絶対王室!『ヴィクトリア女王 最期の秘密』無償の愛でアジア人を見つめた

上映中

http://www.victoria-abdul.jp

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(112分/英米/2017)

原題  『Victoria and Abdul』

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七つの海を制覇したイギリス王室。欲しい物を何でも手にした女王が欲しがったモノとは

差別と偏見がまかり通っていた愚かな時代があった

 かつてイギリスは世界の七つの海を制覇した大国だった。世界はまさに大英帝国で成り立っていた。この時代のヴィクトリア女王は後のイギリスの凋落を知らない。

 1887年、イギリスが統治していたインドから二人の青年が訪れる。二人の青年の一人がこともあろうに、ヴィクトリア女王に気に入られ王室内で存在感を強めていく。白人が忌み嫌う有色人種だ。周囲の人間は不安で不安でたまらない。女王陛下の行動が全くわからないばかりか、人も寄せ付けなくなる。誰もがこのインド人を追い出そうと画策するが路頭に迷うばかりだ。しかも姑息な計画が露呈し女王陛下の怒りを買ってしまう。

 本来であれば一般人は女王陛下の目を見ることさえ許されないのに、異国のインド人、つまり有色人種が女王陛下と目も合わせ、会話もし、そして手を取り合うのは前代未聞のことであった。それだけ差別と偏見がまかり通っていた愚かな時代があったのだ。

イスラム教を学び始めたヴィクトリア女王はご乱心だったのか

 映画の冒頭に戻るが、最初のカットのインドの風景に違和感を覚えた。何故ならインドと言えばヒンズー教だが、コーランが鳴り響き、イスラム教徒であろう人物が祈りを捧げていたからである。それを見て私は「この監督、歴史を知らないなあ」など笑ってしまった。だから途中まで鼻で笑いながら見ていたが、実はこれにはちゃんとした伏線があり、この青年は実はイスラム教徒であったのだ。私は自分の無知を恥じた。つまりこの映画の伏線には後のインド独立に於けるヒンズー教徒とイスラム教徒は仲良く暮らしていたことを表していたのである。しかもヴィクトリア女王がアブドルから習う言葉や文字がウルドゥー語であったから尚更驚いた。イギリス王族にとってイスラム教徒は野蛮な宗教である。その言葉も文字も拒絶の対象になっていたと思う。ヒンズーはまだ受け入れらえれていたはず。でもイスラムに対しては強い嫌悪感を持っていたから、女王陛下がイスラムに傾倒していく様は国家の危機を意味するものだ。

“保身”という感情が差別を助長させる

 ここで一度、冷静に考えてみよう。国家元首がある特定の人物だけを側に置くことはとても危険であると誰もが感じる。ましてやその人物が異教徒であるなら尚更だ。しかもそれまで守られてきたルールが突然変更になれば誰もが恐怖を覚える。その恐怖は正しい感情ではあるが、裏を返せば実に保守的で発展性のない考えであることに気がつくはずだ。保身だ。自分の現在のポジションを維持するために新参者を排除するために団結する動きに繋がるのだ。

 結局、人間というものは自分が一番可愛いものである。その次は家族、そして友人、街、国家となるが、自分と同じグループを探しそこに属することで安心感を得るのだ。ここではイギリス人、白人、王族関係、高貴な人、裕福な人となる。

この映画の教訓となるのは何か?ヴィクトリアは後世に何を伝えたかったのか

 我々の社会も同じだろう。類は友を呼ぶというように自分の周りには自分と同じような地位や富や思想を持った人で固めれていないだろうか。100年前なら尚更だ。よってこの映画を美談として扱っている。ヴィクトリア女王は誰も彼も受け入れて同じ人間として扱った偉大な人物であると述べている。しかしどうだろうか。もし本当に心優しい人物であれば植民地を解放すれば良いのにと考えてしまう。まあ、一度支配した領土を解放すると混乱と争乱になるから手放すことは危険だと言う説もあるが、それこそ盗人猛々しいだ。

100年の時を経てやっと美談となった物語

 物語はあっけなく終わる。ヴィクトリア女王が崩御するとアブドルはすぐさま解雇されインドへ送還される。ヴィクトリアが溺愛した分だけ怒りと恨みを買ったわけだ。

 インドは1947年に独立するが二つに分断された。インドとパキスタンだ。ヴィクトリア女王の時代は両者とも仲良く暮らしていたのに残念な結果になった。この映画で言いたかったのはイギリス王室はいかなる人種、いかなる宗教も受け入れる尊大な心の持ち主であったと言うことだろうか。それとも21世紀こそ差別なき世界を作ろうと言うものだろうか。できれば後者であって欲しい。

*イギリス王室の映画『エリザベス』『英国王のスピーチ』『ダイアナ』『女王陛下のお気に入り』など。そして『ふたりの女王メアリーとエリザベス』もまもなく公開予定だ。

 

映画のことなら映画.comより引用

スタッフ
監督
スティーブン・フリアーズ
製作
ティム・ビーバン
エリック・フェルナー
ビーバン・キドロン
トレイシー・シーウォード
製作総指揮
リー・ホール
アメリア・グレンジャー
ライザ・チェイシン
クリスティーン・ランガン
ジョー・オッペンハイマー
原作
シャラバニ・バス
脚本
リー・ホール
撮影
ダニー・コーエン
美術
アラン・マクドナルド
衣装
コンソラータ・ボイル
編集
メラニー・アン・オリバー
音楽
トーマス・ニューマン
キャスト
ジュディ・デンチ ビクトリア女王
アリ・ファザル アブドゥル・カリム
エディ・イザード バーティー
アディール・アクタル モハメド
ティム・ピゴット=スミスヘンリー・ポンソンビー
オリビア・ウィリアムズ レディ・チャーチル
フェネラ・ウールガーミス・フィップス
ポール・ヒギンズドクター・ライド
ロビン・ソーンズアーサー・ビッグ
ジュリアン・ワダムアリック・ヨーク
サイモン・キャロウプッチーニ
マイケル・ガンボンソールズベリー
作品データ
原題  Victoria and Abdul

製作年2017年
製作国 イギリス・アメリカ合作
配給 ビターズ・エンド、パルコ
上映時間 112分
映倫区分 G