映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(105分/G/フランス・ベルギー合作/2019)
原題『Les traducteurs』
【監督】
レジス・ロワンサル
【製作】
アラン・アタル
【出演】
ランベール・ウィルソン
オルガ・キュリレンコ
リッカルド・スカマルチョ
シセ・バベット・クヌッセン
エドゥアルド・ノリエガ
アレックス・ロウザー
アンナ・マリア・シュトルム
フレデリック・チョウ
マリア・レイチ
マノリス・マブロマタキス
サラ・ジロドー
パトリック・ボーショー
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のオススメ度は?
星3つ半です
頭を使います
フル回転です
謎解きについていってください
日本人翻訳家がいて欲しかった
最後は正義が勝つって感じでしょうか
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の作品情報・概要
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』『Les traducteurs』2019年のフランス・ベルギーのスリラー映画。 レジス・ロワンサル監督作品。ランベール・ウィルソン、オルガ・キュリレンコ出演。『ダ・ヴィンチ・コード』のダン・ブラウン原作『インフェルノ』出版の際、海賊行為と違法流出を防ぐために出版元が各国の翻訳家を地下室に隔離して翻訳を行なったとの実話をベースに創作された。フィクションにノンフィクションの脚本を重ねた名作と言える。
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のあらすじ・ネタバレ
世界的大ベストセラー小説『デダリュス』の第三弾を世界同時発売しよう計画を立てます。版権を獲得したエリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)は世界中から腕の良い9人の翻訳家を集めて監禁状態に起きます。外部との通信手段のスマホを取り上げ、地下室で作業させます。1日20ページ翻訳させます。しかし、絶対に漏れるはずがない原稿がネットに流出してしまうという危機が、、、、。流出させたのは誰か?
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の感想・評価・内容・結末
とても頭を使う映画です。謎解きの迷宮のいつの間にか入っています。「え、そうなの?」を何回言ったことでしょうか。物語は『デダリュス』といく世界的なベストセラーになった小説の第三弾を翻訳するという流れです。ただ世界中から腕の良い翻訳家をフランスの集めます。場所は田舎で所有者はロシア人の大富豪の屋敷です。なんでも核爆発が起きても壊れないくらい頑丈な作りです。
大元は出版社の社長のエリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)です。こいつは本当に嫌な奴って感じです。初見でわかります。上から目線で集まった翻訳家たちを見下ろし「役立たず」呼ばわりします。支配的な人間です。そして彼に雇われた屈強な男はロシア人。集めれらた翻訳家たちはもう檻の中のウサギ状態にさせられます。スマホはもちろん没収されます。毎日、『デダリュス』の原稿を20ページづつ渡されます。最初の一ヶ月で翻訳、次の一ヶ月で推敲して完成させるというハードな仕事です。その間は外部と連絡は取れませんし、外出も不可です。聞いただけでストレスが溜まります。
この小説を劇場型にしたローラはすごい
このようなブラック翻訳って本当にあるのでしょうか?実はこの映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』には元になった話があるのです。トム・ハンクス主演の映画『ダ・ヴィンチ・コード』の第4作目にあたる「インフェルノ」の出版の際に起きた出来事をモチーフにしているのです。、著者ダン・ブラウンの同意のもと、アメリカの出版元が各国の翻訳者たちを秘密の地下室に隔離して翻訳作業を行ったのです。世界同時発売するためもありますが、やはり海賊版や違法な流出を防ぐためです。ですから本映画はあながちフィクションではないのです。ただそれだけでは面白い映画にはなりません。かなりの脚色を施しています。それが見事にわたしたちの“脳みそ”をこねくり回してくるのです。
女性作家の時代到来
ちなみに集められた翻訳家はロシア語、イタリア語、デンマーク語、スペイン語、英語、ドイツ語、中国語、ポルトガル語、ギリシャ語です。残念ながら日本語はありませんでした。たぶん日本人俳優でフランス語と英語をこなせる人がいなかったのではないでしょうか。9人が一斉に集まって繰り広げられる会話のやり取りはフランス語、英語、スペイン語が飛び交います。その際のキャメラの導線が素晴らしいと感じました。普通、キャメラが動くと観ているこちらは誘導されて感に引き込まれるか、それとも離れるかに分かれると思います。わたしは固定ショットが好きなのであまりにキャメラが動くとCMを見ているような気持ちになって冷めてしまいます。でも本映画ではグッと引き込まれてしまいました。たぶんですが、セリフ回しも完璧であるのと、編集でのタイミングが絶妙だったと思います。緊迫感がありました。
この人がいたからフランス文学が世界にでた
結末もまったく予想がつきませんでした。というか「誰が?」などという余計な推測すら忘れさせてくれる脚本でした。こういう推理とサスペンスを含んだ映画はとても難しいです。登場人物が多ければ多いほど難しいです。観ている方の意識が散漫になりますからきっちりかっちりとした脚本が求められます。アガサクリスティーの『オリエント急行殺人事件』を彷彿させました。本来なら謎解きに一生懸命にならなければいけないのに(いやそうでもないか)いつの間にかわたし自身も映画の中にいるような気持ちになってしまいました。
つまるところ、出版社の社長であるエリックへの反感を9人の翻訳家たちと共有したからです。とてもいい映画でした。
天才作家のつまが天才だった
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』のキャストについて
エリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)
出版社の社長。無慈悲な出版社社長。「デダリュス」の作者の正体を知るただ一人の人物。かつてない規模での世界同時出版を計画している。お金のためならなんでもするという人間です。ランベール・ウィルソンの冷酷でキレやすい人間を素晴らしく演じていたと思います。一見、紳士なのですがとてつもない悪人です。
カテリーナ・アニシノバ(オルガ・キュリレンコ)
ロシア語担当。ミステリアスで情熱的。孤独を好む。人の心をかき乱す誘惑的な人物。「デダリュス」のヒロイン・レベッカに危険なほどに感情移入している。 とてもセクシーな演技でした。もちろん知的な雰囲気満載です。
ダリオ・ファレッリ(リッカルド・スカマルチョ)
イタリア語担当。少々傲慢なところがあり、SNSのおかげで少しばかりの名声を持つ。夢は、オスカル・ブラックと接触し彼の恩恵にあずかること。イタリア人らしい陽気な雰囲気を出しながら“信用できない”一面をうまく出していました。
エレーヌ・トゥクセン(シセ・バベット・クヌッセン)
デンマーク語担当。エレガントかつ野心的。家族を養うために翻訳者になった。いつか自分自身も小説家になることを熱望している。本当は小説家を目指している。彼女の書いた原稿が破かれ焼かれる場面に涙しました。
ハビエル・カサル(エドゥアルド・ノリエガ)
スペイン語担当。薄汚く、どもり癖があり、大人の体に閉じ込められた子供のよう。意志が弱く、簡単に人に流されやすい。スペイン人にしてはちょっと暗い。何かにビビってばかり。逆にそれがメンバーの緊張を和らげていたかも。
アレックス・グッドマン(アレックス・ロウザー)
英語担当。25才だが、永遠の子どものような雰囲気を持ち、ずば抜けて聡明。「デダリュス」海賊版の翻訳でファンの間で注目され、公式翻訳者に抜擢される。天才です。ハッカー的なことも出来ますし、小説を書く能力の高いです。この人の演技には騙されました。
イングリット・コルベル(アンナ・マリア・シュトルム)
ドイツ語担当。ヒッピーのような見た目と、ダイアン・キートンもどきの雰囲気を持つレズビアン。どんな状況においても冷静沈着だが、浅はかな不安定さもある、傍若無人な性格。めっちゃくちゃ元気の良いおばさんでした。実際、この人を信じて良いのかって雰囲気がありました。
チェン・ヤオ(フレデリック・チョウ)
中国語担当。中国出身だが、パリに20年暮らしている真面目な努力家。9人の中でもコミュニケーション能力が高く、皆の盛り上げ役。アジア人の「目配り、気配り、心配り」がとてもできる人でした。顔も良いし、背の高いので絵になりました。
テルマ・アルヴェス(マリア・レイチ)
ポルトガル語担当。短気で騒々しい。共同生活が苦手。首にピストルの刺青を入れているより良い生活のため翻訳者とウェイトレスの仕事をこなす。パンクロッカーって感じのイケてる女の子でした。めっちゃぶっ飛ばし感に溢れてる演技でした。全体を引き締めました。
コンスタンティノス・ケドリノス(マノリス・マブロマタキス)
ギリシャ語担当。公務員への給料の支払いもままならない国で、大学からの給料を補うために翻訳者をしている。知識人風だが、本質的な考え方は陳腐でシニカル。破綻した国ギリシャ人という設定でみんなからバカにされていました。「アテにならない」人間をうまく演じていました。
ローズマリー・ウエクス(サラ・ジロドー)
典型的な優等生。エリックからひどい扱いを受けているが、文学への愛だけを糧に仕事に取り組む。いつか自身で出版を手がけたいと思っている。アシスタントをやっています。じっと耐え忍ぶような演技が秀逸でした。
ジョルジュ・フォンテーヌ(パトリック・ボーショー)
フォンテーヌ書店店主。カットインで登場します。最初は単なる書店の親父かと思いましたが、まさかのゴーストライター?だった。騙す、騙されない、いや、誰が糸を引いているのか、、を考えるとこの人だったのか、、、。いや違ったりして、の演技でした。
まとめ 映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』一言で言うと!
「鳴かぬ蛍が身を焦がす」
セミのように泣いて自己主張するより、じっと我慢している者の方が強い意志を持っているという意味です。この映画の登場する翻訳家たちは影の存在のように見えますが、翻訳家という仕事はとても重労働ですし、翻訳の腕次第でヒットするかしないかが決まります。映画の中で翻訳家は小説家になれない人たちというような描写がありましたが、決してそうではありません。プロとして翻訳の仕事を遂行しているだけです。
『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング
合わせて観たい映画
【翻訳家を追いかけたドキュメンタリー】
映画『ドリーミング村上春樹』
村上春樹に人生をかけている女性
小説家を主人公にした映画
『天才作家の妻 40年目の真実』
女性の能力の方が高い
映画『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』
ローラという女流作家の才能が飛び抜けている
映画『コレット』
フランスにこの人がいたから良かった
映画『ドリーミング村上春樹』
村上春樹を愛してやまない翻訳家
映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』
ダメダメ人間と言われてもやっぱり太宰は偉大です
映画『トールキン 旅のはじまり』
『ロード・オブ・ザ・リング』の影に友情あり
映画『ガーンジー島の読書会の秘密』
リリー・ジェームズが綺麗すぎます
映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』
やっぱりサリンジャーはいつまでも少年
『Merry Christmas!〜ロンドンに奇跡を起こした男〜』
ディケンズの創作スタイルが釘付けになる
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
レジス・ロワンサル
製作
アラン・アタル
脚本
レジス・ロワンサル ダニエル・プレスリー ロマン・コンパン
撮影
ギョーム・シフマン
美術
シルビー・オリベ
衣装
エマニュエル・ユーチノウスキー
編集
ロイック・ラレマン
音楽
三宅純
エリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)
カテリーナ・アニシノバ(オルガ・キュリレンコ)
ダリオ・ファレッリ(リッカルド・スカマルチョ)
エレーヌ・トゥクセン(シセ・バベット・クヌッセン)
ハビエル・カサル(エドゥアルド・ノリエガ)
アレックス・グッドマン(アレックス・ロウザー)
イングリット・コルベル(アンナ・マリア・シュトルム)
チェン・ヤオ(フレデリック・チョウ)
テルマ・アルヴェス(マリア・レイチ)
コンスタンティノス・ケドリノス(マノリス・マブロマタキス)
ローズマリー・ウエクス(サラ・ジロドー)
ジョルジュ・フォンテーヌ(パトリック・ボーショー)
2019年製作/105分/G/フランス・ベルギー合作
原題:Les traducteurs
配給:ギャガ