『二階堂家物語』(106分/日)
イラン人女性監督のアイダ・パナハンデが日本の家長制度に翻弄される一家を描きとる
息子を亡くした二階堂家に重くのしかかる圧力
イラン人女性監督のアイダ・パナハンデが日本の奈良を舞台に撮った作品。日本の古いしきたりというか、家族のあり方について表現している。しかしどこまで日本の風習、慣習、伝統を理解したのはわからない。物語は奈良の田舎で代々続く名家の跡取り問題を主軸に展開していく。主演の加藤雅也演じる辰也は妻に出て行かれ、老いた母と娘の三人で暮らしている。かつて息子がいたが亡くなってしまい、それが二階堂家に暗澹たる空気を宿している。母は何としても男の子が欲しい。息子の子供を産んでくれる女性を探している。娘の由子は婿を取り名家を守りたいと願うが、中々うまく行かない。
辰也の経営する種苗会社で事務員のサラといつの間にか恋仲になり、結婚を考えるがサラには大きな秘密があり、結婚できない。そんな時、娘の由子が彼氏を連れてきて二階堂家に事件が起きる。果たしてどうなるのか。
初秋の奈良の田園風景の中、しっとりとかっちりと記録するように捉えている。
映画は冒頭からしっとりとした映像で展開されていく。山からかかる夕日に照らされる彼岸花と秋の虫の声。黄金色になびく稲穂。きっちりかっちりとした固定ショットで切り取られていく。お地蔵さんや墓地が映し出されてから二階堂家の中へ。女性の手のアップで助けて欲しい気持ちをうまく表している。こう言った演出は好きだ。さすが女性監督だ。
日本は確かに男系を重んじるところがある。長男が家督を継ぐのだが、中々上手くいっていない現状もある。一旦、田舎を離れると戻ってこない。また少子化問題、あるいは不妊問題もあり家督が途絶えることも多々ある。もう一つ、長男の家に嫁ぎたくない女性が増えている。そりゃあそうだろう。うるさいお姑の相手に残りの人生を捧げたくないのだ。
結構難しい日本の家のあり方に焦点を当てているが、正直言っていま一つの印象を持ってしまったのは何故だろう。うーん、まず辰也演じる加藤雅也がカッコよすぎること。カッコイイが故の悩みはあるだろうが、リアリティーが感じられない。それと物語の季節感に違和感を覚えた。彼岸花、稲穂とくれば初秋になる。辰也とサラの恋の始まりと終わり、そして母の死に至るまでのスピードが早すぎる。出来ることなら雪が降る冬に展開して欲しかった。やはり自然豊かな奈良を舞台にするのであれば移りゆく季節と共に物語を紡いで欲しかった。
最後に辰也は本当の愛を手に入れたのか、、、、。
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スタッフ
監督 アイダ・パナハンデ
脚本 アイダ・パナハンデ
アーサラン・アミリ
エグゼクティブプロデューサー 河瀬直美キャスト
加藤雅也 二階堂辰也
石橋静河 二階堂由子
町田啓太 多田洋輔
田中要次 多田源二郎
白川和子 ハル
陽月華 沙羅
伊勢佳世
ネルソン・バビンコイ作品データ
製作年 2018年
製作国 日本
配給 HIGH BROW CINEMA
上映時間 106分
映倫区分 G