映画『運び屋』実話、ネタバレ、感想、評価。クリント・イーストウッドの仕事人間を実演しているようだ

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クリント・イーストウッド監督・主演最新作『運び屋』公式サイト 大ヒット上映中!
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『運び屋』(116分/米/2018)

原題『The Mule』

『運び屋』を演じるイーストウッドは自らの映画人生を運んでいるように見えた。

 さて、前回はちょっとセンチメンタルになってしまってあまり良い原稿を書けなかった気がする。私はこの『運び屋』が上映中は週に一回は観に行くつもりでいる。クリント・イーストウッド作品を好きなのはもちろんのこと、私は映画館が好きなのだ。

仕事のためなら娘の結婚式などどうでも良い人間

 この作品でイーストウッドは自らの映画人生を重ねているように見える。まずイーストウッド演じるアールは仕事人間。家族のことよりとにかく仕事に人生をかけている。自身の娘の結婚式にも出ない。娘にとってチャペルを父親と歩くことは旅立ちの感謝を伝えるための大事な儀式だ。それすらもすっぽかす。そのせいで娘とは絶縁で12年も口をきいていない。

デイリリーを育てたら右に出る者はいない名人

 アールの仕事は花の栽培。特にデイリリーという百合を育てたら右に出ないほどの名人だ。全米各地で行われる品評会で数々の賞を獲得する有名人だ。娘の結婚式より品評会を選んでしまうほどデイリリーに命をかけている。しかも性格が気難しいと来た。昔気質んお頑固者。朝鮮戦争で戦った兵士でもある。誰かの指図も受けたくないし、昔ながらの方法で商売を成功へを導いてきた。

アナログからデジタルへの変革期に乗れなかった

 しかし、アールは時代の波に乗れなかったどころか、新しいビジネス展開を誤って倒産してしまった。アナログ気質はネット時代のデジタルな感性を認めなかったのだ。それまでメキシコ人を雇っていたが、一気に家も仕事場も失う。そこに現れたのはメキシコ系のマフィアだ。アールが数十年間、無事故無違反の優良ドライバーに目をつけて麻薬を運ばせるのだ。

 アールはそれが何なのかわかっていたと思う。報酬があまりにも高額だからだ。罪悪感を覚えながらもアールは仕事を請け負う。それはもう一度、花を育てたいという思いもあるが、もう一度家族と一緒に暮らしたいという思いが強くなっていく。90歳近い爺さんだが、しっかりと仕事をやり抜ける。例え汚い仕事でも約束したことは守り抜くという気位は失っていない。

麻薬を運ぶ仕事と妻の命、どっちが大切か

 しかし大量の麻薬を運ぶ途中に別居した妻の危篤の知らせを聞く。以前のアールなら仕事を優先し見舞いなど行かないが、アールは急いで妻の元へ駆けつける。娘も喜び12年ぶりに口をきく。妻との語らいが胸にくる「あなたほど憎らしい人はいない、あなたのことをずっと愛してる」妻は息を引き取る。そして娘と悲しみを共にする。

イーストウッドの実の娘アリソンとのやりとりは涙もの。『黄昏』を彷彿させる。

 この娘役のアイリスはイーストウッドの実の娘のアリソン・イーストウッドだ。結婚、離婚と数々の浮名を流してきたイーストウッドにとって「家族をないがしろにしてきた」という台詞の重さも感じる。何となくこの親娘のやりとりに『黄昏』のヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダを思い出してしまった。

クリント・イーストウッドからブラッドリー・クーパーへ映画の伝承が行われる

 さて、妻を看取った後、アールは最後の仕事に向かう。しかしブラッドリー・クーパー率いる麻薬捜査官に逮捕される。この場面も秀逸だ。クーパーはイーストウッドの後継者になる映画人だ。『アメリカン・スナイパー』でも演技もさることながら『アリー/スター誕生』では製作、監督、主演、脚本、音楽をこなす多才ぶりを発揮している。

自身の罪を認めること。それはアメリカ人すべてに伝えたかったことがあるのだろう。

 二人が対峙して交わす場面はおそらく数年後、映画の伝承場面として評価されるだろう。アールは逮捕され裁判にかけられる。年齢が年齢だけに裁判では無罪を主張する弁護士を遮ってアールは自ら「私は有罪です」と主張し刑務所へ入る。ここの場面が何とも侘しくなる。みんながいるのだ。アリソンもクーパーもその他この映画に登場する人々が。まるでイーストウッドに別れを告げているような雰囲気だ。結構グッと来るのだ。

そしてアールは刑務所で大好きなデイリリーの栽培に励みながら人生を終わる。

こんな映画だ。人生とは何だったのか。生きるとは何なのか。そしてどこへ行くのか。そんなことを考えさせる映画だ。

*余談であるがアンディ・ガルシアの風貌は本当にマフィアみたいだ。『ゴッドファーザー』のイケメンからこんなに変わるとはびっくりだ。恰幅もよくなった。

以下、その①

クリント・イーストウッド映画『運び屋』実話、ネタバレ、感想、評価。アメリカ国家の終焉を描いている。
クリント・イーストウッドの最新作『運び屋』は麻薬を車で運ぶ老人の物語だ。かつてビジネスで大成功したが時代に乗り切れず破産した。破産して失った家族の大切さに気が付いた。しかしお金がない。運転技術だけはある。アールは必要とされる喜びかそれとも金にためか、何かを求めて数千キロの道をひたすら走る。男にとって仕事とは、家族とは何か?

 

以下、その③

クリント・イーストウッド監督作品『運び屋』実話は観れば観るほど、新しい発見がある。ネタバレ、感想、評価。
過去のクリント・イーストウッド作品を思い出すと、主人公は嫌な正確な奴がほとんどだ。イーストウッドは彼らの人生の舞台を苦悩や葛藤を描いている。でも決して“老い”に対する焦燥感に悩む人間を描いていない。このアールも87歳であるが、挑戦している。まさにクリント・イーストウッドそのものではないか。人生は続くのだ。いや続けるのが人生だ。

映画のことなら映画.comより引用

スタッフ

監督クリント・イーストウッド 製作クリント・イーストウッド
ティム・ムーア クリスティーナ・リベラ ジェシカ・マイヤー ダン・フリードキン ブラッドリー・トーマス
製作総指揮 アーロン・L・ギルバート
原案サム・ドルニック
脚本ニック・シェンク
撮影イブ・ベランジェ
美術ケビン・イシオカ
衣装デボラ・ホッパー
編集ジョエル・コックス
音楽アルトゥロ・サンドバル

キャスト
クリント・イーストウッド アール・ストーン
ブラッドリー・クーパーコリン・ベイツ捜査官
ローレンス・フィッシュバーン主任特別捜査官
マイケル・ペーニャトレビノ捜査官
ダイアン・ウィーストメアリー
アンディ・ガルシアラトン
イグナシオ・セリッチオフリオ
アリソン・イーストウッドアイリス
タイッサ・ファーミガジェニー
ユージン・コルデロルイス・ロカ
ローレン・ディーンブラウン捜査官
グラント・ロバーツDEA捜査官
ピート・バリスDEA地方担当官
ロバート・ラサードエミリオ
ソウル・ウエソアンドレス
リー・コック突撃銃の男
ノエル・Gボールド・ロブ
クリフトン・コリンズ・Jr.グスタボ
ダニエル・モンカダエドアル
ポール・リンカーン・アラヨサル
作品データ
原題 The Mule
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 ワーナー・ブラザース映画
上映時間 116分
映倫区分 G