映画『フォードvsフェラーリ』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
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『フォードvsフェラーリ』(153分/G/アメリカ/2019)
原題『Ford v. Ferrari』
【監督】
ジェームズ・マンゴールド
【製作】
ピーター・チャーニン ジェンノ・トッピング ジェームズ・マンゴールド
【出演】
マット・デイモン
クリスチャン・ベール
ジョン・バーンサル
カトリーナ・バルフ
トレイシー・レッツ
ジョシュ・ルーカス
映画『フォードvsフェラーリ』のオススメ度は?
星4つ半です
これは良い
すごく良いです
組織での生き方の勉強になります
忍耐とプライド
映画『フォードvsフェラーリ』の作品概要
『フォードvsフェラーリ』『Ford v Ferrari』が原題。2019年に公開されたアメリカ合衆国の映画。監督はジェームズ・マンゴールド、主演はマット・デイモンとクリスチャン・ベールが務めた。フォードの車開発を通して組織の中で生きていく苦悩と苦闘を描いている。またアメリカ人のヨーロッパに対するコンプレックスならびにプライドを代弁している。フェラーリが敵ではなかった。
映画『フォードvsフェラーリ』のあらすじ・ネタバレ
レーシングドライバーとしてアメリカ人初のル・マン24時間優勝レーサーのキャロル・シェルビンは心臓病のため引退しシェルビー・アメリカンという会社を経営している。自身のデザインした車をセレブたちに販売している。ケン・マイルズは元飛行機乗りのスピード狂。各地で開催されるレースに出場して日銭を稼いでいる。一方、アメリカを代表する自動車会社であるフォードは世界戦略に出るためにル・マンでの優勝を狙っている。そしてキャロルを筆頭に優秀なチームを作ることになる。しかしながらフォードの背広組にレオ、アイアコッカなどの戦術と現場のキャロルたちの温度差が大きい。一番の問題は自我を貫くマイルズの存在だ。背広組にとって排除したい。しかしキャロルはマイルズ無くしてフォードの優勝はあり得ないと直訴する。そしていよいよル・マンへ、、、、。
映画『フォードvsフェラーリ』の感想・評価・内容・結末
この映画のタイトルは『フォードvsフェラーリ』です。でも実際は背広組vsツナギ組であったり、アメリカvsヨーロッパだったり、移民vs貴族、はたまた大衆車vs高級車と言った構図も見えてくるのです。こういった争いをフェラーリに対する戦いに置き換えて人間とは何かを如実に描いている秀作だと言えます。
個性の強い者は人より秀でた才能を持っている人が多いのも事実です。彼らの多くは誇り高く自身が一番であると信じています。他者と比べられたり、下に見られることに嫌悪感を抱き、対決姿勢を持ちます。いつも神輿のてっぺんで浮遊気分に酔いしれて自身の存在価値を確認しています。多くは一匹狼で群れることを嫌います。そんな男が組織に入ってきたらみなさんはどうしますか?
気を使います。出来るだけ触りたくありません。接する時間を短くします。本映画でキャロル・シェルビー(マット・デイモン) はそういった男たちを相手に仕事をする大役を担っています。癖の強い男の一人目はケン・マイルズ(クリスチャン・ベール) 流しのカーレーサーです。腕は天下一品です。二人目の曲者はレオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)です。頭が良いのです。しかも副社長で、権力を持っています。うまく付き合わないとクビを切られます。そして最後はフォード社長。こちらのクセは創業者の子孫であり、社長を演じているのはわかっていますが、お金を出してもらうために気を使います。
キャロル・シェルビーのル・マンへ向けての戦いは四面楚歌のような心境だったのでは無いでしょうか。これらの男たちがそっぽを向いたら全て終わりなのです。彼らが車のボルトであり、ネジであるのです。一つのネジが緩めばフォードの夢はもろくも壊れてしまいます。キャロルは全ての責任を背負ってル・マンで結果を残すために邁進します。その寡黙な眼差しに強さを感じるのです。
一方、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール) はいつもお山の大将です。運転技術もメカニックの知識も一番です。しかも相手が組織のトップであろうとなかろうと遠慮なく物を言います。“口は災いのもと”って昔から世界中で使い古されていますが、まさにその通りです。また出る杭は打たれるという言葉も同様で、このマイルズは上の方の人間から嫌われるのです。こういうタイプの人間は一昔前ならたくさんいましたが、現在ではあまり見なくなりました。特に若い人たちは“空気を読む”ことに長けていますから、墓穴を掘らなくなったと感じます。わたしもそうかもしれません。あまり目立ちたくないのです。
さて、映画はアメリカ中の人間がフォードを応援します。アメリカが世界でナンバーワンであることを証明する必要があるのです。アメリカ国民の多くはヨーロッパからの移民です。そしてアフリカから奴隷として黒人を連れてきています。純粋にアメリカ大陸に住んでいたのはネイティブアメリカンと呼ばれるインディオの人たちです。移民の多くはヨーロッパの人からは差別的な眼差しで見られています。それがアメリカ人としては悔しいのです。この映画を観ていてお気づきになるかと思いますが、ほとんど有色人種は登場しません。白人が主体となって展開されています。それがちょっと残念なところです。
映画の中で組織としてひとつのプロジェクトを完遂させる難しさを痛感します。これはわたしたちが日々、日本社会で対面する出来事とほぼ同じです。会社組織の中では個人の個性など何も役に立たない経験ってないでしょうか。和を乱したり、勝手に暴走することを組織は嫌います。本映画でも同様です。こういった組織内をうまく調整する役回りをキャロル・シェルビー(マット・デイモン)が演じています。それが本当に冷や汗が出るし、肝を冷やすようなスリリングな展開なのです。「この人の顔を立てなければ」とか「ちょっと煽ててみよう」などと言った目配り、気配り、心配り痛いように見えるのです。
キャロル自身が必死だった理由はアメリカの車を世界一にしたいという思いもあったでしょうが、責任を果たすことが一番だったのではないでしょうか。一度、引き受けた仕事です。途中で投げ出すような人間ではありたくないというプライドでしょう。その精神はフロンティア精神に結びつくのではないでしょうか。かつてキャロルの先祖は遠いヨーロッパから逃れてアメリカ大陸にやってきました。そして馬を駆って大陸を駆け巡ったのです。そして現代は馬の代わりに車を用いています。馬から車に変わり、そして世界に打って出るのだという強い決意もあったのでしょう。
映画『フォードvsフェラーリ』のキャストについて
キャロル・シェルビー(マット・デイモン)
マット・デイモンは本当に知性と教養のある人物の役がぴったりだと思います。本映画では実に厳しい立場の人間を演じています。友と組織に挟まれながら一番良い方法、つまりバランスをとって利益に繋げなくてはいけません。激怒したい感情を押し殺す場面が何どもありました。しかし、唇を噛んでじっと我慢します。この我慢という男の役を見事に表現するのはデイモンならではでしょう。
ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)
変幻自在ですね。『バイス』が記憶に新しいです。なりきりたディック・チェイニーには寒気がしました。本映画では破天荒で扱いにくい男を見事に演じきっています。プライドが高く、誰にも頭を下げたくない男、でもそれは裏返すと「世間を知らない男」となります。でも生きている限りやりたいことがある男なのです。自分に嘘はつけません。例えそれが損する結果になっても自分を貫き通すのです。しかしながら最後の最後で究極の選択をします。その結果、何かを得て何かを失ってしまいました。
リー・アイアコッカ(ジョン・バーンサル)
実に頭の良い雰囲気を醸し出しています。副社長のレオにぴったりとくっついて支えますが、自ら意見を言ったりしません。出来る男は口数が少ないという印象を持ちました。実際のアイアコッカはフォードの社長に付き業績を伸ばし、首になります。その後はクライスラーに移りフォードと対決することになります。将来のアメリカ大統領出馬も噂されたほどの実力の持ち主でした。ジョン・バーンサルは若き姿を非常に紳士的に演じています。
モリー・マイルズ(カトリーナ・バルフ)
1960年代を代表する強いアメリカ女性を見事に演じています。一番大事なのは子どもです。破天荒な夫がレースばかりしているのをじっと我慢しています。夫の好きなようにさせたいけれど、如何せんお金がありません。健気に耐えています。カトリーナ・バルフの一番演技はケンとシェルビーが殴り合いの喧嘩をしている時に、椅子に腰掛けどこ吹く風の顔で見ている場面です。とても理解のある優しい女性であると共感を持ちました。男は夢を持つと女の前では子どもになるのです。
ヘンリー・フォード2世(トレイシー・レッツ)
本当に苦虫を噛み潰したような顔をしています。一流企業のワンマン社長がぴったりです。フォード2世のプレッシャーもあります。社員に舐められてはいけません。ですから嫌われ者をあえて演じているのです。しかしこういう男は単純に火がつくとアイアコッカもレオも知っていたのです。フェラーリがフォードの悪口を言っていると焚き付けてレースに参加させられます。もちろん、プライドもあったり社運をかけてレースでの成功を皮算用していたのは間違い無いでしょう。
レオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)
嫌らしい演技でした。唆す、囁く、焚きつけるのです。嫌いな相手とは一切口を利きません。自身の昇進のためにシェルビーとケンを利用しているのではと思いがちですが、本心はフォードを世界に宣伝することで社の安定化を狙っていたのです。頭が良い男です。この映画の中では誰にも好かれていません。フェラーリーにも嫌われています。シェルビーにも嫌われています。ケンにも嫌われています。フォード2世からも好かれていません。ただアイアコッカはぴったりと寄り添っています。社にはこういう嫌われ者を置いておくメリットもあるということがわかりました。
まとめ 映画『フォードvsフェラーリ』一言で言うと!
「諸行無常なり」
栄華を誇っていたものはいつか没落して行きます。フォードも光り輝く時代がありました。やがて時代は日本車が世界を席巻するようになるとは思いも寄らなかったのでしょう。ヨロッパを見ていたら、アジアに抜かれてしまった。
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【フォード車が登場する映画】
映画『グラン・トリノ』
クリント・イーストウッドはフォード車が好き
映画『運び屋』
クリント・イーストウッドが麻薬を運びます
【マット・デイモン出演映画】
映画『インビクタス/負けざる者たち』
人種差別撤廃と南アフリカ団結にラグビーあり
【クリスチャン・ベール出演映画】
映画『バイス』
クリスチャン・ベールのカメレオン俳優ぶりは恐ろしい
映画『フォードvsフェラーリ』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ジェームズ・マンゴールド
製作
ピーター・チャーニン ジェンノ・トッピング ジェームズ・マンゴールド
製作総指揮
ケビン・ハローラン デーニ・バーンフェルド マイケル・マン
脚本
ジェズ・バターワース ジョン=ヘンリー・バターワース ジェイソン・ケラー
撮影
フェドン・パパマイケル
美術
フランソワ・オデュイ
衣装
ダニエル・オーランディ
編集
マイケル・マカスカー アンドリュー・バックランド
音楽
マルコ・ベルトラミ バック・サンダース
キャロル・シェルビー(マット・デイモン)
ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)
リー・アイアコッカ(ジョン・バーンサル)
モリー・マイルズ(カトリーナ・バルフ)
ヘンリー・フォード2世(トレイシー・レッツ)
レオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)
ピーター・マイルズ(ノア・ジュプ)
エンツォ・フェラーリ(レモ・ジローネ)
レイ・マッキノン
J・J・フィールド
ジャック・マクマレン
2019年製作/153分/G/アメリカ
原題:Ford v. Ferrari
配給:ディズニー