『カーライル ニューヨークが恋したホテル』(92分/米/2018)
原題『Always at The Carlyle』
映画『カーライル ニューヨークが恋したホテル』のオススメ度は?
星一つ。
現実から離れてセレブ感を味わいたい人はどうぞ。
92分の長いCMを見せつけらた気分です。
テレビ、あるいはネット配信で良かったのではないか。
映画にする意味がわからない。
人間としての成長物語がない映画。
映画『カーライル ニューヨークが恋したホテル』の作品概要
映画スター、政治家などの有名人が宿泊したホテルである。過去の栄光を宣伝文句に繁栄してきた感が否めない。有名人が泊まるから良いホテルだとは限らない。時代や流行に取り残されつつあるホテルと宣伝している感もある。
映画『カーライル ニューヨークが恋したホテル』のあらすじ・ネタバレ
過去のカーライルホテルを利用した映画スター、スポーツ選手、政治家、王族の写真や映像をオンパレードで紹介していく。それに対して従業員のインタビューを差し込んで展開。終始ホテルを“褒めごろす”映画の構成となっている。
映画『カーライル ニューヨークが恋したホテル』の感想・評価・内容・結末
92分感のCMを観ている気分で何も中身が伝わってこない
何も得るこのない映画です。そもそもなぜこれを劇場公開するのか理解に苦しみます。テレビのドキュメンタリー、あるいはネット配信で十分ではないでしょうか。
正直言って92分間のCMを見せつけられたと言って良いでしょう。“自慢”ですね。「私はこの有名なホテルに泊まれる身分よ」と「ここに泊まらなければ一流ではない」と言われ続ける92分です。
そりゃあ、確かに老舗であり有名人が多く宿泊しているのはわかりますが、感覚が古いですね。古式伝統や習慣、風習を重んじるなどと言っていますが、時代にマッチしていないのは否めません。
時代に合わせるか、伝統を守るかの瀬戸際に立たされている感じがする
劇中、吃音症のコンシェルジュが長く務めたこのホテルを辞める理由に「人々の価値観が変わってしまった。品がなくなった」と言っている。
これが全てだと思う。彼は時代の変化についていけなくなったのは言うまでもないが、裏を返せばこのホテルはずっと伝統にこだわっている証であり、新しい人材やアイデアをあまり歓迎しないと言うことになる。
彼が辞める理由は、温故知新ではなく懐古主義に基づくものだ。
でも結局はそんな伝統などは岩場から落ちる水が穴を開けるようにやがては瓦解されていくだろう。
彼はそうなる前に自ら身を引く選択は正しい。自分の価値観を否定されたり、壊されることは苦痛であり屈辱だ。
過去の有名人利用を看板にして繁栄したホテル
例えば有名で格式高いホテルでも今やジーンズやビーチサンダルでホテル内を闊歩するのも自由がある。SNSがこれだけ世界を席巻しているのだからホテル経営も時代に合わせなくてはいけないだろう。
いつまでも高級ブランドを掲げて高武者な経営では成り立たない。
このホテルは過去において映画スター、プロスポーツ選手、政治家、王族などのセレブと言われる人たちに利用されてきた。
その履歴を宣伝として繁栄してきたのである。“人が人を”呼ぶだ。
カーライルホテルに泊まりたくなる魅力が伝わってこない
映画ではそれらのセレブの紹介で通されている。肝心のホテル内のサービスの紹介については皆無である。
例えばマットの硬さ、バスタブの広さ、シャワー、朝食のメニュー、照明の明かり、冷暖房、防犯、防音、カーペット、インテリア、絵画、階段の段差など上げたらキリがないが、宿泊する側としてはとても重要なことである。
セレブの人たちから見たらこれらは小さなことかもしれない、気にならないかもしれない、だったらセレブ側から見たホテルのサービスの良さを紹介してほしいものだ。
なんだろう?いつも100年物の高級ワインが完備されているとか、シルクでできた1000ドルのバスタオルが使い捨て使用とか、ブロードウェイまでドロローンでひとっ飛びとか、になってくるのだろうか。
泊まりたくなる魅力が全く伝わってこない内容だ。
なんだろう、このホテルに泊まれば過去の泊まった有名人と同じ感覚になれるってこと?それは単なる一瞬だけの見栄ではないか?
自己満足を得て、帰宅してから誰かに自慢するためだけに泊まるのだろうか?ホテルには出会いが欠かせない。であるならこのホテルで何か役に立つ出会いがあれば良いのだが。
セレブと同じ時間と空間を過ごすという見栄とプライドがもたらす従業員への効果
このホテルの従業員は長期勤務の人が多い。給料が良いのかは不明だが、皆一様に“カーライル愛”を語る。
まるでどこかの信仰宗教みたいだ。しかも新人の従業員も軒並み「光栄です」と答えている。
やりがいはあるだろうが、見栄を張っていられるのが本音ではないか。有名人が数多く泊まるホテルに勤務していると人に言うことで自身も擬似的なセレブ感を味わうことができる。
たとえ給料が安くても人間は他者から羨望の眼差しをもらうことがエネルギーとなるからだ。そうなってくると辞められない。見栄とプライドが大きく立ちはだかる。
本作の主人公は従業員にするべきだった
もちろん悪いことではない。カーライルホテルで働いていること自体で品格も備わるから悪態や悪事をすることに歯止めがかかるからだ。
だからこの映画の主人公は有名人ではなく“従業員”であるのだ。彼らがカーライルに捧げる人生は如何なるものかを描く方が断然面白い。彼らの仕事とプライベートの双方から描いて欲しい。
日本には“道”と言う生き方がある。茶道、華道、柔道、相撲道、その他日常生活の中でも“道”を用いることが多い。
これは一つの道を邁進する中で生きるとは何か、自分とは何かを追求していく。そしてその中に日本人としても誇りを保ち、自分だけが知る究極の場所にたどり着くものだ。
これをこのカーライルホテルに充てがうのであれば従業員は“カーライルホテル道”を貫いていると言える。
マシュー・ミーレー監督の経歴を見て納得
映画は世界でもヒットを目的としているから有名人を数多く登場させて興行成績をあげる目的は達成していると言える。
マシュー・ミーレー監督の経歴を見るとドキュメンターが多い。ホテルを舞台にした作品があるから本作の企画をした理由もわかる。
しかしながらスター俳優に媚びへつらいご機嫌取りをしているのいが画面から伝わってくるのが残念だ。映画監督はもっと威風堂々をしていないと、、、。
空っぽの内容の映画であることは間違いない
しかもこの映画は空っぽの内容であることは否めない。たくさん登場する映画スターに合わせてテンポの良い編集と音楽に騙されて、さぞかし良いものを観た感をねじ込んでくるが、実は全く中身がない映画である。
われわれが映画を観る理由は人間の成長物語を擬似体験したいからだ。そう考えるこの映画には人間の成長を表している場面は一つもない。
この映画を観て多くの人はため息をついて「いつか泊まってみたい」呟くだろうが、私は反吐を吐いた。観ていて札束で頬を貼られている気分にさせられた。
以下、登場した有名人たち。
ジョン・F・ケネディ、マリリン・モンロー、ウィリアム皇太子&キャサリン妃、ジョージ・クルーニー、ソフィア・コッポラ、ウディ・アレン、ウェス・アンダーソン等々。
でも本当のセレブと言われる人たちが一番大切にしていることは“安全安心”である。セキュリティーとプライバシーの保護にあたる。自らの素性を決して晒さない。ましてや映画などには出ないだろう。
せめても救いはウディ・アレンがインタビューを受けていなかったことだ。
映画『カーライル ニューヨークが恋したホテル』まとめ 一言で言うと!
高い場所から見た景色は忘れられない。
人間は人より違った経験で得た快感や快楽はずっと脳が覚えているそうだ。富を得て豪華な暮らしをすると下々の暮らしには戻れない。戻れないから落ちないように頑張る。さらに名誉を得てしまうともっと厄介だ。政治家などはその典型。神輿を担がれ、スターになった気分は格別だそうだ。下から多くの人が自分に対して羨望の眼差しを向けてくる。自分には価値がある人間と勘違いする。一度、手に入れた名声、名誉を手放したくない一心で下々の人たちのご機嫌とりが仕事になる。好感度アップを目指して。テレビを見ているとそんな人たちばかりだ。本物はいつも日陰でほくそ笑んでいる。
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映画『カーライル ニューヨークが恋したホテル』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
マシュー・ミーレー
製作
ジェニファー・クック マシュー・ミーレー ジャスティン・ベア
製作総指揮
スティーブン・マッカーシー クリスティン・ハリス スコット・ドンリー ブランドン・ヒル
脚本
マシュー・ミーレー
撮影
ジャスティン・ベア
編集
ジェームズ・マック・エガートン
音楽
アール・ローズ
ジョージ・クルーニー
ウェス・アンダーソン
ソフィア・コッポラ
トミー・リー・ジョーンズ
ジェフ・ゴールドブラム
ナオミ・キャンベル
アンジェリカ・ヒューストン
レニー・クラビッツ
エレイン・ストリッチ
ベラ・ウォン
アンソニー・ボーデイン
ジョン・ハム
アラン・カミング
ケリー・オハラ
グレイドン・カーター
リタ・ウィルソン
ジャック・ニコルソン
ウッディ・アレン
ニーナ・ガルシア
ハーブ・アルバート
ボビー・ショート
ハリソン・フォード
ビル・マーレイ
ロジャー・フェデラー
ラニ・ホール
2018年製作/92分/G/アメリカ
原題:Always at The Carlyle
配給:アンプラグド