『スターリンの葬送狂騒曲』あらすじ・ネタバレ「お笑い」共産主義の顛末は?

イギリス映画
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映画『スターリンの葬送狂騒曲』公式サイト
スターリンが死んだ!厳かなはずの国葬の裏で、絶対権力者の座を巡り、狂気のイス獲りゲームが始まる。8月3日(金)ロードショー|映画『スターリンの葬送狂騒曲』公式サイト

『スターリンの葬送狂騒曲』
(107分/英/2017)
原題 『The Death of Stalin』

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映画『スターリンの葬送狂騒曲』NHK BSプレミアム放送 11月2日(月)午後1時00分〜2時48分

11月2日(月)午後1時00分〜2時48分

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かつてソビエト連邦という巨大な社会主義国家があった。書記長こそが国家であり命であった。スターリンの葬儀を通して垣間見える側近たちの策略と裏切りをシニカルにそしてユーモアたっぷり描いた作品。

ソビエトと聞くと背筋が凍りつく年代の人もいるが、この映画を観ればお腹を抱えてる自分に驚きを禁じ得ない。

 この映画はずっと観たかった。劇場予告で頻繁に目にしていたのも理由の一つだが、世界の現状と照らし合わせると観ておくべき映画だと思ったからだ。予告は面白おかしくまるでコメディー映画のように流れていた。実際はコメディーではなく旧ソビエトの政治体制をシニカルに表現した秀逸なる作品であった。コメディー色を強くすればするほど恐怖を感じる度合いも増す。そういった意味でこの映画は成功している。

 この映画を観るとロシア人の気質がわかるような気がした。気質と端的に書いてしまったが、社会主義時代の彼らが盲目的な生き方をせざる得ない状況を考慮しての意見だ。ロシア人はとても哲学的な人が多いと改めて感じた。ドストエフスキー、トルストイを産んだ国だ。逆に言うと屁理屈っぽいと言う人もいる。嫌なことは嫌と言うが、いちいち理屈をつける。しかしあの時代はそれが出来なかったほどの恐怖政治だったのだろう。素直に従っていたのだろう。

 今は民主化されたが、この映画を観るとロシア人はかつてのソビエトのあの重たい空気を背負っているような気がした。いや、あの時代に戻りたいと願う人もいるのではないかと感じてしまった。ロシア人はソビエト連邦時代、本当にビクビクおどおどと暮らしていたのだろう。いつどこで密告され投獄され、あるいは殺されるかどうかわからない。親も兄弟姉妹も恋人も隣近所も友人知人の誰もが監視しあっていた。心を許せるような人がいない、そういう時代だった。神経もすり減って行っただろう。

 スターリンの葬式を行う連中を見ていればわかる。笑ってはいけないが笑ってしまう。何故笑ってしまうかを考えると今度は恐ろしくなってくる。彼らはいつも怯えている。そしていつも誰かに責任転嫁している。コメディーと恐怖が表裏一体となって映画は展開していく。素晴らしい演出だ。

書記長が倒れた、国家の一大事だ。その時、一体何を優先するのか!正直、忠誠、誠実、聡明、友愛なのか、それとも虚像、保身、裏切、策略、野望なのか。

 スターリンが倒れた。スターリンが死んでゆく。国家の一大事だ。早く救出しなければ敵国のアメリカにやられてしまう、国民のために動かねば、、、等とは考えない。まずは自分の安全が第一。それを確保してからスターリンに死んでもらい、公表し、葬儀へと駒を進める。段取りが大事なのだ。笑える。彼らにとってスターリンが死へと向かうことは実に喜ばしいことだ。もうスターリンにビクビクする必要は無い。心の中では早く死んで欲しいと誰もが願っている。でも死んでもらっても困る。この辺りがシニカルでたまらない。

 また国家の英雄であるスターリンの葬儀を誰が取り仕切るかについても議論が及ぶ。絶対にミスは冒せない。その葬儀を上手く取り仕切ることで次期ソビエト書記長の椅子が掛かっている。コメディー要素も含みながらハラハラドキドキさせる展開だ。

歴史を繰り返して今のロシアが誕生した。共産主義を目指した国家が今は特殊な民主国家になった。あらゆる経験を積んだ者は強いと言う。崩壊、再建を経験したしたロシアが強い理由がわかる。

 そして歴史は繰り返す。権力を手にした瞬間、かつての仲間を粛清していく。スターリンと同じだ。共産主義を目指した国では確かにこのような権力闘争があったのだろう。今現在も稀な社会主義国家がある。その国では日々恐怖政治と粛清が行われていると耳にする。

 そしてこの映画の中で私が特に着目したのは、所々にロシア人特有のユーモアが表されている点だ。諺諺だ。熊が出る、とか森に隠せとか。それが非常に面白かった。ロシア人は言葉を大事にすると言う。ロシアで1番尊敬される仕事は詩人だと聞いたことがある。しかも哲学的な詩が多い。だから彼らの話す言葉にはとても詩的な要素が多く、繰り返すが屁理屈にも聞こえる。そして諦めてるような言葉も多い。

 それとこの映画に出てくる赤は何とも言えない色だ。くすんでいるような赤で私の記憶で見た昔のソビエトの国旗の色を思い出した。所々に出てくる文字のバックの背景の赤色のインパクトも強烈だった。いずれにしてもスターリンと言う独裁者が亡くなり、次の書記長もやがて倒されることになる。

 そしてこの映画が何故、いま公開されたことを考えてみたい。かつて米ソは冷戦状態であった。あの緊迫した時代は両側にとってもメリットはあったはずだ。しかし今はどうだろう?アメリカは相変わらず大国だ。ロシアも大国ではあるが、かつての栄華はない。しかしロシアにも意地がある。トランプとプーチンはお互いに牽制しながらも完全には歩み寄らない。ちょっとした冷戦状態と言える。ひょっとしたらこの映画は再びかつての緊迫した冷戦時代が到来すると予見するものか、それともある程度の距離感が世界にとってメリットなのであると言っているのだろうか。答えは未来に出るだろう。 

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