映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』
(100分/PG12/アメリカ/2019)
原題『The Death of Dick Long』
【監督】
ダニエル・シャイナート
【製作】
ダニエル・シャイナート ジョナサン・ワン メロディ・シスク
【脚本】
ビリー・チュー
【撮影】
アシュレイ・コナー
【美術】
アリ・ルビンフェルド
【衣装】
レイチェル・ストリングフェロー
【編集】
ポール・ロジャース
【音楽】
アンディ・ハル ロバート・マクダウェル
【出演】
マイケル・アボット・Jr.
バージニア・ニューコム
アンドレ・ハイランド
ダニエル・シャイナート
サラ・ベイカー
シンシア・オルセン
ジェス・ワイクスラー
ロイ・ウッド・Jr.
スニータ・マニ
【HPサイト】
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』公式サイト
【予告映像】
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』トレーラー
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』のオススメ度は?
星4つです
A24製作です
これは面白いです
バカバカしいです
笑えます
新しい感覚の映画です
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の作品情報・概要
A24は現在アメリカで最も注目されているインディペンデント系エンターテインメント企業で、映画製作・配給会社である。本映画は『スイス・アーミー・マン』の大ヒットで世界的な注目を勝ち取ったダニエル・シャイナート監督・脚本を務めている。原題『The Death of Dick Long』直訳すると「デッカイチ○コの死」となる。実際に起きた出来事をモチーフに、アメリカの田舎町を舞台に「人に言えない」「知らない方が良い」てん末を描いたブラックコメディーである。マイケル・アボット・Jr.、バージニア・ニューコム、アンドレ・ハイランド出演。
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』のあらすじ・ネタバレ
アメリカ南部の田舎町で暮らすジーク(マイケル・アボット・Jr.) とアール(アンドレ・ハイランド)とディック(ダニエル・シャイナート) 三人は夜毎集まっては売れないバンドの練習をしながら、酒を飲み大騒ぎしている。ある晩、ある事情でディックが瀕死状態となる。焦ったジークとアールは血まみれのディックを病院へ運ぶが入り口に放置して逃走する。その際、身元不明者にするためにディックの財布を抜き取る。病院勤務を終えたリクター医師(ロイ・ウッド・Jr.)が処置するもディックは死ぬ。死因は直腸からの大量出血。すぐさま警察へ通報する。駆けつけた警察官ダドリー巡査(サラ・ベイカー) は強姦殺人と疑う。噂はすぐに町に広まり激震に包まれる。「ディックはなぜ死んだのか?」真相が明らかになっていく、、、、。
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の感想・内容
本映画はいま飛ぶ鳥を落とす勢いのA24が製作
この映画はめちゃくちゃ面白いです。ただかなりブラックユーモアというか、不謹慎だと思われる方もいると思いますので予めご了承ください。
まずタイトルの「ディック・ロング」は「でっかいチ○コ」となります。もうアメリカ人にとってディックとはそういうネーミングです。
昔、日本の歌手でディック・ミネさんていましたよね?彼の芸名もやっぱりその一物が“ご立派”だったから付けれたそうです。
さて、本映画はいま飛ぶ鳥を落とす勢いのA24が製作していることで話題になっています。
本年度『ミッドサマー』で世界を絶叫させたことは記憶に新しいです。その他、作品のジャンルも幅広く芸術、コメディ、ホラー、社会派と多岐にわたっています。独自の映像表現を目指すフィルムメーカーたちが日夜、脚本を売り込んでいます。
『WAVES/ウェイブス』は本当にアメリカの高校生の光からの転落を芸術的に撮っていました。『暁に祈れ』はタイの場末の闘技場で、再び祖国を目指す格闘家を描いていました。『魂のゆくえ』では牧師でありながら、心に重たい十字架を背負った男を静かに描いていました。『荒野にて』ではひとりぼっちになった少年を「誰か助けてあげて」と応援したくなる映画でした。『ラスト・ムービースター』ではかつての大スター・バート・レイノルズの遺作を撮りきり、『イット・カムズ・アット・ナイト』では青春ホラーの先駆けとなっています。
死体コメディー映画って新ジャンルを開拓
そして本映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』は死体コメディーです。
新ジャンルでしょうか?笑ってはいけないと思っても笑いがこぼれてしまうことってあるじゃあないですか。
特に緊張を要する場面で笑ってしまうことって経験ありませんか?漫画家の蛭子能収さんて「お葬式」は出禁という話は有名ですよね。
理由はあの沈黙が「おかしくて仕方ない」そうで、笑ってしまうからです。その気持ちわかります。
『スイス・アーミー・マン』のダニエル・シャイナート監督の最新作
本映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の監督は前作『スイス・アーミー・マン』で世界中の人を抱腹絶頂に陥れたダニエル・シャイナート監督の最新作です。
前作は死体のオナラをふんだんに使って大笑いさせてくれました。
不謹慎だとかいう人もいますが、もはや「死は悲劇ではない」時代に突入したと考えましょう。
しかも映画という表現に制限はありません。
そして本映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』をホラーとか、サスペンスと思って観ると完全にドツボにはまります。
ポスターが何やらホラーっぽい雰囲気を出していますよね。闇の中の花火とそれを持つ男っていうのが、、、。でも男は花火を股間に挟んでいるあたりで、これはコメディーだと伝えています。
突然のディックの死に「え、なに?」って感じ、、、
映画の進行も良いと思います。仲良しのジーク(マイケル・アボット・Jr.) 、アール(アンドレ・ハイランド)、ディック(ダニエル・シャイナート) の三人が夜な夜なバンドの練習をしています。と言ってもめっちゃくちゃ下手くそです。
バンド名はピンクフロイトです。フロイドではなくフロイトです。
そして彼らは酒を浴びるように飲み、花火を打ち上げバカ騒ぎしています。まるで高校生です。この場面を観てわたしも「参加したい」って思っちゃうほど楽しそうです。
でも突然、ディックが死にます。「え、なに?」って感じですが、物語はそのまま進んでいきます。
普通だったら「なんで死んだのか?」の映像的な説明があるのですが、本映画にはありません。
そこがミソなんです。観ていて強い不快感に包まれます。
「あれ、見落としたのか?」「これでは物語について行けないかも」などです。
でもご安心ください。本映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の計画通りなのです。観ている方の戸惑いと映画内で展開される真相がうまく交差してくるのです。
ジークとアールの挙動不審な態度と警察官のポンコツぶりが笑える
その理由はジークとアールの挙動不審な態度と警察官のポンコツぶりで描かれています。
ジークは車に付いたディックの血を拭き取ります。でも娘のシンシア(ポピー・カニングハム)を学校に送る際、シートから滲み出た血が娘の服に染み込む始末です。間抜けです。
おまけにガソリンスタンドで警察に会った時に、純粋な娘が昨夜ジークが拾ってきた財布のことを話してしまいます。
その財布は死んだディックを捨てるさいに、身元不明にするためにポケットから抜き取ってきたものです。これも間抜けです。
さらに、アールが心配でジークの元を訪れて「血の着いた車を捨てよう」と持ちかけます。二人は合点して川に沈めます。
でもこの川が浅すぎて沈まないのです。証拠隠滅に失敗です。そこで二人は「じゃあ、車は昨夜、盗まれたことにしよう」です。
あり得ないです。今朝、娘を乗せてます。もうこの辺りから「この映画はホラーでもサスペンスでもない」とわかってきます。
女性警察官二人組に「小さな町で前代未聞の殺人事件が起きた」を解決できるか?
女性警察官二人組も笑えます。
口では「この小さな町で前代未聞の殺人事件が起きた。必ず犯人を捕まえる」と言っていますが、行動が伴わないポンコツぶりなのです。
もう「クスクス」を笑うしかありません。
あとジークは妻リディア(ヴァージニア・ニューコム)が思いっきりビンタを繰り出す場面は笑えます。
映画でこれほどバッチリ決まるビンタは久しぶりです。数発くらわせます。良い音なんですよ。なぜ、ビンタをするのかも笑えます。
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の結末・評価
ディック・ロングの死因は「あり得る」そして「人に言えない」内容
さて、ところでディック・ロングの死因ですが、これも「あり得る」ことだと思いますが、「人に言えない」ことでもあります。
それをもしディックの妻が知ったら衝撃て死んでしまいそうな理由です。でも人によって趣味趣向がありますから、、、。話を戻します。
ここは大切なポイントです。ジークとアールは死亡したディックを病院に置き去りにします。病院の検視では直腸からの出血多量による死とされます。
誰かに強姦された可能性を示唆します。「えー」って思わせます。
アメリカ社会では「あり得ます」。警察も深刻な顔をします。
変質者の犯罪かと緊張感が走ります。でもしばらくすると「直腸に残された精液は馬のものだ」となります。またまた「えー」です。
もうここからは本当に笑えるのです。
人にはそれぞれ「知らない方が良い」性癖がある
物語の結末でジークが馬のコメットを逃します。その時のジークの愛情溢れる顔がおかしいのです。
つまりジークとアールとディックにとっては馬のコメットが性の対象者だったのです。いわゆる獣姦という性癖です。これは中々人には言えません。
しかもディックはコメットに挿れてもらっていたから尚更です。
いやいや、映画を観ていてなんとも言えない苦笑いが溢れてきます。
もし彼らの奥さんの立場でしたら、リディアのように身の毛がよだつことで「人に言えない」ことです。
エンディングの感動するような演出も笑える
最後はジークとアールは街を出ることを約束して終わります。このエンディングだけを観ると、とても感動的なのですよ。
今までのブラックコメディーが全くないのです。だからこそエンディングもクスクスと笑えてくるのです。
本映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』を監督したダニエル・シャイナートのセンスにただただ驚かされました。もう一度観たい映画です。
アメリカにも“村社会”があり「体裁を保ち」ながら暮らすのは大変だ
本映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』でなぜ、ジークとアールがディックの死をひた隠しにするのは、小さな町に住んでいることが一番の理由だと思います。
噂が広まる、世間体もある、知られたら恥、生きて行けない、などです。
アメリカにも“村社会”があるのです。
体裁を保ちながら暮らしているのに、自分たちの性癖は異常であることも知っており、それが露呈したら「生きて行けない」のです。
でも、彼らが証拠隠滅に躍起になればなるほど、裏目に出てしまうという有様がとても滑稽です。
死体を通して見えてくる「人間の本質」も描いている
なんとなくジークとアールの気持ちがわかるのです。人に言えない恥ずかしいことってありますよね。
特に性に関することって隠しておきたいものです。わたしも高校生の時、友だちからスキンを渡されて家へ持ち帰って隠したことがあります。
その時は「もし、親に見つかったら」ってビクビクしてしまいました。それは性癖ではありませんが、もしジークたちのような性癖であったのなら、隠し通すでしょう。
ディックが死んでしまった際も「なぜ置き去りにした?」ってツッコミが入りますが、もう頭の中ではパニックでしょう。
「やばい、町に住めない」「離婚されるかも」とか考えちゃうでしょう。
つまり本映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』は死体を通して見えてくる「人間の本質」も描いていると言えます。
もちろん、わたしたちの本質もスクリーンを通して改めて自信を見つめることになったと思います。
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』のディックの気持ちを考えてみた
ところで馬のコメットと獣姦の末、死んでしまったディックの気持ちについて考えてみました。わたし的には「かわいそう」って思いました。
でも兄の意見は「幸せだったろう」です。確かにそうかもしれません。いやきっと「幸せだった」と思います。
愛するコメットに抱かれながら死ねたからです。夢心地だったのではないでしょうか。
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』のキャストについて
ジーク(マイケル・アボット・Jr.)
リディア(バージニア・ニューコム)
アール(アンドレ・ハイランド)
ディック(ダニエル・シャイナート)
ダドリー巡査(サラ・ベイカー)
ポピー・カニングハム(シンシア・オルセン)
ジェーン・ロング(ジェス・ワイクスラー)
リクター医師(ロイ・ウッド・Jr.)
ディック・ロング(ダニエル・シャイナート)
レイク・トラヴィス(スニータ・マニ)
まとめ 映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』一言で言うと!
「知らない方が良いことってある」
とても個人的なことはできるだけ自分の中に収めておきたいことって確かにあります。それは羞恥心を持った人間だけの感情かもしれません。特に“性”の問題に人が口を出すのは「大きなお世話」です。ただ隠したことで、自分の首を絞める結果になることもあり得ると本映画は教えてくれました。
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映画『テッド・バンディ』
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映画『私の知らないわたしの素顔』
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映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ダニエル・シャイナート
製作
ダニエル・シャイナート ジョナサン・ワン メロディ・シスク
脚本
ビリー・チュー
撮影
アシュレイ・コナー
美術
アリ・ルビンフェルド
衣装
レイチェル・ストリングフェロー
編集
ポール・ロジャース
音楽
アンディ・ハル ロバート・マクダウェル
ジーク(マイケル・アボット・Jr.)
リディア(バージニア・ニューコム)
アール(アンドレ・ハイランド)
ディック(ダニエル・シャイナート)
ダドリー巡査(サラ・ベイカー)
ポピー・カニングハム(シンシア・オルセン)
ジェーン・ロング(ジェス・ワイクスラー)
リクター医師(ロイ・ウッド・Jr.)
ディック・ロング(ダニエル・シャイナート)
レイク・トラヴィス(スニータ・マニ)
2019年製作/100分/PG12/アメリカ
原題:The Death of Dick Long
配給:ファントム・フィルム