映画『Wの悲劇』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
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『Wの悲劇』(108分/日本/1984)
英題『The Tragedy of “W”』
【監督】
澤井信一郎
【脚本】荒井晴彦 澤井信一郎【原作】夏樹静子【製作】角川春樹【プロデューサー】黒澤満 伊藤亮爾 瀬戸恒雄【撮影】仙元誠三【美術】桑名忠之【音楽】久石譲【音楽プロデューサー】高桑忠男 石川光【主題歌】薬師丸ひろ子【録音】橋本文雄【照明】渡辺三雄【編集】西東清明【助監督】藤沢勇夫【スチール】加藤雅昭
【出演】
薬師丸ひろ子 世良公則 高木美保 志方亜紀子 清水紘治 南美江 木内嘉一 草薙幸二郎 堀越大史 西田健 香野百合子 日野道夫 野中マリ子 仲谷昇 梨元勝 福岡翼 須藤甚一郎 藤田恵子 蜷川幸雄 三田村邦彦 三田佳子
映画『Wの悲劇』外部リンク
【HPサイト】
映画『Wの悲劇』公式サイト
【予告映像】
映画『Wの悲劇』トレーラー
【公式Twitter】
映画『Wの悲劇』
【IMDbサイト】
映画『Wの悲劇』
【 Rotten Tomatoesサイト】
映画『Wの悲劇』
映画『Wの悲劇』NHK BSプレミアム放送 5月11日(月)午後9時00分~10時50分
5月11日(月)午後9時00分~10時50分
薬師丸ひろ子さんの輝きを観よ!
三田佳子さんの涙の演技を観よ!
世良公則さんの昭和男を観よ!
演出家・蜷川幸雄さんのカリスマ性を観よ!
映画『Wの悲劇』のオススメ度は?
星4つです
名作です
昭和後期の名作です
若者がこんなに“熱い”時代がありました
青春って言葉がまだあります
数年後、日本は『バブルの悲劇』に見舞われます
映画『Wの悲劇』の作品情報・概要
『Wの悲劇』(ダブリューのひげき)は、1984年12月15日に公開された日本の青春映画。澤井信一郎監督作品。薬師丸ひろ子主演。カラー・108分。三田佳子、世良公則、三田村邦彦、高木美保共演。夏樹静子原作小説をモチーフにしている。舞台劇を構成を取りながらスターを目指す女優の恋愛、成功、失敗物語を内包した秀逸の脚本となっている。芸能界のタブー的な要素も盛り込んで話題となった。
映画『Wの悲劇』のあらすじ・ネタバレ
女優を夢見る三田静香(薬師丸ひろ子)は処女であると公言していた。しかし劇団『海』の2枚目俳優である五代淳(三田村邦彦)と一夜を共にする、目的は役者としての成長と役が欲しいから。早朝の公園で稽古をしている様子を見た森口昭夫(世良公則)が三田に一目惚れ。付きまとわれる。新しい演目のオーディションに挑むが落選し落ち込み、森口昭夫と一夜を共にする。その後、大阪公演へ行った際、看板女優の羽鳥翔(三田佳子)のトラブルに巻き込まれる。彼女の長年のパトロンが腹上死したのだ。スキャンダルを恐れた羽鳥の計画で身代わりとなった静香。代わりに主役をもらい順風満帆な女優人生を歩むはずであったが、、、、
映画『Wの悲劇』の感想・内容
『Wの悲劇』がリメイクされる理由は「面白い」からが全て
この映画『Wの悲劇』は舞台でも映画でもテレビドラマなどで、何度も製作されています。
夏樹静子原作です。これだけリメイクされると言うことはやはり面白いからでしょう。
中でも本映画『Wの悲劇』は絶賛です。
主演の薬師丸ひろ子が少女から大人への階段を駆け上がるきっかけになった作品と言って良いでしょう。
とにかく薬師丸ひろ子の存在力とスクリーンへの吸着力がハンパないのです。薬師丸ひろ子の小さな体がスクリーンを通すととてもつもなく大きくなるのです。
俗に言う“オーラ”というのでしょうか、全身から光が発せられているのです。
やっぱりスターはこうでないといけません。製作年が1984年です。
今観ても薬師丸ひろ子の輝きはそんじょそこらの女優には負けません。やっぱり“目”が良いのです。
薬師丸ひろ子を発掘した角川春樹さんも「目が印象的だった」と言っています。
冷静沈着な強い視線の中にどこか寂しげな憂いを持っているのが、人々を惹きつけた大きな理由でしょう。一度、見つめられてみたいものです。
障害のある女性の葛藤を描いた青春物語
大女優・三田佳子さんの演技が、、、
さて、この映画『Wの悲劇』に結構な有名俳優が出演しています。
筆頭は三田佳子さんです。次に世良公則さん、三田村邦彦さん、そして高木美保さんです。
三田さんは当時はもう不動の大女優でした。その後、個人的な問題を抱えて浮き沈みを繰り返しますが、今も芸能界で頑張っています。
この映画内の設定キャラクターは大女優です。絶対的な存在です。
頂点を極めた者しかわからない世界観を持っています。スターの座はそれほど心地よいと当時に落ちていく恐怖を知っているのでしょう。
わたしたちのような日常生活を送っている者にはわからない世界を教えてくれました。
福山雅治さんと松たか子さんにもこんな青春があった
三田佳子さんの圧巻演技に女優の本能を見た
印象的なセリフがあります。パトロンを持ったとされる三田静香(薬師丸ひろ子)を大御所の劇団員が攻め立てる場面です。
「反対よ。わたしたち、お客さんに道徳を教えるために芝居をやってるわけじゃあないでしょ。私生活が綺麗じゃあなければ舞台に立つ資格がないと言うの?(だったら)みんな資格なんてないんじゃないの?安恵さん、劇団を作っていくため、好きな芝居を続けるため、お金がない、アルバイトしていると稽古ができない、そんな時、女使いませんでした?わたしはして来たわ」と言い放ちます。
さらに「今この舞台に立てるのも、楽屋が花でいっぱいになるのもわたしを抱いてくれた男たちのおかげかもしれない」と。
この場面の演技は迫真でした。三田さんが目を真っ赤にして涙をためて言い放つのは圧巻でした。
その後の三田さんのトラブル人生を知っているだけに、妙にリアリティーがあると言うか、、、。
今で言えば“マクラ営業”を公言したようなものです。ただ実際に演劇界、映画界がこのような慣習があるのかはわかりません。
三田佳子さんの演技に女優の生き方というか本能を見た気がしました。
吉永小百合さんって本当に可愛い
映画『Wの悲劇』の考察・評価
高木美保さんのデビュー映画でもある
次にわたしが注目した女優さんが菊地かおり役の高木美保さんです。失礼ながら笑ってしまったのです。演技のことではありません。
今ではテレビでコメンテーターとして活躍していますが、当時はまさに「とばっちり」の役が多かったからです。
この映画『Wの悲劇』の菊地かおりは美人で演技力もあるのに、看板女優・羽鳥翔(三田佳子) のもみ消し工作によって降板という悲劇に落とされます。
そして恨みをはらすために殺人未遂を犯します。これこそが本当の“悲劇”に思えて仕方がないのです。
高木さんはその後もキャリアを積みますが、『野蛮人のように』(1985年) でも薬師丸ひろ子の『早春物語』(1985年)では原田知世の引き立て役をやっています。
その後、テレビの昼ドラでブレイクしますが、女優に見切りをつけています。高木さんは本映画『Wの悲劇』が初出演だったそうです。
気が強そうな美人ということで澤井信一郎監督に拾われたそうです。演技は正直言って大根でした。
でも誰もが憧れる銀幕デビューを薬師丸ひろ子や三田佳子と共演できるなんて、実は「幸運な人」だと思うのです。
やはり天から選ばれし人だったと思います。高木さんを観て笑ってしまうのは今の高木さんのキャラクターが本当の彼女だとわかり安心できるからです。
その後の高木さんはパニック障害などに悩まされますが、今は農業もやっています。決して“悲劇”ではない人生だと思います。
「もやは戦後ではない」こんな若者もいました
世良公則さんの昭和の男っぷりも良い
次に森口昭夫役の世良公則さんですが、当時は絶大なるロックスターです。
役柄としては役者の夢を持って東京へやって来たが、ライバル団員の死や演技について悩みやめた。
でも演劇が趣味。偶然、朝の公園で稽古していた三田静香(薬師丸ひろ子)に一目惚れしてしまいます。
それからは静香の心を射止めようとありとあらゆる手段をとります。
付きまといます。すぐに求婚します。勝手にアパートを探して来ます。静香が思いを寄せる五代淳(三田村邦彦) に喧嘩をふっかけます。
もう空気を読めない昭和の男代表って感じです。今やったらストーカーならびに嫌がらせ行為になっちゃいます。
でも、これで良いのです。こういうおおらかな時代があったのです。
これぐらい自由に愛を表現しても許容される素晴らしい時代がこのフィルムには焼き付いているのです。
映画にはこのように時代の世俗、流行、慣習、風俗、思考などもしっかりと焼き付けられていることに改めて感銘させられます。
ピアノに青春をかける若者が眩しい
三田村邦彦さんはクールな男の時代の来訪を演じている
五代淳役の三田村邦彦さんは顔良し、スタイル良しのプレイボーイ的な役柄です。三田静香(薬師丸ひろ子)が思いを寄せます。
一夜を共にしますが、それほど深入りはしません。
当時のシティーボーイという印象を持ちました。とてもクールで仕草もスマートです。
森口昭夫(世良公則)に対して真逆ですね。ここに時代の移り変わりが見て取れます。
自己主張が強い昭和の男からあまり干渉されたくない、したくない新しい男の生き方を表しています。良かったです。
成田凌くん、門脇麦さん、小松菜奈さん共演の音楽青春映画
蜷川幸雄ファンは垂涎の映画
それとオマケと言っては失礼ですが日本が生んだ大演出家の蜷川幸雄さんが出演していることも忘れてはいけません。
「怒っています」そのまんまです(笑)
映画内の劇団を稽古する場面を実際に演出しています。蜷川幸雄さんの演出風景は何度かテレビの特番で見たことがありますが、大抵が怒鳴り散らして台本を叩きつけています。
(笑)すごいですね。そのまんまです。
映画内では抑えてますが、稽古の場面はキビキビした今は亡き蜷川幸雄を見ることができます。
劇団員が見たら垂涎のシーンだと思います。役者さんたち「ビビってます」本当にビビってます。緊張感たっぷりです。
ただ一点気になる場面があります。三田静香(薬師丸ひろ子)が記者会見でパトロンとの純愛を訴える場面で蜷川幸雄さんは薬師丸ひろ子の隣で顔を隠しているのです。
右手で隠しているのです。それが気になるのです。どういう意図があったのかは今は不明です。
フィンランドの青春ヘビメタ野郎たち
映画『Wの悲劇』の結末
『Wの悲劇』は昭和の終焉の雰囲気を見事に描いている名作
さて、この映画『Wの悲劇』はひとつのシンデレラストーリーとして描く青春映画です。自分の夢実現のためにはあらゆる手段を用いるということも内包しています。
しかしながら1984年当時の日本の風潮を調べてみると大きなギャップが見受けられることも事実です。
若者たちはそれほど“熱くない”のです。
新人類という言葉が呈しているように経済的に発展し、何不自由のない暮らしの中で育った若者たちが謳歌していた時代です。
あくせくと一生懸命に夢を追うことは馬鹿らしい、恥ずかしいと毛嫌いする若者も多くなっていた時代です。
その風潮の中でこの映画のように「演劇に命をかける」姿をテーマに展開した意味はとても大きいと思います。
映画ではてっぺんを目指すシンデレラストーリーを描きつつも、実際の日本社会は退廃的というか怠惰な雰囲気が蔓延していたと思います。
貧乏だけどピアニストになりたい
『炎上ビジネス』は古今東西とこにでもあった
そしてもうひとつ、忘れてはいけない点があります。
『炎上ビジネス』があることです。羽鳥翔(三田佳子) と三田静香(薬師丸ひろ子)が仕掛けた身代わり工作です。
これを逆手にとって公演の成功へと策略するところです。これは今のネット社会では当たり前と言って良いほどの手法です。
当時はテレビ、新聞、雑誌、ラジオを用いていました。「嘘だ」とわかっているのにテレビのワイドショーを見てしまったこともあると思います。
今はネットを用いれば誰でも炎上ビジネスができます。でもほとんどの人が最初から嘘だと知っています。
本映画『Wの悲劇』はメディアという情報物を限られた人たちが握っていた時代の費用対効果の大きさを表していますが、失敗に終わった時のリスクは高いことも描いています。
現代はメディアは誰でも手にできます。その代わりライバルも多いわけですから費用対効果は小さく、失敗しても一瞬忘れ去られますが、すぐさま復活できます。
35年前の映画ですが、色んなことを学べる映画でした。
「子どものくせに」ってバカにすると痛い目にあうぞ!
映画『Wの悲劇』のキャストについて
三田静香(薬師丸ひろ子)
劇団『海』の研究生。田舎出身の20歳。女優になる夢を持っている。自称「処女」。役欲しさと演技の幅を広げたいあまりに五代淳(三田村邦彦) と寝る。美人でないことを自覚している。背伸び体質もあり、交際を求める森口昭夫(世良公則)に対しては強気だ。看板女優・羽鳥翔(三田佳子) の身代わりを引き受けて大スターへを駆け上がっていく。
森口昭夫(世良公則)
元劇団員。夢破れて今は不動産会社の営業マン。偶然、静香の稽古風景をみて恋する。若干、空気を読めない強引さがある。好意から静香に付きまとう。念願叶って静香と一夜を共にする。
菊地かおり(高木美保)
強気な新人女優。いつか「大女優になってやる」気質が強い。念願の主役を獲得したが、羽鳥翔と三田静香の画策によって降板させられる。復讐の鬼と化す。
五代淳(三田村邦彦)
劇団『海』の看板男優。三田静香(薬師丸ひろ子)と一夜を共にする。静香の初めての男性。羽鳥翔(三田佳子) とも関係がある。
羽鳥翔(三田佳子)
劇団『海』の看板女優。翔無くしてはこの劇団はあり得ない存在。若い頃から上昇志向が強く、スターになるためにパトロンの世話になっていた。「仕事を得るために女を使ったことがある」と公言した。パトロンの腹上死を隠蔽する。
まとめ 映画『Wの悲劇』一言で言うと!
『バブルの悲劇』は始まっていた
この映画の数年後『バブルの悲劇』が訪れます。株も土地も空前の高値を更新していきます。天下泰平を謳歌いしたのは幻と終わります。この映画『Wの悲劇』のように演劇に青春をかけた若者たちより、ディスコのお立ち台で乱舞する女性たちの登場は新しい時代の幕開けと終焉を物語っています。
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映画『Wの悲劇』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
澤井信一郎
脚本
荒井晴彦 澤井信一郎
原作
夏樹静子
製作
角川春樹
プロデューサー
黒澤満 伊藤亮爾 瀬戸恒雄
撮影
仙元誠三
美術
桑名忠之
音楽
久石譲
音楽プロデューサー
高桑忠男 石川光
主題歌
薬師丸ひろ子
録音
橋本文雄
照明
渡辺三雄
編集
西東清明
助監督
藤沢勇夫
スチール
加藤雅昭
三田静香(薬師丸ひろ子)
森口昭夫(世良公則)
菊地かおり(高木美保)
宮下君子(志方亜紀子)
嶺田秀夫(清水紘治)
安恵千恵子(南美江)
木内嘉一草薙幸二郎
水原健(堀越大史)
城田公二(西田健)
小谷光枝(香野百合子)
佐島重吉(日野道夫)
林年子(野中マリ子)
堂原良造(仲谷昇)
レポーターA梨元勝
レポーターB福岡翼
レポーターC須藤甚一郎
レポーターD藤田恵子
安部幸雄(蜷川幸雄)
五代淳(三田村邦彦)
羽鳥翔(三田佳子)
1984年製作/108分/日本
原題:The Tragedy of “W”
配給:東映