『リヴァプール、最後の恋』
(105分/米/2017)
原題『Film Stars Don’t Die in Liverpool』
恋多き女性だから女優になったのか、女優だから恋多き女になったのか、いや彼女の生き方なのだろう
グロリア・グレアムという奔放な人生は何を求めていたのか
女優、いや女性というのは死ぬまで恋愛をしたいのか、と思ってしまった。それもとびきり新鮮で情熱的な恋愛を、、、、。いや、この映画のモデルになった女優のグロリア・グレアムがいつも恋を求めていたのだろう。彼女は奔放であった。生涯4度の結婚で4人の子供を産んでいる。しかも2番目の夫で映画監督のニコラス・レイと別れた後、4人目の夫はレイの息子のアンソニーと結婚しているから驚きだ。レイとの間に一人、アンソニーとの間に二人の子供を産んでいる。
憧れのシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を演じたかった
さて、映画はかつてアメリカで活躍した女優が落ち目となって渡英し、そこで若き無名の俳優と恋に落ちる話だ。グロリアはかつての栄光を忘れられない。もう一度スポットライトを浴びたのだ。イギリスの舞台でシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を演じたい。もちろんジュリエットだ。しかし年齢が、、、。それと迫り来る病が、、、。
男は恋に戸惑った、でも女はまったく戸惑いはなかった
このグロリアと恋に落ちるのが若き無名俳優であるピーターだ。グロリアは当時55歳、ピーターは20代半ば。親子ほどの年齢差があるが恋に落ちる。ピーターには戸惑いもあるがグロリアは全く恋に戸惑いがない。そこに人間らしさを感じる。好きになったら後戻りはできないのだ。二人は激しく愛し合う。そしてグロリアと共にアメリカへ行く。二人はニューヨークで一緒に暮らすが、すれ違いで別れてしまう。
愛する人が暮らすリヴァプールで死にたかったのでは、、、
それからしばらくしてグロリアが再びイギリスへ行く。ピーターと会うが、すでに病が彼女の体を蝕んでいた。グロリアは乳がんであった。グロリアを助けたい思いと迫り来る死の狭間で、唯一ピーターの心を慰めるのは愛し合った思い出の日々だ。映画は現在と過去とを交差させながら進んでいく。
恋のエネルギーが生まれる瞬間は誰も邪魔できないだろう
この映画を観て思ったのは、“純愛”である。恋に年齢差など関係ないのだ。男と女が何かの拍子で出会った瞬間の恋というエネルギーが生まれるのだ(男同士でも女同士でも同じだ)周囲から見ればそれは違和感を覚えるだろうが、当人同士は全く違和感などないだろう。故に恋は盲目と言う。私も恋に落ちた時のことを思い出すと雷が落ちたような衝撃が蘇る。衝撃が大きかった分、恋の寿命も短かったのも事実だ。激しい恋は一気に燃え上がるものだ。
原題の『Film Stars Don’t Die in Liverpool』についてを考えてみよう
さて、この映画の原作は『Film Stars Don’t Die in Liverpool』となっている。「映画スターはリヴァプールで死なない」だ。“彼女”つまりグロリアにしていない。これは原作者であったピーターが俳優という職業への敬意を表しているような気がする。ピーターはグロリアという女性も愛したがやはり女優であるグロリアを愛したのだろう。それはそれで素晴らしいことだ。グロリアはその後、息子によってアメリカへ戻され永眠する。最後に愛するピーターに会えた。
*音楽が良かった。、エルビス・コステロだ。『You Shouldn’t Look At Me That Way』
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スタッフ
監督 ポール・マクギガン
製作 バーバラ・ブロッコリ コリン・ベインズ
製作総指揮 スチュアート・フォード ジギー・カマサ ポール・マクギガン マイケル・G・ウィルソン
原作 ピーター・ターナー
脚本 マット・グリーンハルシュ
撮影 ウルスラ・ポンティコス
美術 イブ・スチュワート
衣装 ジャイニー・テマイム
編集 ニック・エマーソン
音楽 J・ラルフ
主題歌 エルビス・コステロキャスト
アネット・ベニンググロリア・グレアム
ジェイミー・ベルピーター・ターナー
ジュリー・ウォルターズベラ
バネッサ・レッドグレーブジーン・グレアム作品データ
原題 Film Stars Don’t Die in Liverpool
製作年 2017年
製作国 アメリカ
配給 キノフィルムズ
上映時間 105分
映倫区分 G