映画『ファースト・マン』はアームストロングの人間性を評価している。宇宙へ行く人間は謙虚だ。ネタバレ、感想、あらすじなし

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アカデミー賞を席巻した『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督と主演ライアン・ゴズリングが再びタッグを組んだ最新作! 人類の夢であり、未来を切り開いた月面着陸計画。この史上最も危険なミッションをアポロ11号船長アームストロングの視点で壮大なスケールで描く。

『ファースト・マン』(141分/米/2018)

原題 『First Man』

ケネディー大統領の遺言を叶えるため、アメリカの威信を勝ち取るためにも月へ行く必要があった

ソビエトに負けられない、強いアメリカを取り戻すために

 アポロ計画については様々な意見や都市伝説がある。まず人類を月に送る計画を立てたのがケネディーだ。彼が大統領に就いた当時はベトナム戦争の真っ只中で、泥沼化が予想されていた。しかも宇宙への覇権争いでソビエトに大きくリードされていた。ケネディーは何としてもアメリカの威信を保ちたかったのだ。強いアメリカを魅せつけなければいけなかった。それでアポロ計画を打ち立てた。10年以内に人類を月に行かせると。

 しかしながらケネディーは暗殺される。暗殺されたことでケネディーはカリスマとなり、彼の言葉が遺言として皮肉にもその計画が遂行される力を持ってしまった(都市伝説には実際は人類は月などへ行っていないとか、月面着陸の映像はキューブリックが撮ったとか諸説ある。それについてはあまり述べたくない。夢が無くなる)

ベトナム戦争で疲弊して行く社会情勢の中、なぜ遂行されたのか

 宇宙へ行くパイロットにニール・アームストロングは応募して合格する。飛行士は厳しい訓練をこなし空へと飛び立った。幾人かの命が失われる度にマスコミから、世間から叩かれた。ベトナム戦争で疲弊していく国力と戦争反対を掲げる市民団体との軋轢、そして無謀な宇宙への挑戦で浪費される税金。もう国中をあげて非難轟々が起きていた。

 しかしアポロ計画を成功裏にすることでアメリカの威信も国力も保てると信じ、計画を達成したのである。

月面着陸成功にアメリカ国民が驚喜爛漫し、一丸となった

 アポロが月に着陸した瞬間、全アメリカは一体となって喜んだことだろう。昨日まであれだけアポロ計画を叩いていたマスコミさえも両手を上げて祝福したそうだ。無論、世界中の人間がアメリカの力強さに畏怖の念を持ったのは間違いない。おそらくソビエトだけは苦虫を噛み締めていたのではないだろうか。

月面着陸を成功させた船長、ニール・アームストロングとはいかなる人物なのか

 さて、この映画のではニール・アームストロングの人間性について詳細に語られている。彼は生前、メディアのインタビューをほとんど受けなかったらしい。よってミステリーな部分が多く、それゆえにカリスマ的存在となったと言える。しかしながら本作を観て改めてニールの人間性を垣間見て「何と、強靭な精神力と知性、倫理の持ち主なのだろう」と納得した。

 宇宙飛行士になるにはまず、精神的な安定が求められる(体力は元々あるものが選ばれるそうだ)いかなる場面に遭遇しても冷静沈着に物事を判断し行動することが求められる。混乱したり迷走することは許されないだろう。他のクルーの命の責任を取らなければいけない。

国家の重要な任務のために自己を捧げている忠誠心の高い男

 この映画の中でニールはいつも冷静で感情をほとんど表に出さない。ただし、愛娘が亡くなる場面でだけ静かに涙を流す優しさもある(おそらく演出上必要であったのだろう)他のクルーは時折、悪ふざけをしたり、大声を出したりするがニールは一切そのような感情は出さない。物静かに状況を見守っている。記者会見での質疑も同様で面白みがない。息子からの質問にもNASAが書いた定型文のような受け答えをしている。まるで官僚だ。

 でもこれはとても大事なことである。つまり国家の重要な任務のために自己を捧げている忠誠の証であろう。だからこそ、ニールが船長に選ばれたのだ。NASAの文献を調べるとニールが最も自己顕示欲が無い男とある。ニールはいつも無口で謙虚、ましては自己主張や誇張をしないところが評価されたという。

宇宙空間に於いては自己主張や自己顕示欲は必要ないかもしれない。なぜなら未知なる世界だから


ここでちょっと矛盾すると感じる人もいるだろう。アメリカという国では黙っていては誰も相手にしてくれない。無能とさえ思われてしまう。もし、やりたいことがあれば積極的に主張しなければその目的に近づけない。それはスポーツでも芸術でも、学問でも、もちろんビジネスでもだ。日本人は無闇に自己主張や自慢をすると煙たがられたり、最悪、出る杭を打たれることもある社会が未だにある。しかしアメリカに於いては、やはり開拓魂が根付いているためか、どんどん主張していく社会がある。これはある意味誰にでもチャンスは平等にあるという証明だ。日本人の美学でもあるが、「泣かぬ蛍が身を焦がす」的な発想な全くアメリカでは通用しない。

 さて、これらのことを考慮すると明快な性格かつ積極的な人間が船長として選ばれる可能性もあったのだが、それは地球上、もっと言うならアメリカの地ではそう言う人間が重宝されると言うことで、こと宇宙となるとどうやら違ったらしい。つまり謙虚であり礼節をわきまえて、冷静な判断ができる人間が最適だと言うことだったのだろう。

ライアン・ゴズリングの佇まいが、実に紳士的だ

 いずれにしても本作ではニール・アームストロングの人間性を見事に表している。映画も従来のアメリカ映画と違って静かに進行しているように感じた。落ち着いて観ることができた。ありがちなスラングも少ない気がした。それはニール・アームストロングを演じるライアン・ゴズリングの佇まいが紳士的だったからだと思う。

 

映画のことなら映画.comより引用

スタッフ
監督 デイミアン・チャゼル
製作ウィク・ゴッドフリー マーティ・ボーウェン アイザック・クラウスナー デイミアン・チャゼル
製作総指揮スティーブン・スピルバーグ アダム・メリムズ ジョシュ・シンガー
原作 ジェームズ・R・ハンセン
脚本ジョシュ・シンガー
撮影リヌス・サンドグレン
美術ネイサン・クロウリー
衣装メアリー・ゾフレス
編集ベン・クロス
音楽ジャスティン・ハーウィッツ

キャスト
ライアン・ゴズリング ニール・アームストロング
クレア・フォイ ジャネット・アームストロング
ジェイソン・クラーク エド・ホワイト
カイル・チャンドラー ディーク・スレイトン
コリー・ストール バズ・オルドリン
キアラン・ハインズ ボブ・ギルルース
パトリック・フュジット エリオット・シー
ルーカス・ハースマ イク・コリンズ
イーサン・エンブリー ピート・コンラッド
シェー・ウィガム ガス・グリソム
パブロ・シュレイ バージム・ラベル
クリストファー・アボット デビッド・スコット
スカイラー・バイブル リチャード・F・ゴードン・Jr.
コリー・マイケル・スミス ロジャー・チャフィー
オリビア・ハミルトン パット・ホワイト
クリス・スワンバーグ マリリン・シー

作品データ
原題 First Man
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 東宝東和
上映時間 141分
映倫区分 G