心底絶叫!『生きてるだけで、愛。』趣里には悪魔が降りる。菅田将暉の憔悴した眼差しは若者の叫びだ。

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映画『生きてるだけで、愛。』公式サイト 11/9(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
芥川賞受賞作家・本谷有希子の傑作小説『生きてるだけで、愛。』を映画化!出演者に趣里 菅田将暉 田中哲司 西田尚美 / 松重豊 / 石橋静河 織田梨沙 / 仲 里依紗 ほか。監督・脚本は関根光才。

 

『生きてるだけで、愛。』(108分/日/2018)

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趣里、何と言っても趣里の演技が良い。疲れ切った表情が堪らない。それを見守る菅田将暉の優しさと憔悴した眼差しが、、、

趣里の横顔が良い。菅田将暉の猫背も良い。

遅ればせながら『生きてるだけで、愛』を観た。この映画は予告の段階から楽しみにしていた。何と言っても菅田将暉が観たかったのだ。青山真治監督の『共食い』を観て以来のファンになった。そして予告の中で一際、光を放っていたのだ趣里である。正統派の美人というより、個性的な女優である印象を持った。予告な中で掠れたような声に惹かれた。そして横顔が美しいと思った。実際、映画を観て驚いた。とにかくすごい女優に出会えたとため息が出た。

鬱から脱出したい気持ちはある、でも人の優しさに甘えてしまうと、、、、

物語は趣里が演じる寧子と菅田演じるライター津名木の恋物語をベースに展開していく。寧子は極度の鬱の影響で過眠症。ずっと寝ている。しかも“眠れない、起きられない”という矛盾も孕んでいる(私もそういう時期があったからわかる)二人の出会いはコンパ。酔っ払ってクダをまく寧子を津名木が介抱したのがきっかけで同棲する。しかしながら寧子はほとんど部屋に引きこもり外出しない。それどころか面倒を看る津名木を罵倒し、精神的に追い詰める言動を繰り返す。津名木は怒り返したりしない。ただ素っ気なく「ああ」とか「そうか」と言ってやり過ごす。それが寧子の気分に拍車をかけ更に攻撃する。ある日、津名木の元彼女が寧子の元に現れ脅迫するかの如く、外へ連れ出し、強引にバイトさせる。ここからの話は一気に展開していく。寧子が社会性を持ち鬱から回復するのかと思わせるが、そうは問屋は許さないと言った内容である。

鬱の後にやってくる躁状態は、ガソリンのない車のアクセルを踏み続けるようなもの

 鬱というのは本当に辛い。一旦、鬱にハマると中々抜け出せない。劇中の寧子は鬱状態と躁状態を繰り返しているから躁鬱病である。私も身近に躁鬱病の人がいたから津名木の気持ちも寧子の気持ちも少しはわかる。鬱の時は本当に体が重たく動けないのだ。トイレに行くことすらキツイ。体が鉛のように感じるという。そういう時は思考も微睡んでいて、水中の中にいるような状態だ。だから冒頭で寧子が津名木に向かって罵詈雑言を浴びせている時はおそらく躁状態に入って行く段階だと予想できる。

 実は躁状態の方が命の危険があると思う。止められないのだ。あらゆる衝動が抑えられない。この状態の時に多くの人は自身を傷つける行為をしてしまう。例えば自分が無敵になった気がする瞬間がある。電車を待っているホームで入ってきた電車に向かって飛び降りて、体を使って止められるような感覚になったり、屋上から空を見上げていると飛べるような感覚になったりするのだ。それは決して悲観的な感情ではなく尊大な自信に近いものなのだ。だから躁状態の時の方が恐ろしいのだ。

自己嫌悪と自己賞賛の堂々巡りが果てしなく続く生き地獄

 寧子も劇中で同様に言っていた。「鬱が来て、躁が来る。感情が抑えられない、言ってはいけないと思いながらも言ってしまう」正にその通りなのだ。感情が抑えられない。そして酷い自己嫌悪に襲われる。すると再び鬱状態に入り布団から出られない。自分ではわかっているのだ。でもどうやってもそんな自分から脱出できないのだ。印象的なセリフがあった。「津名木は良いなあ、こんな私と別れることが出来る。でも私はこんな私と別れることが出来ない」これは辛い、本当に辛いことだ。出来るものなら死んでしまいたい、でも死ぬことすら出来ない、つまり生き地獄なのだと言っている。寧子のような精神的な病を抱える人にはグッと胸に染み込む言葉だろう。

趣里の演技には悪魔が宿っている迫力があるが、最後の涙に女神を見た

 このように破滅的な精神を持った女の子を体当たりで演じた趣里には圧倒された。まず趣里の横顔が良い。どこかあどけなさも残るが、残酷性を帯びたあの視線。射抜くように見るあの瞳。これから何かとんでもない恐怖が始まるのかと背筋がゾッとした。面倒をみてくれる津名木に吐く言葉が痛い。クズ人間の如く侮辱する。それは自分がクズだから自分に対して言っている言葉だ。だから言った矢先に跳ね返ってきて落ち込む自分がいる。  

 津名木の前では強気な鬼ババアのようだが、ひょんなことからバイトするカフェではごく普通の可愛らしい女の子になるあたりがホッとさせる。ポニーテールがとても似合う愛想の良いお嬢さんだ(品性は両親から来ているのだろう)

 この映画の趣里演じる寧子の感情は“怒り”と“悲しみ”だけのような印象があるが、しっかりと“喜び”も“楽しみ”も表現している。まず楽しみだが、津名木の帰宅を何よりも心待ちにしている。弁当を一緒に食べたいのだ。言葉はキツイが仕草で津名木を好きだと伝えている。そして喜びは屋上の場面で一気にわかる。この場面は秀逸だ。こんなめちゃくちゃな自分を捨てないで愛してくれる津名木に抱きしめらて泣いているが、あれほど喜んでいる表情はないだろう。悲しみを超えたところに真の喜びがあると言うが、正にその通りだ。

 「生きてるだけで疲れる」って言葉があるがこれは「でも諦めてはダメ、生きなきゃ!」というメッセージに聞こえた。

この映画で趣里を知れて良かった。これからの彼女に期待したい。

映画のことなら映画.comより引用

スタッフ
監督
関根光才
原作
本谷有希子
脚本
関根光才
製作
甲斐真樹
松井智
藤本款
板東浩二
新井重人
森原俊朗
前信介
上田豊
水戸部晃
プロデューサー
甲斐真樹
アソシエイトプロデューサー
佐藤公美
金井隆治
協力プロデューサー
高口聖世巨
白川直人
撮影
重森豊太郎
照明
中須岳士
録音
山本タカアキ
美術
井上心平
衣装
立花文乃
ヘアメイク
田中マリ子
編集
田巻源太
音楽
世武裕子
助監督
久保朝洋
制作担当
中村哲也
スチール
久保田智

キャスト
趣里寧子
菅田将暉津奈木
田中哲司村田
西田尚美真紀
松重豊磯山
石橋静河美里
織田梨沙莉奈
仲里依紗安堂

作品データ
製作年 2018年
製作国 日本
配給 クロックワークス

上映時間 109分
映倫区分 G