映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』公式サイトとYouTubeを参照ください。
『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』(122分/フランス/2018)
原題『Le grand bain』
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』のオススメ度は?
星5つです。
これは本当に素晴らしい映画です。
作品性も高いけれど、エンターテイメント性も高いです。
勇気をもらえる映画です。
これから何かに挑戦する人は絶対に観てください。
友だち、恋人、お子さんと観に行ってください。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の作品概要
本映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』はスウェーデンに実在する男子シンクロチームが世界選手権で成功を収めた実話をベース製作されている。演じるのはうだつの上がらない中年男性たち。それぞれの悩みを持ちながら共にトレーニングし友情も育む。コメディー要素もふんだんに織り交ぜつつ、フランス社会の生き辛さも表している。第71回カンヌ国際映画祭コンペティション外上映作品。セザール賞ノミネート作品。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』のあらすじ・ネタバレ
うつ病で会社を辞めて引きこもり生活をするベルトラン(マチュー・アマルリック)。妻子からの視線が辛い。調子のいい日に就職の面接に行くが落ちる。そんな時、男子シンクロナイズドスイミングクラブの会員募集に目が止まり、応募する。すんなり合格。そこにいた人たちは様々な問題を抱えており、練習を通して友情を育んでいく。そしてシンクロナイズドスイミングの世界選手権出場を目指す。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の感想・評価・内容・結末
ダメな中年男たちが本気になってテッペンを目指す
この映画めちゃくちゃ良いです。とても感動しました。ダメな中年男が目標を決めて真っしぐらに挑戦する物語です。
彼らが夢中になるのはシンクロナイズドスイミング。男がです。邦画で『ウオーター・ボーイズ』がありました。彼らは引き締まった肉体を持った高校生でした。
でも本作は中年太りのダラッとした体つきの男ばかりです。筋肉美などありません。彼らの良いところは衰えた体に対してほとんどコンプレックスを持っていないところにあります。
様々な人が集まるプールが心の拠り所
物語はけっこう複雑です。ある程度、年をとると人間は色んな悩みを抱えて生きています。
本作に登場する人たちはうつ病で失業者のベルトラン(マチュー・アマルリック)
会社破産の危機のマルキュス(ブノワ・ポールヴールド)
売れないミュージシャンのシモン(ジャン=ユーグ・アングラード)
女性にモテない孤独なティエリー(フィリップ・カトリーヌ)
精神病の母に振り回されているロラン(ギヨーム・カネ)
アルコール依存のデルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)など様々です。
そして彼らが心の拠り所を求めたのがプールであり、シンクロナイズドスイミングだったのです。
日常から離れたところで見つけた友情
それぞれの日常から離れることで築かれる友情もあり、それはとても美しい存在になり得るのです。水を舞台にしたのが良いです。
もしマラソンだったらヒットしなかったかも。
水は気持ち良いのです。映画の中でおじさんたちが水に浸かって気持ちよく浮かんでいる場面がとても穏やかに見えます。
元々、人間は海から来たのですから本能的に気持ちの良い場所が水の中なのでしょう。
フランス人独特の嫌味もありますが、それは優しさの裏返し
そしてフランス映画らしく、いやフランス人らしく、それぞれの悩みを告白しますが、その問題を解決してあげようなどの余計なお節介はしません。
お節介どころか、嫌味というか軽口を叩くことで笑いに変えています。これはフランス人独特の習慣でしょう。
邦画でしたら、誰かが悩みを持っていて困っているのであれば「何とか助けたい」という展開に持っていくかもしれませんが、良い意味で利己主義のフランス人らしく人に迷惑をかけないところに興味を惹かれます。
アルコール依存症はどこの国でも大問題
シンクロナイズドスイミングのコーチは過去のトラウマがあり、競技をやめてしまいました。しかもアルコール依存症。
稽古の方法は独特で詩の朗読です。これがとてもユニーク。しかし彼女はある男性を好きになっており、ストーカーまがいのことをしたことが露見し、再び酒を飲んでしまう。
コーチを失った彼らの元に現れたのは超スパルタコーチ。殴る蹴るは当たり前です。日本のスポ根の世界さながらです。あまりにも厳しい稽古で根をあげ、かつてのコーチを引き戻します。
どんな困難でもみんなで力を合わせれば乗り越えられる
それから彼らはシンクロの世界選手権へエントリーして出場するのです。確かにあの太った体では見栄えが悪いです。
他の国の選手の引き締まった体と演技のキレには遠く及ばないだろうと思わせますが、実際はすごい演技をします。
これが本当に鳥肌モンで涙腺が緩むのです。演技を通して彼らは悩みや問題を乗り越えるという強いメッセージを放ってきます。観客も引き込まれます。
そして観客はとっても素晴らしい中年オヤジの太っちょたちに万雷の拍手を送ります。
彼らが獲得したのは金メダルだけではなかった
彼らがフランスへ帰国してもマイナーな男子のシンクロナイズドスイミングの過去など誰も評価してくれません。
でも、でもです。彼ら家族、友人が最大限の称賛を送ります。
うつ病で失業者のベルトランの笑みは再び生きてやる!というエネルギーが伝わってきます。
会社倒産危機のマルキュスの元にも多くの友人が集まってきます。
精神病の母親を抱えるロランは母親を初めて喜ばせることに成功しました。
気弱なティエリーは馬鹿にしてきた連中を見返します。
売れないミュージシャンは娘からの尊敬の眼差しを受けてます。
アルコール依存のデルフィーヌは酒を断つ決意をします。
ジル・ルルーシュ監督の演出は人間の内面から描く
本映画はフランス映画らしく押し付け感が全くないところが作品のクオリティーを上げているのはいうまでもありません。
監督のジル・ルルーシュは長い俳優生活での経験から独特の演出を手に入れたと思われます。演出的には丁寧に人間の内面を描くタイプと言うのでしょうか。
本人から語ると言うより、周りの人間に語らせることで人物像を表現することがうまい。今回が長編デビュー作ですが、フランスではとても評価が高いセザール賞にも多くノミネートされている。また第71回カンヌ国際映画祭コンペティション外上映作品となるから将来、有望な監督だ。
映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』まとめ 一言で言うと!
バカにされても笑われても最後に笑うのは「自分だ!」と信じて挑戦しろ。
人が人をバカにするのは羨ましさが半分あると思う。自分も本当はやりたいけれど、笑われることが恥ずかしいから、やらない。あるいは失敗してバカにされるならやらない方がマシだと考えてしまう。でももし、何か夢中になれるモノを見つけたのならとことん挑戦してみるのが良いと思う。笑われようが、バカにされようが夢中になればどうでも良い気分になる。そうなれば周りの見る目も変わり、応援してくれる人も出てくる。
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映画『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ジル・ルルーシュ
製作
アラン・アタル ユゴー・セリニャック
脚本
ジル・ルルーシュ アメッド・アミディ ジュリアン・ランブロスキーニ
撮影
ロラン・タニー
美術
フロリアン・サンソン
編集
シモン・ジャケ
音楽
ジョン・ブライオン
マチュー・アマルリック
ギョーム・カネ
ブノワ・ポールブールド
ジャン=ユーグ・アングラード
フィリップ・カトリーヌ
ビルジニー・エフィラ
レイラ・ベクティ
マリナ・フォイス
フェリックス・モアティ
アルバン・イワノフ
2018年製作/122分/PG12/フランス
原題:Le grand bain
配給:キノフィルムズ