) は兄で教師の柳田正夫(関口宏) と福岡で慎ましく暮らしている。幼少の頃、両親が亡くなり、苦学して育ててくれら兄への感謝の念は深い。ある日、警察がやって来て、兄を殺人の疑いで連行していった。その日から桐子の人生はどん底へ叩き落とされる。地元・福岡には有能な弁護士がいない。日本で一番有能で、冤罪事件の案件に一番定評のある大塚欽三(三國連太郎)に会いに東京の事務所を訪れる。しかし、「弁護料がなければ受けない」と冷酷に言われる。兄の無実を信じる桐子は何度も食い下がるが全く相手にしてくれない。別件で事務所を訪れていた記者・阿部啓一(三浦友和) が桐子に同情して、協力を申し出る。数ヶ月後、桐子から大塚の元に手紙が届く。「兄は獄中死しました」。困惑する大塚。阿部はたまたま高級クラブを訪れた際、桐子と再会する。初対面の時と印象が全く変わっており驚愕する。そして、桐子の復讐の火蓋が切って下される。
映画『霧の旗(1977)』の感想・内容
「百恵さんが悪女を演じる唯一の映画」です。本映画『霧の旗(1977)』はアイドルである山口百恵さんにとっては挑戦的な作品だったと思います。下手をすればイメージダウンになりかねなかった時代です。敢えて本映画『霧の旗(1977)』の桐子を演じたことに拍手を送りたいです。本映画『霧の旗(1977)』の桐子は穢れを知らない純粋な女性から、男を垂らし込む“悪女”へと変身するのです。復讐の鬼になるのです。そして劇中、弁護士・大塚欽三(三國連太郎)に体を許すのです。この場面はちょっとショックです。あの可憐な百恵ちゃんが、年上の三國連太郎さんとキスをしているのです。当時の百恵さんは19歳です。三國連太郎さんは49歳です。お仕事といえ、やはりエンターティメントで生きる山口百恵さんの根性を垣間見た気がします。もちろん、芸術性の高い作品に仕上がったので、後悔はしていないと思います。改めて女優さんてすごいと思います。
さて、本映画『霧の旗(1977)』の原作は松本清張さんです。もう日本のミステリー小説の大家です。松本清張の小説は本当に繊細な物語が多いです。ひとつひとつの事実が積み重なっていく様に引き込まれていきます。綿密な取材を元にデータ検証を徹底に行なっていると感じます。「こっちを選ぶとこうなる、あっちを選ぶとああなる」といった具合に進むので、想像が膨らんでワクワクするのです。
本映画『霧の旗(1977)』の映像化も何度もされています。時代は変わっても描かれる魅力は「真実への到達」とか「人間とは何か」「生きること」など、普遍的なテーマになっているからでしょう。この重厚な物語に当時19歳だった山口百恵さんが挑戦したのは、何か心の心境に変化があったのかもしれません。前作、映画『泥だらけの純情(1977)』では、三浦友和と等身大の若者を演じています。そして本映画『霧の旗(1977)』の次の映画『ふりむけば愛』で、二人は結婚する約束をしたと言われています。となると、本映画『霧の旗(1977)』での百恵さんと友和さんの関係は「一番楽しい時」か「やっぱり続けられない」と悩んでいた時期だったかもしれません。
映画『霧の旗(1977)』の考察・評価
普通、アイドルがこのようなレイプまがいの濡れ場のある映画に出演するのは、事務所的にも躊躇します。でも敢えて、挑戦したのは三浦友和さんに対しての「メッセージ」だったのかもしれません。「わたしはこの世界でここまで挑戦した」「わたしはやり切った」「これ以上、他の男性とは接しない」「これからはあなただけのものにして」等々。もちろん、わたしの勝手な想像ですが百恵さんが友和さんに幸せを求める決意と受け止めれば、その後の二人の人生を祝福できるのです。
さてさて、本映画『霧の旗(1977)』のオープニングとエンディンはぴったりと一致します。霧が立ち込める白樺林の阿部啓一(三浦友和)で始まり、エンドも同じです。映画に於いて、このように“同ポジ”で終わる作品には良作が多いです。タイトルの“霧”はとてもミステリアスなイメージを抱きます。すっと立ち込めて、幻想的な気持ちにさせて、跡形もなく消えてしまう。謎が謎を生む存在です。晴れ渡ってしまえば、先ほどの霧のことなど忘れてしまっています。霧は恐ろしい存在だと印象つけます。
そして、主人公の名前は柳田桐子(山口百恵)です。字は異なりますが、これは樹木の“桐”との掛け合わされているところが憎いです。桐の木は元々、神聖な存在とみなされて、上流階級の人たちの家紋や紋章の意匠に取り入れられています。そして桐の花の色が紫というのも演じる山口百恵さんにぴったりだと思います。
本映画『霧の旗(1977)』の山口百恵さんが、銀座のホステス姿がとても凛としているのです。「なんて知性的なんだ」「背筋を伸ばしたくなる」佇まいなんです。東京の銀座のクラブなどは、実際にこのような女性がいるのでしょうか?いやここまでの女性はいないと思います。兎にも角にも、「百恵さんの和服が美しい」のです。ここも見どころのひとつです。対する三浦友和さんは記者を演じています。こちらも決まってます。前作の映画『泥だらけの純情(1977)』のチンピラ役とは一味違います。友和さんは育ちが良いので、チンピラ役をやっても、いまひとつ説得力がないのです。でも本映画『霧の旗(1977)』の記者役は様になっていたと思います。桐子のことが心配で、助けようと必死になりますが、愛を受け入れてもらえない結末になります。その様子はお二人のプライベートを勝手に想像して楽しむことが出来ます。先に挙げた百恵さんの決意に対して、友和さんが「わかった、俺は百恵と生きていくから」という声が聞こえてきます。
映画『霧の旗(1977)』の結末
本映画『霧の旗(1977)』を現代風にアレンジするとどうなるのでしょうか。まずアイテムとして重要なものに電話があります。公衆電話が頻繁に用いられます。現代では携帯・スマホなので、ちょっと工夫が必要です。それと桐子が訪れたマンションは防犯カメラがない時代でした。ですから河野径子(小山明子) に犯行を押し付ける方法を考えてみると楽しいです。またタクシーを使っているところも解決しなければいけないでしょう。ドライブレコーダーがありますから、誰が乗車したのかは記録されています。もし、松本清張が生きていたら、こんなアイテムの存在など、一蹴してとても面白い物語を書くと思います。
しかし本映画『霧の旗(1977)』の山口百恵さんの悪女ぶりは必見です。以前「薄明が似合う」と書きましたが、こういった「ミステリアスな女性」もぴったりです。どちらも「助けたくなる」雰囲気が立ち込めているのです。そこが百恵さんの魅力です。つまり幸せにしてあげたくなるのです。こんな大スターはもう生まれないでしょう。
映画『霧の旗(1977)』のキャストについて
柳田桐子(山口百恵)
阿部啓一(三浦友和)
柳田正夫(関口宏)
大塚欽三(三國連太郎)
大塚芳子(加藤治子)
河野径子(小山明子)
杉浦健次(夏夕介)
山上武雄(石橋蓮司)
江原信子(児島美ゆき)
クラブ・「海草」のマダム(町田祥子)
奥村恵之助(桑山正一)
谷村編集長(神山繁)
兵童代議士(金田龍之介)
バー・「リヨン」のマダム(石井トミコ)
白鳥弁護士(大和田伸也)
西村(林ゆたか)
山川(若杉透)
久岡(安西拓人)
岡刑事(玉川伊佐男)
渡辺キク(原泉)
矢代早苗(西村まゆ子)
検事(高橋昌也)
まとめ 映画『霧の旗(1977)』一言で言うと!
「変幻自在な百恵さんは“霧”のように消えていった」
もう桐子はその後の百恵さんのようです。芸能界から引退して、消えました。もう二度と表舞台には現れません。映像作品のみです。わたしの瞼にははっきりとその残像が立ち込めています。霧ではないのです。でも掴むことが出来ない存在です。
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映画『春琴抄(1976)』
山口百恵&三浦友和が谷崎文学に挑む!
映画『泥だらけの純情(1977)』
山口百恵と三浦友和の等身大の姿がある
映画『霧の旗(1977)』
山口百恵さんの「悪女」は最初で最後
映画『ふりむけば愛』
山口百恵と三浦友和が結婚を決意したサンフランシスコロケ
映画『炎の舞』
あまりにも「絶望的な結末」の絶句します
映画『ホワイト・ラブ』
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映画『古都(1980)』
山口百恵&三浦友和コンビ「有終の美」
山口百恵出演映画全リスト三浦友和との愛の軌跡が見える『伊豆の踊子』から『古都』
映画『霧の旗(1977)』の作品情報
スタッフ・キャスト
監督
西河克己
脚本
服部佳
原作
松本清張
製作
堀威夫 笹井英男
制作補
金沢博 斉藤正勝
撮影
前田米造
美術
佐谷晃能
音楽
佐藤勝
録音
福島信雅
照明
川島晴雄
編集
鈴木晄
助監督
山口友三
スチル
吉崎松雄
柳田桐子(山口百恵)
阿部啓一(三浦友和)
柳田正夫(関口宏)
大塚欽三(三國連太郎)
大塚芳子(加藤治子)
河野径子(小山明子)
杉浦健次(夏夕介)
山上武雄(石橋蓮司)
江原信子(児島美ゆき)
クラブ・「海草」のマダム(町田祥子)
奥村恵之助(桑山正一)
谷村編集長(神山繁)
兵童代議士(金田龍之介)
バー・「リヨン」のマダム(石井トミコ)
白鳥弁護士(大和田伸也)
西村(林ゆたか)
山川(若杉透)
久岡(安西拓人)
岡刑事(玉川伊佐男)
渡辺キク(原泉)
矢代早苗(西村まゆ子)
検事(高橋昌也)
1977年製作/95分/日本
配給:東宝