天才伝説!『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』サリンジャーの名言が溢れてる映画

2019年製作
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https://www.rebelintherye-movie.com

 

『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』(109分/米/2017)

原題『Rebel in the Rye』

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不朽の名作『ライ麦畑でつかまえて』はサリンジャーの祈りが込めらているのだろう

 夢と現実の境界を彷徨っていたのだろうか

 サリンジャーの映画を観た。とても良かったと思う。大満足だ。作家としての産みの苦しみはもちろんのこと、サリンジャーの人生観が何となくわかった。昨年『ライ麦畑で出会ったら』を観ておいて良かった。本作では偏屈な人間として描かれているが、先の作品では割と温かみのある人間として描かれているから、両方を知っておくと却って共感する。サリンジャーは小さな頃から夢見がちな少年だったと予想していた。学校へ行っても窓の外ばかり眺めて授業なと聞かないし、休み時間には友達にちょっかいを出して喧嘩ばかりしていたような気がする。しかもそれらの行動は夢で見たことを実際にやってしまうのか、はたまたやってしまってから夢を見るのかのどっちかだったような気がするのだ。ありきたりな言い方だが、少年時代には誰もが経験する夢と現実の区別がつかなかった典型なのかと思っていた。そんな少年時代を過ごしたと勝手に思っていた。

教授に出会ってから作家としての心構えが芽生えた

 でもこの映画はその少年時代については語られていないから謎だ。大学に入学し文学の講義を受けるところから始まる。サリンジャーは作家になることを夢見てきた。それが現実になっていく様子が前半の見どころだ。当初は教授をバカにしているが、次第に魅了されて、小説への思い、つまりは書くことへ情熱がどんどん帯びてくる。一度火が点いたらもう後戻りは出来ない。前進あるのみだ。迷わない性格がサリンジャーの強さだ。昼夜問わず書きまくる。その努力は報われ初出版の機会を得る。喜びは一入だ。

書いて書いて書きまくること。でも戦争での傷痕は深く心にダメージを残した

 教授からの教えは「小説家に必要な事はまず声を聞くこと、次に不採用に耐えること」サリンジャーはこの言葉を胸に書いてから書きまくるが第二弾の発表は遠い。恋もし、青春を謳歌する。しかし第二次世界大戦が始まりサリンジャーは出兵することになる。戦場でもサリンジャーは書いて書いて書きまくる。ひたすら教授の教えを守った。後の『ライ麦畑でつかまえて』の原型ができる。悲しい知らせも届く。恋人がチャップリンと結婚してしまった。落胆の中、更に追い討ちをかけるように戦禍は激しくなり前線に駆り出される。その際、サリンジャーはあまりにも凄惨な光景を見て心を病む。戦争が終わり帰国するが何も書けない。PTSDだ。救いを求めるようにヨガに通い、瞑想を覚える。それからのサリンジャーはすごい、人が変わったように書き始める。

「見返りがなくても僕は書く」それがサリンジャーの選んだ道

 やがてあの不朽の名作『ライ麦畑でつかまえて』を出版し空前のヒットになる。しかし有名になればなるほど、人と接するのが嫌になり、田舎で隠遁生活に入る。そして出版もしなくなった。理由はいくつかある。自分の作家として芸術の高みにたどり着くために出版しなくても、書き続けることで到達できると考えたのか。「見返りがなくても僕は書く」が最も印象的な言葉だ。サリンジャーは隠遁生活をしながら書いて書いて書きまくっていたそうだ。そして瞑想して余生を過ごしたと言われている。

祈ることで誰もたどり着いていない芸術の世界を手に入れた

 我々、凡人には理解できない領域に達した人だと思う。端的に分析するとやはり戦争での恐怖がかなり影響を与えたのではないか。トラウマを克服するために出会った瞑想が彼を救ったのは間違いない。映画の中で傷ついた記憶を消すには新しい経験を上書きする必要がある、というようなやりとりがあった。確かにそうだと思う。

 サリンジャーはまるでページをめくるようにトラウマをかき消していたのではないだろうか。最早、金儲けとか名声はどうでもよく、書く行為が祈ることになったのだろう。瞑想を極めるととてつもない快感が得られると言う。快感は辛い記憶を上書きしてくれる。ひょっとしたらサリンジャーの芸術は祈りによって完結したのだろうか。

以下、サリンジャーの名言サイト

http://estorypost.com/名言・格言/j-d-サリンジャー名言/

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映画のことなら映画.comより引用

スタッフ

監督
ダニー・ストロング
製作
ブルース・コーエン
ジェイソン・シューマン
ダニー・ストロング
モリー・スミス
サッド・ラッキンビル
トレント・ラッキンビル

製作総指揮
エレン・H・シュワルツ
スコット・ファーガソン
マシュー・サロウェイ
クリスティーナ・パパジーカ

原作
ケネス・スラウェンスキー
脚本
ダニー・ストロング
撮影
クレイマー・モーゲンソー
美術
ディナ・ゴールドマン
衣装
デボラ・L・スコット
編集
ジョセフ・クリングズ
音楽
ベアー・マクレアリー
音楽監修
ジョナサン・ワトキンス

キャスト
ニコラス・ホルトJ・D・サリンジャー
ケビン・スペイシーウィット・バーネット
ゾーイ・ドゥイッチウーナ・オニール
サラ・ポールソンドロシー・オールディング
ビクター・ガーバー
ホープ・デイビス

作品データ
原題
Rebel in the Rye
製作年
2017年
製作国
アメリカ
配給
ファントム・フィルム
上映時間
109分
映倫区分
G

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