映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
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『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』(105分/G/フランス/2018)
原題『L’Incroyable histoire du Facteur Cheval』
【監督】
ニルス・タベルニエ
【製作】
アレクサンドラ・フェシュネル フランク・ミルサン
【出演】
ジャック・ガンブラン
レティシア・カスタ
ベルナール・ル・コク
フローレンス・トマシン
映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』のオススメ度は?
星4つです。
人間の持つ力ってすごい
一途の愛がこんな素晴らしい建築物を作るとは
歩き続けた人生
石を積み上げた人生
妻子を愛した人生
不器用な男は優しい
一生懸命な人を応援したくなります
映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』の作品概要
フランス南東部の自然豊かな田舎町に実在する建築物がある。今では観光地となっている。この建築物はひとりの郵便配達員の男が33年もの歳月をかけ、たった1人で完成させた手作りの宮殿「シュバルの理想宮」である。本作は実話に基づいて映画化された。主演はジャック・ガンブラン。 その他レティシア・カスタ、ベルナール・ル・コクが共演。
映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』のあらすじ・ネタバレ
寡黙で不器用な郵便配達員のシュヴァルは人付き合いが苦手である。最初の妻が死に息子も養子に出されてしまう。ひとりぼっちになったシュヴァルを温かく見守るフィロメーヌ。やがて二人は結婚し最愛の娘を授かる。ある日、山で奇妙な石につまずき転んだことをきっかけにシュヴァルの理想宮造りが始まる。それは愛する娘のための宮殿だった。
映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』の感想・評価・内容・結末
人間の持つ力は無限だ
人間の力とは本当に未知なる可能性を持っていると改めて思い知らされた映画です。
たった一人の男がこんなに素晴らしい建築物を作り上げるとは、、、、。本当に驚きです。
ジョゼフ=フェルディナン・シュヴァルは実在した人物です。
31歳で郵便配達の仕事に就くと定年の60歳まで勤め上げました。
配達のために歩いた距離は一日32キロメートル。
29年間で22万2720kmは地球5週分にもなると言います。
その間、夜に理想宮のために10時間働きます。
9万3000時間です。
愛する娘のために理想宮を建設
彼がなぜ理想宮を作るのか、それは愛する娘のためです。
再婚して授かった娘が可愛くて仕方ないのです。
きっかけはある日、山を歩いていて躓いた奇妙な石から着想をえました。
それから長い9万3000時間が始まります。
最もシュヴァル(ジャック・ガンブラン)とっては苦労でもなんでもなかったのでしょう。
とにかく一度こうと決めたら絶対に曲げないという強さを持っています。
時にはその強さが“変人”だと蔑まれますが、全く微動だにしません。
とにかく信念を持って突き進みます。
お金よりも名誉よりも地位よりも、家族愛なんです
このシュヴァルの良いところはお金に左右されないところです。
これだけの建造物を作っていく過程でかなりの有名人になります。
周囲の人たちもお金の匂いがする理想宮に集まってきます。
でもシュヴァルは一向だにせずひたすら作り続けます。
ここに彼なりの“道”を感じるのです。
不器用な愛を貫きながら妻に愛を伝える
人間、一つのことに一生懸命に取り組む人をみんなは認め賞賛します。
最初は笑っていた人たちもシュヴァルの生き方に共感していく様子に涙腺が緩みます。
ただシュヴァルは人に認められても特に嬉しそうな顔はしません。
黙々と淡々と、です。
シュヴァルが愛する妻への愛情表現を表す場面が忘れられません。
理想宮2階部分で石や泥を塗っている場面です。
階下には息子と妻。
息子が「身分の高い人の奥さんは旦那の浮気の心配ばかりして大変だ」というような話をします。
上で聞いていたシュヴァルは大笑いして砂利や石ころを下にいる妻の頭に落とすのです。
妻は怪訝な顔で「何するのよ」と言いますが、シュヴァルは笑い続けています。
この場面をわたしなりの解釈すると「お金なんかあったらロクなことないだろ、無くてもお前を愛しているよ」となります。
なんて素晴らしい演出なのでしょう。
フランスが大国だった頃への懐古も見受けられる
それとこの映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』にはフランスの植民地主義時代の憧れも少々見え隠れします。
シュヴァルが作り上げる理想宮はどこと無くアンコールワットに似ています。
そうです、フランスのかつての植民地です。
なぜシュヴァルがその様式を知ったかというと郵便配達で、送られてくる絵葉書ならびに写真を見たからです。
彼はそれらの絵や写真から空想し理想宮を建てるのです。
出来ることなら実際にアンコールワットへ足を運びたいけれど、金銭的にも身分的にも無理だとわかっていたのでしょう。
かつてアジアに覇権を広げていたフランスの栄華も少しだけ表していました。
シュヴァルが失った物も手に入れた物も山あり谷ありだった
シュヴァルは順調に理想宮を作ったのではありません。山あり谷あり、そして断崖から突き落とされたりします。
やっぱり一番のショックは愛する娘との別れだったのではないでしょうか。
さらに不幸が襲います。息子、妻と、、、、。
それにもめげず突き進む力に人間の持つ道なる可能性を感じずには要られませんでした。
映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』のキャストについて
シュヴァル(ジャック・ガンブラン)
本映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』はまさにこのジャック・ガンブランの演技に尽きると言っていいでしょう。
これほどまでに無骨で不器用で、しかも優しい男を演じるのは彼の風貌もさることながら、長い俳優人生の賜物だと思います。
日本で言えばかつての高倉健さんでしょうか。
一見、強面で、近ずくのをためらいますが、一度分かり合えると優しさが伝わってきます。
最初の妻が亡くなった時の表情もいいのですが、やっぱり二番目の妻が出産して女の子を産んだ後です。
最初はどう接して良いのかわからず若干冷たい印象を持ちますが、次第に愛が溢れる子育てをします。
それがとても温かいのです。
さらに前妻との間に生まれて離れ離れに暮らしていた息子が帰ってきた時の無言の愛は映画史に残る演技だと感じました。
第52回 ベルリン国際映画祭(2002年)で『レセ・パセ 自由への通行許可証』銀熊賞(最優秀男優賞) を受賞しています。
フィロメーヌ(レティシア・カスタ)
この人の演技も良かったです。
美人でありながら村の人たちは「なぜ、あんな男と結婚するのか?」と疑問の視線を向けますが、一向に気にしません。
彼女はシュヴァルの真面目な人間性に惹かれて結婚したのです。
無口で不器用で優しさの表現も下手だけど仕事を真面目にやる、そして家族のため、娘のために一度決めたら最後までやり通す一途な性格、そして絶対に浮気などしないところが良かったのだと思います。
レティシア・カスタがシュヴァル演じるジャック・ガンブランを見つめる目は本当に“子供”を見守るような優しさです。
その表情には貧しくても“愛されている喜び”も見えます。
オーギュスト(ベルナール・ル・コク)
村の郵便局の局長であるオーギュストはシュヴァルの一番の理解者です。
シュヴァルが真面目であることを知っており、彼が宮殿作りをするのを見守ります。
町の人々からシュヴァルがバカにされても彼を庇います。
かと言ってシュヴァルに手を貸したりはしません。それが良いのです。
まとめ 映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』一言で言うと!
「男は黙って背中で語れ!」
本当の強さとはこういう男の人を指すのだろうか。寡黙であることと真面目であることが比例した時代があったのは確かです。女性が男性に求めるのは勤労と一途な愛だった時代があったのも事実です。ひとつのことを一生懸命に追求することで人々に賞賛された時代があったことも事実です。お金や地位や名誉より大切なのは自身の道を極めることが求められた時代があったことも事実です。そんな時代がもう一度きて欲しいと願うのも事実です。
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映画『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ニルス・タベルニエ
製作
アレクサンドラ・フェシュネル フランク・ミルサン
脚本
ファニー・デマール ニルス・タベルニエ ロラン・ベルトーニ
撮影
バンサン・ガロ
美術
ジェレミー・デュシエ・リニョル
衣装
ティエリー・デレットル
音楽
バチスト・コルー ピエール・コルー
シュヴァル(ジャック・ガンブラン)
フィロメーヌ(レティシア・カスタ)
オーギュスト(ベルナール・ル・コク)
フェリシエンヌ(フローレンス・トマシン)
ナターシャ・リンディンガー
アリス(ゼリー・リクソン)
エリック・サバン
オレリアン・ウィイク
2018年製作/105分/G/フランス
原題:L’Incroyable histoire du Facteur Cheval
配給:KADOKAWA