映画『突撃隊』公式サイトにて作品情報・キャストもご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『突撃隊』(90分/アメリカ/1962)
原題『Hell is for Heroes』
【監督】
ドン・シーゲル
【製作】
ヘンリー・ブランク
【出演】
スティーブ・マックィーン
ボビー・ダーリン
ジェームズ・コバーン
映画『突撃隊』のオススメ度は?
星3つ半
白黒映画です。
第二次世界大戦の映画です。
若きスティーブ・マックイーンがいます。
ジェームズ・コバーンもいます。
やはりドン・シーゲルの演出が秀逸です。
映画『突撃隊』の作品概要
ドン・シーゲルと後の世界的大スターになるスティーブ・マックイーンが組んだ戦争アクション映画です。米軍側からの目線で描かれています。
映画『突撃隊』のあらすじ・ネタバレ
帰国するはずだった6人が突如、前線に駆り出されます。援軍が到着するまで独軍の侵攻を阻止する命令を受け奮闘します。独軍に少数だとバレないようにあの手この手を尽くします。自動小銃の連写、火炎放射器など。
映画『突撃隊』の感想・評価・内容・結末
スターダム街道真っしぐらのスティーブ・マックイーンの映画
この映画は何と言ってもスティーブ・マックイーンがすべての作品だと言えます。
本映画の2年前の『荒野の七人』でマックイーンは評価されて本作で勢いをつけて1963年の『大脱走』で確実に世界のスターダムにのし上がります。
それゆえに本作ではマックイーンの功名心が見え隠れするのです。
マックイーンの魅力は何と言っても「キング・オブ・クール “The King of Cool”」と呼ばるほど、顔だけで演技ができるところにあります。
その風貌が若者を中心に「アンチヒーロー」として人気を博し反体制の象徴にされることもありました。
ドン・シーゲル監督がスティーブ・マックイーンと組んだ唯一の作品
そしてこの映画はドン・シーゲルが監督をしています。
シーゲルは後にスパゲッティー・ウエスタンで世界的なスターになったクリント・イーストウッドと組んでヒットを発表します。
この『突撃隊』が製作された1961年のクリント・イーストウッドは、ほとんどの無名で、同世代のマックイーンの活躍にかなりの遅れをとっています。
シーゲルはこれから急上昇していくマックイーンと本当は映画を撮りたかったのかもしれません。しかしマックイーンはシーゲルの手の届かない程の人気になってしまい諦めた感もあります。
スティーブ・マックイーンを意識しているはず
それでクリント・イーストウッドに陽の目が当たった可能性があるのです。
シーゲルとイーストウッドがマックイーンを意識しているのはフィルモグラフィーを見れば如実にわかります。
マックイーンは1973年に『パピヨン』に出演します。これは脱獄映画の金字塔で以降の脱獄映画の基本になります。もちろん世界的に大ヒットします。
その数年後の1979年にシーゲルとイーストウッドは『アルカトラズからの脱出』を発表します。同じ脱獄映画です。こちらは『パピヨン』ほどヒットはしませんでした。
スティーブ・マックイーンvsクリント・イーストウッド
同じ脱獄映画でスティーブ・マックイーンとクリント・イーストウッドを比べると、やはりマックイーンの方が優っていると思います。
マックイーンの反抗的な表情から全く逆の絶望的な顔が映画全体を完全に支配しました。
対してイーストウッドの顔はハンサムすぎて犯罪者としては迫力がないのです。
その後のマックイーンは相変わらず骨太なアメリカンな男を演じ1980年の『ハンター』を遺作に映画界から去りました。
イーストウッドは『ブロンコ・ビリー』など少しコメディー路線に走ります。
アメリカン・タフガイは間違いなくスティーブ・マックイーンに軍配が上がったと言えます。
第二次世界大戦の米軍側から見た戦争
さて、本映画について解説します。第二次世界大戦を舞台にしています。
簡単に言えば米軍対独軍の戦いです。独軍の侵攻を止めるために少数精鋭で踏ん張る男たちの物語です。
リーズ(スティーヴ・マックィーン)は勲章をもらう活躍をしましたが、酒癖が悪く降等されています。
コービー(ボビー・ダーリン)は戦利品を手に入れて帰国したら売りさばこうと考えています。その他、一癖も二癖もある人物が前線に駆り出されます。
ルーミス大尉(ジョセフ・フーバー)、コリンスキー(マイク・ケリン)、ヘンショー(ジェームズ・コバーン)など。
兵士たちは帰国を楽しみにしていたのに、、、たった6人で独軍を食い止めなければいけません。
こんな少数で守れと言われても、、、
しかし如何せん人数が足りません。独軍に少数を知られることが戦況を左右します。
6人はあの手この手で戦います。
いま観ると戦闘シーンが迫力に欠けるようなイメージがありますが、当時としては画期的な戦闘だった思います。
自動小銃の連写はもとより火炎放射器、さらに地雷の爆破なども計算されています。砂埃の立ち方が足元ギリギリです。
塹壕は今や戦地ではほとんど掘られません。
今の戦争は空中戦が主でほとんど現場へ行かず、遠く離れた基地からポタンを押してミサイルを発射する戦いだからです。
本映画のように地上戦で塹壕越しの戦いはある意味新鮮に見えます。
実際の戦争を撮影したフィルムを使うシーゲル
そしてこの映画のドイツ軍側の様子を観て気が付いたと思いますが、実際の第二次世界大戦で撮影されたフィルムを使っています。
一瞬、違和感を覚えますがこの手法を用いたドン・シーゲルはやっぱり只者ではありません。
戦争の醜さを表すと同時に自身の撮影した映像が負けていないという自負も感じます。
米軍兵士初の自爆を演じたスティーヴ・マックィーン
映画は最終的にリーズ(スティーヴ・マックィーン)の活躍によって米軍が勝つであろう雰囲気で終わります。
ここでリーズの死に方にとても興味を持ちます。自身で爆弾を持って敵陣に入り自爆するからです。
近代戦争において初めて自爆行為、つまりテロを行ったのは何と言っても悲しき日本軍です。神風特攻隊は米軍を恐怖のどん底に陥れました。
欧米思想では自殺行為は賞賛されません。
ですから実際の第二次世界大戦では連合国側の自爆は皆無に近かったのではないでしょうか。
にも関わらず、シーゲルがこの演出をした意味が大きいと思います。
もしかしたらこの映画の製作当時の時制はソビエトとの冷戦、あるいはベトナム戦争へ向かう道のりであって、アメリカ兵士の勇気を表現したのかもしれません。
シーゲルはとにかく早撮りで、しかも暴力シーンが多いですが、本作は割と抑えている作品だと思います。
まとめ 映画『突撃隊』一言で言うと!
「戦争に命をかけて何を得る?」
いつの時代も戦争で犠牲になるのは若者です。そして次に犠牲になるのは女性、子どもです。あの第二次世界大戦で人間は戦争のおぞましさを知ったのに今の世界のどこかで争いが繰り広げられています。おそらく戦いという闘争本能は人類が滅亡するまで続くでしょう。で、戦争で命をかけて何を得るのでしょうか?何も得ません。得るとしたら新たな“憎悪”だけです。
『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
【スティーブ・マックイーン出演映画】
映画『荒野の七人』
まだまだ駆け出しのマックイーンが初々しいです
映画『大脱走』
本作で世界の大スターになりました
映画『パピヨン』
脱獄映画の金字塔であり、入門作品
【ドン・シーゲル監督作品】
泣く子も黙るドン・シーゲル
クリント・イーストウッドの脱獄劇
合わせて観たい映画
【戦争映画】
映画『プライベート・ウォー』
戦場を仕事場にする勇気ある女性ジャーナリスト
映画『アルキメデスの大戦』
第二次世界大戦突入に向かう日本軍部の内情
映画『芳華-Youth-』
中国、文化大革命とベトナムとの戦争に翻弄される若者
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』
イラク戦争はなぜ起きた?ジャーナリストの葛藤
映画『 ホテル・ムンバイ』
宗教争う、民族紛争はいつ終わるのか
映画『世界の涯ての鼓動』
戦時でも愛し合う二人
映画『田園の守り人たち』
夫、息子を戦争に取られて残された女は、、、
映画『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』
フィンランドでこんな激しい戦争があったとは、、、
映画『バイス』
戦争の影で皮算用する人が必ずいる
映画『ソローキンの見た桜』
戦争に翻弄された日本人女性とロシア人の恋愛
映画『アメリカン・スナイパー』
スナイパーほど悲しい仕事はない
映画『突撃隊』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ドン・シーゲル
製作
ヘンリー・ブランク
原作
ロバート・ピロッシュ
スティーブ・マックィーン
ボビー・ダーリン
ジェームズ・コバーン
ハリー・ガーディノ
1962年製作/90分/アメリカ
原題:Hell is for Heroes