『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(130分/泰/2017)
原題 『Bad Genius』
国が豊かになると受験戦争も葉がしくなるものだ。この映画の勢いとキレを見て、タイと言う国が今現在、めまぐるしい発展を遂げているのを垣間見た。
主演のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンの美しさは、背筋を真っ直ぐに伸ばしてしまうほどの力がある全
タイの映画を最後に観たのはいつのことだろう?まったく思い出せない。いかんいかん、『青いパパイヤの香り』『青いパパイヤの香り』の監督であるトラン・アン・ユンはベトナム人だ。失礼。私の中ではこれくらいタイの映画に関する知識が乏しかった。まずなぜこの映画を観ようと思ったかを説明したい。予告を観て興味を持った。何に興味を持ったかと言うと主演のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンにだ。とにかく強烈な個性を感じた。目が良い。キリっとしている。迷いがないように見えた。若き日の蒼井優を彷彿させる。存在感もあった。この女優が90分、どういう演技をするのか観たかったのだ。
コメディーの要素の中で繰り広げられる緊迫感がスクリーン一杯に充満した
実際、映画は最高に面白かった。簡単に言ってしまえば高校生が試験で合格するために集団でカンニングをする物語だ。しかしその背景にはタイの深刻な受験システムと貧困問題も絡められている。貧しい者はどこの国へ行っても報われない。カンニングの指南役はチュティモン・ジョンジャルーンスックジンが演じる天才少女。しかし家はそれほど裕福ではない。父と暮らしている。母は出て行った。父は娘に良い教育を受けさせたいと思い、名門校を受験させ見事合格する。しかも特待生として。しかしお金がかかるのも事実。彼女はカンニングの請負人になり、お金を稼いでいく。そのカンニングの方法が面白い。国によって色々と違いがある。私が高校生の頃のカンニングと言えばやはり隣の席の答案用紙を盗み見るとか、試験の前にあらかじめ机に書いておくとしたが、現代ではもっとクールにやっているようだ。
カンニングはいけない、しかしもっといけないことがある、チュティモン・ジョンジャルーンスックジンよ
さてさて、カンニングもここまで極めれば職人技である。国をまたいで行われる。時差を用いて。しかしそれも結局ばれてしまう。映画の最後でリンは良心の呵責に悩む。カンニングしたことをカミングアウトする。それがちょっと違和感を覚える。私としては一度請け負った仕事、つまりクライアントがいるのであればその仕事に徹して欲しいのだ。お金持ち連中に利用されているのはわかった。でも最後に自分が良い人であるとアピールするようなエンディングにはちょっとだけガクッと来たのだ。映画として、いや教育としてやっぱりカンニングは許されない行為と考えれば最後は当たり前と言えるか。とにもかくにもチュティモン・ジョンジャルーンスックジンは今後、大注目の女優であることは間違いない。
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