アイスランド映画『たちあがる女』ネタバレ、感想、評価。たった一人で地球を守るために戦う女性の物語。過激思想であるが絶対的に共感して応援したくなる女性だ。

2019年製作
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映画『たちあがる女』公式サイト|3/9(土)公開
映画『たちあがる女』公式サイト。2019年3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。彼女はアイスランドから世界を救う―。とぼけたユーモアと人生の苦味、音楽と自然に彩られた、強さと優しさの物語。

『たちあがる女』(101分/アイスランド・フランス・ウクライナ合作/2018)

原題 Woman at war

監督 ベネディクト・エルリングソン

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この映画の舞台のアイスランドは天然資源が豊富だ。故に地球の未来を考える人が多いのだろう。

日本でリメイクして欲しい作品

この映画は文句なしに面白い。断言できる。絶対に観て欲しい。子供から大人まで観て欲しい映画だ。何よりも日本人に観て欲しいと思った。すでにハリウッドではジョディー・フォスターがリメイクを考えてれいるとのことだが、この映画こそ日本でリメイクすべき映画だと思った。舞台として沖縄とか福島とか。

なぜ彼女が環境テロリストになったのか。

物語は表向きは合唱団講師、しかし裏の顔は環境テロリスト演じるハットラの活動を主軸に展開されている。映画の冒頭、アイスランドの美しい苔蒸した大地が画面に映し出される。そして送電線の切断し、苔蒸した大地を必死の形相で逃げる女。確かに戦う女だ。ハットラがなぜこのような破壊活動を行なっているかは、あっさりと描かれている。まずアイスランドの美しい自然を守りたいこと。地球温暖化に歯止めをかけること。更に外資企業の進出を快く思わないことが挙げられる。

ガンジーとマンデラへの想いは何か

彼女の部屋にはガンジーとマンデラの写真が飾られている辺りも重要だ。言ってみれば革命家を夢見ている。資本主義とは何か、発展とは何かについて絶えず考えて生きてきたのだろう。つまりは共産主義に近い思想を持っていると思う。ここで面白いのは進出する中国の企業に向けて活動の矛先を向けている点だ。

ウクライナの女の子を養子にする意味とは

そしてこの破壊的活動を続けるかどうかを決める選択が訪れる。子どもの存在だ。彼女には実子はいない。長年、養子を欲していて、その夢が叶うのだ。ウクライナの女の子。このウクライナという設定も意味がある。チェルノブイリだ。

反社会的な行為であるが、応援したくなる女性

ハットラの住むアイスランドに中国系の企業が進出しアルミニュウムの工場が稼働している。ハットラにとっては工場は環境破壊の要因であり、地球温暖化を促進させる存在だ。美しいアイスランドが汚染されてしまうのを防ぐという使命感か、あるいは過激な思想からなのか、。工場に送られる電源を遮断し、操業を停止する。電線を切ったり、鉄塔を破壊したりとこれがまた痛快で面白いのだ。もちろん反社会的行為であるから決して褒められた事ではないが、応援したくなるのだ。カッコいいのだ。

破壊の後にアイスランドの大自然を疾走する姿がカッコいい

破壊活動を行なった後が良い。美しいアイスランドの苔蒸した大地を疾走していくのだ。苔のジュータンに潜り込んだり、氷河から流れ出る冷水に隠れたり、羊の死骸を被ったりと、あらゆる自然を身につけて、ハイテク機器から逃れる。中でも圧巻だったのは今世界中で流通しているドローンを弓矢で撃ち落とす様には笑ってしまった。ドローンは中国のDJI製品なのも意味深い。

ハットラは子どもが欲しかった、母親になりたかった

もう一つ、おそらくハットンは若い頃から子どもが欲しかったのであるが、実子に恵まれず養子を欲している。この背景に彼女の人生を何となく想像してしまう。勝手な想像だが愛する人に出会ったが結ばれなかったのか、それとも愛よりも自身の活動の方が優先された人生なのかを考えてしまう。もしくは不妊だったのかもしれない。(また養子はウクライナから女の子という設定もこの映画の大きな意味を持つ)親になる、彼女にとって1番の夢が叶ったのだ。

双子の姉は精神性を重んじる世界を目指している、その意味は

ハットラはこのまま環境活動を続けていくか、それとも養子を迎えに行くか悩み、最後の大仕事をやってのける。国中を上げて山女を捕まえようと試みるが捕まらない。しかしウクライナへ出国するその時、事は起こる。ネタバレにならない程度に書くが、ハットラにはヨガ講師を務める双子の姉がいる。彼女の精神性は穏やかで争いを好まない。この辺りもハットラと相対的だ。果たしてどうなるのだろうか。

映画のラストカットが印象的だ

映画のラストカットが印象的だ。おそらくだが、保水力を失った大地、川が氾濫している。人々は水に浸かりながら渡る。自然の前ではバスも車も役に立たない。それでも人間は前へ進まなければいけない、そんなメッセージも受け止める。確かに自然保護活動も大事だろう。でも全ての思考の振り子をそちらに向けてしまっては生きていけないことも確かだと思う。

全てにおいて計算された対比で描かれている。他にもあるはず。探してみよう。

この映画はあらゆる事柄を対比させながら地球の未来について深く描いている。愛想の良い合唱団の講師と過激な環境活動家、自然(大地)と発展(都市)、穏やかな姉(ヨガ)と過激な妹(革命家)、アナログとデジタル、弓矢とドローンなど。そして演出として音楽隊を挿入し寓話的に仕上げているのが素晴らしい。過激な場面が和らいでくる。しかもアイスランド男性3人のトリオとウクライナの民族衣装を着た3人の女性歌唱隊が交差するところが秀逸だ。上手い、とにかく上手い。

原題 Woman at war』を直訳すると『戦争の女』となるが、この邦題の『たちあがる女』は良いタイトルだと思う。

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スタッフ
監督 ベネディクト・エルリングソン
製作 マリアンヌ・スロ ベネディクト・エルリングソン カリネ・ルブラン
脚本 ベネディクト・エルリングソン オラフル・エギルソン
撮影 ベルグステイン・ビョルゴルフソン
美術 スノッリ・フレイル・ヒルマルソン
衣装 シリビア・ドッグ・ハルドルスドッティル
音楽 ダビズ・トール・ヨンソン

キャスト
ハルドラ・ゲイルハルズデッティルハットラ/アウサ
ヨハン・シグルズアルソンズヴェインビヨルン
ヨルンドゥル・ラグナルソンバルドヴィン
マルガリータ・ヒルスカニーカ
ビヨルン・トールズ首相
ヨン・グナール大統領

作品データ
原題 Woman at war
製作年 2018
製作国 アイスランド・フランス・ウクライナ合作
配給 トランスフォーマー
上映時間 101
映倫区分 G

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