ジョージア製作の映画『聖なる泉の少女』ネタバレ・あらすじ・感想。繊細で静謐な映像美で語る「これが芸術映画の源泉」必見。

2019年製作
スポンサーリンク

映画『聖なる泉の少女』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。

YouTubeで予告映像もご覧ください。

https://namme-film.com

『聖なる泉の少女』91/ジョージア・リトアニア合作/2017
原題『Namme

【監督】
ザザ・ハルバシ
【製作】
スルハン・トゥルマニゼ
【出演】
マリスカ・ディアサミゼ
アレコ・アバシゼ
エドナル・ボルクバゼ
ラマズ・ボルクバゼ
ロイン・スルマニゼ

スポンサーリンク

映画『聖なる泉の少女』のオススメ度は?

3.5

3つ半。

騒がしい日々から抜け出したい時は絶品な映画です。

おとぎ話に出てくるような世界観です。

川、山、湖、人々がみんな美しいです。

恋人と観に行ってください。

スポンサーリンク

映画『聖なる泉の少女』の作品概要

ザザ・ハルバシ監督の独特の世界観がにじみ出ています。単に芸術的とは言い切れないほど、心にずっしりと映像が入ってきます。人と争ったり、罵倒したりする描写はありません。とにかく魅入ってしまう作品です。

スポンサーリンク

映画『聖なる泉の少女』のあらすじ・ネタバレ

ジョージアの南西部、トルコに近い村でずっと聖なる水を守っている一家があった。父は年老いてこの先が心配だ。三人の息子たちはキリスト教の一派であるジョージア正教の神父、イスラム教の聖職者、そして、無神論の科学者に職を得ている。頼りは一人娘のナメ。水を守るためにどうすればいいのか、さらに村の上部に水力発電が建つという、、、。

スポンサーリンク

映画『聖なる泉の少女』の感想・評価・内容・結末

映画の原点に近い作風

この映画を一言でいうと「とっても静かで美しい」となります。91分間のうちで半分はセリフがないのではないでしょうか。

水の流れる音、風の吹く音、火が燃える音、鳥の声、樹木が軋む音、大地の音などなど

登場する人物たちも静かにボソボソっと喋ります。

欧米系の怒鳴り合い、いがみ合いのような場面はありません。

人によっては退屈で眠ってしまうかもしれませんが、「これぞ、映画だ」と思えてしまいます。

ザザ・ハルバシ監督は「映像芸術であって言葉の芸術ではない」と明言しているのに納得できます。

ジョージア製作の映画が世界を席巻する日がくるかも

ところでジョージアって国はどこにあるのかわかりますか?またどんなイメージを持っていますか?

恥ずかしながらわたしもどこにあるのかパッと頭に浮かびません。たぶんロシアの向こうだったような、、、程度です。

イメージはお相撲さんがいたっけ、です。大変失礼かもしれませんが、まさかこれほど素晴らしい映画を作り出す国とは知りませんでした。

旧ソビエト連邦で91年に独立しグルジアからジョージアに国名を変えました。

新しい国ですが過去の悲しい歴史を鑑みればこれからどんどん映画が作られる可能性があります。

自然と同じように人々もとても穏やかな理由がわかる

映画を観ているととても自然に囲まれた穏やかな国です。人々も温和で平和に暮らしています。

村には古来より守られてきたがあります。その水は聖なるもので人々の病気やケガを治してきました。

防人ではありませんが、その水をずっと守り続けた一家があります。年老いた父はなんとか水を守る後継を残したいと思っています。

子どもは三人の男の子と女の子一人います。しかし三人の男の子は、キリスト教の一派であるジョージア正教の神父、イスラム教の聖職者、そして、無神論の科学者の職に就いています。

残されたナメ(マリスカ・ディアサミゼ)に父親は意思を引き継がせたいのです。

固定ショットが説得力を与えてくれる

しかし、年頃のナメの心情は複雑です。他の女の子のように恋もしたいです。

そして気になる男性もできます。果てして、、、。という物語です。

冒頭に述べました通り、この映画はとにかく静かに進んでいきます。

川の流れの映像が数分続いたり、何気ない景色も所々でカットインしてきます。映像も固定ショットが多く、音楽も付けられていません。

カメラを振り回さないこと、大音量もないことが力強さを増している

何かが変わっていく、失われていくけれど、、、。

先日観た『ある船頭の話』も良かったのですが、こちらはもっとセリフがないところが特筆すべき映画かもしれません。

映画は序破急が無いようなイメージですが、ちゃんとあります。

密かな恋、祭り、別れ、、、。終盤、村の近くに水量発電所が出来ます。それで全てが変わっていきます。守り抜いてきた水に異変が起きます。

でもこの映画ではその発電所に抗議をするとか、戦うといった描写ありません。否定も肯定もしていません。

選択は本人がすることではないのか

端的にいうなら確かに「昔からの伝統や習慣、風習は大事だけど、時代は変化していく、人間の考えも変わっていく」と。

また古い人たちも新しい人たちに強制もしていません。

選択は本人次第なのであると言っている気がします。

おそらくですがジョージアはかつてソビエト連邦に属していました。

当時の社会主義は本当に自由がなく徹底的に管理されて世界でした。

ですからジョージア国民はその歴史を繰り返してはいけない、あるいは自由を奪うようなことをしてはいけないと考えているのではないでしょうか。

環境問題についても押し付けていない

この映画は静かに環境問題について提起していると思います。

やはり水の問題だと思います。

魚が出てくるのがその象徴でしょう。鯉だと思います。

これが何らかメッセージを持っています。樽の中で飼っていますが、最後は水の中へ帰っていきます。同時にナメの姿も消えてしまいます。

いつも人間が侵した破壊で犠牲になるのは生き物です。

そろそろ人間も気がつかないと自然からのしっぺ返しが来ることを覚悟しなければいけません。おそらくとんでもない痛手になる気がします。

スポンサーリンク

まとめ 映画『聖なる泉の少女』一言で言うと!

温故知新

昔からの風習や習慣、伝統はとても大事だと思います。でもそれを守るために若者の人生を犠牲にするのもおかしな話です。古来のモノを守れなくなった理由はやはり発展と文明が村に押し寄せたからでしょう。そして若者の流出が始まった。歴史は変わります。文化も変わります。つまり人も変わるのです。変化を受け入れるか受け入れないか、、、それがいい結果になるのかはわかりません。難しい時代です。

スポンサーリンク

『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング

映画『ばるぼら』ネタバレ・あらすじ「美乳」二階堂ふみ&「美尻」稲垣吾郎の衝撃愛!手塚眞とクリストファー・ドイルが紡ぐ「究極の芸術愛」誕生!感想・結末。
映画『私の知らないわたしの素顔』ネタバレ・あらすじ・感想。ジュリエット・ビノシュに恋したらダメ男になる。フランス最高女優。ラブシーンが美しい。
映画『うみべの女の子』ネタバレ・あらすじ「石川瑠華さんを観る映画」感想「セックスしてもしても何かが足りない気がするのはなぜ」」結末「中二病ってある」
映画『第三夫人と髪飾り』ネタバレ・あらすじ「一夫多妻の時代“愛のレッスン”は芸術的“官能美”」感想「新しい才能アッシュ・メイフェア監督登場」結末「現代ベトナム女性は自由?」
映画『楽園』ネタバレ・あらすじ・結末。ムラ社会は日本社会の縮図。長老(独裁者)の「決めつけ」こそ悪害なのだ。綾野剛、佐藤浩市もOKだが村上虹郎が最高だ!
映画『ドクター・スリープ』ネタバレ・あらすじ・結末。トラウマを乗り越えろ!自分らしく生きろ!レベッカ・ファーガソンが美しすぎる。
映画『カセットテープ・ダイアリーズ』ネタバレ・あらすじ・感想・結末。ブルース・スプリングスティーンが切れた“夢”を紡いでくれた。
山口百恵出演映画全リスト三浦友和との愛の軌跡が見える『伊豆の踊子』から『古都』
『Vision』
クリント・イーストウッド最高映画『許されざる者(1992)』ネタバレ・あらすじ「アメリカ社会の写し絵“悪人”しかいない世界」感想・結末

スポンサーリンク

合わせて観たい映画

【映像美が最高な映画】

映画『ある船頭の話』

オダギリージョーvsクリスファー・ドイルマン

映画『ある船頭の話』ネタバレ・あらすじ・感想。柄本明vsオダギリジョーvsクリストファー・ドイル。「時代は一瞬の風で変わる」
映画『ある船頭の話』公式サイトにて作品情報・上映館情報からネタバレ・あらすじ・感想・評価を記載。オダギリージョー監督、長編デビュー。日本人が忘れてしまっている大切なことを川の流れと共に描いています。移ろう時代の中で船頭をするトイチに柄本明。撮影監督にクリストファー・ドイル。新人女優、川島鈴遥。村上虹郎の好演。永瀬正敏、浅野忠信の存在感が抜群の映画。

映画『ライオン・キング』

すべてCGなんです。超実写というらしいです

ディズニー映画『ライオン・キング』は超実写。史上最高のキング・オブ・エンターテイメント。ネタバレ・あらすじ・評価・感想
ディズニー映画が誇るCGアニメーション最高傑作。これほどまでの実写に近づいた「超実写化」を目指した理由は何だろうか。他のあアニメーション製作会社からため息が漏れてしまうほど高い作品と言える。自然映像のCG化は本当に難しい。しかしディズニーはやりきってしまった。ディズニーはこの先はどんな映像世界を作るのだろうか。

映画『イメージの本』

映画の神さまゴダールです。この映像センスは誰も太刀打ちできません

映画『イメージの本』は映画の神様ゴダールの平和を願う反戦映画である。ネタバレ、評価
『イメージの本』(84分/瑞西・仏/2018) 原題 『Le livre d'image』 監督 ジャン=リュック・ゴダール ゴダールは良い意味で毎回、期待を裏切ってくれる。いつも新しいことに挑戦している。 映画こそ総合芸術と証明した。ゴダ...

映画『ROMA/ローマ』

アルフォンソ・キュアロンと同じ時代に生きていることに感謝したくなります

アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』は巨匠、フェリーニ、ビスコンティーを彷彿される芸術映画だ。ネタバレ、感想、評価
アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』はネットフレックス製作作品で世界中で映画賞を獲得してきた。白黒の映像美が世界の映画人を虜にした。物語は悲劇性の中に希望を見出す人間が力強く成長していく様を伝えている。この2018年にこのテーマで白黒でそしてネット配信で発表されたことに大きな意味を持つと言える。

映画『サスペリア』

最恐芸術とは痛みも伝わってきます

最恐芸術『サスペリア』はリメイクはオリジナルを凌駕する。映画館は沈黙に包まれた。
ルカ・グァダニーノ監督の『サスペリア』は1997年のリメイクとされているが最早オリジナル作品だ。ジャンルはホラーとか芸術とか分けがちだが、凌駕している。映画館でこの作品を観るときは沈黙に包まれ、スクリーンからの光を浴びて心地よい。後日まで心身に残る。映画とはこう言うモノだと知らしめてくれる映画だ。ネタバレしない記事です
スポンサーリンク

映画『聖なる泉の少女』の作品情報

映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ザザ・ハルバシ
製作
スルハン・トゥルマニゼ
製作総指揮
マムカ・トゥルマニゼ
脚本
ザザ・ハルバシ
撮影
ギオルギ・シュベリゼ
美術
アカキ・ジャシ
編集
レバン・クハシュビリ
ナメ(マリスカ・ディアサミゼ)
アリ(アレコ・アバシゼ)
ギオルギ(エドナル・ボルクバゼ)
ヌリ(ラマズ・ボルクバゼ)
ラド(ロイン・スルマニゼ)
2017年製作/91分/ジョージア・リトアニア合作
原題:Namme
配給:パンドラ

タイトルとURLをコピーしました